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経常研究


生物圏環境部


研究課題 1)富栄養湖沼における藻類毒の挙動に関する研究
〔担当者〕 渡邉 信・広木幹也・彼谷邦光*1・佐野友春*1・稲森悠平*2(*1化学環境部, *2地域環境研究グループ)
〔期 間〕 平成7〜11年度(1995〜1999年度)
〔目 的〕 本研究は,有毒藻類の分解過程と有毒藻類が産生する毒素の同定を行うとともに,環境水中に最も高濃度に存在する毒素ミクロシスチンの自然界での挙動を有毒藻類の分解・捕食過程を踏まえて明らかにすることを目的とする。
〔内 容〕 本年度は有毒アオコの代表的な種であるMicrocystisを捕食する無色のベン毛藻類であるAulacomonasとCollodictyonを分離培養することができた。特に単細胞性ベン毛藻類AulacomonasはMicrocystisの水の華中によくみられ,Microcystisのコロニーを捕食する。その場合に,Aulacomonasの細胞が互いに融合し,巨大な細胞塊となってMicrocystisのコロニーを分解し,捕食することが判明した。AulacomonasやCollodictyonとも無色で2本あるいは4本のベン毛をもつ生物であるが,両者とも緑藻の色素のないものと判断されていたが,分子系統学的解析により,両者とも真核生物の原始的な系統に属する生物であることがわかった。
〔発 表〕 D-1,5,6,H-17,d-4

研究課題 2)微生物の多様性に関する研究
〔担当者〕 渡邉 信・広木幹也
〔期 間〕 平成6〜10年度(1994〜1998年度)
〔目 的〕 本研究は,微細藻類及び土壌微生物における種レベル及び遺伝子レベルでの多様性を明らかにする手法を開発し,その実体を明らかにするとともに,その長期的保存法を確立することを目的とする。
〔内 容〕 本年度は淡水産浮遊性シアノバクテリアであるMicrocystisの形態種5種50株について,16S rRNA塩基配列情報及び23 S-16S rRNA ITSの塩基配列情報の解析を行い,種及び遺伝子レベルでの多様性解析を行った。形態種5種は群体の形状によりM. aeruginosa, M.viridis,M.wesenbergii,M.ichtyioblabe,M.novacekii の5種類に区別されているが,それら5種を含む50株は16S rRNA塩基配列情報において99.7%以上の類似性を示したことから同種と考えられた。また,23 S-16S rRNA ITSの塩基配列情報の解析結果,3つの遺伝的グループに区別され,毒素の有無と対応していた。3つの遺伝的グループは形態種と必ずしも対応していなかった。
〔発 表〕 H-18,19

研究課題 3)緊急に保護を必要とする車軸藻類の分布と培養の研究
〔担当者〕 渡邉 信・野原精一
〔期 間〕 平成6〜10年度(1994〜1998年度)
〔目 的〕 本研究は,車軸藻類の現段階での分布を明らかにし,過去のデータと比較して車軸藻類の客観的な現状を明らかにするとともに,絶滅の危機に瀕する車軸藻類を分離培養し,培養下での保全を行うことを目的とする。
〔内 容〕 本年度まで38湖沼での調査を完了し,そのうち26湖沼で車軸藻類は消滅し,残りの12湖沼でもわずか1〜3種類の車軸藻類が確認されただけであった。過去に報告された30種類のうち,5種類が絶滅,1種類が野生絶滅,24種類が絶滅危惧T類種と判断された。生息域外保全のために,できるだけ多くの種の培養をこころみた結果,ホシツリモ,カタシャジクモ,シャジクモ,イノカシラフラスコモ,シラタマモ,ヒメフラスコモの培養に成功した。特に,ホシツリモについては,雄生生殖器官の誘導に成功し,精巣の発達,精子の放出過程を観察することができた。
〔発 表〕 H-20

