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文部省・科学研究費補助金による研究


(1)エネルギー指標・環境指標・経済指標にもとづく「都市の進化」のモデリング
〔担当者〕 地球環境研究センター:一ノ瀬俊明
〔期 間〕 平成8年度(1996年度)
〔内 容〕  都市の発展の度合を表題の指標で表現し,「都市の進化論」を組み上げることを目標とする。州レベルでのデータ収集が終了した土地利用比率を対象とし,解析手法の開発を行った。対象地域はアジアの20カ国である。人口密度と農地率の関係によれば,南アジアにおいては,農地率は人口密度にほぼ比例して上昇しており,1970年以降その関係にはあまり変化が見られない。一方台湾及び韓国では,1970年時点でインドに類似の関係が見られるものの,時間の経過とともに人口密度の高い地域における農地率が低下する。これら2つの地域の間では経済的発展のステージが異なり,増加する人口を養うためその増加に対応して農地を増やす国と,食糧生産を他の地域に依存し,農地を減らして農業以外の産業にシフトする国という相違があるように思われる。実際台湾で1点1点の動きを追ってみると,人口密度で500人/kmを超えるあたりから農地率の減少が見られる。
〔発 表〕 i-4

(2)衛星観測による大陸規模の水・エネルギーフローの解明−熱帯域の大規模降水システムに伴う水循環の解明に関する研究
〔担当者〕 地球環境研究センター:一ノ瀬俊明
〔期 間〕 平成8年度(1996年度)
〔内 容〕  季節内変動>スーパークラスター>赤道波擾乱>雲クラスターのように階層化した熱帯の大規模降水システムにおける水循環および放射過程を解析し,システムの組織化機構において水と放射の果たす役割を明らかにすることを目的としている。  本年度は,衛星観測(ISCCP D1)による雲の光学的厚さ,雲頂温度,雲量データと精密な1次元放射平衡モデルとを用い,長波(4〜100μm)・短波(0.2〜4μm)領域において,大気上端の放射フラックスおよび大気加熱に対する雲の効果を計算した。特に西太平洋暖水域・東太平洋偏東風域の2領域での1990年3月の時系列を定量的に求め,海面水温等の異なる大規模場条件の下での雲システムに伴う放射効果の違いを示した。また,大規模なMadden-Julianシステムの移動に伴い様々なタイプの雲が消長することにより,放射効果が時間的に変化する様子を明らかにした。
〔発 表〕 f-31,32

(3)液状化による砂層の堆積構造の変化が強度特性に及ぼす影響に関する基礎的研究
〔担当者〕 水土壌圏環境部:陶野郁雄
日 本 大 学:遠藤邦彦
茨 城 大 学:安原一哉
道 都 大 学:鈴木正章
〔期 間〕 平成7〜9年度(1995〜1997年度)
〔内 容〕  液状化によって引き起こされる一次的な堆積構造の変化や乱れ具合を地質学的・地盤工学的に検討するため,1993年北海道南西沖地震および1995年兵庫県南部地震により液状化が発生した地域を対象として開削調査を行った。
 1)北海道の北桧山町と今金町では,噴砂を伴った亀裂を横切る多数のトレンチを掘削した。砂脈は表層の砂質シルト層中に認められ,その下位の砂礫層中から立ち上がっていた。液状化層は完新世末期の河成砂礫層であると推定され,砂脈を充填している液状化砂は表層に向かって徐々に細粒化する傾向を示していた。
 2)神戸市灘区における開削調査では,深度約1.8m以深で砂脈が不明瞭となっていたが,この砂を採取して粒度分析を行ったところ埋立マサ土と類似していた。砂脈を充填する堆積物の粒度組成は下位から上位に向かって次第に埋立マサ土領域から細粒へとまた淘汰が進む方向に変化していた。深度1.5〜約10m間に分布する埋立マサ土層の上部が液状化したものと推定された。
〔発 表〕 G-23,g-24,26,28,31

