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国立機関原子力試験研究費による研究(原子力利用研究)
1.微生物における有害化学物質分解・除去能の発現機構の解明とその活用に関する研究
〔研究担当〕
| 地域環境研究グループ |
: |
矢木修身・岩崎一弘 |
| 水土壌圏環境部 |
: |
内山裕夫・冨岡典子・向井 哲・服部浩之 |
〔期 間〕
平成5〜9年度(1993〜1997年度)
〔内 容〕
エタン資化性菌でトリクロロエタン分解菌として分離されたMycobacterium sp.TA5株及びTA 27株について,各種有機塩素化合物に対する構造と分解性ならびにトリクロロエタン分解代謝経路について検討を加えた。
(1)各種揮発性有機塩素化合物の構造と分解性
揮発性有機塩素化合物として,メタン骨格のジクロロメタン,クロロホルム,四塩化炭素,エタン骨格のジクロロエタン類,トリクロロエタン類,テトラクロロエタン類,フロン113,エチレン骨格のジクロロエチレン類,トリクロロエチレン,テトラクロロエチレンの計15種を用いた。構造と分解性の関係について検討を行った結果,メタン骨格を持つ化合物については塩素数が2個のジクロロメタンは両菌株ともに良く分解したが,塩素数2,3,4と上がるにつれ分解率が低くなり,四塩化炭素では全く分解が認められなかった。エタン骨格の化合物は,TA5株で分解可能な化合物が多く認められた。TA27株は1,2-ジクロロエタンや1,1,2-トリクロロエタンのように両方の炭素に塩素が含まれる化合物の分解が悪い傾向が示された。これらの化合物も1/100に濃度を下げることでよく分解されることが示された。エチレン骨格の化合物は,両菌株で同様な分解傾向を示した。1,1-ジクロロエチレン及びtrans-1,2-ジクロロエチレンは高濃度で分解が悪く,濃度を下げれば分解可能であり,cis-1,2-ジクロロエチレン及びトリクロロエチレンは高濃度でも非常によく分解することが分かった。
(2)分解代謝経路
1,1,1-トリクロロエチレンの分解代謝生産物について検討を加えた結果,TA5,TA27株いずれも2,2,2-トリクロロエタノールの生成が確認された。また,2,2,2-トリクロロエタノールはさらに分解されることが判明した。
〔発 表〕b-193,194
2.水界生態系由来の気候変動気体の循環機構解明に関する基礎的研究
〔研究担当〕
| 地球環境研究グループ |
: |
原田茂樹 |
| 水土壌圏環境部 |
: |
土井妙子・渡辺正孝 |
| 地域環境研究グループ |
: |
稲森悠平 |
〔期 間〕
平成5〜9年度(1993〜1997年度)
〔内 容〕
地球規模の気候変動に影響を与える気体として,二酸化炭素とジメチルサルファイドが注目を集めている。前者は温室効果気体であり,後者は大気の熱収支に影響を与える気体である。これら2つの気体の消長には,水界生態系における物質循環が大きな影響を与えると言われている。そのため,2つの気体を構成する炭素・硫黄等の水界生態系内循環を明らかにする必要がある。本研究では動物プランクトン・植物プランクトン・バクテリアによって構成される水界マイクロコズムシステムにおける物質の形態変化を,安定同位体及び放射性同位体トレーサーを用いて解析することを目的としている。
本年度は,生態系内の炭素収支を微生物を用いて明らかにするために,個体群動態と物質フラックスの関係を同時に検討する必要性から,環境因子等の条件を制御でき,再現性がある種構成の単純な三者系マイクロコズムを用いて,両者の関係を明らかにすることを試みた。放射性炭素を定常状態の三者系マイクロコズムに添加して,各構成生物に取り込まれた放射性炭素を経時的に追跡し,同時に対象系の個体数の計測も行った。その結果,光合成で緑藻が無機炭素を1〜2時間以内に取り込むことがわかった。その後,代謝物として産生した有機炭素をバクテリアが摂取して,バクテリアが原生動物に捕食されるとみなすと,炭素フラックスは各生物を経るごとに約10分の1づつ減少していくものと推察され,この方法により,微生物生態系における個体群動態と物質フラックスとの関係を統合する方法として使用できることがわかった。
また炭素の安定同位体を添加した系を作成して,同様に各構成生物に取り込まれた炭素安定同位体量を経時的に追跡して,放射性炭素と類似した挙動を示すことが確認された。
〔発 表〕A-74,75,a-108,b-37,75
3.大気汚染物質の生体影響機構の解明と耐性植物の作出に関する研究
〔研究担当〕
| 生物圏環境部 |
: |
佐治 光・久保明弘・青野光子 |
| 地域環境研究グループ |
: |
中嶋信美・米元純三 |
| 環境健康部 |
: |
国本 学 |
〔期 間〕
