大気圏環境部
| 研究課題 |
1)光イオン化質量分析法によるクラスター分子及びフリーラジカルの研究 |
| 〔担当者〕 |
鷲田伸明 |
| 〔期 間〕 |
昭和60年度〜平成8年度(1985〜1996年度) |
| 〔内 容〕 |
大気中でのラジカル反応やエアロゾル生成と関連ある課題として,有機・無機化合物のクラスター生成とそのイオン反応やフリーラジカルの反応の研究が光イオン化質量分析計を用いて行われた。本年度はSH,NH2,CH3などのフリーラジカルと酸素原子,窒素原子などのいわゆるラジカル−原子反応の反応速度および反応機構の研究が行われた。 |
| 〔発 表〕 |
F-35,fー46〜49 |
| 研究課題 |
2)大気微量成分の分光学的方法によるモニタリング |
| 〔担当者〕 |
井上 元 |
| 〔期 間〕 |
平成7〜9年度(1995〜1997年度) |
| 〔内 容〕 |
半導体レーザーの長距離吸収法による二酸化炭素とメタンの濃度分布測定についてのシミュレーション計算を行い,実用可能性の検討を行った。大気中の長光路吸収測定を目的とした飛行船の開発の予備試験を行った。 |
| 研究課題 |
3)複雑地形上での大気境界層の発達過程と乱流拡散に関する研究 |
| 〔担当者〕 |
鵜野伊津志 |
| 〔期 間〕 |
平成5〜8年度(1993〜1996年度) |
| 〔内 容〕 |
大気境界層の発達過程は境界層内での熱・水蒸気の輸送,汚染物質の拡散の問題地密接に関連して重要である。平坦地上の比較的単純な条件での大気境界層の発達過程については多くの知見が蓄積されているが,複雑地形上(植生の分布,都市域,海陸の分布,山岳地)での大気境界層の構造は十分に把握されていない。特に,熱的内部境界層の発達過程および夜間の安定層の構造が物質輸送と乱流拡散に重要である。本研究では,野外観測結果をもとに大気境界層の発達過程とそのなかでの乱流拡散構造の変化を検討する。また,その結果をもとに,精密な乱流拡散モデルによる数値シミュレーション化の検討を行う。
本年度は,首都圏域および九州地域での局地循環とそれに伴う大気境界層の発達過程を数値シミュレーションにより再現し,シミュレーション結果をアメダスデータおよび航空機を用いた立体観測データと定量的に比較検討した。また,地域気象モデル(RAMS)を利用して,東京の環状八号付近に出現する積雲についてのシミュレーションを行った。 |
| 〔発 表〕 |
F-12〜14,16,f-9〜12 |
| 研究課題 |
4)植生,水文過程を含んだ陸面−大気相互作用に関する1次元モデルを用いた研究 |
| 〔担当者〕 |
光本茂記 |
| 〔期 間〕 |
平成4〜8年度(1992〜1996年度) |
| 〔内 容〕 |
平成5年度までに開発していた,大気−陸地表面相互作用を表現する鉛直1次元モデルを,東大気候システム研究センターと共同で開発中の大気大循環モデル(CCSR/NIES AGCM Ver.5.4)に組み込んで,流出過程(地表流出/地中流出)の違いが,全球的大気大循環に及ぼす影響を調べた。さらに,GCIP(GEWEX大陸スケール国際計画)のデータ(1992)のうち,地中水分量のデータを用いて,鉛直1次元モデルの検証を行った。 |
| 研究課題 |
5)成層及び回転流体に関する数値的研究 |
| 〔担当者〕 |
花崎秀史 |
| 〔期 間〕 |
平成2〜8年度(1990〜1996年度) |
| 〔内 容〕 |
大気あるいは海洋は成層および回転流体の代表例であるが,そのような流れに対し,二次元あるいは三次元座標を用いた時間発展の数値解析を行った。特に,成層および回転流体中に生じる内部重力波,ロスビー波,および慣性波の非線形性(長時間発展において顕著となる)についての解析を行い,これらの流体系における波動の発生および伝播のメカニズムを解析した。
本年度は,特に風速のシアーがある場合の内部重力波の鉛直伝播について解析した。 |
| 〔発 表〕 |
F-23〜28 |
| 研究課題 |
6)熱帯積雲対流活動の地球規模効果についての基礎的研究 |
| 〔担当者〕 |
高薮 縁 |
| 〔期 間〕 |
昭和63年度〜平成11年度(1988〜1999年度) |
| 〔内 容〕 |
ISCCP(国際衛星雲気候プロジェクト)による雲・放射データ及び高精度一次元放射モデルを用いて雲型別の雲の放射効果を求める手法を開発した。特に,フィードバック効果の評価が定まっていない熱帯域における組織的な対流雲活動変動と雲型別放射効果との関係を研究した。 |