(4)環境汚染物質に対するアレルギー反応性のヒトとマウスでの比較
〔担当者〕 環境健康部:藤巻秀和
化学環境部:白石不二雄
慈恵医科大学:実吉健策
〔期 間〕 平成7〜9年度(1995〜1997年度)
〔内 容〕  環境汚染物質のヒトの健康への影響を評価するときに,実験動物で得られた知見をヒトへの影響として直接外挿はできない。しかしながら,外挿するための最良の方法は見いだされていない。ヒトへの外挿の問題に科学的知見を提供するため,本研究では,環境汚染物質に対するヒトとマウスの細胞における感受性を比較する目的で,アレルギー反応に関与する細胞群に焦点をあて細胞増殖やサイトカイン産生への影響について検討している。マウス骨髄由来培養肥満細胞とヒト幼若好塩基球細胞のホルムアルデヒド暴露による細胞増殖能の比較では,低濃度暴露による細胞増殖の亢進が好塩基球ではみられたが,肥満細胞ではみられなかった。サイトカイン産生への影響検索では,活性化していないマウス肥満細胞への低濃度ホルムアルデヒドの暴露では産生はみられなかったが,抗原やA 23187により活性化した肥満細胞への暴露ではインターロイキン4や6の産生の増強が認められた。
〔発 表〕 E-35,36,39,40

(5)砂分を多量に含む粘性土の繰返し圧密特性に関する基礎的研究
〔担当者〕 水土壌圏環境部:陶野郁雄
〔期 間〕 平成8〜10年度(1996〜1998年度)
〔内 容〕  砂分を多量に含む粘性土の繰返し圧密試験を行えるようにするために,全自動繰返し圧密試験装置を改良した。砂質粘性土を用いて繰返し圧密試験を行い,1秒に1回の割合でひずみ量を読み取り精度0.001mmの計測器によってデータを収録したところ,収録したデータ数が十分でないことがわかった。そのため,0.1秒間に1回の割合でデータを収録できるように試験装置の一部の改造にとりかかった。
 試験装置を改造している間,繰返し圧密試験を実施することができないため,主に砂質地盤で構成される上越市の高田市街地において,消雪用に多量に地下水を揚水している深度30〜40m付近の帯水層の地下水位と地層収縮量を新たに開発した持ち運びのできる簡便な地盤沈下測定装置を用いて測定して,地下水位の短期的な変動量と地盤沈下量の関係を明らかにした。国立環境研究所研究報告にまとめた。
〔発 表〕 G-19,g-22

(6)睡眠覚醒リズムのシフトと不眠症のストレス評価に係わる生理内分泌学的研究
〔担当者〕 地域環境研究グループ:兜 眞徳
〔期 間〕 平成8〜10年度(1996〜1998年度)
〔内 容〕  近年とくに生活パターンの夜型化が進行しており,夜間の活動や昼夜シフトの勤務等も増加している。こうした睡眠覚醒リズムの変化がストレスや不眠症の原因となることが示唆されているが,その本態についてはなお不明な部分が多い。本研究では,都内及びN県,G県及びO県の3カ所で行っている不眠症の疫学調査において見いだされた極端な睡眠覚醒リズムを示すケース,すなわち“short sleeper”,“long sleeper”, “daytime sleeper”,“nighttime sleeper”について,その自覚的及び他覚的な睡眠の評価を行うほか,職域でも同様な睡眠調査を行い,昼夜シフト業務や極端な睡眠覚醒リズムを示すケースについて同様に詳細な評価研究を行うことを目的としている。他覚的評価としては,カテコールアミン,コロチコステロン,メラトニン等の内分泌系及び心拍間隔変動のパワースペクトル成分を用いた自律神経系機能指標を用いる。また,心拍間隔変動のパワースペクトル解析から得られる超低周波成分は,睡眠のうちの「深睡眠」を示す指標であることが示されてきたので,心拍間隔のモニターデータを用いた睡眠の直接的な評価も可能である。初年度である平成8年度においては,同調査のための基礎的な検討を行い,調査に協力してもらえる対象者の選定を行い,現在調査中である。
〔発 表〕 B-24〜26,b-82〜85,88,95

