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経常研究


地域環境研究グループ


研究課題 1)地球における物質と価値の循環に関する基礎的研究
〔担当者〕 森田昌敏
〔期 間〕 平成7〜9年度(1995〜1997年度)
〔内 容〕 我が国のサステーナブルデベロップメントと関連して人口と食糧及びそれを支える栄養素の将来における不足についての解析を行った。食品中の微量栄養素についても検討し、制限因子となる可能性についても分析を試みた。水資源と水の汚染について分析を試みた。

研究課題 2)都市域における大気汚染現象のモデル化に関する研究
〔担当者〕 若松伸司
〔期 間〕 平成7〜9年度(1995〜1997年度)
〔内 容〕 都市域における二酸化窒素汚染,光化学大気汚染,エアロゾル汚染などの二次生成大気汚染の生成機構を解明するための研究を行った。本年度は関西地域において春季に実施したフィールド観測データをモデルにより解析し,オゾンと二酸化窒素の発生源寄与を定量的に明らかにした。
〔発 表〕 B-117,120,121,b-201,208

研究課題 3)温度成層化した流れに関する風洞実験の相似則に関する研究
〔担当者〕 上原 清
〔期 間〕 平成6〜8年度(1994〜1996年度)
〔内 容〕 市街地低層部の風速,温度分布を再現するためレーザー流速計並びにコールドワイヤを用いて,風洞内における温度成層化した流れの統計的性質を求めるための実験を行った。本年度は従来未解明であったストリートキャニオン内の流れ場と温度場を精密に測定し,市街地における汚染物拡散を考えるための基礎的な資料を得た。
〔発 表〕 K-103,B-20,22,23,L-6,b-79〜81

研究課題 4)浅海域における熱及び物質の輸送機構に関する研究
〔担当者〕 竹下俊二・木幡邦男
〔期 間〕 平成8年度(1996年度)
〔内 容〕 東京湾奥の海底に存在する堆積物は物質の分子および乱流拡散に基づく溶出のほかに,運動量(移流)の乱流拡散に基づく表層への輸送がある。本年度は,高濃度の有機汚濁物質を含む底層の貧酸素水塊が熱と風によって表層に上昇するメカニズムについて,数値シミュレーション及び室内実験による解析を行った。数値計算は,上昇流を規定する鉛直2次元流れ場において,風速・風温,水温・塩分成層強さの諸条件の下で,SOLA法を用いて行った。その結果,水温より低い風が連吹すると,表層に生成した冷水塊が下降し,鉛直混合を繰り返しながら,水温・塩分躍層の位置を低下させるとともに,温度・塩分成層を破壊する。このため,水温以下の離岸風の下では,底層の貧酸素水塊は粒子状汚濁物質を同伴しながら上昇することが認められるとともに,実験及び現場海域調査結果と符合することが確かめられた。
〔発 表〕 B-74,b-140〜143

研究課題 5)ゼラチン質動物プランクトンの内湾域における動態
〔担当者〕 中村泰男・木幡邦男
〔期 間〕 平成7〜9年度(1995〜1997年度)
〔内 容〕 1995年夏,瀬戸内海家島諸島で海洋環境調査を実施した。渦ベン毛藻Gymnodinium mikimotoiによる赤潮発生が有鐘繊毛虫Favella ehrennbergiiによる捕食をうけて急速に消滅した直後,バクテリアと微小藍藻(=ピコプランクトン)の現存量が急速に増大した。その数日後,ゼラチン質動物プランクトンであるオタマボヤの現存量が爆発的に増大するとともにピコプランクトンの現存量が激減した。さらにこの時期,オタマボヤの現場増殖速度を測定したところ一日で体重が5倍になるという結果が得られた。こうした一連の結果と簡単なバジェットアナリシスを行うことで,オタマボヤはピコプランクトンを餌として増大し,ピコプランクトンによる莫大な有機物生産を魚類などの高次捕食者に伝えていることが示された。
〔発 表〕 B-78

研究課題 6)硝酸性窒素を含む地下水のアシフィルターによる窒素除去能に関する研究
〔担当者〕 松重一夫
〔期 間〕 平成5〜9年度(1993〜1997年度)
〔内 容〕 浸透流れと表面流れの2種類のアシのフィルターを用いて窒素の浄化効果の検討を行った。浸透流れ,表面流れの両系ともに窒素の除去効果が確認され,窒素除去にアシフィルターが効果的であることがわかった。今後さらに根圏における窒素除去機構の解明を行う予定である。

