ここからページ本文です
海洋開発および地球科学技術調査研究促進費による研究
| 〔担当者〕 | |
| 地域環境研究グループ |
: |
松重一夫・今井章雄・高村典子 |
〔期 間〕
平成7〜9年度(1995〜1997年度)
〔目 的〕
近年,多くの湖沼において,化学的酸素要求量(COD)濃度の増大傾向が観察されている。何らかの有機物が蓄積していると考えられる。本研究は,このような新しい水質汚濁現象を明らかにするために,湖沼内で増大している有機物の特性,湖沼における有機汚濁物質の動態を解明する新しい手法を開発することを目的とする。
〔内 容〕
琵琶湖北湖湖水および流入河川水を対象として,100日間生分解試験と3種類の樹脂を用いた溶存有機炭素(DOC)分画手法を適用し,湖水・河川水中の溶存有機物を易−難分解性,疎水性−親水性,酸性−塩基性の違いに基づいて分画した。琵琶湖北湖湖水および流入河川水ともに,DOC成分として有機酸(疎水性酸(フミン物質)+親水性酸)が卓越していた。湖水では親水性(フミン物質:25〜27%,親水性酸:40〜48%),河川水ではフミン物質の存在比が大きかった(フミン物質:37〜73%,親水性酸:23〜35%)。100日間生分解試験より,フミン物質はほとんど生分解しないことが確認されたが,親水性酸もかなりの部分は難分解性であることが明らかとなった。難分解性有機物=フミン物質という等式は崩れた。長期における連続測定が可能であるDO,pH,水温,電気伝導度を測定し,それらの変化量から,湖沼における一次生産を予測する手法を確立を目指した。本年度も,汽水湖である涸沼において本手法の検証を目的として,夏,秋,冬の計3回の連続測定を行った。同時に明・暗ボックスを用いた手法による一次生産測定も行った。1995〜97年の十和田湖沖の水質と生物の調査から,十和田湖の動物プランクトン群集は,ヒメマスとワカサギの漁獲量の変化に関連して変化することが明らかになった。つまり,ワカサギの漁獲量が高い年は動物プランクトン群集は,枝角類のBosmina
longirostrisや輪虫類が卓越するが,ヒメマスの漁獲量が高い年は,枝角類のDaphnia longispinaおよびカイアシ類のAcanthodiaptomus
pacificusの密度が高くなった。一方,植物プランクトン群集は捕食者である動物プランクトン群集の影響より,季節変化に伴う要因(例えば,水温,栄養塩等)により規定されていることが明らかになった。
〔発 表〕K-9,B-25,77,78,b-77,123,124,130〜132
〔担当者〕
|
| 地域環境研究グループ |
: |
西川雅高 |
| 化学環境部 |
: |
中杉修身・柴田康行 |
〔期 間〕
平成8〜10年度(1996〜1998年度)
〔目 的〕
近年,様々な有害物質による地下水汚染が顕在化し,その対策が緊急の課題となっている。一昨年に水環境基準項目,環境基準値の見直しや強化が行われて以来,ヒ素等の基準値を超える地下水汚染が,全国的に見つかっている。例えば,現在修復対策の始まっているトリクロロエチレン等でさえ水質環境基準不適合率は,当初3〜4%であったのに対し,ヒ素,ホウ素等によるその不適合率は環境庁の一次調査で既に10%を超えていることが明らかになっている。ヒ素等は,多価元素であり,その毒性や挙動は,存在形態によって異なることが知られている。また,処理技術の開発に当たっても,化学形態を考慮する必要があることは言うまでもないことである。こうした背景から,本研究は,ヒ素を中心とする有害元素による地下水汚染機構の解明について,存在形態を考慮した研究課題を立て,対象となる地方に密着した観測技術の確立と無害化/低減化技術の開発を目指すものである。
〔内 容〕