| 〔発 表〕 |
F-22,f-30〜32 |
| 研究課題 |
7)湿潤大気の大規模循環の力学機構に関する研究 |
| 〔担当者〕 |
沼口 敦 |
| 〔期 間〕 |
平成4〜8年度(1992〜1996年度) |
| 〔内 容〕 |
低緯度湿潤大気と地表面の相互作用の基礎的プロセスを調べるため,二次元化した大気大循環モデルを用いた数値実験を行った。地表面のモデル,雲と放射の相互作用,積雲パラメタリゼーションなどを変えた実験を多数行い,降水や土壌水分の分布に対する敏感度を調べた。その結果をエネルギー・水収支的な側面から解析し,各種フィードバックの重要性を明らかにした。 |
| 〔発 表〕 |
f-33 |
| 研究課題 |
8)低気圧性渦におけるラグランジュ的流体運動の数値的研究 |
| 〔担当者〕 |
菅田誠治 |
| 〔期 間〕 |
平成8〜11年度(1996〜1999年度) |
| 〔内 容〕 |
大気大循環モデルにより得られた大気循環中で中緯度域での高低気圧周辺での多数空気塊のラグランジュ的運動を調べ,それらの南北運動に着目した。多くの空気塊運動は南北方向に単振動的であり,実質的物質南北輸送につながらない。実質的南北輸送が活発に起きるのは限られた経度帯であることがわかった。この経度帯は大陸性高低気圧気団の縁辺に位置している。これは低気圧の盛衰とも対応していると考えられる。 |
| 〔発 表〕 |
f-21 |
| 研究課題 |
9)微粒子の生成とその物理的および化学的挙動の研究 |
| 〔担当者〕 |
福山 力 |
| 〔期 間〕 |
平成4〜8年度(1992〜1996年度) |
| 〔内 容〕 |
前年度に引き続き全長425mの立坑を用いて人工雲を発生させる実験を行った。新しい試みとして坑底にレーザーレーダーを設置して雲底高度の時間変化を1分程度の時間分解能で追跡した。その結果,雲底は平均して約100mの高度にあったが,低いときは40m,高いときには160mと大きな幅で変動していることがわかった。別にエレベーターに載せたビデオカメラによる目視観測結果を考え合わせると,上に記した雲底高度のみかけ上の変動は,必ずしも雲生成高度の変動を意味するのではなく,雲粒濃度の空間分布が不均一で,1mあるいはそれ以下のスケールの塊状になっていることによると考えるのが妥当であるとの結論に達した。このような不均一構造は以前赤城山の滑昇霧において観測したものと類似していた。 |
| 〔発 表〕 |
F-29,30,L-10,f-38,40 |
| 研究課題 |
10)反応性大気微量成分の動態に係わる生成・変換過程の研究 |
| 〔担当者〕 |
酒巻史郎 |
| 〔期 間〕 |
平成5〜9年度(1993〜1997年度) |
| 〔内 容〕 |
前年度に引き続き,バックグランド地域での窒素酸化物及びオゾンの連続測定を行った。これら,測定濃度の変動と測定地点への移流大気との関係について解析した。また,発生源地域からバックグランド地域へと汚染物質が移動するにつれ,反応性汚染物質は様々の過程により,変換・変質していく。特に発生源ではNOとNO2が大部分である窒素酸化物は移動時間の経過とともに酸化が進み,より高次酸化物へと変質していく。そのため,バックグランド地域での窒素酸化物の測定では,単にNOとNO2との和としてのNOxだけではなく,より高次の窒素酸化化合物まで含めた全窒素酸化物(NOy)濃度を測定する必要がある。そのため,本年度はNOyの測定方法についても検討を行った。 |
| 研究課題 |
11)大気化学に係わる気相化学反応の速度論的研究 |
| 〔担当者〕 |
今村隆史 |
| 〔期 間〕 |
平成4〜8年度(1992〜1996年度) |
| 〔内 容〕 |
大気化学に係わる反応研究としてこれまでの気相中でのフリーラジカル反応に加え,気相と液相との相互作用による気相中ラジカルの消失過程についての研究を行った。本年度はNO3ラジカルの水溶液への反応性取り込みについてレーザー吸収法と濡れ壁反応管を用いた測定を行い,NO3ラジカルの不均一反応確率を決定した。 |
| 〔発 表〕 |
F-4〜6 |
| 研究課題 |
12)FTIRを用いたラジカルの反応機構に関する研究 |
| 〔担当者〕 |
猪俣 敏 |
| 〔期 間〕 |
平成6〜9年度(1994〜1997年度) |
| 〔内 容〕 |
