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2021年4月30日

つくば本構キャンパスマスタープランの策定

岩崎 一弘

 国環研は、1974年3月の発足以来2021年3月には早いもので47年を経ています。この間、環境分野に関する唯一の国立研究所として、現在では、つくば本構に加えて、福島支部(2021年4月以降福島地域協働研究拠点に改称)、琵琶湖分室及びいくつかの所外実験施設を活用し、環境研究の中核的研究機関としての役割を担ってきたと自負しています。社会や行政から多様な環境問題への対応を強く求められる中で、随時、一部の施設・設備の廃止・更新等、限られたスペースを有効利用しながら研究環境を整備してきました。

 しかし、施設の老朽化や設備の機能面における相対的な陳腐化が否応なしに進んでいます。発足当初より設置されている蒸気集中供給システム等の電力・エネルギー供給施設は既に耐用年数を経過し、また2021年度からの国環研第5期中長期目標期間には、発足当初の建築物が耐用年数を迎える等、施設・設備の老朽化への対応が急務となっています。

 一方で、国環研には我が国の環境研究の中核的機関として、環境政策に対して有効な科学的知見を提供することが求められており、例えば2018年12月1日に施行された気候変動適応法への対応など、新たな社会動向や政策的課題に対応した研究環境を実現することが必要不可欠です。既存施設の廃止・改修・更新と併せて、こうした新たな課題に対応した施設・設備の整備を戦略的・段階的に進めていくことが重要であると考えています。

 さらに、科学的知見の提供だけでなく、自らが率先して環境負荷低減へ向けた取組を実践していくことも重要な使命です。2020年10月26日、菅内閣総理大臣による所信表明演説において「2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」ことが宣言されました。国環研の施設・設備整備の方針は、これらの目標の達成を見据えるものでなければなりません。

 こうした複雑な要求を満たしつつ施設の整備・更新・拡充を進めるためには、しっかりとした理念と戦略に基づいた総合的なプランを立てることが必要です。そこで、次世代へ引き継いで活動するにふさわしい施設・設備を、効果的かつ効率的に整備していくため、「環境創造型キャンパス」を目指したつくば本構施設整備のマスタープランを策定(平成31年3月)いたしました。国環研が拠点としているつくば本講キャンパスの最大の魅力は、「環境研究をテーマとする多様な専門分野が寄り集まっていること」「環境研究のリソースとしての生態系が豊かであること」と考えています。こうした特徴を最大限活かしながら、自ら「脱炭素」を実践することにより、「地球温暖化の緩和と適応」という要請にも応え、次の100年も国内外の環境研究を先導し続けることが可能になると考えています。具体的には、研究活動を維持しつつ整備を進めていくこととして大まかに3つのプランを提案しています。もちろん本プランはこれで完成ではなく、社会情勢や新たな環境問題等への対応により適宜見直していく予定です。詳細につきましては、国環研ホームページ(https://www.nies.go.jp/mplan/index.html)をご参照ください。

(いわさき かずひろ、連携推進部 部長)

つくば本構キャンパスマスタープランの理念の説明図
図 つくば本構キャンパスマスタープランの理念

執筆者プロフィール:

筆者の岩崎一弘の写真

企画部兼務や内閣府出向などがこれまでに11年ほどとなり、すっかり研究の前線から退いてしまいました。2021年度からは新たに連携推進部が新設されますので、今まで以上に企画・支援部門と研究実施部門の橋渡しにも尽力したいと思います。

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