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国立環境研究所特別研究報告 SR-80-2008
「環境化学物質の高次機能への影響を総合的に評価するin vivoモデルの開発と検証(特別研究)」(平成17~19年度)

 本研究課題では,(1)環境ストレスに対し免疫・アレルギー影響が出現しやすい動物を用い,環境汚染化学物質のアレルギー増悪影響を簡便に評価することが可能なin vivo (生体内)スクリーニングモデルを完成しました。(2)多くの環境化学物質について,アレルギー増悪作用の有無を短期間に評価することができました。(3)ある種の化学物質が,既存の臓器毒性より求められた無毒性量(NOAEL)より低用量で,アレルギー増悪影響を発揮することが明らかになりました。(4)DNAマイクロアレイの併用やin vivo (試験管内)スクリーニング手法の導入により,より簡便に環境化学物質のアレルギー増悪影響を推定することができるスクリーニングシステムを提案することができました。以上より,古典的な毒性ではなく,【生命・生体システムのかく乱に基づく健康影響】という新たな健康影響の評価軸を提言し,こうしたかく乱影響が,臓器毒性に比較してより低い濃度でも惹起されうること示し,科学的なインパクトと共に,化学物質規制のための環境政策に新たな方向性を示唆することができました。

 (環境健康研究領域 高野裕久)

国立環境研究所特別研究報告 SR-81-2008 「鳥類体細胞を用いた子孫個体の創出(特別研究)」(平成17~19年度)

 国立環境研究所では平成14年度から環境試料タイムカプセル化事業の一環として特に鳥類を中心に絶滅危惧動物の組織や細胞を液体窒素を使って凍結保存しています。鳥類細胞に関しては世界で初めての細胞保存バンクです。また,国立環境研究所独自に開発した鳥類細胞の長期継代培養技術を用いることによって,ひとかけらの絶滅危惧鳥類の皮膚から大量の細胞を培養して,これを凍結保存しておけばいつでも希望したときに生きた絶滅危惧鳥類の細胞を利用できます。

 「鳥類体細胞を用いた子孫個体の創出」は,培養して増やしてから凍結保存している細胞を活用して子孫個体を創り出すために必要な新しい研究技術を開発するための試みです。本開発研究の成果が実際に応用されることが無ければ良いものの,絶滅危惧鳥類の生息域がますます劣化・圧迫される状況から将来的な安全策として開発しておくべき最先端技術です。

(環境研究基盤技術ラボラトリー 桑名 貴)

国立環境研究所特別研究報告 SR-82-2008
「地球温暖化研究プログラム(中間報告)」(平成18~19年度)

 本報告書は,当研究所が実施している4つの重点研究プログラムのうちの1つである「地球温暖化研究プログラム」(平成18年度~22年度)の当初2年間の研究成果を,中間報告として取りまとめたものです。本プログラムは,温暖化とその影響に関するメカニズムの理解に基づいた,将来に起こり得る温暖化影響の予測のもとに,長期的な気候安定化目標及びそれに向けた世界及び日本の脱温暖化社会(低炭素社会)のあるべき姿を見通し,費用対効果,社会的受容性を踏まえ,その実現に至る道筋を明らかにすることを全体目標としています。特に,プログラムの中心をなす4つの中核研究プロジェクト(1)温室効果ガスの長期的濃度変動メカニズムとその地域特性の解明,(2)衛星利用による二酸化炭素等の観測と全球炭素収支分布の推定,(3)気候・影響・土地利用モデルの統合による地球温暖化リスクの評価,(4)脱温暖化社会の実現に向けたビジョンの構築と対策の統合評価,の成果を記載しています。

 

(地球環境研究センター 笹野泰弘)

国立環境研究所特別研究報告 SR-83-2008
「循環型社会研究プログラム(中間報告)」(平成18~19年度)

 大量生産,大量消費の社会は,負の側面としての大量廃棄をもたらしたと言われています。問題解決への中心的な解の1つが循環型社会を構築することであり,このことは21世紀を生きる人類に課せられた大きな課題であると考えられます。当研究所では,この重要な問題に対処するために,平成18年4月に開始した第2期中期計画において,「循環型社会研究プログラム」を重点研究プログラムの1つに設定し,研究を開始しました。本研究プログラムの目指すところは,天然資源の消費と廃棄物の発生を抑制し,循環利用する物質の流れを築くことと,廃棄物の適正な管理を担保することを車の両輪として,循環型社会を実現することにあります。本報告書は,循環型社会研究プログラムの平成18,19年度の研究成果を取りまとめたものです。中間的な成果を公表することで,今後の研究推進に反映するための貴重なご意見を各方面よりいただけることを期待しています。皆さんの忌憚のないご意見を是非お寄せ下さい。