大気中での化学反応の反応機構を光化学チャンバーを用いて解明することを目的とした。大気微量成分の検出にはFTIRを用いた。成層圏において放出されるハロゲン原子はオゾン破壊を加速することはよく知られているが,今回対流圏で放出されるハロゲン原子に注目した。実際,臭素原子,ヨウ素原子はそれぞれ海洋に起源をもつブロモホルム,ヨウ化メチルの光解離によって地上付近でも放出されている。そこで光化学チャンバーを用いて実際に大気に近いと考えられるHC- NOx- Air-hv系に,ヨウ化メチルを加えることでオゾンに対する影響を見た。確かにオゾンの減少が見られ,IOx化学が働いていることがわかった。 |
| 研究課題 |
13)レーザー分光法による光分解過程および反応素過程の研究 |
| 〔担当者〕 |
奥貫幸夫 |
| 〔期 間〕 |
平成7〜8年度(1995〜1996年度) |
| 〔内 容〕 |
大気中や燃焼中での化学反応をレーザー光分解法と光イオン化質量分析法を組み合わせて反応速度や反応の分岐比を測定した。本年度はHSやNH2ラジカルと酸素原子の反応についての測定を行い,ラジカル−原子反応の反応速度・機構に関する考察を行った。 |
| 〔発 表〕 |
f-4 |
| 研究課題 |
14)質量分析法による大気化学に関わるラジカル反応の研究 |
| 〔担当者〕 |
古林 仁 |
| 〔期 間〕 |
平成6〜9年度(1994〜1997年度) |
| 〔内 容〕 |
大気中のラジカル反応は,大気中微量気体の生成・消失にとって重要な役割をなしている。これらのラジカル反応に関与するラジカル種の直接・高感度検出を行い,これらのラジカル種の同定や,反応の反応機構・反応速度定数の決定を行う。
本年度は,前年度に引き続き,レーザー誘起蛍光法を用いてフッ素置換エチレンと酸素原子の反応生成物の発光を測定し,発光している化学種がビノキシ型のラジカルであることを明らかにした。また,このラジカルの分光学的性質についても検討を行った。 |
| 〔発 表〕 |
f-41 |
| 研究課題 |
15)静止軌道衛星を利用したレーザー長光路大気微量分子監視システムのための狭帯域赤外波長可変レーザーの基礎的研究 |
| 〔担当者〕 |
杉本伸夫 |
| 〔期 間〕 |
平成8〜10年度(1996〜1998年度) |
| 〔内 容〕 |
対流圏の種々の大気微量分子のモニタリングを目的とする,静止衛星利用レーザー長光路吸収システムを実現するために必要な狭帯域赤外波長可変レーザー手法について検討を行った。本年度は,光パラメトリック発振器における波長制御技術を中心に考察した。 |
| 研究課題 |
16)ミー散乱レーザーレーダーネットワークによる大気環境モニタリングに関する研究 |
| 〔担当者〕 |
松井一郎 |
| 〔期 間〕 |
平成7〜9年度(1995〜1997年度) |
| 〔内 容〕 |
ミー散乱レーザーレーダーによる観測ネットワークはエアロゾルの長距離輸送や都市大気汚染現象の把握など種々のスケールの大気環境問題において有力な観測手段となる。本研究では,ミー散乱レーザーレーダーの自動運転技術およびデータの収集をネットワーク経由で行う技術について実験的な研究を行った。これによって,レーザーレーダーによる観測を最小限の保守作業で長期間安定して運転することが可能となった。一方,日本各地のレーザーレーダー研究者で構成される黄砂のネットワーク観測に参加し,インターネットを利用した観測網について検討を開始した。 |
| 〔発 表〕 |
F-32,33,f-27,28,44,45 |
| 研究課題 |
17)大気微量分子の遠隔計測のための高分解分光計測手法の研究 |
| 〔担当者〕 |
古閑信彦 |
| 〔期 間〕 |
平成8年度(1996年度) |
| 〔内 容〕 |
将来の衛星センサー等の可能性を評価することを目的として,大気環境問題に関係する大気微量分子を遠隔計測するための高分解分光手法について,近紫外からミリ波にいたる領域において調査した。この結果,成層圏大気の観測にはパッシブな分光計測手法が有効であるが,対流圏の観測ではライダーや長光路吸収測定などの能動的な手法が有効であると考えられることがわかった。 |
| 研究課題 |
18)大気中の微量化学成分の長期観測に関する研究 |
| 〔担当者〕 |
内山政弘 |
| 〔期 間〕 |
平成2〜8年度(1990〜1996年度) |
| 〔内 容〕 |
大気環境を理解する上で大気中の微量成分の長期変動を観測することが重要である。本研究は長期観測の際の最大の問題である測定にかかわる人的負担の軽減を検討した。具体的には測定装置の自動化およびリモートメンテナンスの構築を行った。離島のステーションに半年に一度の保守を行えば維持できるメタン測定系(GC-FID)を製作し実際に長期間の測定を行い,その性能を確認した。また公衆電話回線を用いたリモートメンテナンスおよびリアルタイムでのデータの取得が可能なことを確認した。 |
