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国立機関原子力試験研究費による研究(原子力利用研究)


1.GC-AMS:加速器による生体中,環境中微量成分の超高感度追跡手法の開発


〔担当者〕
化学環境部 柴田康行・田中 敦・米田 穣・久米 博
地域環境研究グループ 森田昌敏

〔期 間〕
平成9〜13年度(1997〜2001年度)

〔目 的〕
 14C等の放射性同位体は,生体中の様々な物質代謝経路の追跡のためのトレーサーとして,また環境中の汚染物質の起源を探る有力なパラメータとして(現生生物が14Cを一定濃度含むのに対し石油石炭起源の物質は含まない)重要な役割を演じている。しかしながら,従来の方法では,目的とする14C含有物質を手間をかけて分離・精製し,その中に含まれる14C量を液体シンチレーションカウンター等の感度の低い分析手法で測定して追跡を行っていた。本研究では,14C等の長寿命放射性同位体の先端的高感度分析手法である加速器質量分析法(AMS)と,微量成分の高度な分離手法である多次元ガスクロマトグラフ(GC)とを組み合わせて,生体中,環境中の微量化学物質中の微量放射性同位体を個別に追跡できる,新しい高感度な分析システムを開発することを目的とする。

〔内 容〕
 初年度に当たる平成9年度には,本研究の鍵を握る技術の一つ,ガスイオン源と,ここで発生したイオンを加速器に導入する同時入射系のそれぞれを立ち上げ,性能をチェックするとともに,ビーム引き出し径の絞り込みと途中のスリットの拡大,位置調整等の改良作業を進めた。予備的な検討の結果からイオン源からの引き出しビームをなるべく細く絞り込んで途中の壁・スリット等に触れないようにすることが高精度の達成に重要であることがわかり,ビーム引き出し部分の口径を狭くし,かつ同時入射系の入り口スリット幅を大きく広げる改良を行った。また,加速器の中で最も狭い場所である中央ターミナル内のストリッパーカナルを内径8mmから11mmのものに変更し,ビームの壁への接触を避けるようにした。さらに各カソードの位置決め方式を改良し,位置決め精度の向上を図った。その結果,同一試料を3つの別々のカソードにつめて繰り返し測定した際のそれぞれの平均値の間の標準偏差が±0.1%を下回る(ただしカウント総数から規定される統計誤差は%程度で,これが最終的に結果の理論的な誤差を決定する),極めて高い繰り返し精度での二酸化炭素試料の測定に成功した。 また,HOxII,ANUsucrose,BeerCO2,Groningen dead Carbonの4種のスタンダードを用いた実験で,保証値(あるいは従来型の固体イオン源で得られたデータ)とよく一致する結果を得て,繰り返し精度ばかりでなく正確度についても十分な実用性を持つレベルに達したことが確認できた。さらに,2次元目のGCと試料捕集装置を導入し,試料捕集条件などに関する基礎的な条件検討を進めた。

〔発 表〕D-7,9,d-11


2.環境化学物質に対するバイオエフェクトセンサーの開発


〔担当者〕
環境健康部 持立克身・古山昭子・青木康展・遠山千春

〔期 間〕
平成7〜11年度(1995〜1999年度)

〔目 的〕
 これまで,化学物質の環境汚染による生体影響の評価は,個々の毒性が危惧される物質について,主として動物実験あるいは培養細胞による毒性試験及び環境中における存在量の調査の手順を踏んで行われてきた。しかし,多くの化学物質が環境中に拡散しその複合汚染が進行している状況では,動物実験の信頼性の高さは認めつつも,迅速性の向上や複合暴露に要する時間や労力等の軽減を考慮に入れた新しい毒性評価系の開発が望まれている。これに対処するには,動物実験と培養細胞の中間に位置する組織同等体を用いた毒性評価系が適当と考えられる。組織同等体とは,生体組織から個別に取り出した各種構成細胞と細胞外基質を組み合わせ,組織と同等の形質を有する細胞培養系に構築したもので,従来の培養細胞の簡便さと迅速性を備えながら,他方生体組織と類似することから局所的な動物実験の特徴も備わっている。本研究では,両者の長所を兼ね備えた組織同等体を,環境化学物質の毒性評価に適した形に構築することを目指す。

