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科学技術振興調整費による研究


2.生活・社会基盤研究


(1)環境と資源の持続的利用に資する資源循環型エコシステムの構築に関する研究
 @流域汚濁付加削減管理手法の開発に関する研究

〔担当者〕

地域環境研究グループ 松重一夫

〔期 間〕
平成7〜9年度(1995〜1997年度)

〔目 的〕
 湖沼の水環境保全は我々の生活環境と密接に結びついた重要課題であるが,環境基準の指定以来,生活環境にかかわる達成率の向上はあまり見られず,アオコの発生などによって利水や親水に対して多くの障害をもたらしている。工場排水規制や各種点源対策を中心とした規制的な排水対策を施すことにより,汚濁の進行は抑えることができつつあるが,現在の対策では現状維持が精一杯の状況である。さらなる改善には従来の手法のみでは困難であり,発想の転換を伴ったリサイクル型地域エコ社会の構築による総合的な対策が必要な段階に至ってる。
 このような地域エコ社会の構築はまだ模索段階にあるが,構築に当たっては精度の高い地域情報の集積が不可欠と考えられる。流域管理にもこのような精度の高い情報に基づいた管理が必要な状況である。従来このような流域情報は主として数値情報のみが管理されてきた。しかし,数値情報だけでは地域の特徴や特性は把握できず,また開発行為などに伴う流域環境の変化を適切に表したり,予測したりすることは困難である。これからの流域管理のためには,地域の特徴を表す地図情報と数値情報の両方を組み合わせて使うことが必要となる。このような地図情報と数値情報の両方を管理するシステムとして地理情報システムがある。パーソナルコンピュータで作動する地理情報システムを活用して市町村単位で管理可能な流域管理システムを構築することを目的に研究を行った。

〔内 容〕
 平成9年度は,霞ヶ浦流域市町村1つである土浦市を対象に研究を行った。土浦市は総面積82km2,人口131,000人の城下町である。土浦市の流域管理システム構築のために,町丁字単位での各種統計データを収集し,地図情報,航空写真,現地調査などによって,国勢調査区図単位での人口,土地利用などの環境情報データベースをパソコン利用地理情報システム上に入力した。さらにこれらのデータから窒素,リン,有機物及びゴミについて発生源負荷量を推定しデータベース化を行い,処理形態のデータと組み合わせ,排出負荷量を求めた。降雨,水道,地下水利用,農業用水等の水の流れを明らかにし,各水系ごとに水路図を作成し,地理情報システム上にデータ化した。各水系を2次河川,3次河川等の小流域に分割し,小流域単位での水収支,物質収支を明らかにし,平均水質の水質予測を行った。
 これらのデータベースを地図情報として提示し,各種保全対策の流域管理情報として活用する。また,地図上に特定地域を指定し,処理形態を変化させた場合や各種開発行為に伴う水質変化の予測を行う。このような操作により,各種の汚濁負荷対策を行った場合,例えば合併浄化槽を普及させたときの効果などについて評価を行った。

 A生活排水等の循環共生型処理技術の開発に関する研究

〔担当者〕

地域環境研究グループ 稲森悠平・水落元之
水土壌圏環境部 西村 修

〔期 間〕
平成7〜9年度(1995〜1997年度)

〔目 的〕
 窒素,リン,有機物の高度処理,汚泥の減量化,処理システムのさらなるコンパクト化等を考慮した高性能な小型合併処理浄化槽の開発に対する社会的要請は年々強まってきている。そこで,高度合併処理浄化槽のメンテナンスフリー,コンパクト化,また省エネルギー化を図るために,生物処理反応槽内に有用細菌と有用微小動物を高濃度かつ安定的に保持し,現場の排水性状にあった運転条件の設定を行うべく,その最適操作条件を解明することとする。さらに,生物処理システムとしての生物膜ろ過法等における担体上の微生物相の調査とシステム導入に最適な担体の選定手法を検討し,高機能有用微生物の付着・増殖できる生物付着担体処理システムの確立を図るべく,本研究では流量調整型嫌気ろ床生物膜ろ過方式を適用し,BOD10mg/l,T-N10mg/l・T-P1mg/l以下の安定した処理水を得るために処理特性に及ぼす水温,逆洗頻度,BOD負荷条件等の諸環境因子の影響の解明及び吸着法,電解法によるリン除去プロセスの小型合併処理浄化槽への導入試験,面的整備による汚濁負荷削減効果の評価・解析を目的として検討を行った。

