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経常研究


生物圏環境部


研究課題 1)淡水生物群集における食物網と生物間相互作用
〔担当者〕 岩熊敏夫
〔期 間〕 平成5〜8年度(1993〜1996年度)
〔内 容〕 尾瀬ヶ原の中田代で,水深・形態・水草の生育状況が異なった3つの池溏,すなわち,ポット型で縁の部分が深く切れ込んで水草が存在しないNA5-43,縁の部分が複雑に入り組み比較的浅いNA5-47,及び池溏全体が水草で覆われたNA5-49で底生動物の食性を調べた。  3つの池溏より,双翅目3タクサ,トビケラ目3タクサ,トンボ目11タクサ,半翅目1タクサ,甲虫目2タクサ,その他2タクサの合計22タクサの底生動物が出現した。底生動物群集は季節を通じて3つの池溏ともにユスリカ科幼虫が個体数の大部分を占めた。
 各分類群の食性は池溏間で類似し,肉食者(トンボ目,ユスリカ科のTanypodinae),雑食者(トビケラ目)及び藻類・デトリタス採食者(ユスリカ科のChironominae-Tanytarsini spp.)の3つのグループに分類された。食物網は各池溏ともに主要な経路3つの経路,(1)デトリタス・藻類からユスリカ幼虫を経て底生のトンボ類,イトトンボ類及び雑食性のトビケラに至る経路,(2)デトリタス・藻類から直接雑食性のトビケラ類に至る経路,(3)藻類からミジンコ類を経てイトトンボ類に至る経路から構成された。さらに,各池溏ともにデトリタスが藻類とともに重要な食物源であることが明らかとなった。
〔発 表〕 h-6,7,9,10,29

研究課題 2)植物の生理生態機能の画像診断法に関する研究
〔担当者〕 大政謙次・戸部和夫
〔期 間〕 平成7〜11年度(1995〜1999年度)
〔内 容〕 植物形態の3次元計測を目的として,複数の焦点面の異なる画像から,3次元カラー画像が再構成でき,形状だけでなく,色調や成長などの解析ができるシステムを開発した。このシステムは,細胞レベルから群落レベルの計測まで,幅広く使用できるが,本年度は,主に,光学顕微鏡を用いた実生の計測と成長の解析に適用した。また,群落の計測を行うための特性試験を行った。一方,得られた計測結果の画像認識を容易にするためにバーチャルリアリティのシステムを開発し,植物細胞の合焦点画像の合成と立体表示を行った。また,植物個体や群落についても同様な検討を行った。
〔発 表〕 H-14,15,17,h-14〜17

研究課題 3)中国の半乾燥地域に生育する植物の生理生態機能に関する研究
〔担当者〕 大政謙次・戸部和夫
〔期 間〕 平成7〜11年度(1995〜1999年度)
〔内 容〕 本年度は,土壌の塩性化の進んでいる中国北西部の乾燥地域に生育する植物種4種に対し,異なるNaCl濃度をもつ水耕液を用いて植物を栽培し,各植物種の塩性環境への適応性を調べた。その結果,非塩性の土壌のみに生育する「沙冬青」は,0.02mol/l以上の塩を含む条件下では全個体が枯死した。また,弱度の塩性土壌に生育する「琵琶柴」と強度の塩性土壌と非塩性土壌の双方に分布する「梭梭」では,それぞれ,0.3mol/lおよび0.5mol/lまでの塩濃度下で生育可能であった。一方,強度の塩性土壌のみに生育する「塩穂木」は,0.23mol/l前後の塩条件が最も生育に有利であり,1.0mol/lの塩濃度下でも十分に生育できた。以上の結果から,これら4植物種は,塩環境への適応性が大幅に異なっており,こうした塩適応性の種間の相違が,生育地点の分布を支配する重要な要因となっていることが推測された。
〔発 表〕 H-12

研究課題 4)高山域に分布する植物の環境適応性に関する研究
〔担当者〕 名取俊樹
〔期 間〕 平成7〜11年度(1995〜1999年度)
〔内 容〕 高山域に分布する植物の環境適応性の特徴を明らかにするために,前年度に引き続き,低地域から高山域までに分布するイタドリについて,生育高度の上昇に伴う光合成のCO2依存性,活性酸素に対する光合成の抵抗性,光呼吸速度を比較した。その結果,これらの特性のなかで低地と高地との間で最も明確な差が認められた特性は,水ストレスによる傷害や低温による傷害に関係していると考えられている活性酸素に対する光合成の抵抗性であった。