(7)IgG1を介する新しいタイプのぜん息様病態発現メカニズムの解明に関する実験的研究
〔担当者〕 地域環境研究グループ:嵯峨井勝・市瀬孝道・高野裕久
〔期 間〕 平成8〜9年度(1996〜1997年度)
〔内 容〕  我々は,ディーゼル排気微粒子(DEP)をアレルゲンとともにマウスに気管内投与すると,好酸球の浸潤を伴うぜん息様病態が発現することを見いだした。しかし,この時のぜん息様反応は,IgEと肥満細胞が関与するI型アレルギー反応ではなく,IgG1が著しく増加していた。
 今回,このメカニズムを解明するため,IgE抗体産生能の高いBALB/cマウスとIgG産生能の高いC3H/He系マウスにDEPと卵白アルブミン(OA)を繰り返し投与した。その結果,両マウスでIgE増加は見られず,IgG1の増加が認められた。また,好酸球浸潤とIL-5はC3H/Heマウスでのみ認められた。このことから,DEPによるぜん息様病態発現には,IgG1とIL-5が増加するかどうかが重要な因子であることが示唆された。

(8)野生生物個体群の生存力の評価手法に関する研究
〔担当者〕 地球環境研究グループ:椿 宜高・高村健二・永田尚志
〔期 間〕 平成8〜10年度(1996〜1998年度)
〔内 容〕  世界中で生物多様性の減少および野生生物種の絶滅が問題となり,その対策が緊急の課題となりつつある。種の絶滅の原因には死亡・出生の偶然変動,環境の偶然変動,カタストローフ,遺伝的多様性の減少による平均適応度の低下などがあげられる。その中心課題のひとつとして,遺伝的多様性の減少が種の絶滅を加速している可能性が多くの研究者によって指摘されている。しかし,遺伝変異の減少の記載は少なからずあるものの,その生態学的なメカニズムに関してはほとんど明らかになっていない。この研究では動物の適応度(生存・繁殖)の指標としての左右対称性のゆらぎの振舞いを生態学と遺伝学の両面から明らかにする。
〔発 表〕 A-41,42,44,45,100,a-38,44,63,64,134〜136

(9)湖沼における従属及び半独立栄養性ベン毛藻の分布とその役割に関する基礎的研究
〔担当者〕 地域環境研究グループ:高村典子
〔期 間〕 平成6〜8年度(1994〜1996年度)
〔内 容〕  湖水の栄養レベルの異なる日本の31湖沼で,湖の表層水中に出現した細菌,ピコシアノバクテリア,真核性ピコプランクトン,ベン毛虫(藻),そして繊毛虫の密度を水温が律速しない時期に調べ,湖水の栄養塩濃度との関係,または微小生物間の密度の関係を検討した。その結果,細菌の密度と繊毛虫の密度がともに全リン量,全窒素量,クロロフィルa量と正の相関を示し,TN:TP比と負の相関を示した。対数変換した繊毛虫の密度は対数変換したクロロフィルa量の一次回帰式で表せた。今回求めた細菌と繊毛虫の密度やそれらを表す回帰式は従来の報告値と大きく異なることはなかった。しかし,ベン毛虫の密度は過去の報告ほど高くはなく,従来報告されているように細菌の密度と密な関係は得られなかった。ハイビジョンカメラを用いることによって,湖水の栄養レベルの異なる日本の15湖沼に出現するベン毛虫,ベン毛藻,繊毛虫,太陽虫,アメーバを初めて明らかにした。
〔発 表〕 B-70,b-135

(10)アオコが生産する毒物質,ミクロシスチンの湖沼生態系における挙動に関する研究
〔担当者〕 生物圏環境部:渡邉 信
化学環境部:彼谷邦光
〔期 間〕 平成6〜8年度(1994〜1996年度)
〔内 容〕  霞ヶ浦及び印旛沼においてアオコ細胞中の毒素ミクロシスチン量は74〜632μg/gと変動し,湖水中には0〜0.33μg/gの濃度で溶解し,動物プランクトンBosmina fatalis に6.3〜270μg/gの濃度で蓄積していることがわかった。混合栄養を行う黄金色藻類ポテリオオクロモナスは有毒アオコを捕食し,消化して増殖する。消化されたアオコ細胞より放出された毒素ミクロシスチンのほとんどは分解されず,細胞外へ放出されることがわかった。タマミジンコに対する有毒アオコの影響を調べた結果,タマミジンコに致死影響を及ぼす毒成分はミクロシスチンではないが,その合成と密接に関連している物質であることがわかった。食用ガエルRana grylio のオタマジャクシは有毒アオコ及びそれが産生する毒素の影響を全くうけず,有毒アオコを餌として摂食し,カエルまで成長すること,また,オタマジャクシは有毒アオコを活発に摂食することで有毒アオコの水の華を減少させることが判明した。
〔発 表〕 H-38,39,41,h-30,35,38