〔内 容〕
 生物膜ろ過法を用いた場合,10℃,HRT3時間といった低水温,高負荷条件下でも逆洗頻度を1日2回とすることにより,硝化率90%以上,処理水中BOD10mg/l以下と極めて高い硝化活性及び有機物除去率を維持することが可能であることがわかった。このように従来の生物膜法に比べて有用微生物の付着比表面積を30倍に高められる生物膜法を用いることにより,また逆洗等の自動化によりメンテナンスフリー,コンパクト化が可能となることが解明された。リン除去プロセスとしては吸着法,電解法による高度リン除去システムを小型合併処理浄化槽へ導入することにより処理水リン濃度は0.2〜0.4mg/l程度までに安定して除去された。吸着方式,電解方式によるリン除去システムの面的整備に関して,汚濁湖沼流域を対象地域としてケーススタディを行った結果,これらのシステムは実際のフィールドへ十分適用可能な技術でありコスト的にも問題はなく,さらに適正なリン除去機能を有する合併処理浄化槽の面的整備が極めてリン汚濁負荷の削減に寄与することが明らかとなった。また,生物学的窒素除去プロセスに関して,急激な負荷変動等に伴う硝化細菌の活性低下, 個体数変動,及び個体群動態等を迅速に評価することを目的として,亜硝酸菌Nitrosomonas europaea,硝酸菌Nitrobactor winogradskyiを抗原として特異的に反応するモノクローナル抗体の作成に成功した。得られたモノクローナル抗体は交差反応性も低く,ELISA法を用いることにより約1.0×105N/ml以上の範囲においての検量線が得られ,現場レベルを含めた精度の向上及び検証を行うことによりコンパクト型浄化処理システムの性能の安定化がさらに行われるものと推定できた。これらのことから,メンテナンスフリー,コンパクト化,省エネルギー化を目指した高度処理プロセスとして物理学的リン除去法を組み込んだ生物膜ろ過法の有効性を明らかにすることができた。 

〔発 表〕B-12,13,b-6,9,14,21〜25,29,38,44,45,51,52,57,74


(2)日常生活における快適な睡眠の確保に関する総合研究
 @生体リズムの睡眠・覚醒調節作用に関する研究−環境ストレスによる生体リズムへの影響と感受性の個体差の解明

〔担当者〕

地域環境研究グループ 兜 真徳・黒河佳香
環 境 健 康 部 影山隆之

〔期 間〕
平成8〜10年度(1996〜1998年度)

〔目 的〕
睡眠に影響を与えることが示唆されている物理的要因として,夜間の道路騒音,電磁界暴露あるいは照明環境等の影響を取り上げ,快適な睡眠を保全する観点から,それら影響の評価と対策法を探ることを目的とする。

〔内 容〕
前年度は,東京都I区の住民男子約500名と沖縄のK島の住民男女約1,000名を対象として,不眠症や睡眠の取り方等に関するアンケート調査を,前者では郵送法,また後者では個別訪問により実施した。また,前回行ったアンケート調査の結果から,すでに不眠症(「入眠困難」,「中途覚醒」,「早朝覚醒」「覚醒時の不眠感」が週1回以上,1カ月以上持続しているもの)と判定されている都内I区の主婦約30名を対象として,連続一週間の超低周波電磁界への個人暴露測定を行い,不眠症との関連について解析した。
なお,測定は米国Enertech社のEMDEX−LITEを用い,1分ごとの3方向軸の磁界瞬時値の実効値(rms)を測定・記録した。上記アンケート調査結果については現在解析中であり,得られた知見については追って報告する。また,前回の都内I区の主婦を対象としたアンケート調査では,不眠症の頻度は,幹線道路沿道では,後背地の数%に比較して約2倍であった。

〔発 表〕B-31,b-93


(3)スギ花粉症克服にむけた総合研究
 @スギ花粉症の発症・増悪メカニズムの解明に関する研究
 1)修飾因子の疫学的解析

〔担当者〕

地域環境研究グループ 新田裕史

〔期 間〕
平成9〜11年度(1997〜1999年度)

