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ホーム > 刊行物 > 国立環境研究所年報 > 平成8年度 > 特別研究  5.廃棄物埋立処分に起因する有害物質暴露量の評価手法に関する研究

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特別研究


5.廃棄物埋立処分に起因する有害物質暴露量の評価手法に関する研究


〔研究担当〕
地域環境研究グループ 森田昌敏・白石寛明・西川雅高・曽根秀子
化 学 環 境 部 中杉修身・安原昭夫・吉永 純・山本貴士・白石不二雄・
瀬山春彦・堀口敏宏
客員研究員 21名
   下線は研究代表者を示す
〔研究期間〕
 平成6〜9年度(1994〜1997年度)

〔研究概要〕
 廃棄物は人間活動の増大・物質文明の発達に伴い,発生量が増大するとともにその性状についても多様な広がりを見せている。また,国際的のも越境汚染問題,発展途上国における大都市周辺のごみの山問題等,今後の人間活動の根幹にかかわる緊急かつ重大な解決すべき環境問題となっている。
 我が国においても廃棄物は,経済の成長に伴い,その量は増大し,質的には多様化している。ゴミの減量化と無害化を目的とする中間処理としての焼却処理については,高効率燃焼・排ガス対策などによる汚染対策に加え,ゴミ発電や熱電併給システムの導入などエネルギー源としての見直しがなされつつあるなど,焼却処理に伴う環境問題には解決の糸口が見えつつある。一方,廃棄物の最終処分の主要な形態である埋立処分については,埋立処分地からの浸出水・漏出水による地下水や地表水の汚染が懸念され,そこに含まれる有害物質による人の健康あるいは生態系への影響が危惧されている。
 上水道の水質基準や水質や土壌にかかわる環境基準の改訂に伴い,廃棄物の埋立処分に起因する有害化学物質による環境汚染についての防止策がとられ始めたものの,浸出水中に含まれる化学物質の実体や危険性については未だ不明確な状態である。また,埋立処分地から発生する揮発性成分による大気経由の環境汚染に関しては,埋立処分地で化学的変化の結果生じるおそれのある揮発性有害物質はもとより,廃棄物にもともと含まれていた揮発性物質についても,情報がほとんどないのが実状である。さらに,過去の埋立地の再開発・再利用に伴う人の健康や環境影響についても未解明な状態であり,廃棄物の埋立処分に伴う有害物質の環境に対する負荷を明らかにし,そのリスクを評価する手法を提示することが,現在,社会的に求められている。
 有害物質による環境汚染の中で廃棄物問題の持つ特徴は,評価の対象となる有害化学物質として,廃棄物中に含まれる化学物質や農薬等だけではなく,燃焼や埋立処理に伴い非意図的に生成する物質が多く含まれる可能性が高いことである。また,特に埋立処理では水溶性の蒸気圧の低い物質も生成すると考えられているため,環境中の化学物質の分析法として広く用いられている溶媒抽出法などの前処理法やガスクロマトグラフィー/質量分析法(GC/MS)などの検出法以外にも様々な分析手法を導入し十分な測定を行い,有害性についての評価をする必要がある。
 本特別研究では,有害物質の環境に対する影響を評価する上で不可欠な化学物質の環境濃度を測定するために,最新の物理・化学的分離分析手法の適応性の拡大をはかり,さらにこれを標準化するとともに,埋立処分に関する暴露量に関する評価手法を確立することを目的としている。

〔研究成果〕
 埋立処分地からの浸出液等の水系経由,並びに揮発性成分及び粒子状物質等の大気系経由の有害物質の環境に対する負荷量及びその環境影響を評価する手法を構築することを目指し,次の各サブテーマを研究対象とした。