平成6〜10年度(1994〜1998年度)
〔内 容〕
大気汚染物質は,それ自身が生物に対して毒物として作用するだけでなく,酸性雨や地球の温暖化などの原因となることから,その除去は環境保全上重要な課題である。一方植物には大気汚染物質を吸収,除去する能力があるため,大気汚染物質の生体に及ぼす影響を解明しつつ,植物の吸収能や耐性を高めることにより大気浄化に積極的に活用していくことが期待される。
これまでの研究により,オゾンや二酸化イオウなどの大気汚染ガスと接した植物でエチレンが発生し,この物質が,植物に生じる障害と深くかかわっていることが示唆されている。さらに,この,大気汚染ガスによるエチレンの生成は,その生合成のキーエンザイムであるアミノシクロプロパンカルボン酸合成酵素(ACS)の活性化によってもたらされるらしいことが明らかとなった。そこでこの酵素の遺伝子レベルでの研究を行うため,オゾンと接触させたトマトからACSのcDNAを単離し,その構造を決定したところ,これまでに報告されているものとは異なる新規なアイソザイムがオゾンによるエチレン生成の誘導に関与しているらしいことが示唆された。
〔発 表〕K-2,38,H-20,k-5
4.西シベリア大低地から発生するメタンの起源同定のための計測技術の開発に関する研究
〔研究担当〕
| 大気圏環境部 |
: |
井上 元・高橋善幸・遠嶋康徳 |
| 地球環境研究グループ |
: |
町田敏暢 |
〔期 間〕
平成6〜10年度(1994〜1998年度)
〔内 容〕
自然発生源からのメタンは放射性炭素を含んでおり,天然ガスを起源とするメタンはすでに放射能を失っている。この明瞭な違いを利用して,大気中メタンに含まれる放射性炭素同位体の濃度を測定することにより,湿原からの自然発生量と,化石燃料からの人為発生量との割合を求める。
平成6年度には航空機上において冷却した活性炭にメタンを吸着濃縮する事を予備的に試みたが成功しなかった。平成7年には高圧コンプレッサーでボンベに加圧サンプリングを行ったが,電源のトラブルでわずかなサンプルしか採取できなかった。こうした経験から,平成8年は100リットルの大容量の容器に10気圧までサンプルを圧縮して採取し,日本に輸送し実験室で前処理を行うこととした。
平成8年8月初旬および平成9年1月下旬に300m,2,000mの低高度では複葉機のアントノフ−2で,6,000mではターボプロップ機であるアントノフ−26Bで,合計20のサンプルを採取した。発生源の影響評価を行うため,低高度のサンプルはスルグートとトムスクで採取し,バックグラウンドの高高度のサンプルはスルグートのみで採取した。
5.環境化学物質に対するバイオエフェクトセンサーの開発
〔研究担当〕
| 環境健康部 |
: |
持立克身・古山昭子・青木康展・遠山千春 |
〔期 間〕
平成7〜11年度(1995〜1999年度)
〔内 容〕
化学物質の環境汚染による生体影響の評価を行うために,生体組織から個別に取り出した各種細胞を組み合わせ,組織と同等の形質を有する細胞培養系を構築し,複合毒性を容易に評価できる系の開発をすすめている。
重金属や酸化的ストレスなどに対する生体防御因子として重要な役割を果たしているメタロチオネイン(MT)の欠損マウスの肝臓から不死化細胞を樹立して,有害化学物質の酸化的ストレスの影響評価のin vitro 培養系の確立を試みた。その結果,MT欠損マウス及び対照である野生型マウスの肝臓をそれぞれ摘出し,コラゲナーゼで処理し,低速遠心後に得られた細胞にSV40ウィルスを感染させ,その後生存し続ける不死化細胞を得た。得られた細胞は20回以上の継代ののちも増殖を続けている。MT欠損(MT−/−)細胞と対照(MT+/+)細胞の両細胞の,重金属化合物に対する感受性を調べた。亜鉛に対する感受性には差異は認められなかったが,MT(−/−)細胞は,MT(+/+)細胞に比べて,カドミウム,無機水銀,シスプラチンに対して著しい感受性を示した。
また,肝臓の機能に対する環境化学物質の影響評価を行うためには,不死化した肝実質細胞が肝機能をどの程度維持しているかを明らかにしておく必要がある。そこで,ラット初代培養肝実質細胞とSV40T-antigenで不死化した肝実質細胞の間でその機能を比較した。その結果,不死化細胞では血清アルブミンの分泌能が初代培養細胞の約100分の1に低下していた。一方,肝臓の重要な機能である薬物代謝酵素のPCBによる誘導能を調べた。不死化細胞,初代培養細胞ともにCYP1A1の誘導能は有していたものの,不死化細胞ではGST-Pは内在的に発現しており,PCBによる誘導は認められなかった。
〔発 表〕e-51,54
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