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科学技術振興調整費による研究


7.重点基礎研究


(1)高層大気環境の計測データの精度評価に関する基礎的研究

〔担当者〕

地球環境研究グループ 笹野泰弘・鈴木 睦・ 中島英彰・中根英昭
大気圏環境部 杉本伸夫

〔期 間〕
平成9年度(1997年度)

〔目 的〕
 高層大気(成層圏,対流圏)の化学環境の把握のため,これまで航空機や気球を利用した新しい現場測定,遠隔測定手法等が多く開発されてきた。そして,これらの新しい多くのセンサー(計測手段)を利用した,高層大気環境の観測実験やモニタリングが多くなされるようになってきた。しかしながら,個々の計測手段による測定精度の評価という観点からは,必ずしも十分な検証がなされているわけではない。
 高層大気環境の実態把握,オゾン層破壊のような環境の変動機構の解明などにおいて,総合的な観測研究が求められるが,個々の計測データの精度情報が,本質的に重要である。とりわけ,実際の大気中の測定環境下でのデータの再現性,安定性を評価することが必要である。本研究はこの点に着目して,これら種々の観測手段による測定データの精度の評価を行うための,基本的な手法の確立を行うことを目的としている。

〔内 容〕
 衛星観測データは,当初は検証を受けるべき対象であるが,同時に「移動標準」として使用することが可能であるという特長を持っている。すなわち,同一の測器で異なる地点,時期,環境における測定が可能である。このことから,そのほかの測定器による異なる地点,時期,環境における測定データについて,比較標準として用いることができる。
 「みどり」搭載の大気センサー「ILAS」に関連して,オゾンゾンデ,気球搭載大気サンプリング装置等の現場測定機器,気球搭載フーリエ変換赤外分光計等の遠隔測定機器,地上設置フーリエ変換赤外分光計等の遠隔測定機器等による計測がなされることになっている。本研究では,衛星センサーデータを移動標準として用い,特に地上設置フーリエ変換赤外分光計によるデータを対象に測定精度の評価を行う。
 「みどり」は平成9年6月末に太陽電池パネルの故障により運用を停止したため,予定した複数地点でのFTIRによる「ILAS」との同期計測データが収集できず,当初の計画を変更した。まず,「ILAS」データと,複数地点で「ILAS」に同期して実施されたオゾンゾンデ(小気球搭載の現場測定機器)観測データとの比較を行った。次に,スウェーデン・キルナで実施したFTIR観測で得られたデータと「ILAS」データとの比較を行った。
 オゾンゾンデとの比較では,「ILAS」データとの差異に地点間の相違が見られる。これは,「ILAS」データが均質であるとすれば,オゾンゾンデ観測に観測地点への依存性があることを意味する。FTIRデータから求めたオゾン高度分布と「ILAS」データとの比較は,両者の間によい一致があることが示された。「ILAS」を基準と考え,平均の偏差を求めたところ,FTIRによるオゾン高度分布データは地上から高度40kmの範囲で最大15%程度の誤差を持つことが判明した。

〔発 表〕A-23,25,26,I-12,a-59,60


(2)SO3の高感度検出器の開発に関する研究

〔担当者〕

大気圏環境部 今村隆史・鷲田伸明・酒巻史郎・猪俣 敏・古林 仁・鵜野伊津志・高薮 縁・菅田誠治・江守正多
化 学 環 境 部 横内陽子
地球環境研球グループ 村野健太郎
地球環境研究センター 畠山史郎

〔期 間〕
平成9年度(1997年度)

