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科学技術振興調整費による研究


1.総合研究


(1)マイクロ波センサデータ利用等によるリモートセンシング高度化のための基盤技術開発

 1) リモートセンシングデータの複合利用技術の開発と実証
  −大気センサーデータの複合利用技術の高度化とオゾン層変動の解明への適用性実証の研究−

〔研究担当〕

地球環境研究グループ 笹野泰弘・鈴木 睦・横田達也・中根英昭
大気圏環境部 杉本伸夫
〔期 間〕
平成7〜8年度(1995〜1996年度)

〔内 容〕
 ADEOS搭載の大気センサ(ILAS,RIS,IMG,TOMS,POLDER)から得られるオゾン,エアロゾル等の大気微量成分データを複合的に用いて地球規模大気環境動態,特にオゾン層の変動現象を総合的に解明するのに必要な基盤技術の開発を目的とする。特に,詳細な高度分布が得られるILASデータは,水平方向の測定点が少ないため3次元構造の把握に向かないが,これを複数日の観測デ−タについて,それぞれの観測ポイントの空気塊を(前進及び後退)流跡線解析の手法で,ある特定の日に存在したであろう位置まで流すことにより,多数のデータ点数を3次元的に分布させることができる。これをもとに,適当な内外挿により3次元的な微量成分等の分布構造が構築される。
 本年度においては,英国気象局提供の流跡線解析プログラムを本研究用に改修し,同アシミレーションデータを用いて,渦位輸送のテスト計算を行った。次に,ILASの連続観測日(平成8年11月4〜12日)について,改修プログラムおよび気象データ,緯度圏に沿った毎日のILASのオゾン高度分布データを用いて,オゾンの輸送計算を行い,特定の日(平成8年11月8日)のオゾン3次元分布の構築を行った。この結果,妥当と思われる分布を得た。
〔発 表〕A-13


 2) 時系列SAR画像による現存植生分布の変動把握手法に関する研究

〔研究担当〕

社会環境システム部 田村正行・山形与志樹
地球環境研究センター 安岡善文・宮崎忠国
〔期 間〕
平成4〜8年度(1992〜1997年度)

〔内 容〕
 熱帯林の減少,砂漠化といった地球規模レベルでの環境問題を監視するためには,人工衛星からのリモートセンシングデータの利用が不可欠である。しかしながら,熱帯地域は雲で覆われていることが多く,通常の可視・近赤外域の光学センサを利用したリモートセンシングのみでは,対象地域の状態を定常的に監視することは難しい。マイクロ波センサは,使用するマイクロ波が,波長が長く雲,雨を通して地表面を観測できるため,全天候型センサとして期待されており,近年,ERS-1,JERS-1が相次いで打ち上げられた。
 本研究では,人工衛星ERS-1,JERS-1に搭載されているマイクロ波センサ(SAR)及び高分解能光学センサ(OPS)等を融合利用して熱帯地域における地表面特性,特に現存植生の現況とその変化を把握するための手法の開発を行うことを目的とする。平成8年度は以下の成果を得た。
 (1)釧路湿原地区において現存植生,ERS-1,JERS-1のSAR画像,及びLANDSAT TM画像を重ね合わせ,植生等の地表面特性がSAR画像に及ぼす影響を定量的に評価した。
 (2)タイの実験フィールドであるソンクラ,プラチョキリカンにおいてデータ収集実験を行い衛星データおよびグランドトルースデータの収集を行った。これらのデータから湿原植生分布を計測する手法を検討した。
〔発 表〕C-23,43〜47,c-13,17〜21,38


(2)極限量子センシング技術の開発及びその利用のための基盤技術開発

 1) 極限量子センシングのための全固体化レーザー技術に関する研究
  −全固体化レーザーによる極限大気計測技術の研究

〔研究担当〕

大気圏環境部 杉本伸夫・松井一郎
〔期 間〕
平成8〜9年度(1996〜1997年度)

〔内 容〕
 本研究は,飛翔体などを利用した将来の大気環境遠隔計測システムのための基盤技術である全固体化レーザーを用いた大気遠隔計測技術の開発を目的とする。本研究後期では,全固体化赤外レーザーを光源とするメタン計測用の差分吸収レーザーレーダーの開発を行う。後期1年度目の本年度は,前期に開発した相関セルを用いた濃度計測手法に基づくメタン計測用長光路差分吸収レーザーレーダーシステムを製作した。レーザー光源部については,前期に開発した技術に基づいて小型の3μm帯の全固体光パラメトリック発振器を新たに製作した。
〔発 表〕F-21,f-26


(3)システムと人間の調和のための人間特性に関する基礎的・基盤的研究
   −住工・住商混在地域のサウンドスケープ評価に関する研究

〔研究担当〕
社会環境システム部 大井 紘
武庫川女子大学 平松幸三
〔期 間〕
平成8〜9年度(1996〜1997年度)

