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国民から信頼される研究所を目指して

【巻頭言】

理事  太田 進

 環境問題が政治・行政の主要課題として大きく取り上げられることが多くなってきています。新聞記事をみても地球温暖化をはじめとして環境問題が載っていない日がないような状況です。その意味では,社会のメインストリームとして認識されてきたといえます。

 そのような状況下で,環境研究も社会から一層の期待を受けており,この期待にどのように応えていくかが喫緊の課題と思っています。

 国立環境研究所も積極的に研究成果の発表を推進しており,20年度は誌上発表が619件(うち査読ありの論文が408件),口頭発表が1,238件となっています。また,マスメディアにおいて,当研究所の研究が紹介・言及されたことが,新聞報道で549件,テレビ等で82件にもなっています。さらに,温暖化対策に関する政府の中期目標検討会のワーキングチームなど,465件の国の審議会等に延べ656人の職員が参画しています。これら審議会等において国環研の研究成果や知見を提示することにより環境政策の立案に積極的な貢献を果たしています。

 この数字が高いか低いかについては議論があると思いますが,例えば,当研究所の総経費(人件費,研究費を含む)が概ね年間140億円であり,経費の大部分は国民からの税金であることを考えると,相応しい成果の発信を今後とも続けていくことが求められていると思います。

 さて,中期計画(18~22年度)の4年目に入り,成果のとりまとめを視野に入れながら研究を進めるとともに,次期中期計画策定に向けた検討を始める時期となっています。管理部門を担うものとして,次期計画に向けて留意すべきと思うことをいくつかあげておきたいと思います。

 まず,社会の期待にいかに応えていくかです。そのためには研究所として学問的な水準が高いことが前提ではありますが,単に学問的な評価だけでなく社会に貢献できる研究成果の発信が求められています。これには政治や行政などの短期的なニーズばかりでなく,長期的なビジョンを持ち,位置づけを明確にして研究成果を発信していくことが重要です。また,環境問題は国環研に聞けばよい,といわれるようになるために,広い公正な視野を持ち,正確な知識に裏付けられた情報の発信を心がける必要があります。

 次に,いかに効率的かつ高水準の研究体制を構築していくかです。例えば,研究予算については各研究ユニットに一括して渡しており,ユニット内で比較的自由に使用されています。また研究所全体の予算も算定式による要求となっています。この方法は,事務処理的には効率化され自由度も高いという利点はありますが,一方で予算獲得のための努力が必要とされないため活力の低下を招くおそれがあります。中央省庁では(それがいいか悪いかは別として)予算の獲得が活力の源泉になっています。社会のニーズを読み,研究テーマを考え,予算の要求をするという過程は,研究所においても新たな発展を図る上で必要な手法ではないかと思っています。また,研究者を支えるサポート体制の構築やコンプライアンスの徹底なども重要な課題であると認識しています。

 他にもいろいろと課題はあると思いますが,所員とともに真摯に議論し,今後とも国民から信頼される研究所を目指して努力していきたいと思っています。

 

(おおた すすむ,企画・総務担当理事)

執筆者プロフィール

理事 太田 進

 国環研に来て1年が経ちました。健康のため,つくばのまちを歩き回っています。少し広すぎますが,新しい発見もあり,楽しみながら歩いています。