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科学技術振興調整費による研究費目について(国立環境研究所における平成6年度の実施状況から)

青木 陽二

 科学技術庁は国立試験研究機関等に対して研究費の助成・配分を行っている。このための予算は原子力利用,科学技術振興調整,海洋開発・地球科学技術調査研究促進に大別される。このうち多くの研究者が関与している科学技術振興調整費(表2参照)の運用について紹介する。

 振興調整費は,我が国の科学技術に関する最高の審議機関である科学技術会議の総合調整機能を具現化するために昭和56年度に創設された制度であり,既存の研究体制の枠を越えた横断的・総合的な研究開発の推進を主たる目的としている。主な内容は,先端的・基礎的な研究の推進,複数機関の協力を要する研究開発の推進,産・学・官の有機的連携の強化,国際共同研究の推進,緊急に研究を行う必要が生じた場合の柔軟な対応,研究評価の実施と研究開発の調査・分析を基本として運用を目指すものである。研究制度として総合研究,人中心の基礎研究,国際研究交流,異分野交流研究の創出,重点基礎研究,研究情報整備・省際ネットワークの推進などがある。各制度ごとに課題提案及び選定,積算提出が異なり,研究所の対応も異なる(表1参照)。以下のような研究を実施した。

 総合研究は,基礎的・先導的科学技術分野あるいは生活・社会のための科学技術分野の研究開発を産学官の有機的連携の下で役割を分担しつつ,総合的に推進するものである。FS(課題検討調査研究)も含めて12課題を実施した。このうち,バイカル湖の底泥の研究については,当研究所が取りまとめて実施している。

 省際基礎研究は,研究リーダーを中心として,省庁の枠を越えかつ国際的にも人材を結集した研究グループを組織し,人中心の研究運営により基礎研究を推進するものである。海洋の炭素循環が終了し,エコビークル(電気自動車)の研究を実施中である。

 生活・地域流動研究は,地域の活性化に資する基礎的・先導的研究及び住民生活の向上に資するものである。地方公共団体より課題の提案があり,現在4課題を実施した。7年度からは生活・社会基盤研究と新規・改良された。

 個別重要国際共同は,科学技術協定等の国際約束に基づく2国間の共同研究である。3課題を実施した。

 重点基礎研究は,科学技術会議第18号の趣旨に基づき,革新的技術の創出の基盤となる基礎的・先導的研究を推進するものである。2課題を実施した。

 省際ネットワークは,平成6年度から始まり,研究機関,省庁,国の枠を超えて共同活動,学際的活動を支えるため,研究者間の情報流通のための基盤となる各種データベースの整備,研究情報ネットワークの整備を行うものである。ネットワーク経路制御と生体影響物質データベースに関する2つの研究課題を実施中である。

 このほか,効率的・効果的な国際交流の推進のための研究者等が直接意見交換を行うワークショップとして重点国際交流制度が実施されている。


(あおき ようじ,研究企画官)

表1  科学技術庁関連研究等の提案採択のスケジュール
表2  平成6年度国立環境研究所における科学技術庁関係研究一覧