研究課題 5)温帯林野生植物の環境反応性に関する研究
〔担当者〕 清水英幸
〔期 間〕 平成7〜11年度(1995〜1999年度)
〔内 容〕 地球環境変動等による野生植物への影響が懸念される。本研究では,奥日光地域の蘚苔類等の野生植物の生理生態的特性と環境要因との関係を明らかにするために,野外調査や実験的解析を行う。本年度は,奥日光森林地域の林床植生構成種の一つであるPlagiomnium属の連続培養法について検討した。Plagiomnium属数種の成育する野外環境を調査した上で,地下水を利用した流水式の連続培養システムを実験圃場の温室内に構築した。年間の地下水の温度は16〜22℃,pHは7.0〜7.7,電気伝導度は150〜190μS/cmで変化していた。寒冷紗等で光強度を15〜200μE/m2/secに調整して培養した。藻類等の混入については,カワニナ等小動物を投入することにより増殖を抑制できた。地下水の水位,流入量,貯水量等とPlagiomnium属数種の乾重生長について実験的解析を行った。
〔発 表〕 H-21,22,28

研究課題 6)植物による環境浄化に関する研究
〔担当者〕 大政謙次・戸部和夫
〔期 間〕 平成8〜12年度(1996〜2000年度)
〔内 容〕 植物は,自動車の排気ガスや建築資材などからのアルデヒド類や窒素酸化物,光化学オキシダント,芳香族化合物などの汚染ガスを吸収する能力をもっている。本年度は,前年度にひき続き,ホルムアルデヒドの樹木への吸収について検討するとともに,オゾンの光合成被害と樹木への吸収について,街路樹などに使用されている十数種類の樹木等について検討した。その結果,つたの類がオゾンへの抵抗性があり,吸収能力が大きいことがわかった。また,土壌へのオゾンの吸収・吸着現象を調べたところ,土壌水分が少ないほど,吸収・吸着速度が大きかった。このことは,緑地のオゾンの浄化能力をモデル化する際,土壌への吸収・吸着を考慮する必要があることを示唆している。
〔発 表〕 H-16,18,h-18

研究課題 7)微生物の多様性に関する研究
〔担当者〕 渡邉 信・広木幹也
〔期 間〕 平成6〜10年度(1994〜1998年度)
〔内 容〕 富栄養湖沼で水の華を形成する浮遊性藍藻アナベナ属18種50株について,直鎖型脂肪酸分析を行った。アナベナ属はすべて18:3(α)をもつことから,脂肪酸組成でタイプ2の特徴を示すが,16:1(trans),16:2及び16:3の有無によってタイプ2Aとタイプ2Bに区分することができた。脂肪酸組成の類似性に基づく解析により,螺旋形のアナベナの脂肪酸組成によるグルーピングは形態分類とほとんど一致していた。また直線形のアナベナもその脂肪酸組成は形態分類とほぼ一致していたが,A. affinisはタイプ2Aと2Bの2グループにわかれ,A. planctonicaは3グループにわかれた。18SrDNAのシークエンス解析により,無色のベン毛藻Aulacomonasは真核生物の祖先的な系統に位置づけられることが示唆された。シアノバクテリアRaphidiopsis mediterraneaとR. curvataについてはヒゲモ科,ネンジュモ科,ユレモ科のいづれに属する属なのか論争があったが,脂肪酸組成はユレモ科の特徴を示した。
〔発 表〕 K-70,85,H-36,37,40,h-31〜34,36,39〜47

研究課題 8)緊急に保護を必要とする車軸藻類の分布と培養の研究
〔担当者〕 渡邉 信
〔期 間〕 平成6〜10年度(1994〜1998年度)
〔内 容〕 現在まで,関東甲信越・北陸地方の20湖沼,東北地方7湖沼,北海道大沼,琵琶湖,宍道湖,神西湖の合計31湖沼における車軸藻類の分布の状況を調査を完了した。これらの湖沼には1963年には27種類の車軸藻が生息していたが,今回の調査では4種類を確認しただけである。20湖沼で車軸藻類が全滅しており,残り11湖沼でもわずか2,3種類の車軸藻しか存在せず,全体として車軸藻類は湖沼では種数,個体数を激減させていることがさらに顕著となった。対象となった車軸藻27種のうち,絶滅種4種,野生絶滅種1種,絶滅危惧I類種22種と,すべての種が絶滅危惧I類種以上にランクされる。また,野生では絶滅したホジツリモは培養株として保存されているが,元の生息地の野尻湖へ復帰させるための現場実験を平成7年度より行っている。本年度は前年度移植したホシツリモの球状体より発芽した個体がみられたことから,移植したホシツリモの一部が根付いたものと判断される。
〔発 表〕 h-37

