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奥日光環境観測所

施設紹介

増田 啓子

 本施設は,森林生態系に及ぼす環境汚染の影響,および環境汚染に対する非汚染地でのバックグラウンド値を長期にわたって連続観測するための実験施設として,昭和62年度に日光国立公園地内に設置された。

 施設は奥日光の小田代ケ原西方,標高1460mの人為的影響の少ない冷温帯林地に位置し,森林生態系に関与する環境因子を計測するための機器類,データ伝送装置が設置されている。

 観測されている環境因子は大気成分,気象因子,降水・河川水・地下水の水質など31項目66点である。その中で,大気汚染関係は,大気汚染質5成分(窒素酸化物,二酸化硫黄,オゾン,炭化水素,浮遊粉塵)と二酸化炭素が,非汚染地でのバックグラウンド値として計測されると共に,現在,森林への影響が危惧されている降水の酸性化現象を解析するために,降水のpH,EC,水温が,降水量別に計測されるほか,試料水も降水量別に採取・保存でき,降水経過を追った詳細な水質分析ができる。これらの計測データは,一般電話回線を用いて,筑波研究学園都市にある研究所本所に設置されているデータ受信・処理装置に自動集録・処理される。計測例として,オゾンの大気濃度の季節変動を図に示した。オゾン濃度は春先に最大になり,夏から秋にかけて最小になるという中緯度のバックグラウンド地域で見られる特徴的な変動パターンを示している。

 現在,試運転期間を経て,本格的な研究利用が開始されつつあり,計測データは貴重な自然環境データとして活用される予定である。また,施設周辺には鹿・熊などの大型動物の生息数も多く,本土でも有数の自然環境が残っている地域であり,施設は森林・河川生態系に係わる研究フィールドとしても利用される。

(ますだ けいこ,技術部生物施設管理室)

グラフ  オゾンの大気濃度(月平均値)の季節変動