全国のヒ素に関する地下水汚染の原因は,人為由来というよりも自然由来に因ることが多い。例えば,平成6年度版水道統計では,原水中のヒ素濃度が環境基準値を上回った浄水場が17カ所あり,そのような地下水質の特徴を以下にまとめると,1)pH値が高い,2)KMNO4消費量が大きく蒸発残留物が多い,3)Mn,Fe濃度,色度,濁度のうち1項目以上基準値超過していることが多い。つまり,自然由来のヒ素汚染機構は,地下水の酸化還元状態,Fe,Mn濃度等と密接な関係にあることが推察される。このような自然由来に,地域によっては農薬等からの有機態ヒ素汚染が加わっているのが実態である。このような汚染機構解明には,試料中のヒ素があるがままの状態で定量されなければならない。地下水試料中に含まれるヒ素の化学形態のうち,メチル態有機ヒ素化合物は,室温保存でも1週間以上変化しないのに対し,無機態のヒ素は,X価及びV価の還元/酸化現象が見られ,酸化還元電位や共存元素の影響を受けやすい。このことは,あるがままの状態を解明するための分離分析法の開発(例えば,HPLC-ICP/MS法)が重要であることを意味している。そのような分離
分析法が確立されることによって,地下水の汚染機構解明が進展すること,さらに,処理技術に関して化学形態ごとの処理効率を明らかにすることができ,地域ごとの汚染実態に即した環境改善が期待される。なお,本研究において対象とする処理技術は,吸着剤方式と膜方式に大別でき,吸着剤方式に使用する材料は,活性アルミナ,二酸化マンガン,セリウムが挙げられ,膜方式には,イオン交換膜や逆浸透膜等の利用が考えられる。ヒ素に関する分離分析,処理技術の開発と他成分との因果関係を考慮した汚染機構解明調査に関する共同研究を,福岡県,高槻市等地方自治体研究機関及び国立公衆衛生院,国立医薬品食品衛生研究所と実施している。
〔発 表〕B-55,58,60,61,b-142,143,145,146
〔担当者〕
|
| 地域環境研究グループ |
: |
木幡邦男 |
| 水土壌圏環境部 |
: |
渡辺正孝・竹下俊二 |
| 地球環境研究グループ |
: |
原田茂樹 |
〔期 間〕
平成8〜10年度(1996〜1998年度)
〔目 的〕
兵庫県南部地震により,阪神地区の下水,排水処理施設が大きな損傷を受けたため,未処理水,各種廃棄物などによる流入汚濁負荷が増加した。このため総量規制の効果などで改善が進んでいた大阪湾の水質の再悪化が懸念された。特に,汚濁負荷の流入が集中する神戸地先では,水質等海域環境に大きな影響が出るものと考えられた。そこで,震災による流入負荷の変動や大阪湾の水質及び生態系の変動を克明に調査し記録して,今後の対策の基礎資料を作成することを目的とした。
また,突発的な負荷の変動と,それにより引き起こされる生態系の変動,内部生産の増加,底層の貧酸素化などの過程を正確に把握することで,富栄養化の機構解明を研究するための,ほかでは得られない貴重なデータの蓄積が期待された。さらに,過大な有機汚濁や栄養塩の負荷は底泥に蓄積され,後年にも影響が及ぶものと考えられた。そこで,流入負荷や底泥からの栄養塩回帰を考慮した大阪湾の生態系モデルを構築し,集積されたデータを用いて生態系モデルを検証することを目的とした。
〔内 容〕
(1)震災による大阪湾への栄養塩及び有機汚濁負荷増 加の実態把握に関する研究
河川から流入する栄養塩の負荷につき,増水時の負荷量が大きいと言われてきたが,現在まで,極めてデータが不足している。本年度は,兵庫県を流れ,大阪湾に流入する5河川(武庫川,東川,夙川,妙法寺川,明石川)で,平成9年7月〜平成10年1月の増水時に5回,流入量及び流入負荷量の調査を行った。
(2)震災後の大阪湾における生態系及び海域環境の変 動把握に関する研究
前年度に引き続き,本年度も長期にわたる震災の影響を調べるため,大阪湾にて5測点,播磨灘にて8測点を設定し,水質,生物量等の調査を平成9年5月〜平成10年1月に4回行った。夏季に大阪湾,播磨灘の各3地点で採泥し,底泥の酸素消費速度と底泥からの栄養塩の溶出量を測定した。大阪湾底泥における酸素消費速度は,0.24〜0.34g-O2/m2/dayであり,東京湾奥の貧酸素化する海域底泥での値よりは小さかった。底泥からの有機物の溶出には,大阪湾と播磨灘の両方の試料とも特徴的なパターンが見られ,貧酸素になった直後の数日は有機物が盛んに溶出したが,その後消費され,水中の有機物濃度は実験初期の値に戻った。