研究課題 4)植物の生理生態機能の画像診断法に関する研究
〔担当者〕 大政謙次・戸部和夫
〔期 間〕 平成7〜11年度(1995〜1999年度)
〔目 的〕 植物の生理生態機能(光合成,蒸散,含有成分,生物季節等)を非破壊で画像計測し,診断する手法の開発を行う。さらに,開発した手法を用いて,植物の生長過程や環境変化に対する影響を調べる。
〔内 容〕 植物形態や生長の3次元計測を目的として,昨年開発した3次元カラー光学顕微鏡システムを改良し,細胞の計測や実生の生長計測を行った。また,パソコン制御のカラーCCDカメラを用いた可搬型の3次元計測システムを開発し,植物および群落の計測に適用した。一般に,レンズ焦点法の原理に基づく計測法では,比較的近距離の計測は可能であるが,数m以上の距離での計測は困難であるといわれている。しかし,このシステムを用いて性能試験を行ったところ,70m程度の被写体まで,3%前後の誤差で計測することができた。
〔発 表〕 H-4,5

研究課題 5)中国の半乾燥地域に生育する植物の生理生態機能に関する研究
〔担当者〕 大政謙次・戸部和夫
〔期 間〕 平成7〜11年度(1995〜1999年度)
〔目 的〕 中国の半乾燥地域に生育している植物の生命維持機構や砂漠化による植生破壊を回復させるための基礎的知見を得るために,植物実験施設を用いて,これらの植物の種子発芽や耐乾性,耐塩性などの生理生態機能を明らかにする。また,現地で採取した植物の系統保存や実験植物化の技術についても検討する。
〔内 容〕 土壌の塩性化した地域に非塩性地域に生育する植物を導入することによる塩性化地域の緑化の可能性を検討するため,非塩性地域に生育する植物5種の初期生長に及ぼす塩の影響を調べた。その結果,これらの非塩性地域に生育する5植物種は,初期生長段階での塩適応性が大幅に異なっていることが明らかとなった。さらに,これらのうち1種の植物種は,高い塩適応性を示し,塩性地域への導入の可能性をもつことが示唆された。
〔発 表〕 H-11,h-15,17

研究課題 6)高山域に分布する植物の環境適応性に関する研究
〔担当者〕 名取俊樹
〔期 間〕 平成7〜11年度(1995〜1999年度)
〔目 的〕 種々の人間活動の影響が環境条件が厳しい高山域に生育する植物に現れ始めていると考えられているものの,その影響や発現メカニズムなどは十分把握されていない。そこで,高山域に分布する植物について基礎的知見を得る目的で,本研究を行っている。
〔内 容〕 分布が高山域(富士山ではおおよそ2500m以上)に限られているオンタデを低地(国立環境研究所実験ほ場 おおよそ20m)で4年間ポット栽培した。その結果,多少フェノロジ−が変化するものの,特別な栽培管理(発芽直後の潅水や施肥またポット内の除草を除く)なしに野外で生育し,昨年からは,少量であるが種子も付け始め,オンタデ(個体)は,種の分布より広い環境条件で生育可能であることがわかった。
〔発 表〕 H-13

研究課題 7)温帯林野生植物の環境反応性に関する研究
〔担当者〕 清水英幸
〔期 間〕 平成7〜11年度(1995〜1999年度)
〔目 的〕 地球環境変動等の自然生態系への影響が懸念されているが,蘚苔類等の体制の単純な植物は種々の環境要因の影響を受けやすく,環境影響評価の植物指標として有用である。本研究では,奥日光地域を主な対象地域とし,野生植物の生理活性や生長など生理生態的特性と環境要因との関係を調査解析する。また,野生植物の環境反応性を実験的に解析し,環境指標としての有用性について検討する。
〔内 容〕 奥日光森林地域の微環境の異なる数地点に設置した倒木コドラート上の植生遷移を継続的に調査した。比較的水分環境が十分な地点では,本森林地域林床植生の主要な構成要素の一つであるコツボゴケ(Plagiomnium acutum)等の蘚苔類が優先していた。コツボゴケの生長特性を,環境調節装置を用いて実験的に検討した結果,光強度:40〜140μE/m2/sec,温度:15〜25℃,相対湿度:100%の環境条件下で最大の生長量を示した。
〔発 表〕 h-9