〔内 容〕
 肺胞上皮組織同等体としては,in vivoと同様に,細胞同志は密着結合で結ばれ,細胞の先端面には微絨毛,基底面の直下には基底膜緻密板が存在し,基底面と緻密板は接着斑もしくはanchoring filamentで結ばれている上皮構造をとる必要がある。これまで,肺線維芽細胞を包埋したコラーゲンゲル上に,U型肺胞上皮細胞(T2)を播種して培養する(T2-Fgel)ことにより,T2細胞同士は密着結合で結ばれ,基底面には基底膜緻密板が形成され,基底面と緻密板はanchoring filamentで結ばれることが明らかになった。また,形態学的には,種々の大気汚染ガスに感受性が高いT型肺胞上皮細胞(T1)の形態をとった。この共培養系は,上皮組織として条件を満たしているが,上皮細胞の毒性評価系としては,線維芽細胞に対する毒性を間接的に受ける可能性がある点を改良する必要がある。そこで本年度は,線維芽細胞をコラーゲンマトリックスに含まない条件で,上記の上皮組織を形成する培養条件を検討した。
 肺線維芽細胞を包埋したコラーゲンゲルをメンブレンで隔て,T2細胞をコラーゲンゲル上で共培養すると基底膜を形成しなかった。コラーゲンゲルは,線維芽細胞によって固く収縮する。そこで,コラーゲンゲルを一度風乾し固くした後,溶液に戻したマトリックス上にT2細胞を播種し培養すると,同様に基底膜を形成しなかった。両者の条件を組み合わせ,肺線維芽細胞を包埋したコラーゲンゲルをメンブレンで隔て,コラーゲンゲルを一度風乾し後に再膨潤したマトリックス上でT2細胞を培養する(T2-fib-Fcm)と,基底膜緻密板を形成した。また,形態学的にも,T1細胞のに類似した。このT2-fib-Fcm培養系は,他の条件も満たしているので,肺胞上皮組織の毒性評価系として十分利用可能である。

〔発 表〕E-35,e-49〜51


3.大気汚染物質の生体影響機構の解明と耐性植物の作出に関する研究


〔担当者〕
生物圏環境部 佐治 光・久保明弘・青野光子
地域環境研究グループ 中嶋信美・米元純三
環 境 健 康 部 国本 学

〔期 間〕
平成6〜10年度(1994〜1998年度)

〔目 的〕
 大気汚染物質は,それ自身が生物に対して毒物として作用するだけでなく,酸性雨や地球の温暖化などの原因となることから,その除去は環境保全上重要な課題である。一方植物には大気汚染物質を吸収,除去する能力があるため,大気汚染物質の生体に及ぼす影響を解明しつつ,植物の吸収能や耐性を高めることにより大気浄化に積極的に活用していくことが期待される。
 これまでの研究により,オゾンや二酸化硫黄などの大気汚染ガスと接した植物では,エチレンが発生しており,これが植物に生じる障害と深く関わっていることが示唆されている。さらに,この大気汚染ガスによるエチレンの生成は,その生合成のキーエンザイムであるアミノシクロプロパンカルボン酸合成酵素(ACS)の活性化によってもたらされるらしいことが示された。そこでこの酵素の遺伝子を植物から単離し,その構造や発現を調べるとともに,遺伝子操作により大気汚染耐性植物の開発を試みる。

〔内 容〕
 オゾンと接触させたトマトからACSとアミノシクロプロパンカルボン酸酸化酵素(ACO)のcDNAを単離した。それらのDNA塩基配列と推定アミノ酸配列を決定したところ,前者は,トマトの培養細胞でエリシター(病原菌が植物に感染する際に生成する物質で,植物の防御反応を誘導する)により誘導されるもの(LE-ACS6)と,また後者は,トマトの果実から単離されたもの(LE-ACO1)と同一のものであることが示唆された。これらの遺伝子の各種ストレス条件下での発現を調べるため,トマトの実生を大気汚染ガスのオゾンや二酸化硫黄,除草剤のパラコートなどで処理し,ノーザン解析を行った。その結果,LE-ACS6のmRNAは,オゾンとの接触開始後1時間目に一過的に増加するのに対し,二酸化硫黄,パラコートのいずれの処理によっても全く検出されなかった。一方LE-ACO1のmRNAは,オゾンとパラコート処理により,1時間目から4時間目にかけて増加し,6時間目には減少した。また二酸化硫黄処理の顕著な影響は認められなかった。いずれのストレス処理によってもエチレン生成は誘導されるが,以上の結果により,その誘導の仕組みが互いに異なることが示唆される。
 一方,単離したACSのcDNAを適当に改変した後,ベクターに組み込み,トマト,タバコ,ポプラなどの植物に導入した。こうして得られた組換え植物を育て,その生理学的及び分子生物学的解析を行っている。