(3)震災による負荷増加が大阪湾環境に与える影響の 評価に関する研究
前年度,大阪湾・播磨灘を1kmメッシュで区切った3次元流動モデルを構築した。水温・塩分の実測値と計算値を比較した結果,海峡部の流入速度等に差違が見られ,計算領域で全般的に流速は計算値の方が大きかった。この原因の一つに,海峡部の境界条件が考えられたので,本年度は,計算領域を瀬戸内海全体に拡大した。この結果,計算された流速や,水温・塩分の水平・垂直分布は,実測値と良く一致するようになった。
〔発 表〕b-95
〔担当者〕
|
〔期 間〕
平成9〜11年度(1997〜2000年度)
〔目 的〕
環境への負荷の少ない持続可能な社会の構築を環境基本法では基本理念としているが,その創造のためには「自立」「持続」「共生」の環境観に立った研究が必要とされる。それ故,汚濁負荷が流域内で生態系を保持しつつ,自己完結的に改善処理するリサイクル修復システムの確立は緊急を要する重要な課題である。しかしながら,大量生産・消費・廃棄型社会のもと,生活環境からは排水や廃棄物が排出され,河川・湖沼・内湾においては環境資源・生産性の著しい低下が引き起こされている。
各種廃棄物の中には地域特性に依存する有用な資源が存在するが,これらを効率的に水質浄化,汚泥処理・再利用資源化を図ることで循環型地域完結システムの確立が可能になっていくものと考えられる。本研究では,微生物の代謝機構により汚濁物である排水を原料とした有用資源としての生分解性プラスチックの生成と水質浄化を連動させる相乗効果条件の解明や,有用微生物付着担体としての高密度機能強化微生物固定化リアクターの開発,カキ殻を充てんした有用水生植物植栽法,有用資源としてのセラミックス資源を用いた護岸システム,有用資源としての繊維廃材を活用した浄化ブロック・ネットによる汚濁湖沼直接浄化システムなどを開発し,バイオエンジニアリング,エコエンジニアリングの効果的活用による高度水処理と余剰汚泥等の副産物の効率的活用を目指した総合的な水環境修復エコシステムを確立することを重要な位置づけとしている。
〔内 容〕
地域密着型環境研究としての本年度の取り組みとしては,各地域において水質浄化に有効となる資源や生物についてスクリーニングを行い,水域の汚濁状況に応じた浄化プロセスを開発することをめざして,東京都,神奈川県,埼玉県,茨城県,福井県,広島県,広島市,岡山県の地方公設試験研究機関と,名古屋工業技術研究所,国立環境研究所との連携のもと推進してきた。特に脱窒,脱リンに有効な資源の選定と機能付加改善法の開発を図るものとして,アルミニウム,鉄,カキ殻等の廃材の脱窒,脱リン効果の高い有用資源の材料選定と浄化能付加強化改善技術の組み込み方及びその評価を行ってきた。その中でも,カルシウムを主成分とするカキ殻を活用したセラミックス,セメントにおいて,リン吸着反応能の後,窒素の吸着の起こることが明らかとなり,広島県,広島市などで問題視されているカキ養殖や生活排水に伴う汚濁水域の直接浄化対策として,大量に排出されるカキ殻の有効活用性を見いだした。また,鉄廃材を改変した濃縮塩化鉄水溶液による脱リン除去プロセスを組み込んだ生活排水処理システムでは,約80%のリン除去率が得られたのと同時に,有機物,窒素についても高度
に除去できること,廃アルミニウム缶を活用した電解脱リンプロセスでは表面コーティングをスクラップにより剥離させることで電極として活用でき生活排水処理システムに適用することでBOD10mg/l以下,T-N10mg/l以下,T-P1mg/l以下の処理水の得られることなどを明らかにした。その他にも,水質浄化プロセスと連動した有用資源としての生分解プラスチックの生成条件と有用微生物の代謝機構の解明や,人工干潟造成時における砂利,護岸等の代替材として,汚泥セラミックス等において水生生物の定着性は良好であることなど,地方公設試験研究機関との有機的連携のもと,リサイクル型水環境修復システムに結ぶ有用な知見を明らかにした。
〔発 表〕B-18,b-5,13,18,25,30,56,69
|