研究課題 8)撹乱された移行帯生態系の修復過程に関する研究
〔担当者〕 野原精一・矢部 徹・佐竹 潔*1・上野隆平(*1地球環境研究グループ)
〔期 間〕 平成9〜12年度(1997〜2000年度)
〔目 的〕 人為的栄養塩負荷の解消のために行われた奥日光・湯の湖の浚渫事業が1996年に終了した。ところが浚渫によっていかに損なわれ再び回復し,元の水草帯に生態系が回復するかという浚渫の生態系影響の事後評価が十分ではない。また,尾瀬沼に1980年代に繁茂した帰化植物コカナダモが,近年忽然と大部分の純群落が消え,移行帯の砂漠化が見いだされた。そこで,撹乱された湖沼移行帯に今後シャジクモ等がいかに回復し,元の生態系に復元するかモニターを行い,シャジクモ等の回復に必要な条件を見いだすことを目的とする。
〔内 容〕 次の視点(物質生産・生物多様性)からの移行帯の種・生態的多様性の回復過程を把握し,移行帯生態系の維持に不可欠な要因の解明を行った。とくに,環境変動の著しく,シャジクモ類の残存している湯の湖・尾瀬沼で水草帯の回復を明らかにする研究を継続的に行った。また,水草帯の現況調査を主要湖沼について行い,減少要因の把握を行った。  尾瀬沼での水草帯の分布調査をGPS測位機を用いて詳細に行い,各種水生植物の分布を明らかにした。その結果,在来の種の分布が面積は縮小しているもののほぼ同じ位置に存在が確認された。帰化種であるコカナダモは生育場所は余り変わらないものの,現存量は各地点で変異が認められ,全体では衰退傾向にあることが認められた。
〔発 表〕 H-16

研究課題 9)環境指標生物としてのホタルの現況とその保全に関する研究
〔担当者〕 宮下 衛
〔期 間〕 平成8〜11年度(1996〜1999年度)
〔目 的〕 豊かな自然環境,うるおいのある自然環境の指標として親しまれているホタルおよびホタルを含めた絶滅のおそれのある生物の生息する自然環境の保全と再生について調査研究することを目的とする。
〔内 容〕 筑波山麓のゲンジボタルの生息する渓流・中沢において,ゲンジボタル幼虫の上陸地点と河川形態,護岸の種類,低水敷の有無,周辺植生との関係を調べた。その結果,幼虫の上陸は瀬よりも淵や淀みで多い傾向が認められた。また,羽化トラップを設置して成虫の採集を試みた。その結果,低水敷,空石積や土羽の護岸,および護岸上の法面からの成虫の羽化が見られ,羽化トラップがゲンジボタルの生息環境の評価に有効であることが確認された。
〔発 表〕

研究課題 10)河川及びその集水域の周辺環境と底生動物群集に関する研究
〔担当者〕 佐竹 潔・多田 満
〔期 間〕 平成7〜9年度(1995〜1997年度)
〔目 的〕 河川における底生成物群集は様々な形でそれを取り巻いている周辺環境に依存していると考えられているが,それらの関係についてはまだ十分解明されたとは言えない。本研究では山地渓流において底生動物群集とその取り巻く環境との関係について研究を行う。
〔内 容〕 河川における底生動物群集は様々な形でその周辺環境に依存していると考えられる。本年度は,源流域から河口までの流程が数キロメートルに満たない島嶼の河川において底生動物を採集を行った。調査河川の中で,海水の入り込まない流程が最も短いものはわずか100メートルであったが,そのような環境でも,汽水域の生物に混じって,ユスリカ,ブユの仲間やヒメトビケラの1種を得ることができた。これらの種類が個体群を維持する機構については,解明されていない部分が多く,今後さらに研究する必要がある。
〔発 表〕