(循環型社会・廃棄物研究センター 森口祐一)

国立環境研究所特別研究報告 SR-84-2008
「環境リスク研究プログラム(中間報告)」(平成18~19年度)

 本報告書は,平成18~22年度の5ヵ年の予定で実施されている重点研究プログラム-環境リスク研究プログラムの平成18~19年度,前期2年間の研究成果を取りまとめたものです。環境リスク研究プログラムは,環境リスク研究センターを実施主体とし,人の健康や生態系に及ぼす有害な影響を,実態に即した調査または実験に基づいて解明することにより,環境リスクとして体系的に評価する手法を見いだし,人の健康と生態系に及ぼす環境からの悪影響の未然防止に貢献していくことを目指しています。本報告書は,(1)化学物質の曝露評価手法,高感受性要因,ナノ粒子及び生態影響評価手法に関する4つの中核研究プロジェクトを中心に,(2)環境政策における活用を視野に入れた基盤的な調査研究の7課題,(3)知的基盤として整備された3つのデータベースの成果を紹介しています。生態毒性予測システム「KATE」,多媒体動態モデルG-CIEMSやデータベース等の成果物は,実際に環境リスク研究センターのホームページからダウンロードや閲覧が可能です。

 

(環境リスク研究センター 白石寛明)

国立環境研究所特別研究報告 SR-85-2008
「アジア自然共生研究プログラム(中間報告)」(平成18~19年度)

 本報告書は,重点研究プログラム「アジア自然共生研究プログラム」の平成18~19年度の研究成果を取りまとめたものです。急速な経済成長を続けているアジア諸国では,日本で高度成長期以来順次経験してきた大気汚染,水質汚濁,自然破壊などの環境問題が同時に顕在化してきています。これらの問題は,日本を含むアジア全体の問題になってきており,国際的な協力によって取り組むべきものです。本プログラムでは,第2期中期計画期間(平成18~22年度)に,「アジアの大気環境評価手法の開発」,「東アジアの水・物質循環評価システムの開発」,「流域生態系における環境影響評価手法の開発」の3つの中核研究プロジェクトによって研究を進めています。本報告書では,東アジア規模,北半球規模での光化学オゾンやエアロゾル・黄砂の動態や発生源,長江流域圏等の富栄養化や東シナ海への影響,都市の環境問題,メコン河流域の生態系破壊などについて,具体的な研究成果を報告しています。

 

(アジア自然共生研究グループ 中根英昭)

国立環境研究所研究報告 R-201-2009
「俳句における環境植物の調査報告(世界植物季語調査の結果)」

 国際俳句交流協会と各国の日本会の協力により,9つの国の俳句愛好者73名から,植物を詠んだ俳句が報告された。気候帯が異なると多種多様な植物が詠まれているので,日本の人には馴染みない植物が多い。また言語の異なる俳句愛好家から,その地域の俳句における植物の情報が報告された。季語として定着した植物はまだないようである。植物分類学の研究者からは日本の季語について,植物分類学でどこまで解読できるか,初めての試みがなされた。植物分類は世界共通であり,これから異なった言語や気候帯で詠まれた俳句を,それぞれの地域の俳人が相互に理解する為に必要なものである。また季語の統計的分析やデータベース化についても報告された。これらをまとめ印刷・出版することは,環境植物の研究の発展に重要な試みである。この報告書を国内外に配布することは,日本の自然が育んだ俳句を世界に示す良い資料となる。このような研究が積み重ねられることにより,気候風土や文化的背景による環境評価の違いを示すであろう。

 

(社会環境システム研究領域 青木陽二)

「環境儀」 No.32 熱中症の原因を探る-救急搬送データから見るその実態と将来予測

 科学的な究明を待つ部分も大きいとはいえ,地球温暖化に関わる環境問題は大きな課題となっております。現実に様々な異常気象現象が起こることにより,熱ストレスとその典型である熱中症,光化学オキシダント濃度の上昇による循環器・呼吸器系疾患の増加など,人間の健康への影響も顕在化しつつあります。特に2007年夏の北関東の異常な暑熱は私達の記憶に新しいところです。「環境儀」No.32では,環境健康研究領域の小野雅司室長が中心になって行ってきた,異常気象と熱中症リスクの関連性に関する研究を紹介します。この研究では2000年以降,東京都と17政令都市の消防局の協力を得て,救急搬送された熱中症患者情報を収集し分析しています。これにより,性別,年齢階級別,発生場所,日最高気温別の患者発生率の特徴が明らかになりました。今号では,これらの分析結果と共に,対応策や患者発生予測などについても紹介します。

 

(「環境儀」 第32号ワーキンググループリーダー 原島 省)