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第13回全国環境・公害研究所交流シンポジウム

笹岡 達男

 第13回全国環境・公害研究所交流シンポジウムが,当所セミナー委員会の主催により,平成10年2月4~5日に開催された。この交流シンポジウムは,「環境研究に関する研究発表,意見交換を通じて地方公害研究所と国立環境研究所の研究者間の交流を図り,共同研究等の新たな展開に役立てるとともに,環境研究の一層の推進を図ることを目的とする」(全国環境・公害研究所交流シンポジウム実施要領)という趣旨で,昭和61年1月に第1回が開かれて以来,毎年第4四半期に開催されている。

 今回は,「酸性雨(酸性霧,酸性雪)の実態と影響の現状」というテーマのもとに,2日間合わせて15件(地公研13,国環研2)の研究発表と,特別講演2題という構成で行われた。

 酸性雨をテーマとするのは,この交流シンポジウムの歴史の中でも,第1回(昭和61年),第7回(平成4年)に次いで3回目であるが,回を重ねるにつれ,地公研での取り組みも幅広く蓄積され,充実してきているのが見てとれる。地公研側からの研究発表課題のエントリーも大変多く,事務局としてはうれしい悲鳴をあげながらプログラムの編成を行ったが,結果的に各課題の発表時間が短くなり,発表者,聴衆の両方にご負担をかけたのではないかと反省している。

 それはともかく,発表内容は,各地における酸性雨等の現状,湿性・乾性沈着と成分分析,河川・湖沼と材料への影響,及び国際共同研究という4つのセッションに区分される幅の広いものであった。

 特別講演では,環境庁大気保全局の飯豊修司専門官から「酸性雨をめぐる行政の対策」と題して,東アジア酸性雨モニタリングネットワークの現状等についての話題が提供され,さらに国立環境研究所地球環境研究グループの佐竹研一総合研究官から「酸性雨問題の歴史と展開-西暦2000年酸性雨国際学会に向けて-」の題で,西暦2000年につくば市の国際会議場(建設中)で開催される予定の酸性雨国際学会に向けての展望と協力依頼が訴えかけられた。

 このシンポジウムを契機に酸性雨に関する,国と地方,行政と研究との交流がより一層深められることとなれば幸いである。また,今回は地公研側参加者からの要望も踏まえ,シンポジウム終了後に国立環境研究所の施設見学会を初めて行った。なお,参加者は地公研を含む自治体関係者が87名,環境庁から3名,国環研から47名,その他(大学等)12名の合計149名であった。

(ささおか たつお,研究企画官)

プログラム

平成10年2月4日(水)

 1. 研究発表(第1セッション)各地における酸性雨(霧,雪)

 座長:村野健太郎(地球環境研究グループ主任研究官)

(1)北海道における酸性霧 野口 泉
(北海道環境科学研究センター)
(2)青森県竜飛のWet/Dry型捕集装置による降水特性 早狩 進
(青森県環境保健センター)
(3)福島市における酸性雨の状況について 佐藤聡美
(福島県衛生公害研究所)
(4)湿性沈着物に及ぼす火山の影響 森崎澄江
(大分県衛生環境研究センター)
(5)全公研全国調査データのデータベース化 布井敬二
(国立環境研究所)

  研究発表(第2セッション)湿性・乾性沈着と成分分析

 座長:福山 力(大気圏環境部大気動態研究室長)

(6)山岳における新雪中の溶存及び不溶成分の多元素分析 斉藤勝美
(秋田県環境技術センター)
(7)日本海側地域における降雪成分の地域的及び時系列的変化の特徴 福崎紀夫
(新潟県保健環境科学研究所)
(8)奈良市における定量法による乾性沈着量の評価 松本光弘
(奈良県衛生研究所)
(9)樹氷に含まれる炭素系粒子及び無機系粒子の起源 永淵 修
(福岡県保健環境研究所)

  研究発表(第3セッション)河川・湖沼と材料への影響

 座長:佐竹研一(地球環境研究グループ酸性雨研究チーム総合研究官)

(10)酸性雨の材料への影響 古明地哲人
(東京都環境科学研究所)
(11)融雪に伴い積雪層から溶出しやすい成分と湖沼・河川水質への影響 大泉 毅
(新潟県保健環境科学研究所)
(12)降雨時の渓流水のpH低下現象 鹿角孝男
(長野県衛生公害研究所)

平成10年2月5日(木)

 1. 研究発表(第4セッション)酸性雨に関する国際共同研究

 座長: 鵜野伊津志(大気圏環境部大気物理研究室長)

(13)東アジアにおける酸性雨による文化財材料への影響評価に関する研究 辻野喜夫
(大阪府公害監視センター)
(14)島根県と韓国慶尚北道における酸性雨現象に関する共同調査 山口幸祐
(島根県衛生公害研究所)
(15)アンモニアの重要性とその放出量の推定 村野健太郎
(国立環境研究所)

 2. 特別講演

「酸性雨をめぐる行政の対策」
飯豊修司(環境庁大気保全局大気規制課酸性雨対策専門官)   

「酸性雨問題の歴史と展開-西暦2000年酸性雨国際学会に向けて-」
佐竹研一(国立環境研究所地球環境研究グループ酸性雨研究チーム総合研究官)

 3. 施設見学会(所内各施設)