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事前評価(平成11年5月)
湖沼・河川等、淡水環境の生態系保全と移行・周辺帯の環境管理に関する研究(変更前「健全な湖沼・河川の生態系管理に関する基礎研究」)

  • 更新日:1999年11月19日

1)研究の概要

河川・湖沼の移行・周辺帯に焦点をあて、生物多様性の維持が生態系の安定性に果たす役割、さらに生態系の持つ他の機能(溶存酸素の供給、栄養塩のトラップ、水質の浄化、緩衝機能等)との関係について研究を行う。

また、開発の度合いの異なる複数の流域に着目し、水辺環境の悪化によって低下した河川・湖沼の生物多様性の現状を把握するとともに、(以下外部評価の指摘内容を踏まえた変更)それと土地利用等の人間活動との因果関係を定量的に把握し、そのメカニズムの解明を試みる。

2)研究期間

平成12〜14年度(3年間)

3)研究計画

平成12年度は、国立環境研究所内の実験池を用いて、水生植物帯のある自然環境の豊富な実験池と、人為的に水生植物帯を消失させた実験池を作り、水質及び生物多様性の調査を行う。開発の度合いの異なる複数の流域で、魚類・水生植物の分布と生息状況を調査し、土地利用や植生等のデータを収集する。

平成13年度は、引き続き実験池で調査を行い、水生植物帯の有無が生態系の特性に与える影響を明確にする。また、引き続き複数流域で魚類・水生植物の調査を行い、土地利用と人間活動の情報を含めた地理情報システムの構築と解析を行う。

平成14年度は、水生植物帯のある系とない系に、同じ撹乱(例えば栄養塩の添加)を与え、各々の生態系の応答の違いを調べる。複数流域における生物多様性と生態系機能を維持する周辺環境の特徴を明確にし、それを誘導する社会的要因について検討する。

4)研究予算額

  • 40,000,000円/年(予定額)

5)研究実施の背景

我が国では、利水や治水等の目的から、自然の湖沼や河川にダムを建設し、堤防を築き、護岸を施したため、生物相が豊かな自然の水辺が極端に減少した。水質汚濁や外来種の侵入等も影響し、淡水環境の生物多様性は著しく低下し、水辺が本来もちあわせていた生態系機能の劣化も危惧されている。社会ニーズは、身近な環境での「生物多様性の保全」や「生態系サービスの価値」に重点がおかれる傾向にあるが、これらに対応できる科学的知見は十分でない。

6)評価結果の概要

水辺環境の創出にとって重要な課題とされ、基礎研究として高い評価を受けた一方、それにとどまることなく環境政策上重要な科学的知見が提供できるよう、総合性を加味した研究全体のフレームの強化が求められた。

7)対処方針

具体的な研究成果が今後の水辺の保全施策に反映できることが明らかとなるように研究全体のフレームを再構築した。具体的には、生物多様性の現状と土地利用等の関係を地理情報システムを用いて解析する内容を加えることにより、生態系機能を維持する上で、必要な移行・周辺帯の面積や種類組成等を導きだすとともに、生物多様性を保全できる土地利用等を誘導する社会的条件を抽出し、今後の具体的な保全施策に反映されるよう提言を行う。種の保全の観点だけでなく、実証研究により生物多様性の保全を図るべき科学的根拠を明確にし、現実の各地の開発とどう折り合いをつけていくかを検討する際の根拠として活用できるよう研究を進める。