(36) 夜間光衛星画像データDMSPによるアジアの地域別経済活動強度推定
〔区分名〕文科-科研費
〔研究課題コード〕0001CD262
〔重点特別研究プロジェクト名,政策対応型調査・研究名〕
〔担当者〕一ノ瀬俊明(地球環境研究センター)
〔期 間〕平成12〜13年度(2000〜2001年度)
〔目 的〕一般的に途上国アジアにおいては地域別各種統計データの整備が遅れており,その入手・利用は困難である。また,既存の統計資料には信憑性のないものも多い。経済活動の度合を示す指標が必要となるが,LANDSATらよく知られた衛星画像からは,このような指標の作成が困難である。かかる問題について,地表面上の経済活動水準を把握する新しい手段として,米国軍事気象衛星DMSPにより撮影された夜の地球表面の光画像が有望である。夜間の光の強度は経済活動に伴うエネルギー消費水準と密接に関係していると考えられるためである。この夜間光衛星画像は,ナショナルジオグラフィックマガジン(1998)等で紹介され,近年その存在が有名になりつつある。しかし現在まで,アジア地域における夜間光衛星画像は,1時点分しか構築されていなかった。本研究では,夜間光衛星画像を時系列的に把握することにより,各種の経済活動強度の変化を捉えることができるのではないかという仮説に基づき,夜間光衛星画像データDMSPの時系列データセットを構築し,アジアの地域別経済活動強度推定を時系列で行い,1990年代におけるアジアの経済活動強度の時空間分布推定を行う。
〔内容および成果〕
米国の軍事気象衛星により撮影された夜の地球表面の光強度画像データ(DMSP/OLS)について,経済活動の活発な地域ほど夜間の光強度が強いとの仮定のもとに,光強度とマクロ経済指標との整合性を検証した。アジアの20ヵ国を対象とした解析(1994〜1995)の結果,両者の関係は対数曲線で表現された。この関係を用いれば地域別経済統計データの有無にかかわらず,シームレスに地球表面上の経済活動の分布を捉えることが可能であると思われる。一方このデータを時系列データとして入手することが可能となれば,経済活動強度分布の時系列変化をとらえることができるのではないかという仮説にもとづき,世界に先駆けて,アジア地域における3時点(1992〜1993,1996,1998)のデータセットを構築した。その結果,アジア通貨危機(1997)の影響や,インド・パキスタン国境の緊張度,日本海における漁船の分布(図1)の変化等が確認され,DMSPデータ時系列解析の有用性が示された。また,このデータセットを中国の省級行政区単位に集計して指標化し,既存の社会経済統計指標と比較して,その代替性について検討した。今回作成されたデータセットは,撮影されている光の強度も反映されるような処理を行ったものである。このデータセットより加工された中国の省級行政区別年次別の灯光指数と,中国統計年鑑などに掲載されたいくつかの社会経済統計指標を比較した結果,単位面積当たりGDPや単位面積当たり電力消費量との間に高い相関関係が見いだせた(図2)。ただし,ここでは上海市など一部の高度に開発された地域を除いていることや,国単位での解析例にも見られるとおり,一定の経済水準に達した地域では光量が飽和してしまう傾向があるため,こうした明瞭な相関関係が成立する地域や空間スケールに留意する必要がある。
〔備 考〕
研究代表者:一ノ瀬俊明
共同研究機関:立命館大学・東京大学
共同研究者:中谷友樹(立命館大学)・松村寛一郎(東京大学)
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