研究課題 11)湖沼沿岸帯に生息する底生生物の生息環境に関する研究
〔担当者〕 上野隆平・高村典子
〔期 間〕 平成7〜11年度(1995〜1999年度)
〔目 的〕 水草帯などの湖沼沿岸帯の保全のためには,種間関係などの生物学的な環境構造を把握することが不可欠である。しかし,無脊椎動物など小型の生物,特に底生生物の生態については不明な部分が多い。本研究では,湖沼沿岸帯の底生生物の生息環境の基礎的なデータを蓄積することを目的とする。
〔内 容〕 研究所内にある生態園実験池の水草帯において底生動物の生息場所および餌の選好性を調べるため,水草の付着物・底質から底生動物の採集を行った。本年度は先の2年間に比べ7月から1月まで水位の低下が見られた。特に11〜12月には通常の採集地点のいくつかが干上がり,水草の付着動物は採集されなかった。この時期,水位がある程度保たれた地点でも付着動物相は先の2年間とは異なっていた。ユスリカ類の個体数が多いことは変わらなかったが,そのうち,ユスリカ亜科の幼虫の個体数は減少し,エリユスリカ亜科の幼虫は増加した。また,先の2年間は3〜4月にユスリカ亜科幼虫の増加が見られていたが,今年の3〜4月は水位が回復したにもかかわらずユスリカ亜科の増加が見られなかった。
〔発 表〕

研究課題 12)植物の新しい活性酸素毒性防御遺伝子のクローニングとその発現機構の解明
〔担当者〕 佐治 光・久保明弘・青野光子
〔期 間〕 平成5〜9年度(1993〜1997年度)
〔目 的〕 様々な環境ストレスにより,植物体内で有毒な活性酸素が生成し,植物に障害を与える。植物は活性酸素を消去する代謝系を持っているが,この代謝系は植物の環境ストレス耐性に密接に関連することが知られている。本研究では,植物の活性酸素消去系を解明し,環境ストレス耐性における役割を明確にするため,新規の活性酸素毒性防御遺伝子の単離と,その発現機構の解明を目的とする。
〔内 容〕 本年度得られた主な成果は次のとおりである。 (1)シロイヌナズナの葉緑体型グルタチオンレダクターゼ(GR)の遺伝子構造を解明した結果,調節領域に環境応答のための塩基配列が存在することが示唆された。 (2)複数の活性酸素消去系酵素の活性を高めた形質転換タバコを作成したところ,アスコルビン酸ペルオキシダーゼ(APX)とGRの活性をともに増加させたタバコで,オゾンによる光合成の低下が抑えられることがわかった。
〔発 表〕 H-1,2,8,h-1,2,7,8

研究課題 13)河川底生生物群集に及ぼす化学物質の影響
〔担当者〕 多田 満
〔期 間〕 平成9〜11年度(1997〜1999年度)
〔目 的〕 河川は多種多様な化学物質で汚染されているが,それらの環境中での動態や生態系影響に関する知見は限られた範囲にとどまっている。これまでの研究から化学物質は致死濃度以下のレベルでも生物相互作用系を撹乱し,生態系に予測し難い間接的影響を及ぼすことが明らかになってきた。本研究ではこれまでのデータに基づき化学物質による底生生物群集の挙動を統合的な解析手法により明らかにする。
〔内 容〕 これまでに化学物質は致死濃度以下のレベルでも生物相互作用系を撹乱し,生態系に予測し難い間接的影響を及ぼすことが知られているが,本研究では実験的な研究に用いることが困難とされてきた河川の流水性昆虫を対象に化学物質(殺虫剤)の影響を調べた。鬼怒川と小桜川(茨城県八郷町)で採集したカゲロウ類幼虫(個体群)とシマトビケラ,それらの捕食者である大型カワゲラ類とヘビトンボを室内用実験水路に放し,フェノブカルブ(殺虫剤)を10〜160μg/lの濃度で投与してその生死についてLC50(半数致死濃度)を調べた。その結果,河川で優占したカゲロウ類LC50は2〜40μg/lであったが,種類と生息場所によって違いが見られた。また,シマトビケラとヘビトンボは非常に感受性は低かったが(LC50>160μg/l),一方の捕食者である大型カワゲラ類は24μg/lであった。以上の結果から化学物質は河川の水生昆虫に対して生息場所をめぐる種間の関係や捕食・被食関係に影響を及ぼすことが示唆された。
〔発 表〕 h-11〜14

