ホーム > 研究紹介 > 研究計画・研究評価 > 外部研究評価 > 平成11年5月外部評価実施報告 > 廃棄物埋立処分に起因する有害物質曝露量の評価手法に関する研究

ここからページ本文です

事後評価(平成11年5月)
廃棄物埋立処分に起因する有害物質曝露量の評価手法に関する研究

  • 更新日:1999年11月19日

1)研究の概要

廃棄物の埋立処分場に由来する汚染物質をできるだけ多く測定できるような分析法の開発を行なうとともに、これを実際の浸出水の分析に応用し、埋立処分場から環境中に流出する有害物質の定性的、定量的把握を試みた。

2)研究期間

平成6〜9年度(4年間)

3)研究成果

400種類以上の化合物を対象に分析を進めた結果、浸出水中で濃度の高い化学物質は、

  1. 低分子の脂肪酸、
  2. ビスフェノールAを含むフェノール類、
  3. リン酸エステル類、
  4. フタル酸エステル類、
  5. 芳香族アミン類、
  6. ジオキサン

などであることが判明した。

埋立地で微生物作用により生成する脂肪酸等を除くと、検出される化学物質の多くは可塑剤などに使用される化学物質であり、これらはプラスチックの埋立てに由来すると考えられた。比較的高濃度で検出される物質は水溶性が高いという特徴があり、難水溶性物質であるDDTなどの有機塩素系化合物の浸出水中濃度は周辺の河川水などの環境水の濃度レベルであることが判明した。同じく難水溶性物質であるダイオキシン類についても同様の結果であった。無機成分では、水質汚濁に係る環境基準が設定されているホウ素が高濃度で浸出水中に検出される事例があったが、石炭灰・鉱滓の埋立地のほか、焼却灰を埋立てた処分場の浸出水にも高いホウ素濃度を示す傾向があることを示すことができた。個別分析では対応できない有害物質をモニタリングする手法としてバイオアッセイ法の開発を行い、発光細菌を用いた簡便な変異原性試験法を作成した。

4)研究予算額

  • 総額約138,000,000円

5)研究実施の背景

焼却による減量化、プラスチック容器のリサイクル率の向上など廃棄物抑制の努力をしても最終的に生じる廃棄物は、埋立処分せざるを得ない。

しかし、埋立処分場から発生する浸出水・漏出水による周辺の水質汚染や有害物質による人や生態系への影響が懸念されるなど、様々な社会的な混乱が生じている。水道の水質基準や水質、土壌や大気に係わる環境基準の改定に伴い、化学物質による環境汚染についての対策がとられ始めたが、埋立処分場の浸出水中に含まれる化合物の実体やその毒性については、ほとんど調査研究がなされておらず、埋立処分場から発生する有害な揮発性成分による大気を経由した環境汚染に関しても、情報がほとんど欠如している。このため、廃棄物の埋立処分に伴う有害物質の環境に対する負荷を明らかにし、そのリスクを評価するための知見を提示することが期待されている。

6)評価結果の概要

廃棄物埋立処分に起因する有害物質曝露量の簡便な評価手法を開発するという本研究の初期の目的は、十分達成され、また、適切な研究計画の下に地方公共団体の試験研究機関との連携が図られているとして、高く評価された。また、本研究の成果のうち、いくつかの重要な事項が既に環境研究の常識となるなど、当該研究分野へのインパクトは大きく、特に、環境中に存在する数百の化合物からいくつかの物質群をしぼりこみ、更にその指標となる特定の物質について、その検出手法の開発に成功した点について高い評価を受けた。

また、今回の研究成果を、実際の現場で応用可能な技術にしていくために、いくつかのサイトで実証試験を行う必要性と、有害物質の環境曝露量が環境放出量と同義ではないことにも留意して、定常的な監視手法にしていく必要性について指摘を受けた。

また、得られたデータを広く一般に提供すること、さらに、今後、廃棄物の最終処分場の建設はますます困難になる事態が予想されるため、多くの基礎的知見を廃棄物対策に生かせるよう、廃棄物埋立処分の総合的な環境影響評価システムを作りあげ、廃棄物の最終処分による環境影響を適切に評価するため、次のステップへの研究に進むことに期待が示された。

7)対処方針

現在進行中の廃棄物にかかわる研究において、研究サイトで実証試験、有害物質の埋立処分場での挙動について更なる研究を展開している。