(11)ダイオキシンとその類縁体の分子構造及び構造毒性 相関に関する研究
〔担当者〕 地域環境研究グループ:森田昌敏
〔期 間〕 平成7〜8年度(1995〜1996年度)
〔内 容〕  いくつかのダイオキシン異性体類の結晶を得てX線結晶解析により分子の三次元構造を明らかとすることを試みた。1,3,6,8-四塩化ダイオキシンの構造が決定された。毒性構造相関として予備的なバイオアッセイの結果では1,2,4,7,8-PCDDに弱い毒性と認めた。

(12)環境汚染のタイムカプセル“入皮”の研究
〔担当者〕 地球環境研究グループ:佐竹研一
地域環境研究グループ:西川雅高
化 学 環 境 部:田中 敦
〔期 間〕 平成7〜8年度(1995〜1996年度)
〔内 容〕  樹木(杉)の幹の中には樹木の傷の修復過程で樹体内に閉じこめられた外樹皮(入皮)が存在する。この外樹皮は生成当時の汚染物質を蓄積しているので環境汚染のタイムカプセルと考えることができる。この“入皮”に注目し,江戸時代の鉛汚染の程度と現代の鉛汚染の程度を比較すると,鉛による大気汚染は栃木県の日光で江戸時代よりも約1000倍進んでいることが明らかとなった。一方,同様の調査を鹿児島県の屋久島で行ったところ,汚染は江戸時代のそれの約数十倍であった。この調査に用いた日光の杉は樹齢約350年のもので,幹の中には江戸時代中期の1760年から約20年間で形成された入皮が存在し,その中の鉛の量が約0.15ppmであったのに対し,現在の汚染は150ppmであったのである。

(13)大気中有機ハロゲン化合物測定のための極低濃度標準ガスの保存性に関する研究
〔担当者〕 化学環境部:横内陽子
〔期 間〕 平成8〜9年度(1996〜1997年度)
〔内 容〕  塩化メチル,臭化メチル,ヨウ化メチル,四塩化炭素,トリクロロエチレン,テトラクロロエチレンの7種類の有機ハロゲン化合物の1ppb,100ppt標準ガスを調整し,5種類の容器(汎用アルミニウム容器,アルミニウム1s容器,汎用マンガン鋼容器,マンガン鋼1s容器,ニッケルメッキマンガン鋼容器)に加圧(100気圧)充填して保存試験に供した。その結果,表面が滑らかな1s容器が低濃度ハロカーボン標準ガスの保存に優れ,アルミニウム1s容器が四塩化炭素も含めて最もよい成績であった。汎用容器の場合,特に臭化メチル,ヨウ化メチルの減少が顕著であった。

(14)MRイメージング法によるLECラット肝における多段階発癌説の検証に関する研究
〔担当者〕 環境健康部:三森文行・山根一祐
筑波大学:板井悠二
〔期 間〕 平成8〜10年度(1996〜1998年度)
〔内 容〕  2年間にわたって長期的に繰り返し観察を行うために,LECラット17匹を長期実験群として設定した。さらに,上記とは別に57週から104週齢の高齢LECラット11匹を確保し,肝のMRイメージ測定と病理診断を組み合わせた,肝疾患の鑑別診断確立のための研究を行った。この結果,MRイメージ上で胆管線維症6例,肝紫斑症8例,高分化型肝細胞癌及び過形成結節3例,嚢胞3例,脂肪変成2例を識別することができた。さらに,画像のコントラスト,特に,ダイナミックスタディにおける信号増強の経時変化から,肝細胞癌及び過形成結節をその他の疾患と鑑別できることがわかった。この結果は,同一個体を用いた長期繰り返し観察において肝細胞癌を同定するためにきわめて有用である。また,高齢LECラット肝において,肝細胞癌のみならず肝紫斑症が頻発することを初めて示し,そのMRイメージにおけるキャラクタリゼーションを確立した。
〔発 表〕 E-43,e-74,75,78,79