〔目 的〕
 スギ花粉症の発症・増悪にスギ花粉自身が最も大きな役割を果たしていることは明白であるが,スギ花粉以外にスギ花粉症の発症・増悪にいかなる因子が関与しているかについては不明な点が多い。年齢についてはこれまで30歳代が最も有病率が高いとする報告が多かったが,最近は若年層での有病率の増加を指摘するものも多い。有病率の年齢分布の違いは一般に感受性の違いと考えられるが,スギ花粉症の場合にはスギ花粉飛散数が増加し始めた時期と出生年代との関係やライフスタイルの変化などいくつかの解釈があり得る。修飾因子のひとつとして注目されている大気汚染,特にディーゼル排出粒子の及ぼす影響についても実験研究と疫学研究の結果は必ずしも一貫していない。アレルギー疾患については世界的に増加傾向にあるとされ,都市化や環境汚染との関連性が示唆されている。しかしながら,これらの因子の関与を明らかにするためには疫学方法上の問題点も多い。細菌,寄生虫感染との関連性,ダニなどの他のアレルゲンとの接触をはじめとする生活環境にかかわる諸因子など,スギ花粉症の発症・増悪を修飾する可能性がある因子は数多い。本研究はこれらの点を明らかにすることを 目的とする。

〔内 容〕
 まず,学童の花粉症の感作・発症状況を把握するために,茨城県北部及び東京都区内の各1小学校の学童約1,100名について,花粉症,その他のアレルギー疾患の症状,既往歴等に関する質問票調査とスギ特異IgE抗体検査(CAP RAST法)を実施した。抗体検査は症状の有無にかかわりなく保護者の承諾を得た学童(全体の約7割)について実施した。性別・学年別の陽性率(CAP RASTスコア2以上)は東京地区で26.2%,茨城地区で37.9%であり,スギ花粉飛散数が多いと考えられる茨城で高率であった。また,性別には両地区ともほとんど差が見られなかった。学年では大きく変動しており,全体的には学年が上がるにつれて高くなる傾向が見られた。
 さらに,3歳児健康診査対象者及びその両親を対象とした調査研究を実施した。栃木県内の9月,10月の2カ月間の3歳児健康診査受診予定者を対象として問診票の記入を依頼した。さらに,全国の10府県17保健所(60市町村)において同様の手法で花粉症に関する質問票調査を実施した。「くしゃみ,鼻水,はなづまりの3症状のすべてがあると答え,なおかつ,その症状が最も強い季節が2月から5月の間のいずれかの月であると答えた者」を花粉症とみなして集計した。母親の花粉症有症率は栃木県で10.6%,全国で6.6%であった。

 2)修飾因子の実験的検証

〔担当者〕

環境健康部 藤巻秀和

〔期 間〕
平成9年度〜11年度(1997〜1999年度)

〔目 的〕
 スギ花粉症の発症・増悪,あるいは抑制の機構は非常に複雑であり,大気汚染,感染,食事などの外的環境の影響が大きいと考えられている。しかしながら,スギ花粉症を発症した患者と健常人では,どこがちがうのか,どのような修飾因子の違いによるのか明らかでない。そこで,スギ花粉症の発症に影響を及ぼす修飾因子を特定し,その機構を解明することは花粉症の予防・治療法の確立に寄与すると考えられる。今年度の目的は,スギ花粉症を修飾する外的環境因子についての文献調査を行い情報を集めること,臨床や疫学研究で提示された修飾因子の作用を解析,検証するための実験系を確立することである。

〔内 容〕
 スギ花粉症は,ヘルパーT細胞のTh2タイプが優位になり抗原特異的IgE産生を増強することが引き金になると考えられる。Th1タイプが優位になるとIgE産生は抑制される。この抗原特異的IgE産生系を修飾する外的因子についていくつかの報告があり,オゾン,UV-B,ディーゼル排気粒子,重金属の鉛,水銀などの化合物にはTh1タイプの反応を抑制し,Th2タイプの反応を亢進する作用がみられている。しかしながら,スギ花粉症とこれらの因子との関連についてはディーゼル排気粒子の作用を除いては不明である。
 次に,実験系の確立であるが,抗原特異的IgE抗体産生はT細胞の働きに多くを依存しており,特に抗原提示細胞とT細胞の間での抗原情報の伝達機構はさきほどのTh1とTh2タイプの分化のところに大きく影響すると考えられる。この抗原情報伝達には,抗原そのものとともにCD80やCD86の補助因子も重要な役を担っていると推測されている。今回,N. brasiliensis感染マウスを用いてIgE抗体産生を誘導するときに,抗原投与とともに抗CD80,抗CD86抗体を投与して阻害効果を観察した。その結果,抗CD80抗体の投与ではその後のIgE産生に影響はみられなかったが,抗CD86抗体投与で顕著なIgE抗体産生の抑制がみられ,両分子の働きの違いが示唆された。IgE産生の免疫記憶細胞の誘導には,両分子の働きが必要であることも明らかとなった。このような結果から,スギ花粉症の発症・増悪あるいは抑制を誘導するような修飾因子の解析にこれら分子の検索が有益であると思われる。

