| 研究課題 |
17)遺伝子組換え生物を用いた環境変異原のモニタリング手法の開発(奨励研究B) |
| 〔担当者〕 |
佐治 光・青木康展*1・矢木修身*2(*1環境健康部,*2地域環境研究グループ) |
| 〔期 間〕 |
平成9年度(1997年度) |
| 〔目 的〕 |
人間活動の多様化に伴い,環境中の有害物の種類と量は年々増加している。しかしそれらの物質が総体として,生体にどのような影響を与えるかは十分に解明されておらず,その評価手法の開発が求められている。紫外線や化学物質は様々な有害作用を有するが,モニタリングを行うに当たっては,まず突然変異やがんの原因になる機構が明らかにされている「変異原性」の評価手法を確立することが重要である。さらに,動植物への影響を評価するためには,培養細胞だけではなく,個体を利用した手法を開発する必要がある。
このような,環境因子により生体内で起こる遺伝子の変異を直接的に調べる手法として遺伝子工学は有効な技術であり,本研究では,変異原検出用ベクターDNAを導入した魚,植物,細菌などの作成を試みる。そしてこれらの生物のそれぞれ水中,大気中,土壌中に存在する変異原物質の長期モニタリング用生物としての有効性を評価し,相互に比較する。
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| 〔内 容〕 |
本研究で用いる手法の特徴は,種々の生物のゲノム中に導入した大腸菌由来のモニター遺伝子を,ゲノムDNAから切り出して大腸菌に回収し,形質転換する技術を確立した点にある。このモニター遺伝子としてはストレプトマイシン(Sm)感受性遺伝子(rpsL)を用い,ゲノムDNAから回収して大腸菌を形質転換する際のマーカー遺伝子として用いるカナマイシン(Km)耐性遺伝子とともにプラスミドベクター(pML4,pMG11)に組み込んで,生物に導入する。ベクターを回収する宿主の大腸菌としてはKm感受性でかつSm耐性の株(RR1)を選んだ。すると,ベクターが回収された大腸菌はKm耐性となり,Kmを含む寒天培地にコロニーを作る。このベクター中のrpsL遺伝子が野生型(正常)の場合,宿主の大腸菌はSm感受性となる。ところがrpsL遺伝子に変異が入ると,宿主の大腸菌はSm耐性となり,Smを含む寒天培地にコロニーを作る。したがってKm寒天培地に生えたコロニー数に対する,KmとSmを含む寒天培地に生えたコロニー数の割合をとれば,変異の発生頻度を算定できる。以上のような原理に基づく変異原モニタリング用組換え魚(ゼブラフ
ィッシュ),植物(タバコあるいはシロイヌナズナ),微生物(土壌細菌)の開発を試みた。 ゼブラフィッシュでは,全身の細胞にpML4が遺伝子導入された魚が3系統得られている。これらの組換え魚の受精卵に変異原物質であるニトロソウレアを暴露した後,染色体DNAよりpML4を回収し,これを用いて大腸菌で変異を検出することが可能か否かを調べた。その結果,これらの組換え魚を用いて変異原性が検出できることがわかった。
一方,植物及び微生物においては,現在組換え体の作成を試みており,それらができしだい,同様の測定を行う予定である。これらの生物には,改良型のベクターであるpMG11を用いた遺伝子導入を試みている。
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| 〔発 表〕 |
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