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科学技術庁関連予算による研究課題等の紹介(国立環境研究所における平成7年度の実施状況から)

内山 裕夫

 科学技術庁は,基礎研究の強化は我が国発展の基盤として極めて重要であると認識し,このため各省庁・大学等に研究費を助成・配分している。この予算は主に,科学技術振興調整費,国立機関原子力試験研究費,海洋開発及び地球科学技術調査研究促進費に大別される。このうち,国立環境研究所の研究者が最も多く関与している振興調整費(表参照)は科学技術基本法の成立(平成7年11月15日)および科学技術基本計画が検討中であることを反映し,拡充の一途にある。以下,当予算の運用について紹介する。

 振興調整費は,我が国の科学技術に関する最高の審議機関である科学技術会議の総合調整機能を具体化するために昭和56年に創設された制度であり,各省庁,大学,民間といった既存の研究体制の枠を超えた横断的・総合的な研究開発の推進を目的としている。主な内容は,(1)境界領域,複合領域における基礎的・先導的研究の推進 (2)国立試験研究機関等を中心とする基礎研究の強力な推進 (3)科学技術面での国際貢献に資するための国際共同研究の推進 (4)従来にない新しい研究制度の試行的実施 (5)年度途中に発生した突発的事態等への柔軟かつ機動的な対応 (6)適切な研究評価の実施,研究開発に必要な調査・分析の実施である。各内容の具体的運用に当たっては各種制度があるが,平成7年度の制度別内訳は以下のとおりである。

 総合研究では,重要研究テーマについて産官学の研究ポテンシャルを結集し,複数機関が有機的に連携して総合的に取り組む。また,我が国を含む広範な地域に共通な課題について,海外の研究機関と人的・情報のネットワークを構築して国際共同研究を推進する。I期3年間,II期2年間からなり,当研究所では11課題を実施した。このうち,バイカル湖の湖底泥を用いる研究は当研究所が中心となり,250万年位前までの環境変動を調査できる底泥コアの採取に成功し,また,ヨコエビの酵素タンパクに関連した遺伝的多様性についても成果を上げることができた。

 省際基礎研究では,優れた研究リーダーを中心に省庁の枠を超え且つ国際的にも人材を結集したグループを組織して基礎研究の推進を行う。研究期間は3年で,当研究所でもエコビークル(電気自動車)の研究を継続し,タンデム型2人乗り乗用車の試作を行って注目された。なお,本制度の8年度以降の新規課題募集はなく,代わって新技術事業団により戦略的基礎研究推進事業が開始された。本事業では,国が設定する戦略目標の下で新技術事業団が設定した研究領域を,公募された研究チームが年間予算最高2億円で実施する新しいタイプの大型プロジェクトである。対象となる4研究領域の1つに,環境低負荷型の社会システムが含まれる。

 研究情報整備・省際ネットワーク推進制度は,基礎研究をはじめとする研究活動の推進に寄与するため,各研究機関を結ぶネットワークの整備・運用,利用に資するための調査研究を行い,データーベース化に関する調査研究を推進する。研究期間は3年(省際ネットワーク),及び5年(環境情報整備)。当研究所では,大容量数値データ等の伝送に適したネットワーク経路制御方式の研究と化学物質の生体へのリスク評価を算定するためのデータベースの作成の2課題を行っている。

 個別重要国際共同研究では,科学技術協力協定において協力の推進が約束されている等,国際交流を進める上で重要性の高い国際共同研究を,我が国単一省庁の研究所が単一の相手国の研究機関と実施する。7年度は,5課題を中国,イギリス,オーストラリアと行った。研究期間は原則として単年度である。また,国際研究交流推進の一貫として重点国際交流制度があり,効率的・効果的な国際交流を推進するためワークショップを開催するが,当研究所での実施はなかった。

 重点基礎研究は,各国立試験研究機関(国研)において将来の技術展開の柱となることが期待される革新的技術シーズの創出を図るための基礎研究を推進し,課題選定は各所長の裁量による。原則として単年度で,4課題を実施した。

 生活・社会基盤研究は,国研,大学,公共研究機関,民間研究機関等を結集し,生活者や社会のニーズに密着した目的志向型研究及び地域の活性化に資する研究を総合的に推進し,7年度に従前の生活・地域流動研究を包含して創設された。このうち,地域先導研究は地方公共団体から課題提案されるもので,1課題を実施した。また,生活者ニーズ対応研究では水質汚濁削減に関する2課題を開始した。

 以上の振興調整費に加え,原子力試験研究費により環境対策(分解除去技術,影響解明,計測技術)に関する5課題を実施した。また,海洋開発及び地球科学技術調査研究促進費では衛星観測に用いる測定器の開発や地球温暖化に関する観測的研究の計4課題を行った。7年度からは重点研究支援協力員制度が開始され,高度な知識・技術を有する重点研究協力員を国立研究機関に配置し,創造的・基礎的研究の推進に資する。当研究所では,環境モニタリング手法開発のための基礎技術研究を遂行するための6名の支援協力員が手当された。

(うちやま ひろお,研究企画官)

課題一覧表