〔発 表〕E-31,33,34,e-44,47,48

 Aスギ花粉の生産と飛散予報法の高度化に関する研究
 1)花粉飛散量の計測に関する研究

〔担当者〕

地域環境研究グループ 新田裕史

〔期 間〕
平成9〜11年度(1997〜1999年度)

〔目 的〕
 従来,スギ花粉飛散の予報はダーラム型花粉捕集器によるデータに基づいて実施されてきた。しかしながら,この方式は測定のための労力が多大であり,また時間分解能についても不十分である。本研究では,花粉飛散の予報法の向上に寄与するとともに,従来は人手に頼っていた花粉観測にかかわる労力を軽減し,リアルタイムな花粉観測値の情報伝達を可能とするためにスギ花粉数の自動計測装置を開発することを目指す。

〔内 容〕
 自動計測装置の基本仕様の検討を終了し,装置の基本要素である花粉捕集装置,花粉認識装置,画像処理装置それぞれについての試作を行った。
 花粉捕集装置は粒径30μm前後の粒子が効率よく捕集できるとともに,画像処理の際に誤差要因となる微小粒子を除去するように設計されている。花粉認識装置部は花粉の自家蛍光を光学的に検出し,その情報を画像処理部に送る役割をする。画像処理装置は得られた自家蛍光画像をコンピュータにより処理し,蛍光スペクトルや形態情報をとりスギ花粉を同定・計数する。
 試作装置による検討の結果,スギ花粉を同定しさらにヒノキ花粉と識別できることを確認した。本装置の理論上の感度はダーラム法の10倍以上であり,1時間単位の測定が可能であると考えられた。


(4)高齢化社会に向けた食品機能の総合的解析とその利用に関する研究
 @臓器内生物ラジカル計測と食品成分による消去作用の解析

〔担当者〕

地域環境研究グループ 嵯峨井勝・市瀬孝道

〔期 間〕
平成9〜11年度(1997〜1999年度)

〔目 的〕
 近年のヒトの病態発現には高脂肪あるいは高エネルギー摂取と関連している例が多いと考えられる。
ヒトの脂肪摂取量と同等レベルの脂肪含有食を実験動物に長期間投与し,臓器内ラジカルが増加するモデル動物を作成し,このモデル動物を用いて,ヒトの中高年期から抗酸化性食品を摂取するという想定のもとに,実験動物に1年後から抗酸化性食品を与えられた動物で臓器内生物ラジカル生成を低減させうるかどうかを実験的に明らかにすることを目的としている。さらに,これら抗酸化性食品が生活習慣病関連指標を改善するかどうか,並びに運動能あるいは記憶能等を改善するかどうかを明らかにすることを目的とする。

〔内 容〕
 1)高脂肪食およびβ-カロテンの生物ラジカル指標としての8-OHdG生成に及ぼす影響の検討
 マウスに高脂肪(16%)食を1年間与え続けた群(H)は,4%の普通脂肪食群(N)に比べて,肺の8-OHdG生成は約2倍に増加していた。一方,それぞれに,β-カロテンを与えた群(Nβ,Hβ)の肺内8-OHdG量は各々30%ではあるが有意に低下していた。このことから,加齢につれて臓器内ラジカル量が増加するという,当実験に適した動物モデルであることが示された。
 2)ラットの臓器内8-OHdG生成と加齢に伴う血清中脂質成分と抗酸化成分の解析
 これまで保存していた4,14,24及び32カ月齢ラットの血清中TBA値は24カ月齢まで増加していたが,32カ月齢ではむしろ若干低下していた。血清中の総コレステロール,HDL-コレステロール,トリグリセリド等もこれと同様の傾向を示していた。これは,より高齢化により血清中の過酸化脂質や他の脂質成分が低下すると考えるよりは,もともと過酸化脂質濃度(TBA値)や脂質濃度が低い動物が生き延びていたことによると考えられる。なぜならば,まだすべての臓器中の8-OHdGの測定が終わっていないが,32カ月齢ラットの8-OHdG濃度は24カ月の濃度より約2倍近くに増加しているためである。
 以上のような知見から,高脂肪食が老化現象を促進していることが推測されるので,高脂肪食摂取動物で生物ラジカル産生(8-OHdG生成)を抑制する可能性があり,この検討が食品機能評価に意義があることが示唆された。


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