| 新たなる時代に向けて |
| 国公研は平成元年3月15日に15周年を迎えた。環境問題と研究所を取りまく状況も大きく変わろうとしているこの時期に、研究所の各部長に15周年の感慨や将来志向を記して頂いた。 |
| なお、4月1日より松下秀鶴氏,村岡 浩爾氏,横山栄二氏は併任の期間を終えられ、それぞれ本務の専任になられました。 |
環境保健研究のあり方
村上 正孝
「典型七公害の沈静化」なる表現は、環境保健問題がなくなったかのような誤解を与える。飽くことなき人類の経済・生活活動に起因する公害現象と快適な生活環境の何たるかを環境保健研究は示す使命がある。わが国で、従来得られた成果は、行政、司法に用いられ、環境政策決定のキーとなってきた。
「複合汚染」という用語もよく使われるが、「健康に影響する生活環境総体の状況」と解釈するのが適当である。与えられた環境汚染要因により、如何なる影響が起きるかとの視点で研究されることが多いが、実際上解答が得られることは少ない。それよりも地域住民の健康状態・障害を診断、評価し、その原因となる環境の状況を特定する研究指向の方が、問題解決に近い。
現在、環境保健問題は3つに分類される。第一は苦情として発生源の対象を特定できるもの。第二には沿道住民の呼吸器の愁訴率が高いとか、都市の喘息、肺癌、鼻アレルギーの有病率が高いなどのように原因が特定されないが、大気汚染などの環境要因の関与が強く疑われるような問題。第三には化学物質の環境放出・拡散などのように将来、どの程度問題となるか分らぬもの、からなる。そして、環境保健研究を遂行するにあたり、5つの基本的理解が必要である。まず第一は、昨今の公害苦情に示されるように疾病に至らぬ心理、感覚的なケースが、その大部分をしめるという特徴がある。第二は、健康意識の向上に伴い、人々には快適な生活環境への要求が強い。第三には、顕在化していない公害問題も住民サイドからの情報に、その手がかりがある。第四は、公害現象は多様な要因と多様な属性の人口集団の反応から構成されるが、ある程度、割り切って環境も人口集団も類型化し、その関係を明らかにし、その成果を対策に役立つように整理すべきである。最後に、環境保健研究は、その研究対象が漠然として把え難いようにみえるが、「問題に対して、どう対応すべきか。」と具体的に答えが求められているわけで、これが、そもそも研究の出発点であり、ゴールでもあることを銘記すべきである。
(むらかみまさたか、環境保健部長)
