環境健康部
| 研究課題 |
1)環境有害因子の健康影響評価に関する研究 |
| 〔担当者〕 |
遠山千春・小林隆弘 |
| 〔期 間〕 |
平成7〜10年度(1995〜1998年度) |
| 〔内 容〕 |
環境有害化学物質のなかでダイオキシン,ヒ素,水銀,並びにオゾンを含めたオキシダントの健康影響に関する実験的及び疫学的研究の文献のレビューを行い,それぞれ報告書を作成した。また,浮遊粒子状物質の直径2.5mm以下の粒子(PM2.5)の健康影響に関するリスク評価のための文献収集を行った。このほか,重金属の解毒並びに活性酸素の除去にかかわっているタンパク質であるメタロチオネインの毒性学的役割に関する研究を行った。 |
| 〔発 表〕 |
E-2,19〜22,30〜34,e-5,7,11,20〜22,31,35〜41,43,45〜54 |
| 研究課題 |
2)炎症細胞の遊走に関する基礎研究 |
| 〔担当者〕 |
小林隆弘 |
| 〔期 間〕 |
平成6〜10年度(1994〜1998年度) |
| 〔内 容〕 |
ぜん息,花粉症などの原因に炎症細胞の浸潤がある。気道においてアレルギー反応が起きたときには,どのような細胞が浸潤してくるか,また,浸潤した細胞の相互作用について検討することを目的とした。本年度は炎症細胞として好中球を取り上げ遊走因子であるfMLPに対する遊走に対する好酸球の影響について検討した。好中球のfMLPに対する遊走を好酸球は抑制することを見いだした。また,好酸球の馴化培地を用いた場合でも同様の作用があることが見いだされた。 |
| 研究課題 |
3)有害大気汚染物質と心・循環機能について |
| 〔担当者〕 |
鈴木 明 |
| 〔期 間〕 |
平成8〜10年度(1996〜1998年度) |
| 〔内 容〕 |
前年度までに,NO2吸入ラットの異常心電図では,P波の周波数が有意に低下し,隣接するQRS波,STセグメントも周波数が低下し,PQ間隔の延長から心臓内の刺激伝導系及び心筋活動が非同期化していることを明らかにした。本年度は,さらに詳細に分析した結果,ラット心電図のそれぞれの成分は個体固有の周波数を持ち,NO2暴露や低酸素などによって,周波数帯域が変化することが推察された。特にP波とSTセグメントは,他の波形成分より変化が大きいことが示唆された。 |
| 研究課題 |
4)家畜と野生動物の接触による共通伝染病のリスクについて |
| 〔担当者〕 |
鈴木 明・高橋慎司*1 (*1地域環境研究グループ) |
| 〔期 間〕 |
平成5〜8年度(1993〜1996年度) |
| 〔内 容〕 |
前年度に引き続き,ザンビア大学獣医学部はレーチェ(大型のカモシカの仲間:K.k.Lechwe)と国立公園近在の牛やイヌから採血し,ブルセラ症の診断を血清学的に行った。この結果,牛とレーチェが混在している国立公園(Lochinvar N.P.)では,レーチェに近在の牛と同じタイプの牛ブルセラ陽性反応が確認された。しかし,混在のない北部のレーチェは陰性を示した。また,いずれの地区のレーチェと牛ではイヌのブルセラに陰性であった。例数は少ないが,この事実は家畜と混在する地区のレーチェのブルセラ病は家畜のブルセラ病が野性動物に感染したことを示している。ブルセラ病は家畜,ヒトや野生動物の流産や不妊を引き起こす伝染性の高い共通伝染病であるため,今後も緊急の検査が必要と考えられた。さらに,家畜と野生動物の混在は共通伝染病にとって,大きなリスクであることが確認された。そして,このことは,家畜と野性動物の共存形態を取らざるを得ない開発途上国に警鐘をならした。 |
| 〔発 表〕 |
B-65〜68,E-24〜27 |
| 研究課題 |
5)肺胞マクロファージと肺線維芽細胞の相互作用に関する研究 |
| 〔担当者〕 |
持立克身 |
| 〔期 間〕 |
平成5〜9年度(1993〜1997年度) |
| 〔内 容〕 |
