〔期 間〕
平成7〜9年度(1995〜1997年度)
〔目 的〕
成層圏極渦の構造,極渦の孤立性の機構を力学的解析によって理解することである。極渦の構造は,オゾン,温室効果ガス等の分布を決める大きな要素であり,それらの分布は,直接的には放射過程を通して,間接的には,放射過程によって規定される成層圏の温度分布,さらには,温度と密接な関係がある風の分布を通して,気候へ影響を及ぼす。
成層圏の温度分布は,基本的には,オゾンによる紫外線の吸収加熱と二酸化炭素,オゾン,水蒸気の赤外放射冷却のバランスによって定まっている。大気の運動による力学的な熱の輸送,さらには,オゾン等の物質の輸送が,その温度分布を変化させる要因となる。成層圏の極渦とは,冬季に西から東に吹く強い風(極夜ジェットといわれる)が低温の極域を取り巻くように流れている様をいう。極の真上からみれば,北半球では左回りの渦,南半球では右回りの渦ができている。秋から冬にかけて発達し,南半球においては春,11月頃まで持続する。北半球においては,通常3月頃まで持続する。南半球の極渦の方が強く,かつ,持続期間も長い。南極域においてオゾンホールが発達するのは,この極渦の性質のためである。
〔内 容〕
問題意識:極渦の空気の入れ替わりの機構及びタイムスケール(極渦の孤立性)を特定する。その際,上下方向の交換(成層圏対流圏間の空気粒子交換)および緯度方向の交換の両者に着目し,両者を統一的に理解する。また,「極渦の孤立性が高まる」ことは,「極渦内の空気と低緯度の空気との混合が小さい」ことを意味し,以下の2つの過程が働くことを意味する:「低緯度からの熱輸送が小さい→低温→オゾン破壊」;「低緯度からのオゾン輸送が小さい→低温」。両者の過程とも低オゾン低温度の状態を招き,極渦の孤立性がさらに高まると考えられる。この両者の過程の寄与の大きさを評価する。
本年度の研究内容:1996/1997年北半球冬においては,極渦が非常に安定で異常に長期間持続した。そのことと関連し,北極の春のオゾン量が異常に低かったことが,衛星センサーTOMSのオゾン全量データ等からわかっている。1996/1997年北半球冬の期間に環境庁開発のILASセンサーにより取得されたデータを解析し,極渦内で以下の特徴を見いだした。空気運動のトレーサーとなる長寿命不活性気体N2O,CH4が少なく,極渦内で下降運動が起こっていることを示唆する。さらに,同期間につき,N2Oのデータが等混合比の値を取る高度を日々追跡することにより,極渦内で確かに下降運動が起こっていたことを見いだした(約1km/month)。定量的に確信を得るためには,さらなるデータ質評価が必要である。また,気象データを使用した多数の空気粒子(数万個)のトラジェクトリー解析から,極渦の下部成層圏高度の領域(温位400〜700K)の水平方向の1日当たりの出入りは,領域質量の1%以下であることがわかった(1カ月当たりの入れ替わりは3割以下)。トラジェクトリー解析手法の確認を含め解析を継続する。
[発 表]I-13,i-10,12,13,15,18,19,23,24
(3)システムと人間の調和のための人間特性に関する基礎的・基盤的研究
@住工・住商混在地域のサウンドスケープ評価に関する研究
〔担当者〕
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