研究課題 7)大気試料中の微量元素とその環境化学的挙動に関する研究
〔担当者〕 西川雅高
〔期 間〕 平成5〜9年度(1993〜1997年度)
〔内 容〕 長距離輸送によって飛来する大気エアロゾルについて調査検討を行った。偏西風によって運ばれる大気エアロゾルのうち,カルシウム含有量が多い試料は,土壌系元素の含有量も多いことがわかった。それらは,中国大陸から飛来した土壌起源系エアロゾルである可能性が高い。
〔発 表〕 B-96,b-144

研究課題 8)生物・物理・化学的手法を活用した汚水及び汚泥処理に関する研究
〔担当者〕 稲森悠平・水落元之・西村 修・松重一夫
〔期 間〕 平成7〜12年度(1995〜2000年度)
〔内 容〕 富栄養化の著しい水域では藻類による水利用上の障害が発生していることに鑑み,生物膜法による水道原水の水質改善手法の検討を行い,藻類産生凝集阻害物質の低減およびカビ臭を発生させる藻類の除去に有効であることが明らかとなった。生活排水処理の高度化を達成する処理技術の開発に関して,セラミックボールを担体とした生物ろ過法は水温10℃においても安定したBOD,窒素除去能を発揮し,処理機能の低下は逆洗で回復できることが明らかとなった。排水処理過程で発生する温室効果ガスN2Oの発生抑制のために,間欠ばっ気活性汚泥法を対象として影響因子を解析し,N2Oの多くは嫌気工程時の脱窒過程で生成され溶存態として存在し,液相から気相への移動は好気工程のばっ気開始時に行われること,このためDOを制御因子とした嫌気・好気プロセスの最適化が重要であることが明らかとなった。
〔発 表〕 K-40,k-7,B-10〜12,17,b-12,15〜17,22,24〜26,30,31,35,36,38,39,43,45〜47,49,50,54〜56,60,63〜65,67〜69,72,100,101,174,175

研究課題 9)水質改善効果の評価手法に関する研究
〔担当者〕 稲森悠平・水落元之・西村 修・松重一夫
〔期 間〕 平成7〜12年度(1995〜2000年度)
〔内 容〕 化学物質が生態系に及ぼす影響を評価する上では,物質循環の存在する生態系における評価方法の確立が重要である。そこで再現性と安定性の高い水圏微生物生態系マイクロコズムを構築し,化学物質として界面活性剤(LAS)の生態系影響を個体群動態およびATPから評価する手法を検討した。添加したLAS濃度がまでは無添加の対照系と個体数およびATPにおいて差は認められなかった。しかし添加濃度を高くすると,原生動物,糸状藍藻類に影響が認められ,5mg/lで完全に消滅した。一方,環境条件としてLASの添加によるDO,pHの変化をモニタリングしたところ,LASが2.5mg/lまではDOの変化は対照系とほぼ同様(6.5〜7mg/l)であったが,10mg/lでは3.5mg/lまで低下した。このことから,生物化学的側面(個体群動態,ATP)から見たLASの無影響濃度は1.5mg/l,物理化学的側面(DO,pH)から見た無影響濃度は2.5mg/lと評価された。
〔発 表〕 B-9,15,16,b-18,19,21,32,33,37,40,57,62,73,75,g-34

研究課題 10)埋立地浸出水の高度処理に関する研究
〔担当者〕 稲森悠平・水落元之・西村 修
〔期 間〕 平成7〜12年度(1995〜2000年度)
〔内 容〕 高濃度難分解性有機物,窒素化合物および微量化学汚染物質を含む埋立地浸出水の高度除去プロセスを確立するために,ダイオキシン類およびクロロフェノール類の分解能を有するPseudomonas aeruginosaおよび粉末活性炭をポリエチレングリコールで包括固定化したペレットを開発し,生物活性炭を充填した嫌気槽とペレットを充填した好気槽を用いた嫌気好気循環処理実験を行った。菌と粉末活性炭を同時に固定化することによって硝化能の発現が早まり,かつ安定性が増すこと,モデル化学物質として添加した2,4,6-トリクロロフェノールは極めて高度に除去できたことから,活性炭複合担体は埋立地浸出水の高度処理に有効であると考えられた。また,嫌気処理と好気処理の中間にオゾン処理を行い,さらに好気処理水を嫌気槽に循環させることで,難分解性有機物の除去率が高まり,窒素除去率は97%と非常に高度な処理水質を達成できることが明らかとなった。
〔発 表〕 b-41,42,51,71

