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地球にやさしい環境づくりの難しさ

ずいそう

李 進 (Lee Jin)

Lee Jinの写真

 ドイツの著名な科学者ワイツゼッカー(Weizsacker)は,21世紀は「環境の世紀」になると述べている。産業界でも,経済と環境(エコロジー)の統合なくして人類の存続はあり得ないという認識のもとに,「環境にやさしい市場づくり」を指向し,産業の構造転換を図る取り組みがすでに始まっている。これは,石炭,石油,エレクトロニクスに続く,第4の産業革命とさえ言われている。すでに,地球環境時代の幕は開けられたわけだ。

 私は,この国立環境研究所で,韓日の比較を中心に,経済と環境を統合した持続可能な発展に向けての環境政策のあり方を研究しているが,現在の日本の状況を見ていると,ほんとうに地球環境時代が前進しているのか,いささか疑問になってしまう。

 たとえば,熱帯林の減少・破壊は,それ自体が主要な地球環境問題であるとともに,地球規模の炭素循環の要であり,生物多様性維持の中心的な課題でもある。同時に,全く違う観点から,これは先住民族をはじめとする伝統社会の文化破壊の問題であるともいえる。

 しかし,この問題に対し,日本は全世界貿易量の三分の一に当たる22万トンものエビを年間輸入し,間接的に貴重な海岸生態系であるマングローブ林の破壊を進めている。さらに,世界貿易量の50%近い熱帯広葉樹丸太を輸入し,結果的に熱帯林伐採・減少を押し進めている。しかも日本では,これらのことを表面的な自然保護・資源保護をめぐる問題としたまま,裏面にある“貧困と環境破壊の悪循環的進行”,あるいは“地球環境に影響する国際的な商取引行為”という真の問題は問わないままにしている。70年代には,住民・地方自治体・企業,三位一体の血を流すような努力によって公害を克服した日本においてさえ,いまだ経済と環境を統合した上での政策論議には発展しそうにない。一次的な産業公害も解決できない我が韓国では,地球環境はまだまだ受動的な問題にとどまっている。

 あと5年もすると,「環境の世紀」と言われる21世紀に入る。しかし,こうした韓日の現状を考えると,地球にやさしい環境づくりは依然として遠くて難しい道のりなのかもしれない。

(りー じん,社会環境システム部客員研究員)

執筆者プロフィール:

(現)公州大学校教授(韓国忠南),(元)韓国環境部次官。〈専門〉地球環境論。〈趣味〉碁