(15)植生景観の好みに及ぼす居住環境の影響解明
〔担当者〕 社会環境システム部:青木陽二
山 梨 大 学:北村真一
千 葉 大 学:古谷勝則
国立科学博物館:近田文弘
〔期 間〕 平成8〜9年度(1996〜1997年度)
〔内 容〕  本研究は,日本の景観の特徴が多様な植生によってもたらされているという外国人の指摘に従い,どのような植生景観がどのような居住環境に住む人々によって好まれているかを明らかにするものである。研究対象として日本で最も多様な植物群落が見られる南アルプス周辺地域を選び,長野県,山梨県,静岡県の学識者,国立公園管理者,市町村,一般住民の協力を得て,多様な植生景観を撮影した写真を収集した。また写真が撮影された現地を訪ね,視対象と視点を確認した。また当該地域の植生図や地形図など植生景観を分析するための資料を入手した。収集した写真を2軸で分類した。一つは高度差を考慮した植生帯で高山帯,亜高山針葉樹帯,落葉樹帯,常緑広葉樹帯を12クラスに分け,他方は写真に含まれる近景,中景,遠景の割合を用いて6クラスに分けた。そして,それぞれの分類群から,代表的写真の選定を行った。

(16)大深度立坑を利用した実スケール雲化学実験−二酸化イオウの酸化に関する研究
〔担当者〕 大気圏環境部:福山 力・内山政弘
地球環境研究グループ:村野健太郎
北 海 道 大 学:太田幸雄
〔期 間〕 平成8〜10年度(1996〜1998年度)
〔内 容〕  岩手県釜石鉱山にある全長425mの立坑を用いて人工雲を発生させ,これに向けて二酸化イオウを放出する実験を行った。今回は坑底にブロワーを設置して二酸化イオウを強制的に拡散させ濃度の均一化を図った。放出量は平均0.5l/min,坑底での濃度は約30ppbであった。観測用エレベーターに二酸化イオウ計を搭載して濃度の鉛直プロファイルを調べる際,濃度計の時間応答性にとくに注意を払ってエレベーター運行プログラムを設定した。得られたプロファイルから,二酸化イオウのレインアウト速度に関する結果の再現性をチェックした。またエレベーターに雲水採取装置を載せて,種々の高度で雲水を集めイオンクロマトグラフィーにより組成分析してSO2−,NO−,Cl−,Na+,K+,Mg+,Ca等の濃度を求めた。SO2−は最高10ppmに達し液相熱反応によるS(IV)→S(VI)の酸化反応が裏付けられた。また,雲核として作用する無機塩類濃度に関する知見が得られた。
〔発 表〕 f-5,6,38

(17)IgEを介さない新しいぜん息様病態発現メカニズムの解析とマウスの系統差に関する研究
〔担当者〕 地域環境研究グループ:市瀬孝道
〔期 間〕 平成8〜9年度(1996〜1997年度)
〔内 容〕  これまで,ディーゼル排気微粒子(DEP)をアレルゲンとともにマウスに気管内投与するとぜん息様病態が発現し,その病態の程度はマウスの系統によって違う可能性があることを認めた。
 そこで今回,5系統のマウスにDEP(50μg)+OA(1μg)を3週間に1回ずつ4回気管内投与し,ぜん息様病態指標の計測を行った。その結果,血清中のIgE値はどのマウスにおいても変化なかったが,IgG1値は系統によって著しい違いがあり,その順序はぜん息の病態の最もよい指標である気道粘膜下への好酸球浸潤や気道上皮の粘液細胞化の程度と統計的に有意な相関を示した。このことは,DEPとアレルゲンによるアレルギー性気管支ぜん息の病態発現にはIgEよりもIgG1が重要な役割を果たしている可能性があることを示している。

(18)日本およびヨーロッパの富栄養化水域に発生する糸状藍藻類の新規毒素の構造と毒性
〔担当者〕 化学環境部:彼谷邦光・佐野友春
生物圏環境部:渡邉 信
〔期 間〕 平成8〜9年度(1996〜1997年度)
〔内 容〕  本研究ではヨーロッパおよび日本で異常発生するOscillatoriaNostoc等の有毒糸状藍藻類の生産する毒素の化学構造,作用機作を解明し,有毒糸状藍藻類の被害の防止に役立てることを目的としている。初年度はイギリスで淡水湖沼から汽水域まで広く繁茂しているNostocの有毒成分の単離・構造決定を行った。約30gの凍結乾燥藻体から有毒成分を抽出し,逆相HPLCで分画し,4種類の有毒成分を単離精製した。FABMS,NMRおよびアミノ酸の光学異性体分析から3種類は新規ミクロシスチン同族体([Asp3,ADMAdda5,Dhb7] microcystin RR,[Asp3,ADMAdda5,Dhb7]micorcystin HtyRおよび[Asp3,ADMAdda5,Dhb7]microcystin LR)であった。デヒドロブチリン(Dhb,2-amino-2-butenoic acid)を含むミクロシスチン同族体の発見は当研究室が最初である。もう一つの有毒成分は新規構造のサイクリックデプシペプチド(Nostocyclinと命名)であった。本ペプチドはミクロシスチンと同様にプロテインホスファターゼを阻害した。
〔発 表〕 D-4,10