研究課題 11)水中微量有機化合物の分析法に関する研究
〔担当者〕 高木博夫
〔期 間〕 平成5〜8年度(1993〜1996年度)
〔内 容〕 フィルター型の固相を用いた水中微量化学物質の濃縮方法について,濃縮試料の分析器機への全量注入により試料量の削減,それによる現場で採取を容易にすることを検討してきた。本年度は,回収率を明らかにするため溶出にセミミクロポンプを用い溶出流量を低流量で一定にコントロール,溶出パターンを検討した。この方法で農薬の添加回収実験を行ったところ,初期の6μlで30%が回収できた。固相に吸着させる際の試料水の流速は,10l/min以上でも問題ないとされていること,溶出パターンに再現性が見られることから,回収率の悪い原因は,抽出溶媒の流速やカラムの形状によるデッドボリュウムに起因した溶出バンド幅の広がりによるものと考えられた。

研究課題 12)湖水中のN,P,Si含量及びその元素比と植物プランクトン組成との関係に関する研究
〔担当者〕 高村典子
〔期 間〕 平成8年度(1996年度)
〔内 容〕 植物プランクトンの優占性は湖水の窒素:リン比により大きく変化することが,実験的研究で明らかにされている。一般に,貧栄養水域での全窒素:全リン比は高いことが知られているが,十和田湖のそれは支笏湖,洞爺湖,中禅寺湖など日本の他の貧栄養湖の比に比べ有意に低いことが明らかになった。十和田湖では,Gloeocystis planktonica, Pandorina morum, Fragilaria capucina, F.teneraが優占した。
〔発 表〕 B-69,b-138,139

研究課題 13)霞ヶ浦の生物資源保護に果たす役割に関する研究
〔担当者〕 春日清一
〔期 間〕 平成3〜7年度(1991〜1995年度)
〔内 容〕 霞ヶ浦の湖沼調査時,また随時生物に注意を払い,多くの現象の発見に努力する。これらの現象が重要なものであれば,これを学会誌等に記録として残す。霞ヶ浦は多くの鳥の渡りのルートとなっており,ワシ・タカ類,シギ・チドリ類,ツバメ類が確認されている。これら渡り鳥は霞ヶ浦及びその周辺を餌場,休息場として利用しており,オーストラリア,ニュージーランドから北極圏まで移動する種も少なくない。これらの鳥にとって霞ヶ浦周辺の環境は地球規模で重要な役割を持っていることが明らかになりつつある。このなかで日本では希少種であるシギ・チドリ類が水を張った休耕田等かつて霞ヶ浦周辺に見られた湿地の環境を残した水域に多数飛来することが明らかとなり,このような環境を残すことが必要である。大型チドリであるムナグロは霞ヶ浦周辺の水田に多数飛来し,ここで霞ヶ浦から羽化するユスリカや水田の耕転後には地中の動物を活発に採食している。またタカブシギで個体識別可能な個体が3年にわたり同一場所,同時期に飛来していることが明らかとなり,これらシギ・チドリ類は渡りのルートの変更や,飛来地の移動が起こり難い。このような渡り鳥の保護のために将来に向けどのような環境を残すべきかを検討した。

研究課題 14)環境データ解析のための統計的手法に関する研究
〔担当者〕 松本幸雄
〔期 間〕 平成7〜11年度(1995〜1999年度)
〔内 容〕 本研究では環境データの特徴を考慮した統計解析手法の開発とその実データへの適用を目的としている。統計的側面から次の検討を行った。(1)花粉症の原因である空中スギ花粉の補集数が,スギ植生の分布や建物との位置関係などの局所条件によって大きく影響を受けることを実測調査により定量的に明らかにした。(2)都市における大気汚染物質の空間変動の大きさをフィールド調査および大気環境測定局測定結果を用いて評価し,二酸化窒素と浮遊粒子状物質とで空間相関構造が大きく違うことを明らかにした。これに基づき大気環境濃度をヒトへの暴露指標として用いる際の留意点を提示した。(3)大気汚染物質濃度のうち二酸化窒素と浮遊粒子状物質について,屋外環境濃度,屋内環境濃度,個人暴露濃度の関連を調査に基づいて明らかにした。(4)動物への暴露実験による量反応関係の評価に関し,集団への平均的影響でなく,過敏な集団への影響に着目する方法を開発した。
〔発 表〕 B-95,E-28,b-171〜173

