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黄砂(こうさ)エアロゾル

環境問題豆知識

西川 雅高

 黄砂は,中国大陸のゴビ砂漠,タクラマカン砂漠および周辺地帯,あるいは陜西省,山西省,内モンゴル一帯に広く分布する黄土地帯で発生した舞い上がり砂塵の総称である。晩秋にも時々発生することがあるけれども,初春から初夏にかけて最も多く発生する。そのうち,微小なエアロゾル群を黄砂エアロゾルと呼んでいる。黄砂エアロゾルは,発生後,2~6kmの高度帯を東方向へ風送され,粒径によってその到達距離が異なる。発生直後の中心粒径は20~50μm,日本では2~5μm,ハワイでは2μm以下といわれている。組成的特徴は,炭酸カルシウム成分に富んでいるという点である。主成分の含有順を示すと,日本で発生した土壌系エアロゾルの場合,ケイ素>アルミニウム>鉄>>カルシウムであるが,黄砂エアロゾルの場合,ケイ素>アルミニウム~カルシウム>鉄である。ところで,サハラダストと呼ばれているサハラ砂漠由来の土壌系エアロゾルも,黄砂エアロゾルと同じようような主成分順である。黄砂エアロゾルやサハラダストは,今,酸性物質の運搬媒体として,また,気候変動に大きな影響を与える物質として温暖化ガス成分とともに注目されている。

 昨年中国を訪問した折り,次のような話を聞いたのでご紹介する。「北京で黄砂現象にでくわしたある旅人が,『この砂塵嵐はどこから来るのか?』と聞いたところ,地元の長老は『西から』と答えた。黄砂に興味を持った旅人は,西に進んだところ,北京よりも激しい黄砂現象にでくわした。そこでまた,『この砂塵嵐はどこから来るのか?』と聞いたところ,地元の長老は『西から』と答えた。旅人はついに砂漠地帯の中の町まで。そこで激しい砂塵嵐にでくわした。『この砂塵嵐はどこから来るのか?』と聞いたところ,地元の長老は『西から』と答えた。結局,旅人は,『黄砂は西から』とつぶやいたそうである。」黄砂は中国の西で発生するが,その正確な発生源はまだ特定できていない。それほど広大な場所で発生し,全地球的影響をもっているのである。

(にしかわ まさたか,地域環境研究グループ開発途上国環境改善(大気)研究チーム)

執筆者プロフィール

富山県海岸部出身のため防波堤海釣りが趣味。今年で国環研入所20年目になります。