1.大気有害化学物質監視用自動連続多成分同時計測センサー技術の開発に関する研究
〔担当者〕
| 化 学 環 境 部 |
: |
中杉修身・相馬悠子・横内陽子・白石寛明 |
| 地域環境研究グループ |
: |
森田昌敏・田邊 潔 |
〔期 間〕
平成9〜11年度(1997〜1999年度)
〔目 的〕
大気汚染防止法の改正によって有害大気汚染物質に関する汚染・暴露の実態把握とリスクアセスメントに基づく対策が体系的に開始された。大気中からはこれまで数千に上る化学物質が検出されているが,毒性等の既存の知見に基づいて234の有害大気汚染物質に該当する可能性のある物質(候補物質)が選び出され,プライオリティーが高いと判断された22が優先取組物質,直ちに何等かの対策が必要と判断された4つが指定物質とされ,モニタリング,排出抑制などが行われることになった。優先取組物質(指定物質を含む)については地方自治体を中心としたモニタリング体制がしかれ,定量的リスクアセスメントに耐えるデータの収集が開始されたが,国がモニタリングを担当する候補物質については,その物質数の多さ,多様さ及び測定法の不備などの問題に直面している。また,優先取組物質のモニタリングにおいても,現行の手分析法による間欠的なモニタリングは,測定値の代表性が不確実である,労力・手間などの負担が大きいなどの問題を抱えている。
そこで本研究では,より多くの有害大気汚染物質を自動連続モニタリングする技術を開発し,@労力・手間のかからないモニタリング,A連続モニタリングによる汚染の詳細の把握に基づく現行モニタリングの信頼性の評価とより一層の最適化,Bより多くの有害大気汚染物質に関するデータの収集などを実現し,有害大気汚染物質対策に資することを目的とする。
〔内 容〕
本研究では,自動連続多成分同時計測システムを,@設計及びパーツ開発,A各部性能試験,Bシステムとしての自動プログラム運転化,Cフィールド試験及び改良,Dデータ処理支援システムの開発の流れで作製するとともに,補完的な「自動サンプリング→実験室での自動分析」について検討する。また,可能な限りフィールドデータを収集し,適切なモニタリング体制の検討や,リスクレベルのスクリーニングを行う。
本年度は,主に自動計測システム作製の@〜Bを行った。まず,有害大気汚染候補物質の大半を占めながら,汚染に関する知見が乏しい揮発性及び半揮発性物質を主な計測対象とすることにした。試料捕集は,自動化及び多成分化が容易で分析時にフレキシビリティーがあるキャニスター捕集を中心に,高感度が得られる吸着捕集(加熱脱離)を組み合わせて行うことにした。分析は,高感度,高選択性,汎用性を兼ね備えたGC/MSで行うことにした。これらの基本方針に沿って,優先取組物質の手分析法,米国EPAのTO-14,15,17などを考慮しつつ,自動連続多成分同時計測システムを設計,試作した。多成分への拡張の検討を兼ねて,市販標準ガス(TO-14+α=45成分)を用いて,キャニスター捕集,試料導入,分析に係る各パーツの性能試験を行ない,数十成分をppt〜ppbレベルで自動測定可能であることを確認した。
今後,簡単なフィールド試験で感度が不十分な物質を確認し,吸着捕集の組合わせを検討した上で自動計測システム作製のC,Dに進む予定である。また,自動計測システムがかなりでき上がってきたため,補完的な「自動サンプリング→実験室での自動分析」を始める予定である。
〔成 果〕
図1に設計,製作したシステムの構成と特徴を示す。図2の容器捕集・クリーンアップ系は,2本のステンレスキャニスター(3.5l)を有し,一方にポンプで毎分50〜2ml/分,2〜24時間加圧採取(2気圧)する間に,もう一方の分析及び過熱下(50℃)での加湿ゼロガスによるクリーンアップ(加圧と真空排気を繰り返す)を行うようになっており,2〜24時間ずつ交互に連続モニタリングができる。キャニスター中での標準ガスの保存性(1日)及び回収率は,検討した45物質のほとんどについて90〜110%の範囲にあり,3回の加圧・排気によって検出下限以下(pptレベル以下,2ppb標準ガスで試験)にクリーンアップできることを確認した。吸着捕集系は,2本の捕集管を有し,一方にポンプで100〜10ml/分,2〜24時間吸着捕集する間に,もう一方の加熱脱離(He25ml/分,250℃,10分間),分析,クリーンアップを行うようになっており,やはり2〜24時間ずつ交互に連続モニタリングができる。吸着捕集は容器捕集で感度が不十分な物質をターゲットに今後検討を行うが,採取空気量を少なめにしてカラムの過負荷を防ぎ,捕集管を大
きめにして破過に対応する設計となっている。試料導入系は,市販のGC用気体試料濃縮導入装置をGC/MS用に内標準を添加できるよう改良したもので,数十〜数百mlの気体試料をキャピラリーカラムの分離能を損なわずにGC/MSに導入することができる。容器捕集・クリーンアップ系→試料導入系→GC/MSのシステム運転による標準ガスのクロマトグラムを図3に示す。分離は良好で,検量線も2〜3の物質を除いて定量下限〜ppbレベルまで良好な直線性を示した。また,くり返し測定の再現性も,2〜3の物質を除いて変動係数10%以内と良好であった。また,自動連続で30回程度の測定を行い,安定に動作することを確認した。装置の設計,作製及び主要部分の基本性能の確認が終了したため,フィールド試験などの次の段階に進む予定である。
〔発 表〕D-17,b-133,134