研究課題 15)底質,土壌中の有機化合物の存在状態及び化学変化に関する研究
〔担当者〕 相馬悠子
〔期 間〕 平成6〜9年度(1994〜1997年度)
〔内 容〕 バイカル湖表層堆積物と赤城小沼の柱状試料中の植物プランクトンの色素分析を行った。バイカル湖の表層堆積物は1994年8月に採取した22カ所の表層から3cmまでの堆積物で採取直後-20℃保存を4℃解凍後に液体クロマトグラフで分析した。クロロフィルはMgがとれたフェオフィチンの形でほとんどが残っており,クロロフィルの形で残っているのは5〜10%である。TOC(全有機炭素量)はバイカル湖全域でどこでも2〜3%で同じなのに対し,フェオフィチン,フェオフォルバイドを含めた総クロロフィル量は南湖盆が多く残っている。検出されたカロチノイドから珪藻,緑藻,クリプト藻,ピコシアノバクテリアの存在が確認されたが,緑藻は水深の深い場所で優占種であった。また二次生成カロチノイドも検出され,その由来の解明が必要である。
 赤城小沼は過去50〜60年間の小沼周辺の環境変化とプランクトン繁茂の関係を調べた。
〔発 表〕 B-58,b-125

研究課題 16)環境化学物質の胎仔肢芽細胞の分化に及ぼす影響に関する研究
〔担当者〕 米元純三
〔期 間〕 平成7〜9年度(1995〜1997年度)
〔内 容〕 ラット胎仔肢芽培養法は,肢芽の中胚葉性の細胞が軟骨細胞へと分化する系で,分化への影響を調べるのに有用な系と考えられる。この系を用いて,分化に関与するタンパク質,特に細胞外マトリックス成分のうち,本年度はファイブロネクチンに着目して,二次元電気泳動および免疫化学的手法により検出する系を用い,河川水などの環境中で見いだされた有機塩素化合物の影響を検討した。
〔発 表〕 b-198,199

研究課題 17)発光を利用した生物活性評価システムに関する研究
〔担当者〕 白石寛明
〔期 間〕 平成7〜8年度(1995〜1996年度)
〔内 容〕 発光を利用した高感度細胞活性測定装置の改良を行い,発光を利用した簡便なマイクロプレート方式のバイオアッセイ手法を開発した。実際の環境試料の毒性評価に応用し,特定水域の環境水の毒性評価として発光バクテリアを用いた急性毒性試験を湖水,河川水,排水などに応用した。毒性が強く現れる試料については,ガスクロマトグラフ質量分析計を用いて原因となる化学物質の同定を試みた。また,発光バクテリアの変異株を用いた変異原性試験法について基礎的な検討を加えた。

研究課題 18)速度論的手法を用いた環境水中の重金属元素の化学種分別に関する研究
〔担当者〕 稲葉一穂
〔期 間〕 平成5〜8年度(1993〜1996年度)
〔内 容〕 前年度に引き続きミセル相への抽出速度の差による化学種分別の詳細を重金属イオンとキレート剤との錯形成反応の速度を水溶液中に有機物のミクロスフェアが存在する場合としない場合とで比較検討した。ミセル相への抽出平衡および抽出速度は錯体を構成するキレート剤の置換基により大きく異なり,これはミセル外郭部のオキシエチレン層内へのペネトレーションのし易さに起因することが分かった。トリフルオロメチル基など水に濡れにくい置換基を持つキレート剤で生成した錯体の抽出速度が小さいのはオキシエチレン層へと進入する際に水素結合のネットワークが阻害するためと考えられ,このような系を検討する際にはミクロスフェアと水との界面の構造を考慮する必要があると考えられる。
 これらの研究で得られた知見を基に霞ヶ浦湖水中の重金属の濃度と化学形態を検討した。
〔発 表〕 B-6,7,b-11

研究課題 19)動物の遺伝的背景の特徴をいかした毒性機構の解析に関する研究
〔担当者〕 曽根秀子
〔期 間〕 平成7〜11年度(1995〜1999年度)
〔内 容〕 これまでの研究で,酸化ストレスの発生に伴い肝炎を発症するモデル動物であるLECラットの肝実質細胞の核マトリックスタンパク分画にミトコンドリアに局在する熱ショックタンパク質,HSP 60が存在することを見いだした。本年度は,HSP 60が酸化ストレスマーカーとして有用であるかどうかを調べるために,まず細胞核内でのHSP 60の挙動を検討した。LECラットの肝実質細胞は肝炎発症に伴って核と細胞質の著しい巨大化が認められ,その電顕像では,著しい核の変性と細胞質の巻き込みが観察された。また,共焦点レーザー蛍光顕微鏡によりHSP 60が核内に局在していることが確認できた。さらに,核内のHSP 60が成熟体か,前駆体なのかをImmuno blotting法により調べたところ,核に存在するHSP 60は成熟体のみであった。以上の結果は,ミトコンドリアに存在する成熟HSP 60が核へ移行したことを示唆した。
〔発 表〕 b-129