(1)埋立地由来汚染物質の検出法及び特定法の高度化
 1)浸出水中の汚染物質などの捕捉・同定率の向上
 環境試料を含め複雑な混合物中の有機物質の測定にあたって,今日,広く採用されているGC/MSによっても,埋立地浸出水の分析においては全有機物質含量の10%以下の成分しか測定できない。これは,浸出水中の蒸気圧の低い(蒸発し難い)物質,水溶性の物質,あるいは熱分解し易い物質が含まれ,これらが通常の濃縮操作を伴うGC/MSによっては測定が困難であるためである。そこで,これらの物質を測定するためにサーモスプレーイオン源を持つ磁場型の装置,エレクトロスプレー及び大気圧イオン化方式のイオン源を持つ四重極型のMS/MS装置を用いて行った。一部の試料で分子構造に(CO)nの重合物の存在を示唆するスペクトルが得られたものの,標準となるライブラリーが存在しないため,LC/MSのみによる未知物質の物質同定は困難であった。本法は,浸出水中の変異原物質の検索などに活用するのが適当であると考えられた。
 2)埋立地から発生する揮発性物質に関する研究
 埋立地においては,埋め立てられる廃棄物の種類及び埋立地の物理・化学的形態により,好気的酸化状態から嫌気的還元状態まで様々な状態で分解が起こり,二酸化炭素やメタン等の気体の発生が見られることは良く知られている。分解による発熱に伴い廃棄物に含まれる可能性のあるトリクレン・パークレンなどの低沸点有機溶剤等が揮発することが考えられる。埋立処分場ガス中の揮発性有機化合物(VOC)の測定を,前年度検討したキャニスター法で行った。埋立処分場ガスをガス抜き坑より真空ビン(キャニスター)で捕集した。定量対象とした成分は,米国EPAのTO-14法に記載されている物質のうち,フロン11などの低沸点化合物を除く32成分である。処分場発生ガスより高濃度で検出された物質は,脂肪族塩素化合物では,1,1-ジクロロエタン(処分場Nの平均値:103ppb)1,2-ジクロロエテン(30ppb),1,2-ジクロロエタン(4ppb),トリクロロエチレン(1.5ppb)であった。アルキルベンゼン類では,ベンゼン(248ppb),エチルベンゼン(478ppb),キシレン(m,p-;236ppb,o-;43ppb),1,2,4-トリメチルベンゼン(118ppb)などであり,周辺大気と比較して2桁ほど高濃度の発生ガスが見受けられた。クロロベンゼン類では,クロロベンゼン(18ppb)の濃度が高い傾向にあった。図1に塩化アルカン類の埋立処分場発生ガス中の濃度と参考のため室内空気中の濃度を示した。ガスの発生が認められる地点の四塩化炭素は周辺大気より低濃度であった。これは,ガスの発生に伴う希釈の効果と思われる。また,ジクロロエタンなど炭素数が2の化合物の濃度が高い傾向が見られた。塩化ベンゼン類では,室内空気中では殺虫剤のジクロロベンゼンが高い濃度で検出されるが,埋立処分場発生ガスではクロロベンゼンの濃度が他と比べて高い傾向があった。同様に,アルキルベンゼン類の室内空気との比較では,埋立処分場発生ガスのエチルベンゼンが相対的に高い傾向があった。VOC濃度の最も高かった処分場のガス抜き坑からの発生量は,エチルベンゼンで670g/年,ベンゼンで250g/年,1,1-ジクロロエタンで130g/年などと推定された。地表面からの発生量を加味する必要があろうが,埋立処分場からVOCの大気への負荷量はそれほど大きくないと考えられた。発生ガス中のVOCの起源には焼却灰に由来する化合物やポリスチレンなどのプラスチックの分解による化合物など様々な要因が考えられ,今後の検討課題である。
 3)廃棄物汚染の指標となる物質群の効果的な検出手法に関する研究
 埋立処分に伴う汚染物質は,構成成分が特定困難で複雑な組成をなすため,環境中でこれらによる汚染の検出は容易でない。このため,埋立処分に起因する汚染のマーカーとなる物質(群)をGC/MS,GC-AED(原子発光検出器)及びLC/MS等の最新の測定手法を用いて検索している。本年度も,GC/MSによる一括分析手法の適用拡大に加えて,元素特異的に検出することにより化学物質を物質群として分類する試みとしてGC/AEDによる測定を継続した。その結果,いくつかの浸出水から,プラスチックの発泡剤などに使われるアゾビスイソブチロニトリルの分解物と考えられるテトラメチルブタンジニトリルなどが同定された。

