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環境研究総合推進費による研究(地球環境研究)
11.課題検討調査研究
(1)持続可能な都市の発展に関する予備的研究
〔担当者〕
〔目 的〕
今後大きな変化を見せるであろうアジアの都市を対象に,それぞれの都市がたどってきた発展を各種の指標で分析し,「都市の進化」についてのセオリーを構築することを目的として,データの収集・整理を行う。また,持続可能性と均衡性を考慮した都市の発展パターン及びそのための援助政策のあり方の提示を試みる。
課題検討調査研究としての本年度研究は2つの側面を有している。1つは本課題(次期)での実行を念頭に置く「都市の進化論」の構築に向けた基礎資料の収集と,それに先立つアジアの大都市における問題点の整理である。一般に,アジアの都市における環境測定の歴史は浅く,長期間さかのぼって定量的に解析することが不可能な地域が多い。そのような状況のもとで,可能な限りの情報を効率よく収集し,環境改善計画に活用するかは大きな課題である。そしてもう1つは,場所を問わずアジア(あるいは世界)の各都市に適用可能な都市の発展段階の定量化手法の開発である。ここではリモートセンシングから得られる情報を地理情報システム上で行政界単位に集計し,既存統計資料の代替とする手法について検討する。
〔内 容〕
1)アジアの大都市における問題点の把握と環境データセットの構築
アジアの大都市における環境改善計画の立案に向けた問題点の把握と,「都市の進化」を記述するためのデータセットの構築(項目の検討自身も含む)のため,ジョグジャカルタ(インドネシア),ダッカ(バンクラデシュ),
台北(台湾),昆明(中国)の4地域における現地調査を実施した。アジアの4地域における現地調査の結果,地理情報システム用の各種デジタルデータ(ジョグジャカルタなど)が加工されたほか,それぞれの都市に特有の問題点が描き出された。
2)世界各国の都市に適用可能な都市の発展段階の定量化手法の開発
都市の発展段階を統計データの有無にかかわらず評価するため,リモートセンシングを応用した2つの手法,@ステレオ衛星画像による都市内インフラストラクチュア蓄積状況の定量化,及びADMSPの夜間光強度データによる都市活動の定量化,の適用可能性を検討した。このうちAについては一定の有効性が検証された。米国の軍事気象衛星により得られた夜間光強度データ(DMSP)を用いて,経済活動の活発な地域ほど夜間の光強度が強いとの仮定のもとに,光強度とマクロ経済指標との整合性を検証した。光強度と光表面積の積を光総量と定義する。アジアの20カ国(国単位の集計データ)を対象とした解析の結果,光面積で正規化した場合は両者の関係は対数曲線で表現され,1千万$/q2までは経済活動が活発になるにつれ明るさを増していく。こうした手法を用いれば統計データの有無にかかわらず,シームレスに経済活動の分布をとらえることが可能であると思われる。
[発 表]I-3,i-6
(2)地球環境リスクマネージメントのあり方に関する予備的研究
〔担当者〕
| 地球環境研究グループ |
: |
西岡秀三 |
| 地域環境研究グループ |
: |
兜 眞徳・植弘崇嗣・森口祐一・松橋啓介 |
| 社会環境システム部 |
: |
大井紘・山形与志樹・川島康子 |
| 水土壌圏環境部 |
: |
大坪国順 |
| 地球環境研究センター |
: |
福渡 潔 |
〔目 的〕
本研究課題検討調査研究は,我が国においては未だ馴染みの薄い「リスクマネジメント」概念を環境リスク対策の中に位置付け,今後の環境政策検討の場面に対して着眼点を提供するための研究の立ち上げを目指すものである。
課題検討調査研究であるので,次年度以降の本格的研究立ち上げに向かって,研究課題の選定,体制作りに必要な以下の作業を行った。
1)地球環境リスクの国外研究動向調査
国外の学会への出席や文献調査を通じて,欧米諸国における地球環境リスク関連研究動向を調査し,研究の進捗状況,研究成果および今後の研究課題の整理を行った。
2)検討会方式による予備的事例研究
オゾン層の破壊と地球温暖化問題に対して,問題の発生から対応決定プロセスまでの過程を,既存文献を基に地球環境リスクマネージメントの切り口で整理した。
3)国内検討会と国際ミニワークショップの開催
グローバルリスク検討会を設置し,複数回の会合を通じて,国内の研究動向,今後の研究方向について意見を集約した。同時に,欧米の環境リスクに関する第一線の研究者を交えた国際ミニワークショップを開催し,研究動向・今後の研究の方向について意見交換を行った。
〔内 容〕
1)地球環境リスクの国内外研究動向調査
米国への訪問調査と文献調査の結果,欧米では地球環境リスクと銘打った研究はほとんど見あたらないことが明らかとなった。米国では,地球環境リスクは環境リスク全般の中での一つのカテゴリーとしてとらえられており,リスク認識度は相対的に低い。その一因として,地球環境リスクのアセスメント手法が確立されておらず,費用便益が適切に見積られていないためと考えられる。欧州では,リスクマネージメントとしては,放射性物質や有害化学物質に関する問題がより重大視されている。
一方,我が国においては,環境リスクに対する全般的な取り組みは欧米に比べてかなり遅れている一方で,地球環境問題をリスク問題としてとらえようという意識は欧米より高いことがわかった。ただし,地球環境問題は現象,影響の範囲・程度において不確実性が非常に大きいため,有効なリスクアセスメント手法の模索の段階にとどまっている。
2)国内検討会による研究立ち上げに関する問題点の整理
国内検討会を通じて以下の論点が浮き彫りにされた。
@地球環境リスクの総合的指標の可能性
・リスクの指標化は可能か?
・不確実性が大きすぎる中で貨幣的価値評価が可能か?
・リスクに対する積み上げ方式評価と専門家等によるアセスメント評価の大きな格差をどのように埋めるか?
A地球環境リスク問題への有効なアプローチ手法
・独自の方法論はあるか?むしろ科学情報の質の管理手法と捉えるべきではないか。
・そもそもリスクの問題を科学で扱えるか?
・地球環境リスクアセスメントにコスト・ベネフィット分析手法等の定量的リスク評価手法が有効か?
B環境保全と開発というトレード・オフの問題にリスクアプローチがどれだけ有効か?
C環境リスクに対する対応策として保険の選択肢はあるか?
D地球環境リスクマネージメントとその他の環境リスクマネージメントの関係はどうか?
これらの論点の中に地球環境リスクに係わる研究課題が凝縮していると考えられる。
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