研究課題 20)バイオモニタリングに効果的な水生生物の開発に関する研究
〔担当者〕 畠山成久
〔期 間〕 平成7〜11年度(1995〜1999年度)
〔内 容〕 化学物質の汚染は低濃度ながら多様化し,複合的な汚染の実体が各地で明らかにされている。そのため,化学物質の総合毒性が,生態系に及ぼす影響を評価するためのバイオモニタリング的手法の開発は今後ますます重要となってくるであろう。試験生物を環境水や底質に暴露する手法として,環境から採取してきたサンプルに暴露する手法と,モニタリング施設,または現場において連続的に暴露する手法がある。後者のバイオモニタリングに用いる試験生物として,ウキクサ,オオカナダモ,イチョウウキゴケ,シジミ,メダカなどを検討し,ウキクサでは,除草剤の潜在的な影響評価に有効であることが分かった。また,河川水のサンプルを用いたバイオモニタリングのため,様々なミジンコ(8種)の増殖特性と殺虫剤に対する感受性を検討した結果,Daphnia galeata, D.pulexを選択し,次年度からのバイオモニタリングに使用することとした。
〔発 表〕 b-152,155

研究課題 21)実験生物としての水生昆虫の大量飼育法の検討
〔担当者〕 菅谷芳雄
〔期 間〕 平成4〜9年度(1992〜1997年度)
〔内 容〕 セスジユスリカを実験動物化する際に抵抗性の獲得の有無を調べておくことは重要である。日本国内で殺虫剤抵抗性に関して野生系と見なしてきた日光湯元産の個体群については既に室内大量飼育が可能となっているが,他に野生系と呼ぶにふさわしい個体群がいるかどうか本年度は南北海道,および長野県を探索した。その結果,ウトナイ湖周辺,門別町,浦河町,静内町にかけての一帯には感受性の高いセスジユスリカが生息しており,先の日光産よりは48時間半数致死濃度は高いものの明らかな抵抗性は獲得していないことが分かった。一方,長野県白骨温泉の個体群は成虫の形態は典型的なセスジユスリカではあるものの,幼虫の血鰓が1対で同一種であるかどうかは今後の検討を要するが,薬剤感受性は高く野生系である可能性が高いことが分かった。
〔発 表〕 b-122

研究課題 22)微生物分解機能を活用した環境汚染の評価に関する研究
〔担当者〕 矢木修身・岩崎一弘
〔期 間〕 平成8〜12年度(1996〜2000年度)
〔内 容〕 好気条件下でテトラクロロエチレンを分解可能な微生物の探索を目的として,各種の土壌を分離源とするスクーリングを実施した。テトラクロロエチレンを唯一の炭素源として増殖できる微生物を見いだすことができなかったため,メタン,エタン,プロパン,グルコース,キシレン等の炭素源を添加するコメタボリズム反応を試みた。エタン,プロパンを炭素源として添加し,3週間以上の長期間培養した系で,テトラクロロエチレンの分解が確認された。分解の認められた系について集積培養を繰り返したが,分解活性が維持されることが判明した。

研究課題 23)環境中における界面活性剤の挙動と影響に関する研究
〔担当者〕 矢木修身・稲葉一穂
〔期 間〕 平成7〜9年度(1995〜1997年度)
〔内 容〕 界面活性剤成分の作るミセルへの物質の取り込み現象の詳細を検討するために,ミセルの内部構造と溶質の可溶化位置について検討を加えた。溶質の立体構造及び親水性の大きさがミセルへの可溶化の位置と大きさを決定することが分かった。
 殺菌洗剤の殺菌成分であるトリクロサンの環境水中での挙動について予備的な検討を加えた。
〔発 表〕 B-7,b-11

