(33) Spectral Mixture 解析を用いた釧路湿原の懸濁物質拡散と植生の空間変動
〔区分名〕文科-科研費
〔研究課題コード〕0103CD212
〔重点特別研究プロジェクト名,政策対応型調査・研究名〕
〔担当者〕亀山 哲(流域圏環境管理プロジェクト)
〔期 間〕平成13〜14年度(2001〜2002年度)
〔目 的〕湿原保全を考える際には湿原のみに焦点を当てた研究では実質的に成果を上げることは不可能である。この解決のためには流域全体(社会背景・自然環境が履歴として反映された土地利用・河川構造を含む)をマクロな視野に入れ,そこにおける水文特性および懸濁物質輸送形態の定量化という面から正確に捉えなおす必要がある。
しかし,このような河川構造の変化が湿原に与える影響に関し,流域的視点に立って「フラックスの移動と湿原植生の分布変動」を結び付け,定量的に解析した研究事例は少ない。これは,湿原へのインパクト(物理的変化としての土砂流入および拡散・堆積)に対する立地環境の変化(生態学的変化としての湿原植生の応答)の両方を同時に観測しうる高精度のモニタリング技術が未だに開発段階であることに起因している。
そこで本研究の目的は,釧路湿原及びその流入流域を対象とした次の3点とする。1)流域の水収支・汚濁負荷の把握および湿原に負荷される懸濁物質の総量と年間変動の算出。2)湿原内濁水の氾濫状況及び植生群落の変動に関して,リモートセンシング技術を用い,調査・実測グラントトゥルースデータ(河川水文データ・地下水位変動<CODE
NUM=00A5>植物現存量・土壌堆積履歴)と融合した解析を行い土砂拡散域と植生分布域についてその空間変動を解析する。3)以上の研究成果と地理情報とをGISの中で統合化し,「流域全体の構造変化とそれが及ぼす湿原への累積的な影響」について相互の関係を把握し,総合的なモニタリング技術として確立する。
〔内容および成果〕
本研究で用いるリモートセンシング技術には,それに付随する二律背反の課題がある。それは,センサーの選択に高解像度を優先すれば,観測周期と観測範囲を犠牲にせねばならず,これとは逆に観測範囲を拡大した場合では空間解像度(画素サイズ)が大きくなり,その1画素の中には,森林,草地,裸地等の複数のカテゴリーが混在してしまう。これが一般にMixed
Pixel「ミクセル」と呼ばれるものである。
この問題を克服する技術として今回の解析にはSpectral
Mixture Analysis(SMA)を用いる。そして,このSMAを氾濫濁水濃度推定と植生現存量推定のために使用する。この解析方法は,衛星画像の一つのピクセル中に含まれている構成要素(エンドメンバー)のスペクトル情報をもとにし,そのピクセルの混合スペクトルを分解して個々のエンドメンバーの存在量を計算するものである。
本研究では衛星画像にLandsat TM(可能であればTERRA,AM-1)を用い,エンドメンバーにはハンノキ<CODE
NUM=00A5>ヨシ<CODE NUM=00A5>高濃度の濁水<CODE
NUM=00A5>低濃度の濁水の4つを選びミクセル分析を行う。エンドメンバースペクトルの計測にあたっては,植物は採取後室内の分光計により計測し,一方濁水については氾濫濫域に実験水槽を設置しスペクトルメータで記録する。本研究ではWTIを,最大濃度濁水のエンドメンバー存在量amaxと最低濃度濁水のエンドメンバー存在量aminを用い,WTI=amax/(amax+amin)と新たに定義することを検討している。
研究の最終段階では湿原へのインパクトである氾濫濁水とその影響と考えられる湿原植生の変化について時空間的な相互関係を考察する。氾濫現象の変化についてはTMの反射率画像をもとにWTI画像を利用し,同様に植生の変化に関してはSMA解析の結果であるハンノキ・ヨシの現存量Indexを利用する。氾濫域の対象領域に100m間隔のグリッドポイントを作成し,各プロットにおけるWTIと植生現存量Indexついて釧路湿原をゾーニングして比較を行い,経年変化を抽出することにより,湿原域の環境変動に付いて時間空間的な解析が可能となる。
本年度成果は以下のとおりである。1)既存研究のレビューワークおよび,既存統計資料などの入手と整理。2)リモートセンシングに必要となる人工衛星データ(LANDSAT,MODIS,Terra-MODIS等)のデータセットの整備。3)北海道釧路湿原及び流入流域におけるGISデータベースの開発。衛星画像解析システムの整備。
次年度は,実際に湿原において取得されたエンドメンバースペクトルデータをもとに,各画像のSMAを行い,湿原における濁水域の経年変化と湿原植生(木本:カバノキ科ハンノキ群落)の空間変動を解析する予定である。
〔備 考〕
研究代表者:亀山 哲
当課題は重点研究分野W.5.3にも関連
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