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 受賞者氏名:高橋 潔, 肱岡靖明, 原沢英夫
 受賞年月日:2009年9月12日
 賞の名称:平成21年度地球環境論文賞 (社団法人土木学会地球環境委員会)
 受賞対象:温暖化政策支援モデルのための県別ブナ林影響関数の開発
(地球環境研究論文集, 16, 111-119, 2008)

 受賞者からひとこと:
 和文論文誌「地球環境研究論文集」に掲載された論文の中で上記論文の成果が評価され表彰されたものです。本研究は環境省地球環境研究総合推進費課題「温暖化の危険な水準及び温室効果ガス安定化レベル検討のための温暖化影響の総合的評価に関する研究」の一環として行われました。温暖化政策支援モデルへの実装を想定し,地球温暖化によるブナ林の分布適域の変化を簡易に推計できるよう,年平均気温変化及び年降水量変化率を説明変数とする県別ブナ林影響関数を開発し,その関数を用いて温暖化のブナ林影響の分析を実施しました。2013年以降の温暖化対策の国際枠組の議論が活発化する中で,その検討の支援材料の一つとして我が国での影響の見通しを示す必要がありますが,いかにすれば議論に資する形でその見通しを伝えられるか,森林総合研究所の共同研究者らと共に悩みながら手探りで実施した研究です。本研究が高く評価されたことは,著者らの励みになるとともに,国内の温暖化影響研究に弾みをつけるものと思います。なお,本論文に先駆けて同じく土木学会の発行する和文論文誌「環境システム研究論文集」に「温暖化政策支援モデルのための全球水資源影響関数の開発」(著者:花崎直太・増冨祐司・高橋潔・肱岡靖明・原沢英夫・松岡譲)を発表しており,本論文はそこで提案した「影響関数」手法をブナ林影響に拡張したものです。この場を借りて紹介いたします。


 受賞者氏名:長谷川就一
 受賞年月日:2009年9月16日
 賞の名称:大気環境学会平成21年度論文賞 (大気環境学会)
 受賞対象:PM2.5中元素状炭素の自動車排出係数の推計と一般環境における
大気中濃度の変動 (大気環境学会誌, 43(5), 273-283, 2008)

 受賞者からひとこと:
 受賞論文は,山神真紀子氏(名古屋市環境科学研究所)が主著者であり,鈴木秀男氏(システム設計環境解析研究所),中島寛則氏・平生進吾氏(名古屋市環境科学研究所),若松伸司氏(愛媛大学)との共著です。本論文は,名古屋市の道路沿道における大気中微小粒子状物質(PM2.5)の観測データを基に,PM2.5の主要成分である元素状炭素(EC)の自動車排出係数を推定・評価し,長期間の一般環境での観測データを基にPM2.5中のEC濃度変動特性を解析し,得られた排出係数を用いて一般環境中のEC濃度への自動車の寄与を評価したものです。特に,報告例の少ない微小粒子中のEC濃度の実態を明らかにした点および環境データから信頼できる排出係数を求めた点で評価されました。折しも,PM2.5が環境基準として設定されることが決定したばかりであり,今後もPM2.5に関する観測と解析は重要性を増していくと思われますので,今回の受賞を励みに,なお一層取り組んでいきたいと思います。


 受賞者氏名:小林弥生
 受賞年月日:2009年11月5日
 賞の名称:日本薬学会環境・衛生部会賞 (日本薬学会環境・衛生部会)
 受賞対象:分析毒性学的手法を用いたセレンならびにヒ素の代謝機構の解明

 受賞者からひとこと:
 この賞は「衛生薬学の基礎および応用(試験法開発を含む)に関し,独創的な研究を実施中で,将来の発展または社会への貢献が期待される業績を挙げつつあり,かつ将来,衛生薬学領域において中心的役割を果たすことが期待される者」に授与されるものです。これまで,分析毒性学的手法を用いてメタロイドであるセレンやヒ素の代謝物をできる限り生体内に近い状態で捉えることにより,これらメタロイドの代謝に関して基本的な概念を明らかにしようと研究してきました。受賞対象の研究は,高速液体クロマトグラフを用いて生体成分を「分離」し,質量分析器を「検出」機器として用いることにより,生体内における様々な生化学的反応を推定できるハイフォネーション技術と呼ばれている手法を用いて行いました。セレンに関しては哺乳類における主たる尿中代謝物がセレン糖であることを初めて明らかにし,ヒ素に関しては環境有害物質としてのヒ素の代謝,毒性発現機構に加えて,ヒ素の解毒に関する研究を進めています。


 受賞者氏名:三枝信子
 受賞年月日:2009年11月26日
 賞の名称:日本気象学会堀内賞 (社団法人日本気象学会)
 受賞対象:森林生態系における炭素循環の観測的研究とそのアジアへの展開

 受賞者からひとこと:
 気象学会堀内賞は,気象学の境界領域や未開拓な分野における研究で,気象学の発展に貢献したものに授与される賞です。このたびは,1996年以降(当時は産総研に在職)進めてきました,森林炭素循環の観測技術に関する研究と,東アジアにおけるCO2収支広域解析の研究などが,新しい分野の開拓に寄与すると認められました。森林炭素循環の観測技術の研究では,微気象学的理論に基づいてCO2収支を観測する手法の技術改良や精度検証を行いました。東アジアの広域解析とは,AsiaFlux(アジアにおけるCO2収支等の観測網)に基づき,数多くの機関の共同研究者の皆さんと数多くの観測データを集めて統合的に解析したもので,CO2収支の季節変化や年々変化のパターンが,亜寒帯から熱帯に至る緯度帯や生態系のタイプによって大きく異なる特徴を持つことを明らかにしました。今後も気候変化にアジアの生態系がどのように応答するかを明らかにするための研究を推進したいと考えています。