研究課題 24)環境中における微生物遺伝子の挙動に関する研究
〔担当者〕 岩崎一弘
〔期 間〕 平成7〜11年度(1995〜1999年度)
〔内 容〕 これまで環境微生物の研究対象は,分離・培養が可能な株に限られていた。近年,こうした欠点を補うため,分子生物的な手法により微生物生態を解明する試みがなされてきている。本研究では,環境中の微生物遺伝子を解析するために,土壌試料からの微生物DNAの検出及び回収法について検討した。マーカ遺伝子を導入した組換えPseudomonas putida PpY101株を土壌に接種し,かくはん遠心法によりDNA試料を回収した。この試料に対してPCR(ポリメラーゼ・チェイン・リアクション法)を行い,標的遺伝子が増幅され検出できることを確認した。さらに,遺伝子解析を妨害するフミン酸等の土壌中の阻害物質を除去するために回収法の改良を試みた。pHの異なる4種類の緩衝液で洗浄することにより比較的純度の高い試料が得られることを見いだした。
〔発 表〕 b-77

研究課題 25)植物の気孔開度に及ぼす環境要因の受容と伝達に関する研究
〔担当者〕 中嶋信美・佐治 光
〔期 間〕 平成8〜12年度(1996〜2000年度)
〔内 容〕 植物は乾燥ストレスにさらされると,それに対抗するため様々な代謝変化が起こることが知られている。本研究では乾燥ストレスに対するソラマメ孔辺細胞の応答について研究を行った。葉の表皮組織を単離して0.4Mマンニトール溶液に浸して乾燥ストレスの代わりとした。マンニトール処理2時間後の気孔開度と孔辺細胞に含まれるリンゴ酸量を測定した。その結果マンニトール処理により気孔が閉鎖すると同時に孔辺細胞へのリンゴ酸の蓄積がみられた。また,マンニトール処理を解除するとリンゴ酸は速やかに消失した。リンゴ酸の変動が何に由来するのか検討するため,孔辺細胞の呼吸活性を調べた。その結果,マンニトール処理中は孔辺細胞の呼吸活性は低下しており,処理解除と同時に回復することが明らかとなった。したがって,マンニトール処理によるリンゴ酸蓄積は呼吸活性の阻害に由来する可能性が高い。この現象の生理学的意味は明らかでないが,一種の浸透圧ストレス対抗反応であると思われる,今後はその意味づけについて検討する予定である。

研究課題 26)環境科学研究用に開発した実験動物の有用性に関する研究
〔担当者〕 高橋慎司
〔期 間〕 平成7〜9年度(1995〜1997年度)
〔内 容〕 国立環境研究所実験動物開発では,環境汚染物質の生体影響研究用実験動物としてウズラ及びハムスターを用いて開発してきたが,本年度は有用性についてさらに検討し,以下の結果を得た。(1)ニューカッスル病ウイルス不活化ワクチンに対する抗体産生能(NDV-HI抗体産生能と略)の高及び低系ウズラの選抜を50世代へと進め,両系ウズラを遺伝的に純化することができた。また,ハムスターでは兄妹交配による近交化を行い,これまでに3家系を12世代まで継代した。(2)NDV-HI抗体産生能の低系に出現した羽装突然変異を固定することができた。また,低系の繁殖能力は高系と比較して良好な成績を示し,絶滅の危機を回避できることがわかった。(3)環境中残留化合物の毒性試験手法の開発として,ウズラ発育卵を用いて検討した結果,白卵系ウズラの雑種化により得られた種卵が最も適切であった。
〔発 表〕 B-64〜68

研究課題 27)温熱と環境汚染物質の複合暴露が免疫系に及ぼす影響に関する研究
〔担当者〕 山元昭二・安藤 満
〔期 間〕 平成5〜9年度(1993〜1997年度)
〔内 容〕 温熱と環境汚染物質の複合影響を明らかにするために,本年度は,マウスに温熱又はO3を暴露し,日和見感染菌の一つであるプロテウス菌(P.mirabilis)を用いた系での肺の抗細菌活性への影響について検討した。又,気管肺胞洗浄液中の細胞成分の変化についても解析した。その結果,温熱(35.5℃,2週間)またはO3暴露(0.4ppm,24時間)のいずれにおいてもプロテウス菌に対する肺の抗細菌活性の低下が見られた。本菌の吸入感染によって,肺胞内への多形核白血球の流入が見られたが,その増強の程度は暴露マウスではより顕著であった。黄色ブドウ球菌の吸入感染においては肺胞内における殺菌はマクロファージに依存していたが,プロテウス菌の場合は多形核白血球に依存していることが示された。
 さらに,センダイウイルス抗原に対する一次抗体応答を指標にマウスの温熱暴露後の回復状態を調べた。その結果,温熱暴露によって抑制的な影響を受けた一次抗体応答は,マウスを常温環境で2週間飼育することによって正常状態へと回復し,温熱暴露による液性抗体応答への影響は可逆的変化であることが示唆された。
〔発 表〕 B-2,b-196,197

