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環境研究者の人事交流を促進させる

大阪府立大学学長 相賀 一郎

相賀  一郎の写真

 本来,環境問題は人間が創った近代科学産業が原因となり生じたもので,その解決は,環境科学により得られる科学的知見を基礎に置いた環境行政によってのみ可能である。こうした考えの下,最近では,環境科学は人間学であり,環境行政は行政全体の基本的部分を担わねばならないと思うようになってきた。

 わが国の環境科学研究の中心的機関である国立環境研究所は,設立以来25年を経過しようとしているが,当初の公害防止に関する研究から最近の地球環境や自然環境の保全に関する研究まで,地道に基礎研究の成果を積み上げてきた。これらの蓄積された研究成果を長期的視野をもってデータベース化し,環境行政に的確に利用していくことが期待される。

 ところで,最近の国立環境研究所の同窓会「四六会」の名簿を見て,驚いたことがあった。全国の国公立大学および私立大学で100人以上の研究所出身者が現役の教授,助教授として環境科学の教育と研究の分野で活躍していることである。大学における理学,工学,医学,農学,社会・経済学等の既存の学部で,環境科学研究者としてのそれぞれの専門領域の講義や研究において,国立環境研究所の在籍経験は,重要な意味をもっている。環境科学者の定義は明確ではないが,同じ学部の他の研究者との違いや,自分の専門分野の位置づけを考えるとき,国立環境研究所での研究経験が役に立つはずである。

 科学技術はこれからも益々発展する。地球の人口は21世紀には100億をこえると予測されている。この状況下で,持続可能な経済社会を形成するために,環境科学の研究成果を,社会を構成する人達に役立ていく必要がある。そのためには,大学における環境科学教育が大事である。

 一方,科学技術の進展は速く,それにより新たな環境問題が発生する。その対処のためには国立環境研究所の更なる活性化が要求される。それは,必要な人材の確保であり,人事交流である。アドミニストレーション,研究のマネージメントも含め,常時,若い優秀な研究者の養成と交代が必要である。国内外の大学との人事交流はもとより,行政機関,国公立研究所,企業研究所等との人事交流を行うことが,新たな環境問題に対する取り組みのためにも必要であろう。

(あいが いちろう)

執筆者プロフィール:

旧国立公害研究所技術部長