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事前評価(平成11年5月)
バイオ技術の環境適用における生態系影響評価に関する研究

  • 更新日:1999年11月19日

1)研究の概要

大気浄化能や有害物質分解能を有する組換え生物を作成し、閉鎖系、非閉鎖系、模擬的環境・限定的開放系環境における増殖及び浄化特性、遺伝子の挙動、生態系への影響、バイオ技術の社会的受容性を調べ、環境保全分野における組み換え生物の利用のための生態系影響評価手法を確立する。

2)研究期間

平成12〜14年度(3年間)

3)研究計画

平成12年度は、形状変化遺伝子や環境保全用遺伝子を導入したシロイヌナズナやタバコ等の組換え植物を作成し、増殖特性や有毒物質の産生の有無を調べる。また、水銀化合物及び有機塩素化合物分解組換え微生物を作成し、フラスコやバイオリアクターを用いて、浄化特性、生残増殖性、遺伝子の挙動について調べる。いずれも閉鎖系環境下で行う。

平成13年度は、組換え植物を非閉鎖系温室中で栽培し、花粉の稔性、飛散距離、土壌生態系への影響を調べる。また、組換え微生物の土壌生態系、土壌の呼吸活性、酵素活性に及ぼす影響を調べる。

平成14年度は、組換え植物を隔離圃場で栽培し、近縁種間での自然交雑率、遺伝子の伝播を調べる。また、組換え微生物については、汚染現場土壌に微生物を導入し、浄化効果及び生態系への影響を調べる。また、バイオ技術に対する住民意識の変化過程の調査と分析を行い、バイオ技術の社会的受容性について検討する。以上の成果をふまえて、バイオ技術の生態系影響評価手法を確立する。

4)研究予算額

  • 30,000,000円/年(予定額)

5)研究実施の背景

農林水産、食品、鉱工業分野において、種々の組換え生物が作成され、開放系での利用がなされつつある。環境保全分野においても、耐乾燥性や大気浄化能を有する組換え植物が、また、水銀化合物、PCB及びトリクロロエチレン等を分解する組換え微生物が作成され、環境モニタリングや環境浄化への活用が期待されている。

しかしながら、環境利用を目的とする組換え植物や微生物に対しては十分な安全性を評価する指針が作られていないため、生態系への影響が懸念されている。このため組換え生物の環境影響評価手法を早急に確立する必要がある。

6)評価結果の概要

組換え体を含めた外来生物の環境導入は、新たな環境問題を引き起こすリスクが懸念され、一方では予想をはるかに超える速度でバイオ技術が進展しており、組換え食品が急速に出回る等社会的不安も高まっていることから、バイオ技術の生態系影響評価の研究の意義は極めて高く、急務の研究とされた。サイエンスとしての知見だけでなく、バイオ技術の社会的受容性は、環境適用に際し重要な課題と考えられるので、社会心理学や社会科学的専門家に参加してもらうなど、社会的受容性の研究強化の必要性について指摘を受けた。

7)対処方針

社会心理学的な視点から研究体制の充実を図るとともに、バイオ技術の適用を想定した地域住民に対する説明会と意識調査の回数を増やすほか、汚染地域住民、非汚染地域住民、地下水保全に関わるNGO、バイオ技術の専門家などに対する意識調査も実施するなど、指摘された内容を踏まえ、調査・分析内容の充実を図る。