〔内 容〕
1)京都における歴史的な住工・住商混在地区である西陣地区において,住民の西陣織産業に対する意識を調べるために,「住みよさ」「聞こえる音」について自由記述法を用いて調査を行い,回答を分析した。
2)住工混在地域でもある東京都板橋区で,公害苦情について,申し立て者に苦情内容を自由記述してもらったデータを分析し,既成の工場側と移入住民との間の習慣や環境観の相違による公害意識の形成構造を検討した。
3)住工混在地域である堺市錦綾地区において,工場関係所帯の多い一戸建て住民と域外との関係の強いマンション住民との間での環境意識を自由記述法で調べ,前者において人間関係の重視が顕著なことを明らかにした。
4)代表的サウンドスケープの思想を分析した。その結果,環境への意味づけに着目する意味論的環境観と,音源ないしは音源者と音の受け手との間の関係性などが,環境認識において重要であることがわかった。
〔発 表〕C-5,c-6


(4)バイカル湖の湖底泥を用いる長期環境変動の解析に関する国際共同研究

〔研究担当〕
化学環境部 河合崇欣・柴田康行・田中 敦・相馬悠子
水土壌圏環境部 高松武次郎
地球環境研究グループ 功刀正行・森田昌敏
科学技術特別研究員 南 浩史
〔期 間〕
平成7〜11年度(1995〜1999年度)

〔内 容〕
 平成8年度は,バイカル湖の湖底堆積層から採取した200mの不かく乱柱状試料を測定・分析し,過去500万年程度のバイカル湖地域の気候や環境の変化を再現することが可能であることを確認した。地球の気候変動に与える地表条件の影響を考察する目的で,ミランコビッチサイクルの検証や生物相変動(花粉,有機化合物,光合成色素など)についても解析を進めた。
 具体的には,以下のような研究課題を他省庁研究機関,各大学と共同で設定するとともに,ロシア・アメリカ・ドイツの研究者との共同研究で総合的な測定・解析を行っている。

1)不かく乱柱状試料の採取及び現場測定  

  1. 掘削地点の選定に関する研究  
  2. 堀削手法に関する研究  
  3. 物理検層及びガス成分分析
2)堆積年代決定法に関する研究  
  1. 14C加速器質量分析法による堆積年代決定に関する研究  
  2. 10Be加速器質量分析法による1千万年絶対年代決定法の実用化に関する研究  
  3. 古地磁気・岩石磁気年代測定などによる堆積年代の高密度測定(実用)
3)環境情報解読に関する研究  
  1. 堆積物の物性測定による環境変動解析に関する研究  
  2. 堆積物中の有機化合物を指標とした環境変動の解析に関する研究  
  3. 堆積物中の無機元素変動と環境変化に関する研究  
  4. 生元素安定同位体自然存在比測定による物質循環系の構造解明に関する研究
4)古生物情報解析に関する研究  
  1. 植生変遷史に関する研究  
  2. 植物化石花粉の葉緑体DNA分析による植物分子系統進化に関する研究  
  3. 水域環境変化と微化石群集変動に関する研究
5)バイカル湖流域条件及び流域条件の変化に関する研究
6)バイカルデータベースに関する研究
〔発 表〕D-6,7


(5)成層圏の変動とその気候に及ぼす影響に関する国際共同研究

 1) 成層圏変動の気候への影響に関する解析及びモデルを用いた研究
  ― 衛星データ等を用いた解析的研究―衛星データ等を用いた極渦構造の力学的解析―

〔研究担当〕

地球環境研究センター 神沢 博
地球環境研究グループ 笹野泰弘
大気圏環境部 菅田誠治
〔期 間〕
平成7〜9年度(1995〜1997年度)

〔内 容〕
 研究期間全体を通じての目的:成層圏極渦の構造,極渦の孤立性の機構を力学的解析によって理解することを目的とする。極渦の構造は,オゾン,温室効果ガス等の分布を決める大きな要素であり,それらの分布は,直接的には放射過程を通して,間接的には,放射過程によって規定される成層圏の温度分布,さらには,温度と密接な関係がある風の分布を通して,気候へ影響を及ぼす。 研究方法:衛星データ,地上観測データ,客観解析気象データを解析する。衛星データについては,空気粒子運動のトレーサーとなるCH,NO等の不活性気体のデータを主に使用する。地上観測データについては,エアロゾル,オゾン,NO等の鉛直分布データを主に使用する。客観解析気象データについては,トラジェクトリー解析,ポテンシャル渦度解析等を行う。
 平成8年度に得られた研究成果:衛星データ等のデータセットの収集,ディスクアレイ装置等の計算機ハードウェアの整備,極渦の鉛直構造を解析するための修正ポテンシャル渦度算出プログラムの開発,等の作業を完施し,解析を行った。解析結果の概要は以下のとおり。トラジェクトリー解析を,観測データに適用する前の準備を兼ねて,CCSR-NIES大気大循環モデル積分結果のうち,北半球冬の成層圏データに適用した。極渦の内外の空気粒子交換過程をより明確に調べるため,初期に等温位面上の等ポテンシャル渦度線に沿って置いた粒子のトラジェクトリーを解析し,極渦が壊れて夏の循環へと移行する最終突然昇温の時期に,空気粒子の混合が激しいことを確かめた。さらに,客観解析気象データの修正ポテンシャル渦度解析から得られた極渦の構造とILAS等の衛星データ解析によるCH,NO等の空間分布によって得られた極渦の構造とが整合的であることを確かめた。
〔発 表〕I-5,7,i-9