研究課題 28)環境健康リスク評価のための呼吸器系生体影響指標の開発
〔担当者〕 平野靖史郎・山元昭二・安藤 満
〔期 間〕 平成6〜11年度(1994〜1999年度)
〔内 容〕 呼吸器内に吸入された粒子状物質に対する肺胞マクロファージの貪食作用を解明するため,マクロファージのプラスチック表面への非特異的接着機構を調べた。接着に伴い,70KDのタンパクがチロシンリン酸化を受け,また,リン酸化阻害剤により接着が阻害された。以上のことから,70KDのタンパクのチロシンリン酸化が,粒子への接着に重要な役割を果たしていることが示唆された。
〔発 表〕 B-86,87,b-158,159

研究課題 29)都市環境騒音による不眠症発生リスクの評価に関する研究
〔担当者〕 影山隆之・兜 眞徳・黒河佳香*1 (*1環境健康部)
〔期 間〕 平成8〜9年度(1996〜1997年度)
〔内 容〕 フィールド調査において環境騒音による不眠症発生リスクの評価を行う手法を開発するために,他覚的および自覚的睡眠評価法に関する基礎的検討を行った。 (1)アクチメータを用いて体動から睡眠/覚醒を判定する方法により,主要道路沿道に住む成人男女を対象として,家庭で睡眠調査を行った。この方法は通常の睡眠をほとんど侵襲することなく,1週間以上連続して実施できることを確認した。屋外から寝室内への侵入音レベルと,その時の中途覚醒反応の発生率との間には,レベルー反応関係が存在することも示唆されたので,騒音による中途覚醒リスクおよびその個人差に関する研究に応用可能であると考えられた。(2)これと別に,大都市および農村部の男性を対象として,質問紙を用いた睡眠に関する調査を実施したので,回収作業および女性(調査済み)との比較解析作業を継続中である。
〔発 表〕 B-28,b-82,83,85,88

研究課題 30)飲料水の含有成分と関連の示唆される健康像の地域差に関する予備的研究
〔担当者〕 兜 眞徳・今井秀樹・新田裕史・本田 靖*1 (*1環境健康部)
〔期 間〕 平成8〜10年度(1996〜1998年度)
〔内 容〕 飲料水中の各種重金属と胃癌及びその前駆状態である慢性萎縮性胃炎との関連を調べるため,胃癌死亡率の大きく異なる国内数地域で飲料水をサンプリングし,同サンプル中の重金属を,CPMS法,MPIMS法及び原子吸光法を用いて30数種分析・定量し,対象地域の胃癌死亡率及び萎縮性胃炎の頻度との生態相関について検討中である。また,これら地域のアルツハイマー病と飲料水中のアルミニウム濃度との関連についても検討すべく,測定法等の問題を吟味している。
〔発 表〕 B-19,b-89,92,94

研究課題 31)有機スズの中枢神経毒性に関する神経内分泌免疫学的研究
〔担当者〕 今井秀樹・兜 眞徳
〔期 間〕 平成8〜10年度(1996〜1998年度)
〔内 容〕 トリメチルスズ(TMT)は脳内の海馬を特異的に傷害し,記憶障害やけいれんを引き起こすことが知られている。最近我々は,ラットにTMTを投与した後,亜急性的(投与3〜4日後)に血漿中コルチコステロン濃度が一過性上昇を示すこと,また,この上昇がインターロイキン-1受容体拮抗物質の前投与によって抑制されることを観察したことから,この時期における海馬傷害の機序について詳細な検討を行っている。まず,TMT投与の後,経時的に海馬を採取し,アストロサイトーシスの指標であるグリア線維性酸性タンパク(GFAP)とビメンチンとを定量した。その結果,GFAP量はTMT投与5日後から上昇し,以降35日後まで高いレベル(対照群の約600%)が保持された。一方ビメンチンは投与21日後に一過性の上昇(対照群の約2000%)を示した。これらの結果から,海馬のアストロサイトにはTMT投与後比較的早い時期に活性化されるタイプ(GFAP+)と,遅い時期に活性化されるもの(ビメンチン+)との2種類のサブタイプのあることが示唆された。一方,海馬の腹側(dorsal)から背側(ventral)にかけて厚さ700μmごとにスライスを作成し,TMTによる傷害の焦点が海馬のどの部分にあるかを,GFAPを定量することによって観察した。その結果海馬傷害の焦点は腹側端と中心部分との2カ所にあることが認められた。