(19)土壌生態系に及ぼす汚染物質の影響評価手法に関する基礎研究
〔担当者〕 水土壌圏環境部:服部浩之
〔期 間〕 平成8〜10年度(1996〜1998年度)
〔内 容〕  汚染物質として,酸性物質を取り上げ,土壌の酸性化と土壌微生物相との関係を調べた。土壌は,砂質土と火山灰土を用い,それぞれの土壌で,pHが約4〜7の範囲の8通りのpHの土壌を作成し,各土壌中の細菌数,グラム陰性細菌数,放線菌数,糸状菌数を調べた。
 その結果,土壌pHが低くなるほど,細菌数,グラム陰性細菌数は,減少する傾向にあり,糸状菌数は逆に増加する傾向にあった。両土壌とも,pH約4の土壌の方が約7の土壌に比べて,細菌数,グラム陰性細菌数は約100分の1に減少し,糸状菌数は千倍以上に増加した。菌相が特に大きく変化するのは,pHが約5.5のときであった。基質(稲ワラ)を添加した土壌でも同様の結果が得られた。
 以上のように,土壌の種類,基質の有無によらず,土壌pHと糸状菌数の間には,同様な関係がみられることから,糸状菌数が土壌の酸性化の指標になりうる可能性があると考えられた。

(20)ディーゼル排気微粒子(DEP)によるぜん息様病態におけるリンパ球の役割に関する研究
〔担当者〕 地域環境研究グループ:高野裕久
〔期 間〕 平成8〜9年度(1996〜1997年度)
〔内 容〕  マウスにvehicle, ovalbumin(OVA:アレルゲン), diesel exhaust particles(DEP),OVA+DEP併用を6週間気管内投与した。OVA,DEP単独投与群に比較しOVA+DEP併用群では,組織学的に好酸球とリンパ球の気管支周囲への浸潤を特徴とする気道炎症と粘液産生細胞増生が著明であり,気管支肺胞洗浄液(BALF)中の好酸球と好中球数,アセチルコリンに対する気道過敏性,抗原特異的IgG1産生も有意に増悪していた。免疫組織学的検討では,OVA+DEP併用群の浸潤リンパ球にはIL-5陽性の細胞が散見された。BALFと肺可溶性画分中のIL-5のタンパク発現は,OVA単独でも軽度に観察されたが,OVA+DEP併用群で顕著に増強していた。IL-5は好酸球を誘導,活性化し,生存を延長することが知られている。DEPの併用投与は,アレルゲンによるリンパ球の浸潤やIL-5 の産生を修飾することにより,好酸球性気道炎症を増悪していることが示唆された。
〔発 表〕 B-60,62,37,b-133,134

(21)周囲の土地利用が湿原の乾燥化に及ぼす影響評価に関する研究
〔担当者〕 生物圏環境部:野原精一
〔期 間〕 平成8〜9年度(1996〜1997年度)
〔内 容〕  1996年6月1日に地下水位の観測を25カ所で行った。概ね上から下へ水が流れていっているが所々で流れが上向きの場所があった。どの地点も6月上旬よりも6月下旬の方が水位は高く梅雨で水が供給されたことを示している。9月中旬には夏期の降水が少ないために地下水位が低下した。急激に変化するのはおよそ20mの所まででそこを過ぎる湿原内部の変化は小さくなった。素掘りの水路が深いラインは水位低下が大きいことから湿原の周囲の地下水位の低下が原因と考えられた。
 水路が深いラインでは境界から20mの地点でチマキザサの草高が平均約80cmあり,50m付近で50cm,90m付近のあまり見られなくなる地点では30cmの草高になっていた。その関係は季節を通して大きな変化はなかった。シュート当たりの葉数の平均はどの地点でも大きな違いはなく5〜7枚であった。葉の寿命はおよそ2年と観察された。シュート密度はラインの50m付近でやや大きく赤井谷地境界付近とチマキザサの分布縁の90m付近で小さくなった。6月初めには当年のシュートが生じるために密度が大きくなったが,9月には一部の老齢化したシュートが枯死するため密度は低下した。
〔発 表〕 K-76,H-3,5,6,k-8