| 研究課題 |
19)大気中の微量気体成分の測定装置の開発 |
| 〔担当者〕 |
遠嶋康徳 |
| 〔期 間〕 |
平成7〜9年度(1995〜1997年度) |
| 〔内 容〕 |
本研究では,水素炎イオン化検出器と非メタン炭化水素を酸化除去する触媒を組み合わせたメタンの連続測定装置を開発した。本年度は,この測定装置を用いて行われてきたシベリア上空での航空機観測の結果について解析を行った。その結果,西シベリアの油田地帯上空において高濃度のメタンを検出し,天然ガスがリークする様子をとらえることができた。また,西シベリアの湿原上空でも高濃度のメタンを観測し,午前中に観測されたメタン濃度の鉛直分布からメタン放出率を推定した。 |
| 〔発 表〕 |
F-31 |
| 研究課題 |
20)大気中の温室効果気体に関する基礎的研究 |
| 〔担当者〕 |
高橋善幸 |
| 〔期 間〕 |
平成8〜10年度(1996〜1998年度) |
| 〔内 容〕 |
大気中に存在する温室効果気体の挙動を詳細に知るためには,その発生源あるいは吸収源が何処にどのくらいの大きさで存在しているのかという点を充分に把握する必要がある。本研究では,二酸化炭素とメタンの高精度な分析方法を確立し,その同位体分析を行うための手法を確立することを目的とした。
前年度作成したガスクロマトグラフィーによる温室効果気体の測定装置を改良し,大気中の二酸化炭素の同位体分析を行うために必要な試料濃縮装置を作成した。 |
| 研究課題 |
21)ガスクロマトグラフ法による大気中の酸素/窒素比の精密測定に関する研究(奨励研究) |
| 〔担当者〕 |
遠嶋康徳 |
| 〔期 間〕 |
平成8年度(1996年度) |
| 〔内 容〕 |
大気中の酸素濃度の変動は二酸化炭素の収支問題を解明する上で貴重な情報を与えてくれることが期待されている。本研究では熱伝導度検出器(TCD)とガスクロマトグラフとの組み合わせで酸素/窒素比の測定法の開発を試み,バックグランド大気の酸素濃度の変動(年間約3ppmの減少)を検出できる分析精度を目指した。分析条件の安定化や繰り返し分析によって精度の改善を試み,シリンダー内の標準空気の酸素/窒素比を繰り返し分析で標準偏差が0.001%,酸素濃度に換算すると約2ppmの精度に到達することができた。さらに,本研究で開発した測定方法を用いて波照間島の大気試料や相模湾上空の航空機サンプリングで得られた試料の酸素/窒素比の測定を開始した。 |
| 研究課題 |
22)大気−海洋間フラックス決定法の精密化に関する研究(奨励研究) |
| 〔担当者〕 |
花崎秀史 |
| 〔期 間〕 |
平成8年度(1996年度) |
| 〔内 容〕 |
従来,海面での二酸化炭素など気体フラックスの測定が,主としてバルク法を用いて行われている。本研究では,乱流理論の一つであるRDT理論を用い,種々の濃度勾配,速度勾配に対するフラックスの時間発展を計算し,実効的なフラックス値を求めた。そして,その結果をもとに,観測で測定する海上風速及び,大気側と海洋側の気体濃度差から鉛直フラックスを求める公式づくりを試みた。その結果,風速が5〜10mで鉛直フラックスが一定値に漸近する振舞いなど,風洞水そう実験と定性的に一致する結果が得られた。 |
| 研究課題 |
23)中空糸繊維を用いたスクラバーの開発(奨励研究) |
| 〔担当者〕 |
内山政弘 |
| 〔期 間〕 |
平成8年度(1996年度) |
| 〔内 容〕 |
従来大気中の可溶性の微量成分の採取にはガラス・フィルターを通してバブリングを行う溶液吸収法が使われてきた。しかしこの方法ではキャビテーションの問題を避けることができなかった。本研究は近年急速に発達した透過膜素材を利用することにより軽量・コンパクトなソフトタッチ・スクラバーを開発を試みたものである。スクラバーの原形として人工肺に用いられている素材を用い,環境大気のターゲット成分として二酸化イオウを想定してスクラバーを構成した。製作したスクラバーの性能は既存のソフトタッチなスクラバーに比べて大きさで数分の1であり,通気可能なサンプル流量は数倍であった。他の大気中微量成分への適応可能性など検討の必要はあるが,実用に耐えうるものと考えられる。 |
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