研究課題 32)アレルギー性疾患新規発症学童における免疫応答の動態解明に関する研究(奨励研究)
〔担当者〕 新田裕史・小林隆弘*1・小野雅司*1・藤巻秀和*1 (*1環境健康部)
〔期 間〕 平成8年度(1996年度)
〔内 容〕 大気汚染度の異なる地域で収集された過去の呼吸器症状,および血清中非>特異的IgE,特異的IgE(ダニ,スギ)の情報に基づいて,症状がなく,かつIgEが陰性だった群(「非アレルギー群」)と非特異的IgEが高値を示した群(「アレルギー群」)を選び,血漿中のsIL-2R,IL-4,IL-5,IFN-γ,TNFα,RANTESの測定,ならびにダニ抗原によるリンパ球刺激試験を行った結果,非アレルギー群とアレルギー群とでいくつかの項目で差がみられた。sIL-2RとIL-5では大気汚染度の高い地域の非アレルギー群で高い傾向がみられたが,検出限界以下のデータも多く,さらに詳細な検討が必要である。また,RANTESでは大気汚染度の高い地域の両群で高い傾向がみられた。ダニ抗原刺激によるリンパ球の増殖率はアレルギー群で非アレルギー群より高い値を示した。
〔発 表〕 b-148,150,151

研究課題 33)地域住民の健康に関する1次情報収集のための調査研究の試み(特別経常研究)
〔担当者〕 新田裕史・小野雅司*1・本田 靖*1・黒河佳香*1 (*1環境健康部)
〔期 間〕 平成6〜10年度(1994〜1998年度)
〔内 容〕 環境保健モニタリングのひとつの基本相である人口集団を対象とした調査による住民個人の健康に関する1次情報を収集するための具体的な手法を検討し,そのための場を環境の異なる地域に設定することは,長期的な環境変化が人口集団の健康にどのような影響を与えるかについて検討するためには不可欠である。そのために,茨城県内と東京都内の各一地域を選定し,地域内の学童を対象として,各種疾患への罹患状況の調査,血液生化学検査等の継続調査を実施するために,自治体関係部局,学校関係者,保護者との情報交換・調査内容の説明・協力依頼を行い,関係者の協力・承諾が得られ,実施可能な項目について,1次情報の収集を目的とする。本年度は引き続き対象児童の呼吸器症状およびアレルギー症状(自記式質問票による咳,痰,喘鳴,喘息,鼻炎等の症状の有無),居住環境,肺機能(努力性肺活量,1秒量・率,他),身長・体重,血液検査(血清総IgE,ダニ特異的IgE,スギ特異的IgE)についての資・試料を収集した。
〔発 表〕 B-18,81,82,b-147,149

研究課題 34)エコオフィスの環境調和性に関する研究(特別経常研究)
〔担当者〕 清水 浩・近藤美則・乙間末廣*1・藤沼康実*2 (*1社会環境システム部,*2地球環境研究センター)
〔期 間〕 平成8〜9年度(1996〜1997年度)
〔内 容〕 地球温暖化問題の主因とされる二酸化炭素(CO)の排出削減があらゆる部門あらゆる対象に対して求められ,そのための対策が研究されてきている。しかし,現在の日本のCO排出量の約1/8を占める業務部門については,適用可能な環境低負荷型技術の個別評価は行われてはいるが,それらを組み合わせたシステムとしての評価はほとんどなされていない。そこで本研究の目的は,従来のオフィスに対して断熱を強化,太陽光発電システム,太陽熱集熱器等の環境低負荷型技術を導入し,平成7年度に本研究所内に建設されたエコオフィスを対象として,エネルギー及びCOの面からの環境調和性を評価することである。これにより,本来環境に優しいとして設計・建設されたエコオフィスをよりよいものにするための個別技術の導入指針および実用的な導入効果の推定が可能である。平成8年度は,エコオフィスに導入された個別の環境低負荷型技術および機器について実測データに基づく定量的評価を行い,同時にエコオフィスの問題点を抽出し,個別機器の改良及び運転管理手法の改善を行った。


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