研究課題 14)浅水域に生育する大型植物の個体群動態評価手法に関する研究
〔担当者〕 矢部 徹
〔期 間〕 平成9〜12年度(1997〜2000年度)
〔目 的〕 重油や原油の流出事故は潮間帯など浅海域の生物相に重大な影響を及ぼす。生物影響をバイオマスなど量的指標をもちいて評価する際に,それら量的指標は通常期においても変動が大きく非定常的なため,流出事故の影響によるものかどうかが識別しにくいことが問題とされている。本研究では潮間帯や干潟をはじめ浅水域の大型植物の様々な個体群動態から定常的な量的指標の抽出や非定常的変動の把握などを行う。
〔内 容〕 海草藻場にはその構成種や立地に応じて様々なタイプが存在する。それら多様な海草藻場の現状調査を行った。  東京湾内では現在も残存する海草藻場(三浦半島・富津干潟・盤洲干潟・館山海岸)を明らかにした。そこでは泥干潟や砂浜海岸域に形成されるコアマモ・アマモ・ウミヒルモの藻場を調査した。沖縄・先島諸島(宮古島・西表島・石垣島)には我が国で最もよく発達した藻場がみられる。発達した礁原上に形成されるコアマモ・リュウキュウスガモ・リュウキュウアマモ・ベニアマモ・ウミジグサ・マツバウミジグサ・ウミヒルモの藻場の基礎代謝や現存量を調査した。汽水湖である中海および外海に開口する境水道においてはコアマモ・アマモ・カワツルモの藻場を調査し,塩分濃度の関係について各藻場の規模や海藻類を含む構成種を調査した。  現在までのところ各種のフェノロジーに水域間の大きな差は見られないことがわかった。冬季の訪鳥による食害が植物体のサイズやバイオマスの差を生む要因の一つであることを予測させるデータが得られた。同時に冬季の訪鳥は分布拡大にも大きな影響を与えるとされている。またコアマモやウミヒルモなど広範な塩分濃度に適応している種では,有性生殖や種子発芽に必要な条件と無性生殖や個体維持に必要な条件が異なるのではないか,という予測がされた。
〔発 表〕 h-25

研究課題 15)富栄養化湖沼における藍藻溶解性細菌類の多様性に関する研究(奨励研究A)
〔担当者〕 広木幹也
〔期 間〕 平成9年度(1997年度)
〔目 的〕 富栄養化湖沼では藍藻類の大量発生が大きな環境問題となっているが,環境中にはこれらの藻類を分解する各種の微生物群が存在することが知られている。本研究においては,富栄養化湖沼で発生する藍藻類の動態に深くかかわっている可能性のある藍藻溶解性細菌類を単離し,分類・同定を行うことにより,これらの細菌類の分布と多様性(種構成)を明らかにすることを目的とした。
〔内 容〕 日本,タイ,中国の湖沼水から,Microcystis aeruginosaを含んだ重層寒天平板法により藍藻溶解性細菌の分離を試み,29株の藍藻溶解性細菌を単離した。 単離した細菌類のうち20株でOscillatoria agardhiiに対する分解活性が認められたが,9株では分解活性は認められず,株により基質特異性が異なった。これらの細菌のGC含量は高く(60〜70%),他の形質も滑走細菌類(Lysobacterium属またはMyxobacterium属)のものと一致した。
〔発 表〕