研究課題 9)富栄養湖沼における藻類毒の挙動に関する研究
〔担当者〕 渡邉 信・広木幹也・彼谷邦光*1・佐野友春*1・稲森悠平*2
 (*1化学環境部,*2地域環境研究グループ)
〔期 間〕 平成7〜11年度(1995〜1999年度)
〔内 容〕 有毒アオコであるミクロシステイス(Microcystis)は混合栄養型黄金色藻類によって捕食されることを明らかにしてきたが,平成8年度の調査の結果,食用ガエルRana grylioのオタマジャクシによっても捕食されることが判明した。オタマジャクシは有毒アオコが発生する池で生育し,2〜3週間かけてカエルとなるが。この間オタマジャクシの増殖とともに有毒アオコの濃度が減退していくことがわかった。実験において,有毒アオコを6〜9×106細胞/mlの濃度でオタマジャクシに投与したところ,20mg/body/dayの速度で体重を増加させた。クロレラ(Chlorella)を投与した場合はオタマジャクシの体重の増加はみられなかった。様々な濃度の有毒アオコ及びその水抽出液(毒素ミクシスチンが2.768μg/mg/dw含有)を1週間オタマジャクシに与えた場合に,オタマジャクシは順調に成長した。
〔発 表〕 H-38,41,h-30,38,a-150

研究課題 10)土壌有機物分解についての酵素学的測定手法に関する研究
〔担当者〕 広木幹也・渡邉 信
〔期 間〕 平成5〜8年度(1993〜1996年度)
〔内 容〕 土壌の有機物分解活性における種々の土壌微生物の寄与を評価する目的で,土壌セルラーゼ活性と微生物由来のセルラーゼの酵素学的特性を比較している。本年度は福島県南会津郡宮床湿原の泥炭土壌中に優占するセルロース分解細菌類(9株)を単離した。これらの細菌類はいずれも長さ3〜6μmの長桿菌で,CMセルロースを基質とした培地で良く生育し,また,アミラーゼ,プロテアーゼなど他の高分子分解酵素も生産した。これら単離された細菌類の生成するセルラーゼの特性を明らかにするため,セルロースを基質として培養し,培養液から粗酵素を抽出した。
〔発 表〕 K-60,H-34,35

研究課題 11)河川及びその集水域の周辺環境と底生動物に関する研究
〔担当者〕 佐竹 潔・多田 満
〔期 間〕 平成7〜9年度(1995〜1997年度)
〔内 容〕 河川における底生動物群集は様々な形でそれを取り巻いている周辺環境に依存していると考えられている。また,河川の水位変動や地形的要因による伏流が底生動物群集の季節的な変動を解析する上で重要な要因であることも前年度の調査からわかってきた。本年度は,底生動物群集とその取り巻く環境との関係について明らかにする目的で,筑波山周辺の山地渓流から平地河川にかけて底生動物の分布調査を行った。その結果,底生動物の中でも,イシガイ科・シジミガイ科に属する淡水産二枚貝類の分布が極めて局所的であることが分かった。しかし,これらの種類の分布を制限する要因としては,人間活動によるものなど,様々なものが考えられるので,さらに検討する必要があると考えられた。

研究課題 12)環境ストレスが移行帯植物群落に及ぼす影響に関する基礎研究
〔担当者〕 野原精一
〔期 間〕 平成5〜8年度(1993〜1996年度)
〔内 容〕 尾瀬沼に侵入した帰化植物の動態調査を1996年9月に行った。絶滅危惧植物であるカタシャジクモの分布を確認した。また,水深1〜6mまで繁茂していたコカナダモは生育が著しく悪かった。浅い場所を除いたほとんどの湖底の植生がなくなり砂漠化した湖底となっていた。調査開始した1987年以来生育の年変動を繰り返していたが,本年は他の湖沼で見られているような衰退が尾瀬沼でも始まったと考えられる。コカナダモ侵入以前に生育していた他の水生植物は分布が狭まっているが種の消滅はなく,今後の在来種の回復が期待された。クローン植物であるので遺伝的多様性が少なく病気等に弱く衰退するのではないかという仮説が考えられる。
〔発 表〕 H-30〜32,h-28

