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科学技術振興調整費による研究


5.国際共同研究(二国間型)


(1)海洋物質循環解明に必要な海洋観測項目の正確度に関する研究

〔研究担当〕
地球環境研究グループ 野尻幸宏・向井人史
〔期 間〕
平成8年度(1996年度)

〔内 容〕
 二酸化炭素の地球規模循環解明には,海洋の炭素吸収量を明らかにする必要がある。高緯度北太平洋は植物プランクトンの生産が大きく,重要度が高い。国立環境研究所地球環境研究センターでは,地球環境モニタリング事業として,日加間を定期運行する貨物船による海洋の二酸化炭素交換収支と生物生産に関するモニタリング研究を1995年に開始した。この研究はカナダ政府海洋科学研究所との共同研究である。
 この観測において両研究機関では,化学分析項目を分担して行うこととした。従来の観測データ,他機関の観測データとの相互比較を行うことは,そのデータの有効活用のために必要であり,そのために,データの正確度を高めることが必要である。この研究では,研究者の相互訪問を通して,クロロフィル,二酸化炭素同位体,栄養塩について,その化学分析の正確度に関する研究を行った。
 海洋植物プランクトン量の指標であるクロロフィル量について,日加間定期船で得られる同一試料を双方で分析した。カナダ海洋科学研究所では,蛍光光度計による従来法で,国立環境研究所では,名古屋大学大気水圏科学研究所との共同で,高速液体クロマトグラフ法で分析した。相互の分析から得られた季節変動,空間分布パターンは同様であったが,絶対値そのものには差があった。ただし,本質的な測定対象が異なるため,その差は当然のものと考えられた。また,高速液体クロマトグラフ分析システムを整備し,より高度な分析を行えるものとした。
 海洋の二酸化炭素吸収の指標となる海水・大気の二酸化炭素炭素安定同位体比分析について,標準スケールの相違を確認する相互比較を行い,その結果を解析中である。栄養塩類は,カナダ海洋科学研究所がその分析を担当している。その相互比較は今後行うこととして,分析体制を整備した。
〔発 表〕a-80


(2)In vitro系を用いたリスクアセスメント手法の開発

〔研究担当〕
環境健康部 国本 学・青木康展
〔期 間〕
平成8年度(1996年度)

〔内 容〕
 有害化学物質による健康影響を予測するためのリスクアセスメント手法開発努力の一環として,特に短期間で多種類の化学物質の毒性を評価しうる試験系としての培養細胞を用いたin vitro毒性評価法確立のための検討を,ウプサラ大学のグループと共同で行った。特に,様々の試験法の有用性評価と,in vitro毒性試験で得られた結果とヒトでのin vivoの毒性との比較に焦点をあててすすめた。試験法の多くは用いている細胞の種類,由来の臓器が異なっているにもかかわらず比較的似通った毒性値を与えたことから,この毒性値が各細胞に共通の機能,構造に対する毒性を反映するものと考え,基礎細胞毒性Basal cytotoxicityという概念を提示した。さらに,この毒性値と,ヒトでの急性毒性発現用量(中毒センター等より入手)との比較を行ったところ,ヒト由来細胞を用いたin vitro毒性試験での毒性発現濃度とヒトでの急性毒性発現血中濃度との間にある程度の相関が認められることが明らかになった。
 また,国立環境研究所において,当分野の第一線で活躍している研究者を国内外より招聘して,In vitro毒性試験の環境評価への利用―有望それとも絶望的」と題したワークショップを開催した。
〔発 表〕E-13〜15,e-14


(3)日中における大気中鉛と硫黄の安定同位体比:汚染の発生源と越境輸送に関する研究

〔研究担当〕
地球環境研究グループ 向井人史
化 学 環 境 部 田中 敦・藤井敏博
〔期 間〕
平成8年度(1996年度)

〔内 容〕
 日本及び中国での大気汚染の特徴を鉛とイオウと安定同位体比の観点から明らかにするために,各地で大気粉塵,二酸化イオウなどの採取を計画し,いくつかの場所でのサンプリングを実施した。分析のためには,大容量の空気が必要であるため,従来のハイボリュームエアーサンプラを用いて,粉塵,二酸化イオウの両者を同時に各々のフィルターにサンプリングするための方法を検討した。お互いの汚染を防ぐために,アルカリろ紙を別のろ紙でサンドウィッチ状に挟んで,その上に従来の石英フィルターを引くことで,それが実現できることがわかった。これらのフィルターのセットを最初に各地に配布した。中国では,貴陽(貴州省)等の中国南部の都市で共同研究者(曽毅強氏:地球化学研究所)が採取を行った。加えて中国東北部のハルビン,長春,大連などの都市を訪問し,二酸化硫黄等の採取を行った。
 サンプリングされた試料中の一部については,主要な化学種の分析を行った。中国での冬場の大気中の二酸化イオウ濃度は硫酸塩濃度に比べ1桁多く,あまり酸化が進んでいないことがわかった。また,ナトリウムが日本に比べ低く,逆にカルシウムなどのアルカリ分が高い中国土壌の特徴が現れていた。一部試料について,鉛同位体比の分析を行った。これによると貴陽などの南部の都市での鉛同位体比が石炭燃焼による鉛の値に近いものであることなどが判明した。石炭起源の鉛同位体比は特徴的に207Pb/206Pbが低くそれと分かることが多い。これに比べ,日本での鉛同位体比は少し高い傾向があった。
 さらに本サンプルを用いて硫黄の同位体比を分析する方法も検討した。