コラーゲンマトリックスは,線維芽細胞やマクロファージが分泌するマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)によって分解され,ゲル弾性率等の物理的性質が変化することが予想される。今回は,酸抽出型およびペプシン抽出型のI型コラーゲンの割合を変えることによりコラーゲンのゲル弾性率を変化させ,線維芽細胞の生存に与える影響を検討した。その結果,ゲル弾性率が約150dyn/cm2以下では,生存率は著しく減少すること,および,これより高い弾性率においても,組織特異的に生存率が一部低下することが明らかになった。この結果は,コラーゲンマトリックス中の線維芽細胞は,その生存がMMP等によって影響を受けている可能性を示唆している。 |
| 〔発 表〕 |
e-67,68,80〜82 |
| 研究課題 |
6)活性化リンパ球亜集団の解析法に関する研究 |
| 〔担当者〕 |
野原恵子 |
| 〔期 間〕 |
平成6〜8年度(1994〜1996年度) |
| 〔内 容〕 |
GD1c(NeuGc,NeuGc)はラットヘルパーT細胞のサブセットに存在するガングリオシドである。このガングリオシドに対するモノクローナル抗体AC1は,ConAで活性化されたラットT細胞の増殖を促進することが明らかとなった。しかし固定化抗CD3抗体で活性化されたT細胞の増殖はAC1で増強されず,AC1は活性化における主たるシグナル伝達の経路であるT細胞受容体からのシグナルには直接は作用しない,またはT細胞受容体を介さない活性化経路に関与することが示唆された。すなわちGD1c(NeuGc, NeuGc)を細胞膜に持つラットヘルパーT細胞のサブセットは,その活性化においてGD1c(NeuGc,NeuGc)による活性化調節を受ける細胞群である可能性が示唆された。 |
| 〔発 表〕 |
e-55〜57 |
| 研究課題 |
7)肺胞上皮細胞による基底膜形成の研究 |
| 〔担当者〕 |
古山昭子 |
| 〔期 間〕 |
平成8〜11年度(1996〜1999年度) |
| 〔内 容〕 |
正常な肺胞構造の維持に重要であると考えられている肺胞上皮細胞による基底膜形成と,基底膜上での上皮細胞の接着と機能発現との関係を明らかにするために,肺胞上皮細胞をin vitroで形成させた基底膜上で培養し,その接着構造と基底膜成分生成について検討した。基底膜上では,肺胞上皮細胞は,細胞−細胞間に細胞骨格成分を伴う強固な接着を示した。細胞−マトリックス間には接着分子であるインテグリンの集積が見られずに小さい接着斑しか形成しないことから,基底膜への細胞接着が弱く可動的なものであることが示唆された。さらに基底膜上では細胞による基底膜成分の分泌が抑制されることが明らかになった。 |
| 〔発 表〕 |
e-68,80 |
| 研究課題 |
8)肺の抗原提示細胞活性化に関する基礎的研究 |
| 〔担当者〕 |
藤巻秀和 |
| 〔期 間〕 |
平成8〜11年度(1996〜1999年度) |
| 〔内 容〕 |
環境汚染物質による免疫増強作用の機構においては,Tリンパ球のみならず抗原提示細胞(APC)も重要な役割を果たしていると考えられているが,詳細は不明である。本年度は,APCとTリンパ球を抗原と環境汚染物質で刺激したときのサイトカイン産生の変動について検討した。その結果,APCを抗原刺激するときにDEPが存在するとインターロイキン-1(IL-1)αの産生の増強がみられた。次に,APCとTリンパ球の混合培養系で抗原のみの刺激と抗原+DEPの刺激によるインターロイキン-4(IL-4)産生を比較すると抗原刺激にDEP刺激が加わった方が高いIL-4産生を誘導した。 |
| 〔発 表〕 |
E-35〜37,e-58 |
| 研究課題 |
9)環境汚染物質による毒性発現機構の解明並びにその検出手法の開発 |
| 〔担当者〕 |
青木康展・松本 理・石堂正美・佐藤雅彦 |
| 〔期 間〕 |
平成4〜8年度(1992〜1996年度) |
| 〔内 容〕 |
重金属・有害化学物質などの環境汚染物質が生体に取り込まれた際に生じる毒性の発現機構の研究,並びにその検出手法の開発は環境汚染に起因する健康リスク評価と健康影響の早期スクリーニングのために不可欠である。本年度は次の研究を実施した。(1)コプラナーPCBによるpi-class GST遺伝子の発現を高親和性のAh受容体を持つC57BLマウス肝細胞と低親和性のDBAマウス肝細胞の間で比較した。両者に差は認められず,Ah受容体に依存しないコプラナーPCBによる遺伝子発現機構の存在が示唆された。(2)カドミウム感受性決定因子をクローニングするための発現ライブラリーを作成し,約3.0kbpの遺伝子が単離された。(3)重金属結合タンパク質メタロチオネイン遺伝子を遺伝子工学的に欠損させたマウスは,水銀や白金化合物,シスプラチンが示す腎毒性に対して感受性が高いことがわかった。 |