研究課題 13)河川底生動物群集における食物網の多様性と生物間相互作用
〔担当者〕 多田 満
〔期 間〕 平成6〜8年度(1994〜1996年度)
〔内 容〕 筑波山麓の農村地帯を流れる小桜川とそれが下流で合流する川又川において底生動物の季節的な個体数変動調査を行った。その結果,小桜川では,5目5科4属11種,川又川では,4目2科2属7種の水生昆虫の幼虫が採集された。個体数で優占したシロハラコカゲロウは,両河川において同様な季節変動がみられたが,キタマダラカゲロウでは小桜川で11月に個体数のピーク(600個体/m)が,川又川では遅れて1月にピークが現れた(630個体/m)。トビケラ目では造網性のシマトビケラ属が個体数で優占した。羽化期にあたる5〜6月には幼虫の個体数密度は低下したが,7〜8月に農薬の流入のあった川又川で個体数が低く抑えられ(<500個体/m),9月になってピーク(2480個体/m)がみられたが,小桜川ではその時期にピーク(3080個体/m)がみられた。一方,それら水生昆虫の捕食者であるヘビトンボは,比較的食物網の多様性の高いとみられた小桜川で通年採集されたが,川又川ではシマトビケラの個体数が増大した9〜10月にかけてのみ採集された。
〔発 表〕 h-25,26

研究課題 14)湖沼沿岸帯に生息する底生生物の生息環境に関する研究
〔担当者〕 上野隆平・高村典子*1      (*1地域環境研究グループ)
〔期 間〕 平成7〜11年度(1995〜1999年度)
〔内 容〕 研究所内にある生態園実験池の水草帯において底生動物の生息場所および餌の選好性を調べるため,前年に引き続き水草の付着物・水中・底質の採集を行い,約0.3mmのふるいに残ったものについて同定・消化管の解剖を行った。前年も採集された35タクサに加え5タクサが新たに採集されたが,優占種は変わらなかった。餌については,非捕食性のユスリカやフタバカゲロウなどは植物遺体などの堆積物を,捕食性のゲンゴロウ類とギンヤンマはイトミミズ・ユスリカ・フタバカゲロウをそれぞれ利用していた。すなわち水草が食物網の基礎として重要な地位を占めていると考えられた。捕食者のうち,イトトンボはユスリカと同様にミジンコも利用していた。イトトンボの場合,プランクトンを経由する栄養の流れも重要であると思われた。
〔発 表〕 h-11

研究課題 15)環境指標生物としてのホタルの現況とその保全に関する研究
〔担当者〕 宮下 衛
〔期 間〕 平成8〜11年度(1996〜1999年度)
〔内 容〕 筑波山麓のゲンジボタルの生息する渓流において,11の水質測定項目とその羽化率との関係について調べた。その結果,ゲンジボタル上陸幼虫の羽化率は,電気伝導度の増加に伴い減少することが認められた。さらに,これらの調査結果に基づき,電気伝導度の変動を指標にしたゲンジボタル個体群の滅亡要因の判別法を作成した。

研究課題 16)植物の新しい活性酸素毒性防御遺伝子のクローニングとその発現機構の解明
〔担当者〕 佐治 光・久保明弘・青野光子
〔期 間〕 平成5〜9年度(1993〜1997年度)
〔内 容〕 本研究は,環境ストレス耐性と密接に関連することが知られている活性酸素解毒にかかわる新規の遺伝子の単離と,その発現機構の解明を目的とする。本年度得られた主な成果は次のとおりである。
(1)シロイヌナズナを高温,低温,乾燥,二倍量の光にさらして,活性酸素消去系酵素の活性を測定したところ,デヒドロアスコルビン酸レダクターゼの活性が,高温,乾燥,二倍量の光照射で増加した。また,乾燥では,グアヤコールペルオキシダーゼ活性も増加した。一方,低温では,アスコルビン酸ペルオキシダーゼとグルタチオンレダクターゼの活性が増加し,カタラーゼの活性が減少した。以上の結果から,これらのストレスのいずれにも活性酸素が関与しているものの,その詳細は各ストレス処理により異なっているということが示唆された。
(2)グルタチオンレダクターゼの遺伝子をシロイヌナズナから単離した。
〔発 表〕 H-1,2,19,h-1〜4,22〜24