(4)都市域における光化学大気汚染生成機構解明に関する共同研究

〔研究担当〕
地域環境研究グループ 若松伸司・上原 清・森口祐一
〔期 間〕
平成8年度(1996年度)

〔内 容〕
 光化学大気汚染は世界の大都市地域において最も大きな大気環境問題である。特にメキシコシティは光化学オゾンの濃度が世界で最も高い地域として知られている。我が国においては,産業構造や都市構造の変化等による環境負荷の構造変化に伴って都心地域よりも郊外地域や山岳地域での光化学大気汚染物質の濃度が相対的に上昇しており汚染の広域化が問題となっている。本研究は山岳,盆地地域における光化学大気汚染機構の解明を主たる目的として共同研究を実施した。
 発生源条件や気象条件が大きく異なる二国間で国際共同研究を実施することにより光化学大気汚染生成機構についての総合的な理解を深めることができた。具体的には日本・メキシコ双方で光化学オゾン,窒素酸化物,炭化水素成分等の大気中微量成分の測定や上空の風向,風速,大気安定度,混合層高度等の気象の観測を独自に行い,得られたデータを共通の手法により解析・評価した。また光化学大気汚染モデルの適用性評価を行い光化学大気汚染の生成機構に関する相互比較を行った。
〔発 表〕b-202〜204,206〜208


(5)肺胞内環境と肺胞マクロファージの免疫抑制機能に関する影響

〔研究担当〕
環境健康部 小林隆弘
〔期 間〕
平成8年度(1996年度)

〔内 容〕
 本研究はアレルギーの増加と大気汚染物質との関係を基礎的に解明するため,大気汚染物質を暴露したときの肺胞内環境の変化が肺胞マクロファージの免疫抑制機能に及ぼす影響とその機構を明らかにすることを目的としている。大気汚染物質として二酸化窒素とオゾンをラットに暴露し,肺胞マクロファージの免疫抑制機能がどのように変化するか,また,肺胞内環境の変化としては洗浄液を用い肺胞マクロファージの免疫抑制機能に及ぼす影響をコンカナバリンA刺激のよるT細胞の増殖を指標に検討した。その結果二酸化窒素またはオゾン暴露した肺胞マクロファージの免疫抑制機能は清浄空気を暴露したものと比較し大きい差異はなかったが汚染物質を暴露後の肺胞洗浄液中では肺胞マクロファージの免疫抑制機能が大きく阻害されることが明らかになった。このことから,大気汚染物質に暴露されると肺胞内環境が変わり免疫機能が発現しやすい状態になることが示唆された。
〔発 表〕e-26,29


(6)微生物を活用する汚染土壌の浄化技術の開発に関する研究

〔研究担当〕
地域環境研究グループ 矢木修身・岩崎一弘
水土壌圏環境部 内山裕夫・冨岡典子
〔期 間〕
平成8年度(1996年度)

〔内 容〕
 トリクロロエチレン(TCE)等の揮発性有機塩素化合物を分解する能力を有するメタン酸化細菌のPCR反応(ポリメラーゼチェーン反応)を用いる迅速計数法について検討を加えた。TCE分解活性を有するメタン酸化細菌,Methylocystis sp. M株,Methylosinustrichosporium OB3b,Methylococcus capsulatus Bathのメタンモノオキシゲナーゼ遺伝子配列を比較検討し,3株に共通の塩基配列を抽出した。この配列をプライマー(mmoX)として,PCR反応を行い,地下水中のメタン酸化細菌の検出感度を調べた。すなわち,地下水をろ過し,菌体を回収し,フィルター上に回収された菌体を超音波熱処理を行いDNAを回収し,PCR法により増幅を試みた。その結果,日本各地のTCE汚染現場から単離したTCE分解活性を有するメタン酸化細菌が特異的に検出できることが判明した。この際,従属栄養細菌やTCE分解活性を有さないメタン酸化細菌は検出されなかった。次に,本方法による地下水中のメタン酸化細菌の定量を試みた。PCR法はMPN法による計数と相関が認められた。またMPN法が4週間を要するのに対し,PCR法は10時間で測定が可能であることが判明した。


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