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PEM−West飛行機観測に参加して

研究ノート

酒巻 史郎

 1991年9〜10月にアメリカ航空宇宙局(NASA)によって西部太平洋探査計画(PEM−West)が実施された。これは地球環境の変動に及ぼす対流圏化学の役割を明らかにしようとする、地球規模での対流圏化学研究計画(Global Tropospheric Chemistry Program;GTCP)に基づくNASAの地球対流圏探査実験(Global Tropospheric Experiment;GTE)の一つで、主に西部太平洋地域の大気化学成分の動態解明を目的としたものである。このPEM-Westでは、NASAの大型観測飛行機DC-8による航空機観測と共に国際共同観測として日本、韓国、中国、台湾の各国研究者による協力を得て、これら各国での地上測定も同時に行い、各種大気微量成分の広域的な分布情報を得ることも試みられた。得られた結果についての総合的な解析は今後のデータ・ワークショップを待たなければならないが、ここでは私の参加した飛行機観測について簡単に紹介する。

 機上での観測項目は、表のように多岐にわたり、特に炭化水素、窒素酸化物、オゾンについては各々二つの研究グループによって重複して測定された。これまでの日本の小型飛行機を利用した飛行機観測ではとても考えられない、DIALやLIFのような大型測定装置を始め、様々な測定装置が機内に並ぶ様子は“空飛ぶ実験室”そのものであった。観測は、アメリカ西海岸−アンカレジ−日本−香港−グアム−ハワイ−西海岸の周回コース上と日本、香港とグアムを基地とするその周辺の飛行コース上で実施され、その延べ飛行観測時間は139時間に上った。私が参加したのは後者の3基地での8種の周辺飛行のみであったが、各飛行の事前のフライト・ミーティングや終了後のサイエンス・ミーティングにより飛行の目的を予め鮮明に打ち出し、その検証を直ちに行う姿勢が印象に残った。また、このDC-8のような大型機では高度150mから12kmまで三次元的に自由自在に観測ができることと事務局が非常にしっかりしていて研究者に雑用の負担を与えないことが極めてうらやましく思えた。

(さかまき ふみお、地球環境研究グループ温暖化現象解明研究チーム)

表  PEM-West飛行機測定項目