研究課題 17)集水域生態系の多様性保全のための移行帯の機能に関する予備的研究(奨励研究)
〔担当者〕 野原精一・岩熊敏夫・広木幹也・椿 宜高*1・奥田敏統*1・山形与志樹*2
 (*1地球環境研究グループ,*2社会環境システム部)
〔期 間〕 平成8年度(1996年度)
〔内 容〕 第3次尾瀬ヶ原総合学術調査の一環として池溏の浮葉植物の分布・生産及び生育環境の多様性を調べた。全炭酸(TIC)と溶存有機炭素量(DOC)の季節変化を中田代の約50カ所の池溏で調べた。TICは3mgC/l以下,DOCは20mgC/l以下で池溏によって様々であった。1995年7月に約50カ所の池溏で池水をろ過後,分光光度計で吸収特性を調べた。NA5-79,80,86,93,94の池溏水は300nmに吸収ピークがあった。また,各池溏のUV-B及び光合成有効放射量の減衰率を測定した。吸収波長がUV-Bの波長に近いのでDOCによる紫外線からの保護効果が予想された。NA5-7,9,11,12,17,37,41,44,46,49,82,84,89,90,95の池溏水には275nmに吸収ピークがあった。NA5-43などの多くの池溏水からは蒸留水と同じパターンの吸収曲線が得られた。携帯式光合成測定器(SPB-H3)でオゼコウホネとヒツジグサの浮葉の光合成を測定した。最大光合成速度は2種で違いはなく,ヒツジグサの方が光補償点の値が小さかった。携帯用蛍光測定器(MINI-PAM)で沈水葉の光利用効率を測定した。浮葉に比べ沈水葉の光利用効率は約1/10程度であった。浮葉植物の実生の定着及び沈水葉の生産にとってTIC,DOCは重要な環境因子であった。
〔発 表〕 K-3,65〜67,69,71,76,H-8,h-5,8,11,12,27,29

研究課題 18)中国の砂漠地域に生育する植物種の種子の発芽特性に関する研究(奨励研究)
〔担当者〕 戸部和夫
〔期 間〕 平成8年度(1996年度)
〔内 容〕 中国の砂漠地域における植生の変動や植物種の分布と植物種子の発芽特性との関連性を検討するため,中国の砂漠地域に生育する植物種15種の種子の発芽におよぼす各種環境要因の影響を調べた。その結果,生育地と同一の温度環境のもとでは,砂地の上に堅い土壌層が形成され種子が地表に露出しやすい地点に分布している「小画眉草」の種子は明条件で,土壌層をもたず砂が流動しやすく種子が地中に埋もれやすい地点に分布している「沙米」の種子は暗条件で,それぞれ高い発芽率を示し,種子発芽の光に対する反応特性がこれらの植物種の分布地点を決定づける要因になっていることが推測された。一方,NaCl水溶液が種子発芽におよぼす影響を調べた結果,塩性土壌に生育可能な植物種では,種子が高濃度の塩との接触後も発芽能を維持する特性をもつことが分かった。

研究課題 19)環境ストレス耐性にかかわる植物の突然変異体の選抜法に関する研究(奨励研究)
〔担当者〕 久保明弘・青野光子
〔期 間〕 平成8年度(1996年度)
〔内 容〕 環境ストレス耐性にかかわる遺伝子に変異を起こした植物の突然変異体は,その遺伝子を単離する材料になるなど,環境研究への利用価値が高いと考えられる。そこで,本研究では,この突然変異体の選抜法を確立することを目的とした。まず,この研究に適したシロイヌナズナに高温,低温,乾燥,オゾン,二酸化イオウなどを与え,反応を調べた。この結果に基づき,環境ストレスとしてオゾンと低温を選び,突然変異を起こす処理をしたシロイヌナズナの栽培法や環境ストレスを与える条件を検討した。約18万個体の植物をオゾンにさらし,異常な感受性や反応を示す個体の選抜を行った結果,46個体のオゾンに弱い突然変異体の候補が得られた。また,3万個体の植物から,80個体の低温に弱い突然変異体の候補が得られた。これらのうち,少なくとも低温に弱い5系統は,その性質が遺伝したので,突然変異体であることが確かめられた。
〔発 表〕 h-22


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