植物は私たちの生存に不可欠な食料や酸素を供給するだけでなく、水や土壌の流出を防いだり、大気や土壌を浄化したりして環境保全にも重要な役割を担っています。そこで私たちは、大気汚染など様々な環境要因が植物に及ぼす影響やそのしくみを明らかにし、遺伝子組換え技術を用いてその対策に役立てたり、植物の能力を環境保全に効果的に利用したりするための研究を行っています。また、遺伝子組換え植物が自然生態系に及ぼす影響を調べるための研究も行っています。

1.DNAマイクロアレイ法による植物の診断

 様々な環境要因が植物にとってストレスとなり、成長を遅らせたり枯死させたりします。植物にこのような障害が生じる前にどの要因がストレス源になっているのか診断できれば、その対策を立てることができますが、今のところ有効な方法はありません。そこで私たちは、多くの遺伝子発現の変化を指標にしたDNAマイクロアレイによる診断法の開発を行っています。これまでのところ、この方法により、大気汚染ガスのオゾンと乾燥、傷害による影響をそれぞれ識別することに成功しています。

ストレスにより発現量が増加した遺伝子

ストレスにより発現量が変化しない遺伝子

オゾン

オゾン

紫外線

紫外線

乾燥

乾燥

傷害

傷害

ストレスにより誘導される遺伝子発現変化のDNAマイクロアレイ

法による測定

個々のスポットが特定の遺伝子の発現量の変化を示しています。

2.大気汚染ガス(オゾン)に強い植物の作成

 植物には大気汚染ガスを浄化する能力がありますが、都市やその周辺部では吸収した高濃度の大気汚染ガス、特にオゾンの影響による立ち枯れや活力低下がみられます。オゾンによる障害には老化ホルモンのエチレンが関与しています。私たちはこの場合のエチレン合成を制御している酵素を突き止め、その遺伝子を操作することによりオゾンに強い植物を作成することに成功しました。

野生型
遺伝子組換え体
オゾン(0.2ppm、6時間)との接触によりタバコの葉に現れた可視障害

3.遺伝子組換え植物の可視的マーカーの開発

 様々な分野で遺伝子組換え植物の作成と利用が行われている一方、その人体や生態系への影響が懸念されています。したがって、遺伝子組換え植物を常に監視し、その挙動を把握することが重要です。その際、遺伝子組換え体とそうでないものを容易に識別できるマーカーとなるものがあると便利です。私たちはホメオボックスという遺伝子により生じる葉の形態異常をそのようなマーカーとして利用しようと考えています。

野生型
遺伝子組換え体
ホメオボックス遺伝子の導入によって生じたシロイヌナズナの葉の形態変化

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