(22)脳神経系における細胞接着分子と細胞膜裏打ち構造との相互作用の解析
〔担当者〕 環境健康部:国本 学
〔期 間〕 平成8〜9年度(1996〜1997年度)
〔内 容〕  脳神経系における細胞接着分子と細胞膜裏打ちタンパク質の相互作用の意義を分子レベルで明らかにするため,神経細胞接着分子L1と細胞膜裏打ちタンパク質脳アンキリン(ankyrinB)に着目して,まず,脳神経系の発生段階における神経細胞でのL1及びankyrinBの発現量と局在の変化をイムノブロット法並びに免疫組織化学染色により解析した。ラットの脳神経系発生過程において,ankyrinBは胎生13日目より有意に発現されており,その後発現量は増加し,440-kD ankyrinBは生後10〜15日でピークに達する。L1の発現量も類似の変化を示した。さらに生後の小脳分子層形成過程では,440-kD ankyrinB,L1ともに形成中の分子層に局在し,プルキンエ細胞,顆粒細胞の細胞体,樹状突起に局在する220-kD ankyrinBとは大きく異なった。

(23)自然発症肝炎・肝がん動物における加齢に伴うゲノム不安定性の解析
〔担当者〕 地域環境研究グループ:曽根秀子
〔期 間〕 平成8〜9年度(1996〜1997年度)
〔内 容〕  Long Evans Cinnamon(LEC)ラットは,銅の輸送タンパク遺伝子atp7bの変異により肝臓に銅が異常蓄積し,さらには肝炎・肝がんを発症する。このLECラットの加齢でのゲノム不安定性を解析するため,本年度はレポーター遺伝子を組み込んだトランスジェニックLECラットを作成した。lacI導入LECラットの作成は,lacIが導入されたBig Blue F344ラットとLECラット(LEC/Crj)のF1をLECラットと戻し交配することにより行った。得られたF1バッククロスの中から,lacI DNAプローブを用いたドットブロット解析により,lacI遺伝子導入動物の選別をした後,さらに,wild atp7bのプローブrWDF9R10によるサザンブロット解析によりmutant atp7b(atp7b-/-)を持つlacI遺伝子導入LECラットを選別した。

(24)植物の光合成誘導状態に及ぼす光と水条件の影響とその生態学的意義
〔担当者〕 地球環境研究グループ:唐 艶鴻
〔期 間〕 平成8年度(1996年度)
〔内 容〕  本研究の目的は,光合成を制御する主な環境要因である光と湿度が光合成誘導状態に及ぼす影響を調べ,誘導状態の生理生態学的意義を明らかにすることである。そこで,熱帯と温帯稚樹を材料として,以下の実験を行った。1)同化箱内の湿度と光強度を変化させ,稚樹の光合成を測定した。2)熱帯林林床の光と湿度条件下で,連続的に稚樹の光合成を測定した。その結果,湿潤な条件下では定常状態の光合成速度,気孔コンダクタンスと蒸散速度が高いこと,また,光量子密度を50から500μmol/m/sまで上昇させた場合,高い湿度が光合成誘導反応速度を加速することが明らかになった。しかし,湿度に対する光合成速度の変化は熱帯と温帯稚樹の間で明瞭な違いが認められなかった。さらに,熱帯林の林床のように高い湿度環境では,変動する光環境に対する稚樹の光利用効率が増加することが明らかになった。

