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研究成果物



 

(26) 富栄養化が水圏生態系における有害藻類の増殖および気候変動気体の代謝に及ぼす影響に関する研究


〔区分名〕文科-原子力
〔研究課題コード〕9802CA230
〔重点特別研究プロジェクト名,政策対応型調査・研究名〕

〔担当者〕稲森悠平(循環型社会形成推進・廃棄物研究センター)・水落元之・越川 海・土井妙子・板山朋聡
〔期 間〕平成10〜14年度(1998〜2002年度)
〔目 的〕湖沼・内湾等に窒素,リン等の栄養塩が過剰に流入し富栄養化することで,有毒アオコ等の有毒藻類の異常増殖等が環境問題となっている。一方,これらの藻類は温室効果ガスとしてのCO2を吸収する重要な微生物でもある。それ故,富栄養化はその藻類種および個体数の変動を通して地域的な水環境問題であるとともに,温室効果ガスとしてのCO2の動態と関係した重要な地球環境問題の一つでもある。そこで,この富栄養化および地球温暖化等の問題を解決し水圏を健全にするためには,水圏における食物連鎖系中で,富栄養化を引き起こす窒素やリン等の栄養塩と温室効果に係わる炭素の物質フラックスの関係を明らかにすることが基礎的観点から重要な課題となる。特に,近年,水圏生態系における食物網中として,藻類由来の溶存有機物を起点とし細菌類から原生動物へと繋がって行く腐生連鎖系(微生物ループ)が極めて重要である。この中で原生動物は,捕食作用により構成生物の個体数および物質フラックスを制御していることが予想される。また,藻類種として,湖沼等での優占化事例が増加してきている糸状性藍藻類に着目することも極めて重要である。そこで,このような観点を鑑み,藻類(Chlorella vulgaris),細菌(Pseudo-monas putida)および原生動物(Cyclidium glaucoma)から構成される腐生連鎖系の水圏モデル生態系としてのマイクロコズムを用いて個体数動態および物質フラックスの定量化を行うことを目的とし研究を行った。
〔内容および成果〕
 マイクロコズム培地中のリン濃度を変化させたときの各構成生物の個体数動態と炭素の物質循環特性に及ぼす影響について今年度検討した。今回,炭素の物質循環機構の解析にはRI(14C)を用いるとともに,フィルターを用いた生物分画を行うことで,各生物種が取り込んだ炭素吸収速度を測定した。その結果,培養開始から約15日以後の各個体数変動が少ない安定期における各構成生物の個体数は,初期添加リン濃度が増加するに従い,C. vulgarisの個体数は増加した。一方で,P. putidaはほとんど変化しておらず,むしろ,リン濃度の増加とともに若干の減少傾向が見られた。また,C. glaucomaの個体数は,リン濃度の増加とともに増加した。無機態リンの増加は藻類の増殖が増大すると考えられる。一方,細菌類の個体数は,前述したようにリン濃度に対する依存性が低い傾向を示している。このことは,リン濃度の増加とともに藻類の代謝産物が増え細菌類の増殖速度も大きくなっているものの,捕食者である原生動物に増加した細菌類は速やかに捕食されてしまい,細菌類の個体数は栄養源である藻類の代謝産物の増加に係わらず一定の個体数に保たれると同時に,結果として原生動物の個体数が増加することになると考えられた。つぎに,初期添加リン濃度と光合成活性の関係を明らかにするために,放射性炭素でラベルした炭酸水素ナトリウムを初期リン添加濃度の異なる2種のマイクロコズムに,培養開始後約16日目の時点でそれぞれ添加し,経時的にサンプリングした後,すぐにフィルター分画した。その後,各ポアサイズのフィルター上の放射線量を測定したC. vulgarisは,安定期である16日目においても放射性炭素を速やかに吸収している。この時点でリンが十分に残留している初期添加リン濃度3.6mg<CODE NUM=00A5>l−1のマイクロコズムの方が,リン残留量が少ない初期添加リン濃度0.71mg<CODE NUM=00A5>l−1のマイクロコズムに比べて藻類1個体当たりの炭素固定速度が約2倍の値を示し,安定期においてもリン濃度に依存して光合成活性が高くなることが明らかとなった。
 次に,富栄養化湖沼における糸状性藍藻類の近年の優占化に関する生態学的機構の解明のために,糸状性藍藻類Oscillatoria属を構成種として含んだ富栄養化湖沼マイクロコズムを構成するために,Oscillatoria属と原生動物Trisigmostoma属の混合培養を行った結果,Trisigmostoma属は,速やかにOscillatoria属を捕食できることが判明し,さらに基本的な被食捕食特性としての捕食速度の食物源密度の依存性がモノー式で近似できることなど,今後の富栄養化湖沼マイクロコズムを構成するための基礎的知見を得ることができた。
〔備 考〕
共同研究者:川端善一郎(京都大学生態学研究センター)・常田 聡(早稲田大学)


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