| 〔発 表〕 |
E-23,29,31,e-1,3,4,7,8,11,31,32,34,37〜41 |
| 研究課題 |
10)NMRによる生体の無侵襲診断手法の研究 |
| 〔担当者〕 |
三森文行,山根一祐 |
| 〔期 間〕 |
平成8〜12年度(1996〜2000年度) |
| 〔内 容〕 |
生体のエネルギー代謝機能に影響を与える環境因子として大気中の酸素分圧がある。本研究ではラットを用いて筋の酸化的リン酸化能に対する酸素分圧の影響を検討した。吸気酸素濃度を50,26,21,11,8%と変え,ラットの下肢筋に同一の運動を負荷して筋のエネルギー代謝機能を測定した。この結果,正常な酸素濃度である21%より高い,26%でも既に筋の酸化的リン酸化能は酸素の供給により制限を受けていることが明らかになった。さらに,低酸素分圧における解糖系の発動と筋細胞内のクレアチンリン酸レベルには一定の相関があることがわかった。 |
| 〔発 表〕 |
E-44,e-76,77 |
| 研究課題 |
11)神経毒性指標としての脳アンキリンの分子生物学的解析に関する研究 |
| 〔担当者〕 |
国本 学 |
| 〔期 間〕 |
平成7〜9年度(1995〜1997年度) |
| 〔内 容〕 |
神経細胞傷害の高感度のマーカーとしての利用の可能性が明らかになりつつある脳アンキリンの2種類のイソ型,440-kD及び220-kD ankyrinBの発生段階のラット脳での発現量と局在の変化について検討を加えた。胎生13日目の胎仔で,既に有意な量の440-kD ankyrinBが発現されており,発生中の脳,脊髄,後根神経節などに局在していることが明らかになった。 |
| 研究課題 |
12)動物の行動発現における海馬の役割解明に関する研究 |
| 〔担当者〕 |
梅津豊司 |
| 〔期 間〕 |
平成7〜12年度 (1995〜2000年度) |
| 〔内 容〕 |
ラット海馬傷害作用を有するtris(2-chloroethyl)phosphate(TRCP)の行動影響を調べた。結果,TRCPにマウスの移所運動活性を増加する作用が見いだされた。TRCPのこの作用はdiazepam, muscimol, baclofenにより抑制され,scopolamineの移所運動活性増加作用はこれらの薬物によっては抑制されなかった。他方,apomorphineの移所運動活性増加作用はmuscimolとbaclofenにより抑制され,GABAとdopamineは関連していることが示された。従って,TRCPはGABA antagonist様作用を有し,GABA-dopamine関連を通してマウスの移所運動活性を増加させることが示唆された。 |
| 研究課題 |
13)環境保健指標の開発に関する研究 |
| 〔担当者〕 |
小野雅司・田村憲治・本田 靖・黒河佳香 |
| 〔期 間〕 |
平成5〜9年度(1993〜1997年度) |
| 〔内 容〕 |
環境汚染による疾病の発生を監視するための新たな環境保健指標の開発を目的に,既存情報,各種の健康調査及び健康診断データ等の統合と,疫学研究デザインの開発・検討を行った。
国保レセプトデータの収集・解析を継続するとともに,あらたに救急搬送データについて検討を開始した。前年検討した東京都消防庁のデータに加え,名古屋市消防局,大阪市消防局のデータを収集し,過去数年間の気象変動と救急搬送者数の関連について検討を開始した。
日別気象データと死亡データから65才以上の呼吸器疾患死亡のパターンにインフルエンザの流行が関係することを示唆する結果を得た。また,大気中の一酸化炭素濃度と総死亡率とが量−反応関係を示すという結果を得た。
心拍変動解析の一指標がヒトの徐波睡眠の出現と一致して特異的に変化することを,睡眠実験から明らかにした。さらに実際のフィールド調査に中で,この指標の数日にわたるモニターを実施した。 |
| 〔発 表〕 |
b-82,83,85,c-36,e-18,69〜72 |
| 研究課題 |
14)大気汚染物質の個人暴露評価法に関する研究 |
