8.2 地球環境モニタリング・データベース事業
従来,本センターでは自然科学的な地球環境研究で得られた成果を踏まえて,様々な地球環境モニタリング事業を推進してきた。また,データベース事業として,社会経済的な地球環境研究の成果をフォローアップしてきた。両者は,データの取得方法が異なるが,その後の「データのとりまとめ(データベース化)」−「データ発信」というプロセスは同一であるので,両者を常に研究的な視野に立脚して地球環境問題に係わる研究及び施策の基盤となる客観的データを取得するとういう視点に立って推進することとした。
8.2.1 地球環境モニタリング・データベース事業の体制
地球環境モニタリング・データベース事業は,図に示す実施体制で推進している。
衛星観測プロジェクト関連を除く事業は,事業の中核となる所内研究者(実施代表者),観測実務を分担協力する所内研究者(協力研究者),専門的見地から指導・助言を行う所外の有識者(指導助言者),事業実務を担当・補佐する民間団体(技術支援団体)からなる実施グループにより実施されている。そして,事業全体の企画調整・予算等は,地球環境研究センターの研究管理官および観測第一・第二係が事務局となり,事業実施グループ・技術支援団体等と緊密な連携を図りながら管理・運営が行われている。
事業の成果は毎年,「地球環境モニタリング・データベース事業進捗状況報告会」で発表され,国立環境研究所内に設置された地球環境研究センター運営委員会で評価された。
なお,得られた観測データは検証・評価を経て,報告書,CD-ROMやインターネットなどの電子情報媒体で逐次公表している。
8.2.2 地球環境モニタリング事業
本センターでは,地球環境研究及び行政施策に必要な基礎データを得るために,世界各国の関係機関・研究所と連携しつつ,地球的規模での精緻で体系的かつ長期的な地球環境のモニタリングを実施している。
以下に,主な活動概要を記す。
〔成層圏オゾン関連〕
・つくばでの成層圏オゾンモニタリング:従来,つくば(研究所)でオゾンレーザーレーダーによる成層圏下〜中層の観測とミリ波分光計による成層圏中〜上層・中間圏下層の観測を実施してきた。この体制を,平成14年度完成を目指して,ミリ波分光計を広帯域<CODE
NUM=00A5>高度化し,成層圏下〜上層まで,昼夜・天候を問わず連続的に自動観測できる体制の構築を進めた。これによって,自由度の増したオゾンレーザーレーダーは,科学的興味がある事象に特化した観測体制に移行するとともに,オゾン観測の準器として活用することとした。また,当センターは地上ベースの遠隔計測器による国際的なオゾン層総合観測ネットワークであるNDSC(成層圏変動探査ネットワーク)に加盟している。
・北域成層圏総合モニタリング:我が国北域におけるオゾン層破壊の状況を把握するため,北海道足寄郡陸別町の町立天文台「りくべつ銀河の森天文台」を利用した総合的な成層圏モニタリングとして,ミリ波放射計もよる成層圏オゾン濃度の垂直分布,ならびにブリューワ紫外分光計によるオゾン全量と有害紫外線量の観測を継続しいている。
・有害紫外線モニタリングネットワーク:成層圏オゾンの減少による有害紫外線量の増加による生物影響等の調査の基礎データとして,同一仕様の帯域型B領域紫外線を使用している大学・研究機関等と連携をとり,全国規模の有害紫外線量(UV-B)を把握する観測ネットワークを主管し,その実施体制の整備を進めた。
〔対流圏温室効果ガス関連〕
・地上ステーションモニタリング:人為的発生源の直接影響を受けない地点で大気中の温室効果ガス等の長期変化を監視するため,波照間島(沖縄県)及び落石岬(北海道)に無人観測ステーションを設置して,大気微量成分の高精度自動観測を行い,観測データはWMO/WDGCC(世界気象機関/世界温室効果ガスデータセンター)等に提供している。また,落石岬ステーションではEANET(東アジア酸性雨モニタリングネットワーク)のルーラルサイトとして,降雨の採水に協力している。
・定期船舶を利用した太平洋温室効果ガスモニタリング:定期航路を航行する民間船舶の協力を得た太平洋域での温室効果ガスモニタリングでは,日〜北米西海岸(ピクシス号;トヨフジ海運梶jと日〜豪州東海岸航路(ゴールデンワトル号;鰹、船三井)で洋上大気の温室効果ガス観測と大気−海洋間の二酸化炭素フラックスの観測を推進しており,JGOFS(全球海洋フラックス合同研究計画)の主要プロジェクトに位置づけられている。
・シベリア上空における温室効果ガスに係わる航空機モニタリング:温室効果ガスの発生源/吸収源として重要なシベリア地域における,湿地からのメタンの発生や森林による二酸化炭素の吸収などの把握を目的として,ロシア国の民間航空機を借り上げて,シベリアの3地点(スルグート,ヤクーツク,ノボシビルスク)の上空で毎月高度別(〜7000m)に大気を採取して,温室効果ガス等を計測している。
