| 新たなる時代に向けて |
| 国公研は平成元年3月15日に15周年を迎えた。環境問題と研究所を取りまく状況も大きく変わろうとしているこの時期に、研究所の各部長に15周年の感慨や将来志向を記して頂いた。 |
| なお、4月1日より松下秀鶴氏,村岡 浩爾氏,横山栄二氏は併任の期間を終えられ、それぞれ本務の専任になられました。 |
生物分野から見た今後の環境研究
菅原 淳
近年、バイオテクノロジーの急速な進展により、組換えDNA技術による新たな機能を持った生物が創られつつある。国公研においても、環境汚染に対する指標生物や浄化生物の開発研究が行われているが、これらの新生生物を開放系で利用する局面に入ってきている。環境に放出された新生生物が、生態系にどのような影響を及ぼすのか、それをどう規制するのか、規制後のモニタリングをどうするのか等環境庁の新たな責務が浮上してきている。これに対応するために、国公研においても分子生物学、遺伝学の研究分野を強化し、開放系利用での安全性を確認する手法の開発研究を行わなければならない。
一方、地球規模の環境問題として、オゾン層破壊による紫外線量増加、温暖化、酸性雨、砂漠化、森林の減少等全て生物分野に関連している。特に酸性雨による森林の破壊や、焼畑、伐採による森林の減少は、大気中の二酸化炭素濃度の増加に大きく影響している。国公研においても植物生理学、植物生態学の分野を増強し、これらの問題に対処して行かねばならない。
また、これらの地球規模の環境破壊に伴い、野生生物の減少も依然として進行している。
世界各国では野生生物の保護区を設定し、自然保護に努めているが、絶滅して行く野生生物種は2000年までには数十万種にのぼると推測されている。国公研においても自然環境保全の重要性を認識し、新たな研究組織作りに取り組んできたが、諸般の事情により、ほとんど進行していない。このような緊急時の中で、野生生物種を個体や細胞や遺伝子のレベルでもよいから保存して行く必要があると考え、国公研の微生物系統保存施設を利用して、野生生物種を遺伝子資源として保存して行くバイオセービング計画を打出している。自然生態系保全の研究と並行して、遺伝子資源の保存の研究を行うことにより、絶滅の危機に頻している野生生物種の細胞、遺伝子レベルでの永久保存を考える必要があると思われる。
(すがはらきよし、生物環境部長)