〔目 的〕
 大気中の代表的なエアロゾルの一つである硫酸エアロゾルの均一気相反応による生成過程として反応1)〜3)によるSO3の生成を経由した酸化機構が提案されているが,SO3の生成・消滅は明確かつ直接的には証明されてはいない。
 1)OH+SO2→HOSO2
 2)HOSO2+O2→SO3+HO2
 3)SO3+H2O→H2SO4
 本研究では真空紫外光(水素原子ライマンα共鳴線121.6nm)をSO3に照射し,そこから得られる発光を用いたSO3の高感度検出器を開発し,その検出感度や選択性を目的とする。SO3の高感度検出器ができれば,SO3の生成・消滅反応速度の測定や光化学反応チャンバーを用いたSO3生成収率決定に関する研究への応用が可能となる。

〔内 容〕
 本研究で開発するSO3検出器の原理はSO3に真空紫外光(ライマンα共鳴線121.6nm)を照射し,SO3の光解離フラグメント(SOまたはSO2)から生じる発光(紫外〜可視領域)を検出するものである。
 パイレックス製のセル中をHeに希釈したSO3をフローさせ,そこに水素原子のライマンα共鳴線を照射し発光スペクトルの測定を行った。その結果,SO2フラグメントからのB-X発光(280〜500nm)及びSOフラグメントからのA-X発光(240〜270nm)及びB-X発光(260〜420nm)が観測された。次に,他の気体分子による干渉を調べるため,様々な気体分子をSO3の代わりにフローさせて発光を測定した。その結果,H2O,NO2,HNO3,H2COなどから生成するフラグメントからの発光が問題となり得るが,SO3の検出波長を330±10nm領域とすることにより,その干渉の影響を低減できることがわかった。さらに,SO3の混合比を一定に保って330nmの発光強度の全圧依存性を測定した結果,全圧〜10Torr領域が発光検出に最適であることがわかった。
 検出感度に関しては,N2及びO2によるSO2(B)状態及びSO(B)状態の衝突消光がHeに比べ速いため,He中に比べ空気中での検出感度は落ちるものの,10ppb程度の検出感度があることがわかった。現時点で検出感度を支配している要因はセル(ガラス)からの発光であり,今後はセルの材質や形状の変更を行っていく予定である。もしセルからの発光を1/10に低減できれば,SO3の検出感度は約5倍向上すると見積もっている。
 以上の結果から,本研究で開発したSO3検出器は,SO3の反応速度測定への応用に対し,十分な検出感度と選択性を有していることがわかった。

〔発 表〕F-1,6,26,a-115,f-5〜9,77


(3)環境有害因子によるアポトーシス誘導の分子機構の解明

〔担当者〕

環境健康部 石堂正美・国本 学・野原恵子・佐藤雅彦・遠山千春

〔期 間〕
平成9年度(1997年度)

〔目 的〕
 これまでに分子細胞生物学に立脚した方法論を導入し,環境有害因子に生体が暴露したときの健康への影響を鋭敏に感度よく評価できる手法の開発に努めてきた。その結果,環境因子による細胞の「死に方」を識別することにより,従来の評価法に比べ感度よい手法を見出した。それは,環境因子によるアポトーシス(自殺死)の発見による。アポトーシスはこれまで考えられてきた毒性発現時期よりも早い段階で起こること,またこれが生体影響の指標になりうることが明らかになった。さらに,私たちは細胞には環境有害因子に対して積極的に「死のう」とする機構(アポトーシス)に加え,積極的に「生きよう」とする機構(struggle)あるいは「死」に対して耐性を示す機構が存在することを見出した。
 そこで,本研究ではこのような環境因子による細胞の死と生を決定するメカニズムを明らかすることにより,アポトーシス誘導の分子機構を解明することを目的とした。本研究を通じて,人の健康への毒性影響評価手法の新たな開発に大きく貢献できるものと期待される。

