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小さな実践の積み重ねの大切さ

巻頭言

全国公害研協議会会長 東京都環境科学研究所所長 土屋 隆夫

つちや  たかお の写真

 私たち地方自治体の環境・公害研究機関では,各地域の特性に応じた環境行政の推進に必要な科学的な知見や,問題解決のための技法を提供することを目的として,色々な調査・研究を行っております。

 東京都を含む大都市域では,窒素酸化物や浮遊粒子状物質による大気汚染,都市の熱汚染,生活排水による水質汚濁,生活騒音,廃棄冷蔵庫等に含まれるフロンの取り扱いなど,多くの共通した課題を抱えております。これらの課題を解決するためには,根本的な解決策を見いだすことが望まれますが,それと同時に,実情をよく把握した上で,すこしでも環境を改善する方策を実践することが大切です。

 実践の例として,私たちの研究所で行った自動車排出ガスの低減化研究の例を紹介します。

〔事例ー1〕停車時エンジン停止による低減化

(1)平成4年度に「アイドリングが一定時間経過したときはエンジンを停止させる」条件により,大型ディーゼル車8台を使って実験した結果,渋滞時の走行の場合,窒素酸化物排出量の約18%,燃料消費量の約16%が低減化できることを確認。
(2)自動車メーカーに停車時エンジン自動停止装置の開発を依頼,平成6年度の同装置を取り付けた都営バスを試験的に導入。
(3)試験運行の結果を踏まえて,平成7年度から都営バスに正式に導入を予定。

〔事例ー2〕LPGごみ収集車による低減化

(1)平成5年度にLPGを燃料として用いるごみ収集車について,ごみ収集車の走行パターン(清掃モード)で実験した結果,ディーゼル車に比較して窒素酸化物が96%低減化でき,黒煙及び粒子状物質はほとんど排出されないことを確認。
(2)この成果に基づいて,清掃局ではLPGごみ収集車11台を導入。

 このような小さな実践を積み重ねることが,環境改善にとって大切であると考えております。

(つちや たかお)