〔発 表〕B-52,b-137


4.西シベリア大低地から発生するメタンの起源同定のための計測技術の開発に関する研究


〔担当者〕
大気圏環境部 井上 元・高橋善幸
地球環境研究グループ 町田敏暢
科学技術庁特別研究員 森泉 純

〔期 間〕
平成6〜10年度(1994〜1998年度)

〔目 的〕
 自然発生源からのメタンは大気中の二酸化炭素中の濃度を反映した放射性炭素を含んでおり,天然ガスを起源とするメタンはすでに放射能を完全に失っている。この明瞭な違いを利用して,大気中メタンに含まれる放射性炭素同位体の濃度を測定することにより,湿原からの自然発生量と,化石燃料からの人為発生量との割合を求めることができる。

〔内 容〕
 平成8年8月初旬および平成9年2月に西シベリアのスルグートおよびポロトニコボにおいて,航空機により75m,2000m,6000mの高度で大気を1m3サンプリングし,研究所に持ち帰り分析した。高度6000mのサンプルは1.8ppmのメタンに130pMの14Cを含んでおり,これをバックグラウンドと考える。例えば,スルグートで冬季に採取した試料の一つは3.2ppmのメタン濃度で,14Cは82pMしか含まれていなかった。これらのデータから,バックグラウンドに対して加わったメタンの80%は14Cを含まないメタンであると結論づけられる。したがって,冬季にバックグラウンド濃度に対し加わったメタンは,おそらくは天然ガスのパイプラインからの漏れに起因すると考えられる。


5.微生物における有害化学物質分解・除去能の発現機構の解明とその活用に関する研究


〔担当者〕
地域環境研究グループ 矢木修身・岩崎一弘
水土壌圏環境部 内山裕夫・冨岡典子・向井 哲・服部浩之

〔期 間〕
平成5〜9年度(1993〜1997年度)

〔目 的〕
 微生物の持つ有害化学物質分解・除去機能の発現に及ぼす環境要因を明らかにするとともに,分解・除去に関与する酵素及びタンパク質を単離,精製しその諸性質を明らかにする。ついで,分解・除去能に関与する酵素及びタンパク質の遺伝子の遺伝学的特性を調べるとともに発現機構を明らかにする。さらに,自然界に生息する土着性の細菌の分解・除去能の向上化条件を検討し,これらの技術を環境浄化に活用する研究を行う。以上の研究を行うため,以下の課題について検討を加える。
(1)脂肪族ハロゲン化合物分解菌の分解機能の発現に及ぼす物理化学的要因を解明する。(2)脂肪族ハロゲン化合物分解菌により膜結合型及び遊離型脱ハロゲン酵素を分離,精製しその酵素学的諸性質を明らかにする。(3)水銀化合物分解菌の分解機能の発現に及ぼす物理化学的要因を解明する。(4)水銀化合物分解酵素遺伝子をクローニングしてその一次構造を明らかにする。(5)微生物の一価カチオン蓄積に関与する機構の解明を行う。 

