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科学技術振興調整費による研究
6.国際共同研究(多国間型)
(1)アジア地域の微生物研究ネットワークに関する研究
@有毒微細藻類とそれらの増殖制御技術の開発
〔担当者〕
| 化学環境部 |
: |
彼谷邦光・佐野友春 |
| 生物圏環境部 |
: |
渡邉 信・広木幹也 |
〔期 間〕
平成7〜9年度(1995〜1997年度)
〔目 的〕
本年度は,1)中国およびタイで採取した藍藻類の無菌株を培養し,それらの生産する毒素の化学構造を解析し,中国およびタイの藍藻毒の特徴を明らかにすること。2)有毒藍藻類を捕食する原生動物の捕食能を調べること。3)有毒藍藻類を分解するバクテリアのスクリーニングを行うこと。4)酵母から単離した有毒藍藻Microcystisの増殖を特異的に阻害する物質が他の有毒藍藻,Anabaena,Oscillatoria等に対しても同様に作用するか否かを調べることを目標とした。
〔内 容〕
1)については,中国およびタイで採取した藍藻類の無菌株を培養し,それらの生産する毒素の化学構造を解析し,中国の藍藻毒は内蒙古では神経毒が主な毒素であるが,雲南省では肝臓毒が主要毒素であることを明らかにした。また,タイでは肝臓毒は主な毒素であるが,同族体が多く,中国の肝臓毒とは異なる分子種のものが見られた。2)では,有毒藍藻類を捕食する無色ベン毛虫の捕食能を調べた。微細藻類の形態が球状でも繊維状でも同じように捕食することが観察された。3)では,有毒藍藻類を分解するバクテリアをタイの土壌からスクリーニングした。現在,分解特性を調べている。4)については,酵母から単離した有毒藍藻Microcystisの増殖を特異的に阻害する物質が他の有毒藍藻,Anabaena,Oscillatoria等に対しても同様に作用するか否かを調べた。Oscillatoriaに対しては効果的であったが,Anabaenaに対しては全く阻害作用を示さなかった。
A微細藻類の系統分類学的研究及び種の多様性の解析
〔担当者〕
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| 生物圏環境部 |
: |
渡邉 信・広木幹也 |
| 化学環境部 |
: |
彼谷邦光 |
〔期 間〕
平成7〜9年度(1995〜1997年度)
〔目 的〕
陸水,海域,土壌に生息する微細藻類の形態及び生理生化学的特性に基づく新規分類同定システムを構築し,分子系統学的解析を行うことを目的として,1)中国,タイにおける陸水,海域,土壌に生息する藍藻類の種多様性の解明,2)藍藻類の無菌培養の確立,3)水の華を形成する浮遊性藍藻類,海産赤潮・有用真核藻類の形態的特性及び生理生化学的特性に基づく新たな分類・同定システムの構築,4)18S
rRNA,rbcL遺伝子による分子系統学的解析を行う。
〔内 容〕
タイの土壌藍藻類,浮遊性プランクトン及び原生動物の多様性を調査し,それぞれ67種,1,538種及び203種確認した。無菌化が困難な超微細藍藻類について超低温アガロースを用いた希釈法により,無菌化に成功し,今まで150株の無菌培養株を得ることができた。ガス胞をもつ浮遊性糸状体藍藻類Oscillatoriaは形態,生理,化学及び遺伝的特性で少なくとも5種に区別することができた。さらに異質細胞をもつ糸状体藍藻であるAnabaenaの重要な分類形質である休眠胞子は低温処理で誘起されることを明らかにした。Anabaenaは脂肪酸組成で2つのグループに分けられることを明らかにし,さらにA.affinisは脂肪酸,GC含量及びフコシアニンタンパク遺伝子において系統的に異なる2つの分類群からなることが確認された。緑藻に属するとされてきた無色のベン毛藻Aulacomonasは中国,タイ,日本より分離されたが,捕食性であること,ミトコンドリアが管状のクリスタを持つことから,緑藻とは違った系統であることが示唆され,18SrRNA塩基配列情報解析の結果真核生物の原始的な系統に位置する可能性が示唆された。
〔発 表〕H-18,19
B微細藻類の系統保存体制の整備とネットワークの構築
〔担当者〕
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| 生物圏環境部 |
: |
広木幹也・渡邊 信 |
| 社会環境システム部 |
: |
清水 明 |
〔期 間〕
平成7〜9年度(1995〜1997年度)
〔目 的〕
微細藻類は酸素発生型の光合成を行う微生物で,水界生態系の第一生産者として,農水産業や工業にも利用されている反面,赤潮やアオコのように水環境汚染に深く関連し,人間生活に著しい影響を与えている。特に,アジア地域では微細藻類の利用あるいは微細藻類による環境汚染問題解決に対するニーズは非常に高い。以上のことから,微細藻類のカルチャーコレクションの構築および整備は非常に重要視されている。しかし,微細藻類の保存はほとんどの場合に継代培養法に依存しており,また,分類とリンクさせずに系統保存されている例も多く,付随する情報も未整備のままであるものが多い。
本研究では,分離・培養された微細藻類の適切な保存法の開発,微細藻類培養株のデータベースの構築とその管理法の開発および微細藻類の特定データ解析システムの構築を行うことを目的としている。本年度は特に,1)微細藻類のうちで重要な位置を占める緑藻類の長期保存法の開発と,2)微細藻類培養株のデータベース管理システムの改変を行った。
〔内 容〕
1)微細藻類保存株の多くを占める緑藻類については,いまだに適切な長期保存法が確立しておらず,継代培養法により保存がなされていた。そこで,国立環境研究所微生物系統保存施設で保存している緑藻類,76属,155種,376株について凍結保存法の適切な条件を検討した。その結果,凍害防止剤として添加したDMSOの濃度を変えて凍結融解後の増殖性を調べたところ,51属77種147株で,添加DMSO濃度が最適な条件においては凍結融解後も増殖能を保持していた。供試した緑藻類のうち,特にAuxenochlorella,Ankistrodesmus,Coelastrum,Chlorella,Graeiella,Monoraphidium,Mychonastes,Pediastrum,Scenedesmusは凍結融解後の増殖率が良かったが,逆に,Astrephomene,Closterium,Carteria,Eudorina,Gonium,Pleurotaenium,Volvoxの各属では増殖能を失うものが多かった。
2)国立環境研究所,微生物系統保存施設において微細藻類株の保存業務に実績を上げており,中国科学院水生生物研究所及びタイ科学技術研究所に導入されているMCCシステム(微生物保存株管理システム)は元来,BASICによって書かれたものであり,必ずしも最近のコンピューターシステムの機能を生かし切っていなかった。そこで,従来のシステムとデータの互換性を維持したまま,使用頻度の低い一部の機能を削除することにより操作性を向上させたWindows版のMCCシステムを作成した。すなわち,Windows版のシステムでは,株データベースファイルと株を用いた研究論文に関するレファレンスデータベースファイルを独立させ,それぞれをエデイターから入力・修正するようにし,保存株の来歴及び株特性に関する株基本データと,株管理計画作成上有効な植え継ぎ予定,必要培地数等に関するリストを出力できるようにした。また,これまで整理の進んでいなかった青島海洋大学で保存している海洋植物プランクトンの培養株のリストを刊行した。
〔発 表〕h-22〜24
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