水土壌圏環境部
| 研究課題 |
1)湖沼における藻類増殖促進および抑制物質の解明に関する研究 |
| 〔担当者〕 |
冨岡典子・矢木修身*1 (*1地域環境研究グループ) |
| 〔期 間〕 |
平成7〜11年度(1995〜1999年度) |
| 〔内 容〕 |
霞ヶ浦の湖心及び高浜入りの湖水を用いて,藻類培養試験を行い,種の遷移に及ぼすキレート物質の影響について検討を加えた。すなわち,霞ヶ浦から分離したAnabaena spiroides KS-1, Microcystis aeruginosa K-5, Oscillatoria tenuis KS-1, Phormidium tenue KS-1を用い,1995年12月に採取し,無菌的にろ過した湖心表層水に,2種類づつの藻類を接種し,EDTA濃度を変化させ,2週間培養し両者の増殖量を比較した。
いずれの2者共存培養においてもEDTAの添加は,Oscillatoriaに対し増殖促進効果を示さなかった。また,Anabaenaに対しては,EDTAが0.5mg/lで著しい増殖促進効果を示した。Microcystisに対しては,EDTA 0.1mg/l以上の添加で増殖促進効果が認められ,EDTAの添加量が増すにつれ増殖量が増加した。PhormidiumはEDTA 0.1mg/lの添加で増殖が促進されほぼ最大の増殖量を示した。EDTAへの要求性は,Oscillatoria, Phormidium, Microcystis, Anabaenaの順に高いものと考えられた。 |
| 研究課題 |
2)水環境中における環境有害物質の挙動に関する基礎的研究 |
| 〔担当者〕 |
内山裕夫・矢木修身*1・岩崎一弘*1
(*1地域環境研究グル−プ) |
| 〔期 間〕 |
平成7〜11年度(1995〜1999年度) |
| 〔内 容〕 |
土壌中に含まれるトリクロロエチレン含有量の測定法について検討を加えた。土壌5gにエタノール10gを加え20分間振とう後48時間静置し,その後ヘキサン,水で抽出し,遠心分離後ヘキサン層を分離し,セプパックシリカで妨害物質を除去することにより,変動係数10%,検出限界2ppbの精度で測定が可能となった。また,各種の有機塩素化合物分解能を調査した結果,クリーニング工場土壌,埋立処分場処理汚泥,下水処理場汚泥等のすべてにテトラクロロエチレンを嫌気的に分解する活性が認められた。汚染土壌の浄化機能の評価も行った。 |
| 〔発 表〕 |
G-9,b-189 |
| 研究課題 |
3)河川流域からの流出解析に関する研究 |
| 〔担当者〕 |
村上正吾・天野邦彦 |
| 〔期 間〕 |
平成7〜8年度(1995〜1996年度) |
| 〔内 容〕 |
河川流域の水環境管理・保全に当たっては,流域内の水と物質の循環系の解明が基本であり,その基本外力である降雨流出過程を精度良く記述するために,分布型の流出モデルの開発・整備を行った。モデルとしてはアメリカ合衆国環境局が開発したHSPF(Hydrological Simulation Program-Fortran)中の流出モジュール(修正Stanford Model)を用いた。対象流域は,茨城県中央部を東西に走る涸沼川流域(本川長65km,流域面積459km2)とした。流域の地形特性は50mメッシュの数値地図に地理情報システムGIS(ARC/INFO)を適用,擬河道網を構築,これに隣接する地表面とあわせて,勾配,区間長,面積等の幾何情報を付与した。構築された擬河道網は実際の河道網と流出計算を行う上では十分な精度の類似性があるものと判断された。表面流,中関流,地下水流の挙動を規定する土地利用,土壌分布もGIS(ARC/INFO)を用いて,構築された流域モデル上に付与された。1987年の降雨データを入力条件として,河口より28km地点における流量観測値によってモデルのパラメータを調整し,1989〜1991年の流量を再現した結果より,モデルの十分な適用性が認められた。 |
| 研究課題 |
4)リモートセンシング,地上実測及び地理情報による蒸発等の水文・環境解析に関する研究 |
| 〔担当者〕 |
宇都宮陽二朗・藤沼康実*1
(*1地球環境研究センター) |
| 〔期 間〕 |
平成8〜10年度(1996〜1998年度) |
| 〔内 容〕 |