〔内 容〕
 (1)1,1,1-トリクロロエタン(TCA)を好気的に分解する土壌細菌TA5株及びTA27株の分類学的検討を加えるとともに,TCAの分解条件及び各種の揮発性有機塩素化合物に対する分解能について検討した。構造と分解性の関係について検討を行った結果,メタン骨格を持つ化合物については塩素数が2個のジクロロメタンは両菌株ともに良く分解したが,塩素数2,3,4と上がるにつれ分解率が低くなり,四塩化炭素では全く分解が認められなかった。エタン骨格の化合物は,1,2-ジクロロエタンや1,1,2-トリクロロエタンのように両方の炭素に塩素が含まれる化合物の分解が悪い傾向が示された。エチレン骨格の化合物は,cis-1,2-ジクロロエチレン及びトリクロロエチレンはよく分解することが分かった。TA27株は土壌中でも分解能を発揮でき汚染の浄化に有用なものと考えられた。(2)揮発性有機塩素化合物分解菌であるMethylocystis sp.M株を用いて,分解能の発現に影響を及ぼす因子について検討した。この結果,生育炭素源の種類と培養液中の銅濃度が非常に重要な因子であり,分解能はメタンによって誘導され,銅濃度が低いほど分解能の向上化が認められた。(3)Mythylocystis sp.M株の揮発性有機塩素化合物分解酵素であるメタンモノオキシゲナーゼを単離・精製し,本酵素がヒドロキシラーゼ・レダクターゼ及び調節タンパクからなるマルチコンポーネントエンザイムであること,さらにその諸性質を明らかにした。(4)塩化第2水銀を還元し,金属水銀にする。塩化第2水銀還元酵素遺伝子をPseudomonas putidaに導入し組換え微生物を作成した。水銀還元能は水銀により誘導されるが,構成的に合成される変異株が認められ,遺伝子解析の結果,塩基が一部欠落していることが判明した。

〔発 表〕B-100,G-4,b-86


6.水界生態系由来の気候変動気体の循環機構解明に関する基礎的研究


〔担当者〕
地球環境研究グループ 原田茂樹
水土壌圏環境部 土井妙子・渡辺正孝
地域環境研究グループ 稲森悠平

〔期 間〕
平成5〜9年度(1993〜1997年度)

〔目 的〕
 地球規模の気候変動に影響を与える気体として,二酸化炭素とジメチルサルファイドが注目を集めている。前者は温室効果気体であり,後者は大気の熱収支に影響を与える気体である。これら2つの気体の消長には,水界生態系における物質循環が大きな影響を与えると言われている。そのため,2つの気体を構成する炭素・硫黄等の水界生態系内循環を明らかにする必要がある。水界生態系内で大気中から取り込まれた二酸化炭素は,藻類等の一次生産者により有機態炭素として固定され以降の食物連鎖の出発点となっている。従来,水界では生食連鎖が主な食物網と認知されていたが近年,藻類が固定した有機物が代謝産物として水界中に放出されていることが判明してきており,この代謝産物により増殖した細菌を出発点として動物プランクトン以降の高次捕食者へと連鎖する腐食連鎖系も重要であると認識されてきている。本研究では動物プランクトン・植物プランクトン・バクテリアによって構成される水界マイクロコズムシステムにおける物質の形態変化を,安定同位体及び放射性同位体トレーサーを用いて解析することを目的としている。

〔内 容〕
 本マイクロコズムは,生産者として緑藻類Chlorella vulgaris,捕食者として原生動物繊毛虫類Cyclidium glaucoma,分解者として細菌Pseudomonas putidaの三種から構成されている。この系内の炭素の流れを解明するためには,各生物に取り込まれた炭素量を経時的に知る必要があるため,この混合培養系であるマイクロコズムを各生物に分画する必要が生じてくる。そこで,各生物のサイズの違いを利用して,マイクロコズム溶液をポアサイズ5.0,2.0,0.2μmのヌクレポアフィルター(Costar社製)を用いてろ過分画し,マイクロコズム溶液および各ろ液中の生物個体数を計数し,各フィルター上に捕そくされる割合(阻止率)を求めたのち,トレーサーとしてNaH14CO3放射性同位体(RI)を添加した。添加後,経時的にろ過分画し,各分画におけるRI量は,液体シンチレーションカウンターにより測定した。各フィルターの阻止率およびフィルター上のRI量から,各生物群に含まれるRI量を算出した。すると,Chl. vulgarisは14Cを添加後2時間で急速に取り込み,その後P. putida,C. glaucomaへ徐々に移動していくことがわかった。
 三種類の生物の混合培養系であるマイクロコズムにRIを添加することにより,添加RIを最初に取り込むChl.vulgarisの吸収速度を算出することができた。
 Chl. vulgarisの代謝物を取り込むP. putidaやその捕食者のC.glaucomaの炭素吸収モデル式をたて,さらなる解析を進めることにより,このマイクロコズム生態系内での炭素の移動特性について解析可能であると考えられた。

〔発 表〕b-10,66


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