(2)埋立処分に係わる有害物質暴露量評価手法に関する研究
 1)溶出試験及び廃棄物分類法の検討
 埋め立てられた廃棄物による環境汚染の主要な経路である浸出水の管理のため廃棄物の溶出試験が実施されているが,埋立地の環境と現行の溶出条件でとは性質が異なっている。このため,溶出試験法について実体をより反映した溶出試験として,廃プラスチックからの溶出試験を目的に,ガラス製のカラムに焼却灰(ボトムアッシュ)や廃プラスチックを充てんし,廃プラスチックから溶出する溶出する成分の分析を行った。
 2)強毒性物質の検索
 埋立処分地からの浸出液を用いて,エイムズ試験による変異原性試験,姉妹染色分体交換頻度より見た遺伝毒性試験,マイクロトックス試験による急性毒性試験を行った。変異原性試験は,固相抽出法により濃縮した試料を用い,ニトロ芳香族化合物や芳香族アミンに高感受性を示す菌株ふくむ6種類の菌株を使用して行った。前年度と同様に,浸出水より検出されるエイムズ試験による変異原性は,芳香族アミンに高感受性の菌株で対照株よりも高い変異原性が検出される傾向が強かった。また,各々の菌株で検出される浸出水中の変異原の相対的な強さのパターンは良く類似していた。A処分場より夏に採取した浸出水は,一般毒性に比較してかなり強い変異原性が認められた。この試料は,姉妹染色分体交換頻度より見た遺伝毒性試験でも同様に強い毒性を示したが,マイクロトックス試験では相対的に弱い毒性を示した。また,GC/MSによる測定でも相対的に低濃度であった。したがって,この浸出水には,強い変異原性や遺伝毒性をもつ物質が含まれていると推定された。比較のため,冬に採取した浸出水では,毒性は減じたものの同様の結果となった。シリカゲルカラムによる分画では,5%エタノール−ベンゼンに強い変異原性が認められた。また,長時間窒素パージしても揮散しないことからこの物質(群)は,極性の官能基をもった揮発しにくい性質を持っていると考えられた。今回,1例ではあるが埋立処分地の浸出水から比較的強い変異原性や遺伝毒性が検出された。その原因物質などについては,今後さらに検討する必要がある。

(3)モニタリングシステムの開発
 1)埋立地浸出水共同分析プログラム
 化学物質の観点から浸出液の実体を明確にすること及び定状的なデータ取得及び監視のできる測定法や標準的な測定法を提示することを目的として,平成6,7年度に引き続き,地方公害研究所等との共同研究で最終処分場より採取した浸出水を10カ所の最終処分場で採取した。測定結果はおおむね前年度とほぼ同様となっているが,有機物で濃度の高い物質(ppb以上)としては,1)低分子の脂肪酸,2)フェノール類,3)リン酸エステル類,4)フタル酸エステル類,5)芳香族アミン類,6)ジオキサン,7)ビスフェノールA,8)トルイジンやナフチルアミンなどの芳香族アミンがあげられ,濃度の低い物質(数ppt以下)としては,クロルダン,DDT等の有機塩素系農薬や多環芳香族化合物などがある。発ガンリスクから見ると,直接に浸出水を飲用するとしてもクロルダン,DDT等の発ガンリスクは10−7レベル以下と計算されたが,ジオキサンとフタル酸ジエチルヘキシルのリスクが相対的に高い結果となった。
 2)汚染土壌標準試料
 共通試料の作成・分析による測定手法の統一化・標準化を検討する目的で作成した環境分析試料(埋立地汚染土壌)No.1,No.2中の無機元素を複数の分析機関で複数の分析手法により測定し参考値を提示した。この標準試料は,Cu,Zn,Pbは,地殻平均存在度よりも含有量が高く,Na,Mg,Caなどは含有量が低かった。今までに,採取した汚泥試料中の金属元素は,Alの相対濃度で比較する多くの元素で埋立地汚染土壌No.1と同等であり,10倍以上の濃縮を示すような底泥は存在しなかった。
〔発 表〕B-57,107,D-22,28,29,31〜33,39,41,b-119,145,d-10,24,25,39


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