衛星情報と地上実測・地理情報をリンクし,時間変化の著しい蒸発散等の水収支及び土壌環境の広域解析手法(TIMS)の中間研究成果をまとめ,ISPRSで公表した。また,実験圃場における微気象観測を継続するとともに,地球観・地理空間概念の史的変遷の解明のため球儀上に残存する地理情報の調査を行った。
|
| 〔発 表〕 |
G-11,g-12〜15 |
| 研究課題 |
5)衛星及び地理情報による中国東北部を中心とした東アジア地域の環境解析 |
| 〔担当者〕 |
宇都宮陽二朗・藤沼康実*1
(*1地球環境研究センター) |
| 〔期 間〕 |
平成8〜10年度(1996〜1998年度) |
| 〔内 容〕 |
NOAA等の衛星情報,地上モニタリング及び地理空間情報による中国東北部を中心とした熱及び水文解析のため,中国側研究者と情報交換を行うとともに,NOAA衛星画像による雲除去手法の検討結果をまとめた。 |
| 〔発 表〕 |
G-10 |
| 研究課題 |
6)自然水系中における溶存フミン物質に関する研究 |
| 〔担当者〕 |
今井章雄 |
| 〔期 間〕 |
平成5〜8年度(1993〜1996年度) |
| 〔内 容〕 |
3種類の樹脂吸着と100日間生分解試験を用いて,霞ヶ浦等の湖水中の溶存有機物を疎水性−親水性,酸性−塩基性,易分解性−難分解性の違いに基づいて分画した(疎水性酸=溶存フミン物質)。結果として,フミン物質は,既報のように,かなり難分解性であることが確認された。興味深い実験結果の一つは,生分解性あるいは生物利用性が高いと言われていた親水性酸が有意に難分解性であることであった。100日過ぎても大部分が残存していた。 |
| 研究課題 |
7)水環境修復のための生態工学の活用に関する基礎的研究 |
| 〔担当者〕 |
西村 修 |
| 〔期 間〕 |
平成8〜9年度(1996〜1997年度) |
| 〔内 容〕 |
富栄養化湖沼の藻類の優占化に影響を及ぼす因子の1つと考えられる,藻類代謝物質に着目し,藍藻類間の相互作用に関する実験的解明を行った。霞ヶ浦では優占種がMicrocystisからOscillatoriaに遷移する傾向があることから,実験にはそれらの種に加えてPhormidiumを用い,固体および液体培地で二者培養を行い,増殖特性を検討した。実験は温度25度の条件下で液体培地はM-11培地,固体培地は低温アガロースで固体化したM-11培地を用いた。この結果O. agardhiiはP. tenueの増殖を阻害すること,M. aeruginosaはO.agardhiiの増殖ゾーンから離れて増殖すること,O.agardhiiはM.wesenbergiiの増殖を阻害する傾向があること等が示された。しかし,増殖因子としての温度,光,栄養塩等の影響をのぞき藻類代謝物質の増殖阻害効果を評価するためにはさらに実験的手法および数理モデル解析手法を開発する必要があり,今後の課題として残された。 |
| 〔発 表〕 |
g-33 |
| 研究課題 |
8)耕地や芝地からの農薬の流出過程に関する研究 |
| 〔担当者〕 |
井上隆信 |
| 〔期 間〕 |
平成2〜8年度(1990〜1996年度) |
| 〔内 容〕 |
霞ヶ浦における水田散布農薬の濃度変化について検討を行った。高浜入り湾奥における最高濃度の検出月は除草剤のオキサジアゾンが5月と早く,次いでメフェナセット,シメトリンが6月,殺菌剤のIBP,イソプロチオランが7月であった。また,河川から高浜入り,湖心と最高濃度の検出月は1カ月程度ずれている。農薬によるピーク月のずれはそれぞれの農薬の散布時期を反映しており,水田における農薬の散布時期から考えると湖心に到達するまでには約2カ月かかっている。除草剤のメフェナセット,シメトリン,オキサジアゾンは湾奥から湖心に行くにしたがい濃度が減少しているのに対して,殺菌剤のイソプロチオラン,IBPはあまり減少せず,また,イソプロチオランは1年を通して検出された。これは,分解性が低いためと考えられ,湖沼における農薬の残留に関しては河川とは異なり流域の使用量の大小よりも分解性が大きく影響している。 |
| 〔発 表〕 |
G-3,5,6,g-3-5,7,8 |
| 研究課題 |
9)土壌中における無機汚染物質の挙動に関する研究 |
| 〔担当者〕 |
高松武次郎・金尾昌美 |
| 〔期 間〕 |
平成8〜12年度(1996〜2000年度) |
| 〔内 容〕 |