研究課題 16)ヒヌマイトトンボの生息環境とその保全に関する研究(奨励研究A)
〔担当者〕 宮下 衛
〔期 間〕 平成9年度(1997年度)
〔目 的〕 絶滅危惧種ヒヌマイトトンボは,河口近くの汽水域のヨシ原に生息するため,汚染や河川改修などにより絶滅の危機にさらされているが,その生態や生息環境についてはほとんど知られていない。そのような背景に基づき,本種の生息に必要な環境条件を解明し,生息環境の保全・回復をはかるための調査研究を行うことを目的とする。
〔内 容〕 絶滅危惧種ヒヌマイトトンボの成長について15,23,30℃の実験室で調べた。30℃では卵期間は9日間で,幼虫期間は約4カ月であった。ヒヌマイトトンボと競争種のアオモンイトトンボ幼虫の塩分耐性について調べた。ヒヌマイトトンボ1齢幼虫の96時間半数致死濃度は塩分濃度0.96%,アオモンイトトンボのそれは0.06%以下であった。しかし,幼虫の塩分耐性は成長するに従って高くなり,両種の終齢幼虫は海水の塩分濃度3.8%でも死なないことがわかった。また,ヒヌマイトトンボが生存に不利な汽水環境で生息し得たのは,共食いも餌の奪い合いもしないという種としての特性があったからと推測された。
〔発 表〕

研究課題 17)遺伝子組換え生物を用いた環境変異原のモニタリング手法の開発(奨励研究B)
〔担当者〕 佐治 光・青木康展*1・矢木修身*2(*1環境健康部,*2地域環境研究グループ)
〔期 間〕 平成9年度(1997年度)
〔目 的〕 人間活動の多様化に伴い,環境中の有害物の種類と量は年々増加している。しかしそれらの物質が総体として,生体にどのような影響を与えるかは十分に解明されておらず,その評価手法の開発が求められている。紫外線や化学物質は様々な有害作用を有するが,モニタリングを行うに当たっては,まず突然変異やがんの原因になる機構が明らかにされている「変異原性」の評価手法を確立することが重要である。さらに,動植物への影響を評価するためには,培養細胞だけではなく,個体を利用した手法を開発する必要がある。  このような,環境因子により生体内で起こる遺伝子の変異を直接的に調べる手法として遺伝子工学は有効な技術であり,本研究では,変異原検出用ベクターDNAを導入した魚,植物,細菌などの作成を試みる。そしてこれらの生物のそれぞれ水中,大気中,土壌中に存在する変異原物質の長期モニタリング用生物としての有効性を評価し,相互に比較する。
〔内 容〕 本研究で用いる手法の特徴は,種々の生物のゲノム中に導入した大腸菌由来のモニター遺伝子を,ゲノムDNAから切り出して大腸菌に回収し,形質転換する技術を確立した点にある。このモニター遺伝子としてはストレプトマイシン(Sm)感受性遺伝子(rpsL)を用い,ゲノムDNAから回収して大腸菌を形質転換する際のマーカー遺伝子として用いるカナマイシン(Km)耐性遺伝子とともにプラスミドベクター(pML4,pMG11)に組み込んで,生物に導入する。ベクターを回収する宿主の大腸菌としてはKm感受性でかつSm耐性の株(RR1)を選んだ。すると,ベクターが回収された大腸菌はKm耐性となり,Kmを含む寒天培地にコロニーを作る。このベクター中のrpsL遺伝子が野生型(正常)の場合,宿主の大腸菌はSm感受性となる。ところがrpsL遺伝子に変異が入ると,宿主の大腸菌はSm耐性となり,Smを含む寒天培地にコロニーを作る。したがってKm寒天培地に生えたコロニー数に対する,KmとSmを含む寒天培地に生えたコロニー数の割合をとれば,変異の発生頻度を算定できる。以上のような原理に基づく変異原モニタリング用組換え魚(ゼブラフ ィッシュ),植物(タバコあるいはシロイヌナズナ),微生物(土壌細菌)の開発を試みた。  ゼブラフィッシュでは,全身の細胞にpML4が遺伝子導入された魚が3系統得られている。これらの組換え魚の受精卵に変異原物質であるニトロソウレアを暴露した後,染色体DNAよりpML4を回収し,これを用いて大腸菌で変異を検出することが可能か否かを調べた。その結果,これらの組換え魚を用いて変異原性が検出できることがわかった。  一方,植物及び微生物においては,現在組換え体の作成を試みており,それらができしだい,同様の測定を行う予定である。これらの生物には,改良型のベクターであるpMG11を用いた遺伝子導入を試みている。
〔発 表〕 e-2

