ヘッダーユーティリティメニュー

イベント情報、交通案内、サイトマップ、関連リンク、お問い合わせ・ご意見

グローバルナビゲーション


ホーム > 刊行物 > 国立環境研究所ニュース > 10巻 > 1号 (1991年4月発行) > ハーバードの無機的空間

ここからページ本文です

海外からのたより
ハーバードの無機的空間
柴田  康行

アメリカ最古の歴史を誇るハーバード大学は、マサチューセッツ州の州都ボストンと、チャールズ川対岸のケンブリッジの両市にまたがっている。ケンブリッジのハーバードヤード周辺やチャールズ川沿いのハーバードビジネススクールは豊かな緑に恵まれ、芝生に寝そべって本を読んだり議論にふけったり、といった、誰もが一度は夢見るようなキャンパス空間を満喫することができる。一方、私のいるボストンの医学部キャンパスの方は、唯一残されていた中心部の芝生も昨年後半から増築工事のため取り払われてしまった。このコンクリート造りの建物に取り囲まれた「無機的」な雰囲気の中で、日夜情熱的に研究が行われている。

この無機的な、しかしながら情熱的な空間の中心に、生物無機化学の総本山 Vallee 研究室がある。アルコール脱水素酵素やカルボキシペプチダーゼ等の金属酵素、あるいはメタロチオネインの研究で名高い当研究室では、 Bert L.Vallee 教授の指導のもとに、まだ原子吸光法もなかった時代から生体中の金属元素、特に亜鉛の研究が行われてきた。不破前所長が10数年にわたって分析化学者としての腕をふるわれた「青春の地」としてご記憶の方も多いことだろう。亜鉛酵素の数はすでに300種を超えたといわれるが、その増加のスピードはいまだ衰えを見せていない。また、最近では遺伝子発現の制御蛋白の中に数多くの亜鉛結合蛋白のあることが明らかになってきた。生化学、特に分子生物学の爆発的な進歩とともに、生物無機化学もまた、一挙に花を開こうとしているかのように思える。

重金属、とりわけカドミウムの毒性を、生体中で必須な働きを果たすこれら亜鉛酵素や亜鉛結合蛋白との関係という観点から見直してみたいというのが、今回の留学の大きな目的の一つであったが、私もどうやらこの無機的空間に魅了されてしまったようだ。残された2か月余りを有意義に使いながら、この魅力的な空間の一部でも日本に持ち帰りたいものだと考えている。

(しばた  やすゆき、化学環境部動態化学研究室)

写真

サブナビゲーション



フッターユーティリティメニュー