〔内 容〕
1)細胞死を防御する亜鉛の作用機構に関する研究
 亜鉛は,多くのアポトーシス誘導を阻害することが報告されてきている。その理由として,亜鉛は一連のアポトーシス反応系の最終段階であるDNAフラグメント化酵素を阻害するからであるとされてきている。本研究で用いた環境有害因子のカドミウムによるアポトーシス誘導も亜鉛で阻害されうる。本研究では,亜鉛の細胞増殖刺激作用がアポトーシス誘導抑制に寄与しているであろうという作業仮説をたて調べてみた。BrdUを用いて亜鉛の細胞増殖能を調べてみると,亜鉛単独で明らかにBrdUの取り込みが見られた。また,亜鉛がカドミウムによるアポトーシス誘導を抑制している条件下でもBrdUの取り込みが亢進していた。
2)環境有害因子に対する細胞感受性の違いを利用したアポトーシス誘導の分子機構の解明に関する研究
 カドミウムに対して感受性が異なる2種の培養細胞LLC-PK1とMDCKを用いexpression cloning法によりアポトーシス誘導の引き金となる分子を単離することを試みた。最初に,アポトーシスを誘導しやすいLLC-PK1細胞の発現ライブラリーを作成した。次に,このLLC-PK1由来の発現cDNAをアポトーシスを誘導しにくいMDCK細胞に導入した。このようにして,従来アポトーシスを誘導しにくいMDCK細胞をアポトーシスを誘導しやすくする分子をスクリーニングした。その結果,約3.5kbpのcDNAが単離された。 

〔発 表〕E-5,13〜16,e-6,7,14〜16


(4)環境汚染のタイムカプセル樹木入皮に関する研究

〔担当者〕

地球環境研究グループ 佐竹研一

〔期 間〕
平成9年度(1997年度)

〔目 的〕
 本研究は地球生態系に与える人類活動の影響を評価するため,人類活動の影響の顕著でなかった産業革命以前から汚染の進行している現在に至るまでの環境汚染関連物質の時系列変化,並びに地球化学的動態を明らかにすることを目的としている。特に東アジアにおいては,各国の産業活動・経済活動が急速に増大しており,地域によってはその生態系への影響もすでに深刻化している。従って今後予想される環境汚染物質の評価のため,直ちに研究を開始する必要がある。人類活動に伴って排出される環境汚染物質には様々な有害化学物質,粉塵などがあり,その排出量の評価を過去にさかのぼって行うことのできる研究手法としては,この分野での世界のニーズに答えるものである。

〔内 容〕
 “入皮”とは樹木の中に封じ込められ,年輪に挟まれて存在している樹木の樹皮である。私達のこれまでの予察的研究によると,樹木の樹皮は大気汚染物質をよく吸着・蓄積し,樹木樹皮を分析することで,それぞれの地域の汚染状況を把握できることが明らかである。そして,さらに樹木の中には入皮が存在し,この入皮を分析することで,年輪を分析するよりもはるかに的確に汚染の経時変化を知ることができる可能性があることが明らかになった。本研究は環境汚染のタイムカプセルとしての可能性をさらに探り発展させ,過去数百年から現在に至る環境変化の時系列動態を明らかにするためのものであり,特にイオウ酸化物,粉塵,有害化学物質などの時系列変化を明らかにするため,まず測定手法を検討した。平成9年度に行った調査対象樹木としては,東京都内の戦後汚染の時系列変化を調べるため,青山学院大の構内に終戦後植栽され,昨年枯死した多くの入皮を含むヒマラヤ杉及び都内の上野公園等,樹木樹皮,英国ロンドン,シェフィールドで採取したシカモア外樹皮などがある(この枯損試料については研究試料としてサンプリングし,国立環境研究所低温庫に保存),これらの試料について外樹皮及び入皮部分をサンプリングし,ダイオキシン,鉛,イオウ化合物,窒素化合物,多環芳香族化合物などについて汚染状態の評価を開始した。その結果,検討当初,期待された入皮を用いるダイオキシンのモニタリングについては,青山学院大の樹皮のダイオキシン濃度は検出限界値以下であったが,上野公園のけやきから採取した樹皮からは有意のダイオキシンが検出され,樹皮がモニタリング試料として役立つことが確認された。

〔発 表〕A-31


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