(25)環境中の有機スズ濃度とインポセックスによる巻貝類の個体群減少の最近における動向
〔担当者〕 化学環境部:堀口敏宏
〔期 間〕 平成8年度(1996年度)
〔内 容〕  (1)マリーナ周辺海域(神奈川・油壷)では海水中から20〜70ng/lのトリブチルスズ(TBT)が常時検出され,他の海域における最近の報告値より10倍ほど高かった。また造船所近傍海域(神奈川・城ケ島)では,海水中からTBTが6.4〜289.9ng/l(平均51.3ng/l)検出され,他の海域と比べ著しく高かった。イボニシのインポセックス出現率は両海域とも依然100%であり,産卵不能個体がなお多数観察されるなど,その症状はなお重篤であった。産卵行動や卵嚢はほとんど観察されなかった。殻高組成解析の結果,加入量も少ないと推察された。
 (2)対照海域(茨城・平磯)では海水中のTBTは3ng/l程度であり,他の海域よりやや低かった。イボニシのインポセックス出現率はいくらか減少し,産卵不能個体は観察されなかった。産卵行動も卵嚢も観察され,加入量も上述の海域より多いと示唆された。
〔発 表〕 K-54,D-38,d-30〜36

(26)生体内での酸化的ストレスに対するメタロチオネインの防御効果
〔担当者〕 環境健康部:佐藤雅彦
〔期 間〕 平成8年度(1996年度)
〔内 容〕  マウスに塩化亜鉛をあらかじめ(薬物投与1日前)1回皮下投与して肝臓中のメタロチオネイン(MT)濃度を増加させることにより,フリーラジカル誘起物質である四塩化炭素あるいはメナジオンの投与で認められる肝臓での脂質の過酸化並びに血漿GPT活性の上昇がともに著しく軽減された。しかしながら,MT合成阻害作用を有するプロパルジルグリシンを亜鉛投与2日前から1日1回,3日間皮下投与することにより,肝臓中MT濃度の増加が抑制され,亜鉛前投与による両薬物の肝毒性の軽減も有意に抑制されることが明らかとなった。また,マウス右後肢足首の虚血で発生する足浮腫(フリーラジカルの産生が炎症の発現に関与している)がMTを虚血直前に尾静脈内投与することよって,著しく抑制されることが見いだされた。以上の結果から,MTは酸化的ストレスに対する生体内防御因子として重要な役割を果たしていることが強く示唆された。

(27)環境大気中の炭素安定同位体比の高頻度,高精度測定のための導入系の開発
〔担当者〕 化学環境部:田中 敦
〔期 間〕 平成8年度(1996年度)
〔内 容〕  元素分析計のキャリア流路に定量ループを組み込み,気体試料を導入できるように改良し,同位体測定精度を支配している要因を検討した。この導入系を用いて,元素分析計から質量分析計へ気体試料をスプリット導入した場合,標準偏差0.09‰の精度で測定できることが示され,元素分析計からのガス試料の導入能力自体は,質量分析計の測定精度に匹敵することがわかった。ただし,試料導入のスプリット比が時間経過に伴って変化することが原因であるサンプルビーム強度のドリフト,及び空調機のスイッチングが原因である周期的な同位体比の変動が認められ,これらの要素が測定精度の限界となっていた。また,質量分析計のイオン源内の圧力効果を検討したところ,元素分析計から導入されるキャリアガスの量がバックグラウンド値及び同位体比に影響を与えていることが示され,通常行われるビーム強度で同位体比を補正する方法は有効でないことがわかった。

(28)環境汚染物質の影響評価のための肺胞モデル培養系の作製
〔担当者〕 環境健康部:古山昭子
〔期 間〕 平成8年度(1996年度)
〔内 容〕  本研究では肺を構成する細胞間の相互作用に注目して肺胞構造を模した培養系を作製し,環境汚染物質のin vitro暴露法の検討を行った。ラットU型肺胞上皮株細胞株は,通常の培養では基底膜を形成しないが,肺線維芽細胞を包埋したコラーゲンゲル上で培養した場合には基底膜が形成された。このとき形態的にも細胞表面マーカー発現でもI型肺胞上皮細胞への分化促進が認められ,タイトジャンクションが形成されて上皮組織の電気抵抗が増加した。肺実質組織を模したこの系では上皮細胞の機能分化と極性が発現したものと考えれられた。この培養系にオゾンの作用型であるラジカル発生源として過酸化水素の暴露を試みたところ,肺胞上皮細胞に濃度・時間依存的に電気抵抗の減少やアポトーシスの増加,細胞剥離などの傷害を与えた。ガス状物質暴露を可能にするためにはさらに暴露方法の検討が必要である。
〔発 表〕 e-67,80


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