| 〔担当者〕 |
田村憲治・小野雅司・安藤 満*1・宮崎竹二*2
(*1地域環境研究グループ,*2大阪市立環境科学研究所) |
| 〔期 間〕 |
平成8〜10年度(1996〜1998年度) |
| 〔内 容〕 |
地域特性(幹線道路との距離など),家屋構造,生活パターンなど条件の異なる地区で,過去数年間にわたり環境濃度と個人暴露濃度を調査しデータを蓄積してきた。大阪市内の国道26号線沿道の家屋を対象に実施した浮遊粒子状物質濃度と二酸化窒素濃度の解析から,道路からの距離による濃度減衰(屋外のみ)や,屋内外濃度並びに個人暴露濃度相互間の相関が調査時期により異なること,などが明らかになった。 |
| 〔発 表〕 |
E-28,e-44 |
| 研究課題 |
15)PCBの毒性と肝細胞における遺伝子発現調節(奨励研究) |
| 〔担当者〕 |
松本 理 |
| 〔期 間〕 |
平成8年度(1996年度) |
| 〔内 容〕 |
コプラナーPCB(以下PCB)により特異的に発現されるグルタチオンS-トランスフェラーゼ-P(GST-P)遺伝子の調節領域と遺伝子の発現をモニターするためのレポーター遺伝子を結合したプラスミドをリポフェクション法によりラットの初代培養肝細胞に導入し,PCBの毒性と肝細胞における遺伝子発現調節機構の関連について調べた。レポーター遺伝子としてクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)の遺伝子を用い,GST-P遺伝子の調節領域(約2.9kb)とCAT遺伝子を結合したプラスミドを導入した細胞にPCBを暴露し,CAT遺伝子の発現量を調べた結果,PCBによりCATの発現が誘導されていることを確認した。さらに調節領域を短くした遺伝子を導入してCATの誘導発現を調べた結果,PCBによるGST-Pの発現には,GST-P遺伝子の2.5kb上流にある配列GPEIが必要であることが示唆された。 |
| 〔発 表〕 |
e-3,73 |
| 研究課題 |
16)メチル水銀中毒ラットにおける骨格筋エネルギー代謝の検討(奨励研究) |
| 〔担当者〕 |
山根一祐・三森文行 |
| 〔期 間〕 |
平成8年度(1996年度) |
| 〔内 容〕 |
メチル水銀による障害の部位が神経筋接合部より中枢側にあるか末梢側にあるかを特定するために,メチル水銀中毒ラット後肢筋機能の評価を行った。NMRスペクトロスコピーにより運動中の骨格筋の無機リン酸(Pi)およびクレアチンリン酸(PCr)の測定を行い骨格筋のエネルギー状態を評価した。独自に開発した光学式張力計により骨格筋の運動強度を同時に測定した。エネルギー代謝と運動強度との相関関係をメチル水銀投与群と対照群との間で比較し,メチル水銀の骨格筋機能への影響を検討した。研究の結果からメチル水銀中毒ラット骨格筋の酸化的リン酸化能には変化がないことが明らかとなった。またメチル水銀中毒ラットの骨格筋は,強い電気刺激に対する運動発現がやや小さく同時にPCr相対値の減少も低いことがわかった。以上の結果を総合的に評価してメチル水銀が引き起こす後肢筋運動障害は一部神経筋接合部の関与が考えられるものの大方の原因はこれより中枢側の障害によることがわかった。 |
| 研究課題 |
17)環境因子による細胞の生と死の修飾機構の解析(奨励研究) |
| 〔担当者〕 |
国本 学・石堂正美・野原恵子 |
| 〔期 間〕 |
平成8年度(1996年度) |
| 〔内 容〕 |
環境因子(本研究では重金属を中心とする)への暴露による標的組織の細胞の死に至る過程或は増殖に至る過程を詳細に解析して,キーとなる変化を同定し,毒性発現機構の分子レベルでの理解を深めるとともに,細胞死の機構解明に,いわゆる基礎科学の観点ではなく環境毒性学の切り口から貢献することを目的とした。
これまでにアポトーシス様であることを明らかにしてきた有機水銀による小脳神経細胞死,カドミウムによる腎臓細胞死について,それらの制御にかかわる因子の影響,並びにアポトーシス関連遺伝子の変動を詳細に解析するとともに,免疫系の細胞でのカドミウムによるアポトーシスの解析も行った。 |
| 〔発 表〕 |
E-16,17 |
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