我が国の典型的な火山性強酸性河川である酢川(山形県)において,水中溶存物と河床沈殿物の元素組成を,河川流路に沿って調査し,強酸性(pH=1.5)の源水が次第に中和(pH=3.5まで)される過程での主要・微量・痕跡元素の挙動を研究した。元素は挙動の違いにより,以下の5群に分類された。単純に希釈される元素:Cl,SO4,B,K,P,V;上流域で河床造岩鉱物や重炭酸イオンとの反応で消費される元素:H;源水を希釈する中性河川水にも豊富に含まれるため,Clなどに比べて流下に伴う減少率が小さい元素:La,Be,Ba;上流域で河床造岩鉱物から溶出し,希釈による濃度減少が補償される元素:Ca,Mg,Fe,Mn,Na,Sc,Si,Y,Zn,Al,Cr;源流から少し離れた地点までは一旦増加し,その後急激に減少する元素:Co,Cu,Ni,Tiなどである。また,河床沈殿物の元素組成は地点に関係なくほぼ一定していて,上流の特定地域で生成されたものが流れによって下流に運ばれていると推定された。 |
| 研究課題 |
10)土壌中における微生物の挙動に関する研究 |
| 〔担当者〕 |
向井 哲 |
| 〔期 間〕 |
平成8〜12年度(1996〜2000年度) |
| 〔内 容〕 |
オートクレーブ処理を1回行って土着生物を死滅させた6種類の土壌の細毛管孔隙(平均直径:0.19〜3μm),粗毛管孔隙(同:3〜48μm)に入るような方法で添加したBHC分解菌(細胞のサイズ:0.7×μm)の増殖・生残性およびそれに及ぼす施肥来歴の影響を25週間にわたって調べた。その結果,(1)添加菌の生残の様相が,砂壌土と殖壌土とで少なからず異なっていること,(2)砂壌土では,添加菌の生残数(25週目の結果)が細毛管孔隙よりも粗毛管孔隙に添加した場合の方が多い傾向があること,およびその生残数を各種の施肥区間で比較すると,いずれの孔隙に菌を添加した場合にも,その生残数は堆肥多量区>窒素・リン酸・カリ肥料区>リン酸・カリ肥料区の順に減少することなどが明らかにされた。 |
| 〔発 表〕 |
L-9 |
| 研究課題 |
11)土壌の酸性化が土壌生態系に及ぼす影響 |
| 〔担当者〕 |
服部浩之 |
| 〔期 間〕 |
平成8〜10年度(1996〜1998年度) |
| 〔内 容〕 |
土壌の酸性化が土壌中の重金属の挙動に及ぼす影響を調べた。汚泥を連用し,重金属が蓄積した火山灰土壌に,硫酸アンモニウム(硫安)を連用し,その後の土壌pH,土壌の重金属含量,コケの重金属含量を硫安無添加の対照土壌と比較して調べ,次の結果を得た。(1)対照土壌のpH約7.8に対して,硫安連用土壌のpHは約5.1に低下した。(2)対照土壌,硫安連用土壌の重金属含量は,亜鉛(Zn)が約500mg/kg乾土,銅(Cu)が約180mg/kg乾土で,両土壌でほぼ同じ値であった。(3)コケのZn含量は対照土の約100mg/kg乾重に対して,硫安連用土壌では約650mg/kg乾重と6倍以上高かった。また,Cu含量も対照土の56mg/kg乾重に対して,硫安連用土では116mg/kg乾重と約2倍の含量であった。
以上の結果から,重金属蓄積土壌の酸性化によって,土壌の重金属の植物への可給性が増大すると考えられた。 |
| 〔発 表〕 |
G-26,27 |
| 研究課題 |
12)降水・大気中の天然放射性核種の挙動に関する研究 |
| 〔担当者〕 |
土井妙子 |
| 〔期 間〕 |
平成8〜10年(1996〜1998年度) |
| 〔内 容〕 |
オーストラリア西海岸のフリーマントルから神戸へ向かって西太平洋を航海する兵庫県が実施した大学洋上セミナーの船上で,1993年と1994年の2回各2週間にわたって,毎日採取されたエアロゾル試料について,航路に沿って210Pbと7Beの大気中濃度分布を観測した。観測結果は,各年により多少航路の違いはあるものの,大気中の210Pb濃度の分布は両年に共通したパターンを示し,赤道付近で濃度が最大となり,一度小さくなった後,日本に近づくにつれて再び濃度の上昇がみられた。210Pb濃度の増大は大陸からの気団の影響と思われる。
一方,7Beの濃度分布は南緯20度付近と北緯30度付近に濃度増大がみられ,この付近に成層圏から対流圏への物質移動が起こっていると考えられた。 |
| 〔発 表〕 |
g-20 |
| 研究課題 |
13)地盤沈下観測システムの開発と観測に関する研究 |
| 〔担当者〕 |
陶野郁雄 |
