近年、組換えDNA技術などの新たなバイオテクノロジーが急速に発展し、医薬品や洗剤などの日用品にいたるまで多くの産業において微生物が利用されています。さらに最近では、環境保全分野での活用が期待されています。私たちは微生物を活用して汚染環境を修復するバイオレメディエーションの実用化を目指し、汚染物質を分解できる有用微生物の開発、およびその利用法・安全性等について研究を行っています。

1. 揮発性有機塩素化合物の分解

 ハイテク産業等で利用されていたトリクロロエチレン(TCE)、1,1,1,-トリクロロエタン(TCA)等の揮発性有機塩素化合物による地下水汚染が大きな社会問題となっています。これまで、TCE分解菌 Methylocystis sp. M を分離し、そのTCE分解機構を明らかにするために、分解酵素の精製およびその遺伝子構造の決定を行っています。最近、新たにTCEおよびTCAを同時に分解可能な Mycobacterium sp. TA27 の分離に成功しました。TA27株による汚染物質の分解特性の解析を行い、TCEおよびTCAの分解経路を明らかにしました。た。現在、土壌カラム、大型ライシメータ等を用いた分解試験を行い、これらの分解微生物の土壌・地下水汚染浄化への効果的な利用法および生態系への影響を調べています。

M株のTCE分解酵素
M株のTCE分解酵素

TA27株によるTCAおよびTCEの分解経路
TA27株によるTCAおよびTCEの分解経路

2. 水銀の除去

 水銀の除去に関与している遺伝子(mer オペロン)を環境中に広く生息しているシュードモナス属の微生物に導入して、組換え微生物を作成しました。水銀除去システム(バイオリアクター)を設計し、汚染環境中からの水銀除去試験を行っています。水銀汚染水からはほぼ100%、また汚染土壌からは約70%の水銀の除去が確認されました。さらに効率的な連続処理を目指して、水銀除去微生物のビーズへの固定化を試み、高い水銀除去活性を安定化させることが可能となりました。水銀除去試験後の固定化ビーズの電子顕微鏡写真を撮影して解析しました。微生物の働きによって水中から除去された水銀が集まって、水銀粒が形成されることを確認しました。また、環境中における組換え微生物の安全性を調べるために、実験室内の模擬生態系を用いた環境影響評価試験を行っています。

水銀除去微生物の固定化ビーズの電子顕微鏡写真
水銀除去微生物の固定化ビーズの電子顕微鏡写真

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