 2) オゾンに関わる光化学基本モデルの開発
〔研究担当〕

地球環境研究グループ 秋吉英治
〔期 間〕
平成7〜9年度(1995〜1997年度)

〔内 容〕
 前年度に開発した鉛直1次元光化学−放射結合モデルの基本性能及びそのチェックを行うため,1991年のピナツボ火山爆発による成層圏エアロゾルの増加現象を念頭に置いた硫酸エアロゾル増加実験を,このモデルを用いて行った。この数値実験に先立ち,モデルに入力パラメタとして与えるエアロゾルの光学パラメタ,鉛直分布,時間変動などを,サンフォトメータ,レーザレーダー,気球,衛星等によるデータを参考にして詳細に検討し,設定した。すなわち,最も基本的な4つの物理量(エアロゾルの成分(75%硫酸液滴),エアロゾルの粒径分布,鉛直分布,時間変動)のみを仮定することにより,エアロゾルの波長ごとの光学的厚さ,後方散乱係数,Extinction/Backscattering ratio,表面積,有効半径などの観測と直結した物理量を,Mie散乱理論による厳密な計算によって矛盾なく導出した。そして種々の観測結果と比較して,4つの基本的な物理量に関する設定の妥当性を検証した。この成層圏エアロゾル増加実験によって,25〜33kmの高度でオゾンが最大約3%増加,25km以下で最大約5%減少という結果が得られ,硫酸エアロゾル上でのNとHOとの不均一反応が,これらのオゾンの変動に大きな影響を与えていることが確かめられた。
 また,オゾンの光解離によって生じるO(1D)の生成確率が,従来考えられていたよりも大きいという最近の新しいデータを用いて,大気光化学成分濃度の平衡値計算を行った。その結果,成層圏下部のHOxの濃度が,従来のデータを用いて計算された値に比べて,約20〜30%増加することが確かめられた。一方成層圏下部のオゾン濃度は1%程度しか減少せず,あまり大きな影響はない。
〔発 表〕A-1,a-2〜4


 3) 成層圏オゾンに影響を及ぼす臭化メチル等の発生起源に関する研究

〔研究担当〕

化学環境部 横内陽子
〔期 間〕
平成7〜9年度(1995〜1997年度)

〔内 容〕
 海洋生物起源の臭化メチル,塩化メチル,ヨウ化メチルのグローバルな分布と季節変動を明らかにするため,北極域のアラート,沖縄県波照間島における月1回の大気サンプリングと船舶による北太平洋上7地点における隔月の大気サンプリングを開始した。サンプル中のこれらハロカーボン類の測定は低温濃縮/キャピラリーGC/MSにより行い,その分析精度は±3%である。北太平洋の観測では,夏にヨウ化メチルが増え,臭化メチル濃度が下がる傾向が観測されている。引き続き,観測を進め,解析に必要なデータを集積する。
〔発 表〕D-46,47,d-41


(6)植物の環境応答と形態形成の相互調節ネットワークに関する研究の現状とそのバイオテクノロジーとしての技術開発のための調査(FS)

〔研究担当〕
生物圏環境部 佐治 光
〔期 間〕
平成8年度(1996年度)

〔内 容〕
 植物は,一般に動物のような移動能を持たないために,厳しい環境条件にさらされることが多く,それに耐えるための特有の機構を備えている。たとえば,環境条件に応じて自身の成長や発生,分化を巧みに制御している。このような機構の解明は,今後植物を各種産業や環境保全に有効に活用していく上で極めて重要である。このような観点から,植物に影響を及ぼす環境要因のうち,大気汚染ガスについて,それに対する植物の応答機構についての研究の現状を調査した。
 これまでに,主として二酸化硫黄,二酸化窒素,オゾンの3種類の大気汚染ガスの,様々な植物種に及ぼす影響が調べられ,それらのガスにより,葉の部分的な細胞死や植物体の成長抑制から落葉や老化の促進などの障害が引き起こされることがわかっている。その機構として,まず大気汚染ガス自体またはそれが水に溶けてできるイオンなどが,反応性に富み,様々な生体物質を破壊または失活させるとともに,植物体内で活性酸素やエチレンが生成し,それらが障害の進行を促進することが明らかにされている。これらの物質は多様な作用を示し,障害を促進する一方で,各種防御遺伝子の発現を誘導し,障害を緩和する方向にも働くことが示されている。このような二次的生成物の生成と作用は,大気汚染ガスの場合に限らず,紫外線照射や病原菌の感染などの場合にも観察され,様々な原因によるストレス状態下で生じているようである。最近,オゾンと接触させた植物体内でサリチル酸の量が増加し,それによっていくつかの防御遺伝子の発現誘導が起こることがわかり,ストレス反応の共通性が更に裏付けられている。
 以上のように,今後,大気汚染障害に関する研究は,他の要因によって生じるストレス反応の研究と比較検討しながら推進していく必要があると思われる。
〔発 表〕K-2,38,H-20,k-5


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