| 〔期 間〕 |
平成3〜8年度(1991〜1996年度) |
| 〔内 容〕 |
近年,飛躍的に技術革新がなされているが,地盤沈下観測装置はこの20年間ほとんど進歩しておらず,いまだに1地点の1帯水層につき1つの大がかりな観測井が必要になっている。そこで,安価で手軽でしかもボーリング孔内でも観測可能な装置を考案し,佐賀県有明町に設置した。この観測装置をさらに手軽に持ち運びできるように一層簡便化させた。その観測装置を新潟県上越市に設置した。経常的な観測を続け,データの蓄積をはかり,その観測データを分析し,装置の測定精度,長期安定性等の検証を行った成果を国立環境研究所研究報告としてまとめた。
簡便な地盤沈下観測装置を本年度は新潟県六日町に設置した。1996年12月から新潟県と共同で経常的な観測を続け,データの蓄積をはかっている。 |
| 〔発 表〕 |
K-13〜15,g-22 |
| 研究課題 |
14)陸域由来懸濁態リンの生態系内での循環(奨励研究) |
| 〔担当者〕 |
井上隆信 |
| 〔期 間〕 |
平成8年度(1996年度) |
| 〔内 容〕 |
湖沼・河川水中から懸濁物質を濃縮・分離する手法の確立を行った。懸濁物質の濃縮には連続遠心分離を用いることにし,従来から用いられているろ過操作と比較することで捕集効率について検討を行った。連続遠心時の試水通水流量が一定の場合は回転数が大きいほど懸濁物質の捕集率は増加し,26,500gの条件では95%が捕集された。また,懸濁物質の粒径が大きいほど捕集効率は増加し,上記の条件下では10μm以上の懸濁物質は100%捕集された。これらのことから,連続遠心分離によってろ紙による分別とほぼ同様の懸濁物質を濃縮することが可能であることが分かった。連続遠心分離によって濃縮した懸濁物質を,無機物質と有機物質との2成分に分離するため,水平ローターを用いた密度勾配遠心法で分離する手法について検討を行った。密度勾配媒体として,CsClの65%溶液を用い,沈殿する物質と浮遊する物質に分けることができた。 |
| 〔発 表〕 |
g-6 |
| 研究課題 |
15)微生物を用いた放射性セシウム簡易測定手法の開発に関する研究(奨励研究) |
| 〔担当者〕 |
冨岡典子 |
| 〔期 間〕 |
平成8年度(1996年度) |
| 〔内 容〕 |
セシウム蓄積能を持つ細菌を利用した,放射性セシウムの除去や測定手法の開発についてモデル系を作って検討を行った。透析チューブ内にセシウムを濃縮する細菌の細胞縣濁液を入れ,それを放射性セシウムの入った水溶液につけると,水溶液中の放射性セシウム濃度は時間の経過とともに減少し,32時間後には初期濃度の25%にまで減少した。この時点で細胞中の放射性セシウム濃度は初期の水溶液中の濃度の7500倍に濃縮されたことになる。さらに蒸留水に種々の濃度のセシウム-137を添加して試料水を作成し,細胞縣濁液に濃縮されたセシウム-137濃度を測定したところ,試料水のセシウム-137濃度の増加に伴って細胞に濃縮されるセシウム-137濃度も増加し,試料水のセシウムー137濃度と細胞縣濁液のセシウム-137濃度との間には高い相関関係が認められた。このことから細胞懸濁液中のセシウム-137濃度を測定することによって試料水中のセシウム-137濃度を推定できるものと考えられた。 |
| 〔発 表〕 |
g-32 |
| 研究課題 |
16)地盤沈下地域の地盤調査(特別経常研究) |
| 〔担当者〕 |
陶野郁雄 |
| 〔期 間〕 |
平成2〜12年度(1990〜2000年度) |
| 〔内 容〕 |
著しい地盤沈下地域の地盤構成および地下水の実態を把握する目的でボーリング調査を隔年で実施している。本年度は新潟県六日町にある六日町中学校敷地内においてボーリング調査を実施した。なおこの調査は,顕著な地盤沈下地域における地質層序と土質力学特性を把握するために行われる委託調査(ボーリング調査)であり,直接研究を行うものではない。
ボーリング調査によると,深度3.20mまでが盛土層,深度3.20m〜42.50mが粘性土層,深度42.50m〜116.60mが礫層,深度116.60m〜131.00mが泥岩層であった。 |
| 〔発 表〕 |
K-5〜12,15,G-19,20 |
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