〔陸域生態系関連〕
・北方林温室効果ガスモニタリング:森林生態系の二酸化炭素固定量を把握するために,北海道の2地域の森林(苫小牧国有林,北海道大学天塩研究林)で二酸化炭素フラックスをはじめとする森林の微気象や生理生態的機能を観測している。カラマツ人工林の苫小牧フラックスリサーチサイトでは,林野庁北海道森林管理局の協力を得てAsiaFluxの基幹観測拠点として観測手法の開発<CODE
NUM=00A5>検証を進めている。また,北海道大学天塩研究林では,北海道電力梶C北海道大学北方生物圏フィールド科学センターとの共同研究として,育林過程(天然林伐採⇒カラマツ植林⇒育林)による森林の物質循環機能の変化を継続観測することとしている。
・リモートセンシングによるアジア地域の植生指数分布モニタリング:東アジア地域の植生および土地被覆状況の変化を把握するため,NOAA衛星のAVHRRセンサ画像を用いて,植生指数モザイク画像を作成してきた。本年度は,本事業の最終年次として,取得データをとりまとめるとともに,科学的活用について検討した。
〔国際協力・支援事業〕
・GEMS/Water:わが国のナショナルセンターとして機能するとともに,当研究所が長期に渡り観測を継続してきた摩周湖(北海道)と霞ヶ浦(茨城県)の水質調査を,それぞれ,ベースラインモニタリングステーション,トレンドステーションとして実施している。平成13年度には霞ヶ浦の今までの観測データを総集してデータベース化した。
8.2.3 地球環境データベース事業
従来,地球環境データベース事業の中で,地球環境問題の社会経済的な研究成果をデータベース化してきた。これらの個々の事業を地球環境研究モニタリングと同一形態に顕在化させ,地球環境研究の推進・地球環境問題解決のための施策に資する社会科学的情報資源として系統的に整備する。特に,これらのデータベースは,所内の研究者の研究成果の発展例であり,様々なレベルで活用され,高い評価を受けており,適宜最新データに更新する。以下に,その概要を紹介する。
・温室効果ガス排出シナリオデータベース:当研究所で開発したAIM(アジア太平洋地域における温暖化対策統合評価モデル)等の二酸化炭素排出シナリオを体系的に収集したデータベースであり,様々な温暖化モデルにそのデータが利用されている。平成13年度には,更新及びシステムの改良を引き続き行うとともに,アジア・太平洋地域温暖化対策関連データベースをホームページ上で公開した。
・排出インベントリーデータベース:アジア地域の大気汚染質(SO2およびNOx)の排出施設の立地,各施設の燃料消費量,脱硫・脱硝施設の運用状況等のデータを収集し,GIS(地理情報システム)として構築する。本年度には,エネルギー消費量,二酸化炭素排出量に加え,代表的な大気汚染物質である窒素酸化物,硫黄酸化物,および浮遊粒子状物質まで対象とした「産業連関表による環境負荷原単位データブック(3EID)」を出版した。
・マテリアルフローデータベース:わが国の物質収支(勘定)の基礎データの整備とともに,その移動・流通過程を解析したデータベースであり,「貿易と環境」に関する研究等を支援するものである。
・温暖化影響・気候シナリオ・影響モデルデータベース:温暖化の影響評価に係わるIPCCの報告内容や最新の温暖化研究の成果を研究者/一般向けに解説したホームページである。
・熱帯林生態系基礎データベース:熱帯林の炭素循環,温暖化影響,生物多様性の視点から,CTFS(スミソニアン熱帯研究所)と共同で,東南アジアの熱帯林4地点で,森林植生のセンサスを行っている。
・吸収源データベース:京都議定書におけるCDM(クリーン開発メカニズム)に対応した森林の二酸化炭素吸収源として評価するために,国際動向やリーケージの把握手法,リモートセンシング技術の利用可能性等についての情報をとりまとめる。また,衛星観測データを利用した吸収源データセットを開発するために,衛星観測データと植林地インベントリー,地理情報データを組み合わせた吸収源データベースの開発を進めている。
8.2.4 衛星観測プロジェクト関連
次期地球観測プラットフォーム技術衛星ADEOS-U(平成14年度打ち上げ予定)に搭載されるILAS-Uのデータ処理運用システム(計算機システムおよびソフトウェアシステムを統合したシステム)の運用システムの開発を進めるとともに,次々期観測センサー(SOFIS)の基本設計を進めている。
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