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事前評価(平成11年5月)
沿岸域環境修復技術の生態系に与える影響及び修復効果に関する研究

  • 更新日:1999年11月19日

1)研究の概要

沿岸環境保全のため人工干潟や緩傾斜護岸等の修復技術が試行されてきたが、その効果が疑問視されることが多い。
本研究では、

  1. 沿岸生態系機構の解明とその維持機構に関する研究、
  2. 沿岸域における環境修復の生態系に与える影響に関する研究、
  3. 沿岸域環境修復技術の評価手法に関する研究

の3課題により、既設の修復海岸を近隣の自然海岸と比較・調査することで、その環境修復効果を検討し、また修復効果を評価するための技術を開発する。

2)研究期間

平成12〜14年度(3年間)

3)研究計画

平成12年度は、水中の環境変化に伴う底生生物群集の応答を解析し、その維持機構を明らかにする。修復生態系と自然生態系の物理・化学・生物的要素について季節変化を調査し、類似性や差異を明らかにする。

平成13年度は、場を代表する生物種を選定し、その生活史や個体群変動を把握する。その変動をもたらす環境要因を明確にするために、修復生態系と自然生態系について現場実験を実施する。

平成14年度は、前年度までに得られた生態系に関する知見を基に、国内の事例に適応可能な新たな環境評価手法を開発し、修復効果を評価する。

4)研究予算額

  • 40,000,000円/年(予定額)

5)研究実施の背景

沿岸域は防災の観点から堤防や護岸等の海岸保全施設が整備され、また産業、交通の基地として盛んに開発されてきた。一方、平成11年6月に施行された環境影響評価法では、生態系への影響を評価することが要求されている。

失われた自然海岸の機能の回復のため、又は新たな沿岸開発による環境影響を緩和・軽減するため、沿岸域の環境修復技術に期待が寄せられているが、生態系に対する影響評価は今まで本格的に取り組まれてこなかったこともあり、基礎的な情報は不足しており、施行時には十分配慮されたはずの事業が現在不具合を指摘される例もあるなど、技術的にも不十分である。この分野での研究開発の蓄積が急がれ、その推進が求められている。

6)評価結果の概要

沿岸域環境修復技術の蓄積は急務であり成果に期待が示された。本研究の新規性は何か、影響評価する期間をどのように考えるのかを明らかにしつつ、修復技術が開発の免罪符とならないよう的確な評価手法を開発する必要性について指摘を受けた。底生生物を含めた生態系に着目したことは正攻法であるとされたが、自然と人工の空間的領域が明確でないとの指摘を受けた。

また、物質循環や生態系に関する高度な知識の集積とともに、他の研究機関や事業者の評価レポートを批判的に吸収し、評価手法の確立に重点を置くこと、その際、従来型の生態系状況をランク分けする評価手法に止まらないよう、期待が示された。

7)対処方針

従来、生態系の上位種である鳥・魚類が着目されてきたが、本研究では感受性が高く環境変動の影響を受けやすい底生生物に着目し、物質循環や水質浄化等の機能も含めた評価手法を開発する。評価期間は事業前後の生態系の変動を見るために、数年〜10年程度と考える、現存の海岸では、手つかずの自然は少ないので、相対的に自然に近いと認められるものを対照として調査・研究を行う。

沿岸域における底生生物による物質循環や水質浄化等の機能解明とともに、これらの成果と、過去・現在進行中の事例から情報を収集・整理し、数理モデルによる予測手法も加え、技術的指針につながるよう、評価手法の開発研究を行う。