研究課題 18)移行帯としての湿地生態系の人為撹乱による変動とその管理手法に関する予備的研究(奨励研究B)
〔担当者〕 渡邉 信・野原精一・佐竹 潔・上野隆平・矢部 徹・広木幹也・清水英幸・春日清一*1・畠山成久*1・永田尚志*2 (*1地域環境研究グループ, *2地球環境研究グループ)
〔期 間〕 平成9年度(1997年度)
〔目 的〕 本研究では,人間活動や開発行為等に影響されやすい移行帯としての湿地生態系を対象とし,日本の主要な水草帯の現状と変動要因を把握するとともに,人間活動により,激しく撹乱された霞ヶ浦周辺,湯の湖,尾瀬,赤井谷地等の湿地生態系における生物環境の劣化及びその影響並びに回復過程を調査・解析し,湿地生態系管理のためのガイドラインを作成するための科学的知見を得ることを目的とする。
〔内 容〕 本研究では,人間活動が集中する代表的な湿地生態系を対象とし,(1)日本の代表的な湿地生態系の現状の把握から変動要因を解明し,(2)湿地生態系の生物環境劣化の機構とその影響を解析することで,湿地生態系の人為撹乱による生物相の変動機構の解明を行った。また,(3)湯の湖や尾瀬,赤井谷地の人為撹乱された湿地生態系の回復過程を調査することで,生態系回復抑制・阻害要因を解明した。さらに,(4)これらの知見を総合的に解析して,湿地生態系管理手法の開発,すなわち管理のためのガイドラインを作成するための科学的知見を提供した。
(1)日本全国の主な湿地生態系の生物多様性の現況を把握
 涛沸湖・サロマ湖・網走湖・塘路湖では絶滅危惧植物シャジクモの分布は確認されなかった。サロマ湖は汽水域から3%塩分の海水に近いため,シャジクモ類が存在できない物と考えられた。涛沸湖・網走湖・塘路湖は富栄養化のため透明度の低下に伴い,シャジクモが消滅したものと推測された。阿寒湖ではヒメフラスコモ・カタシャジクモが確認され比較的良い環境にあることが推測された。
(2)生態系の人為撹乱による生物相の変動機構の解明
 人為影響の大きい霞ヶ浦の湖岸帯での湿地の構造と水位変動の影響調査を実施した。1996年から夏季水位を上げたために,これまでより浅いところで波の浸食があり,植生帯が後退したことが確認された。富栄養化で衰退した沈水植物に加えて,水位の固定化による浸食が進み抽水植物帯まで衰退してきていることが明らかになった。植生帯の減少は魚類の産卵場所の減少となり,湖の魚類生産に影響を与えていることが示唆された。
(3)生物相の変動調査とその要因解析
 浚渫による生態系撹乱が底生生物相にどんな変動を与えたかを湯の湖で調査を実施した。底質のクロロフィル含量を浚渫前の1988年と比較したところ,湖心に近い場所で含量低下が認められた。底生生物組成は当時と変化しておらず生物多様性への影響は認められなかった。シャジクモ類は現存していたが,場所によっては撹乱により浚渫以前より回復していた。適度な撹乱が生物相を変化させた可能性が示唆された。
(4)湿地生態系管理手法の開発
 これらの知見を総合的に解析して,湿地生態系管理手法の開発,すなわち管理のためのガイドラインを作成するために,オランダと米国から湿地研究の第一任者を招へいした。湿地の機能評価の手法の導入と地質水文学的な湿地の分類を基にしたHGMモデルによる湿地の評価の検討がなされた。日本の代表的湿地における機能評価を4カ所で実施することやHGMモデルの日本への応用に関して検討を行った。
〔発 表〕 H-15,h-19,20

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