(25) 有害藻類発生湖沼の有機物,栄養塩類,生物群集の動態解析と修復効果の評価に関する研究
〔区分名〕環境-公害一括
〔研究課題コード〕0002BC231
〔重点特別研究プロジェクト名,政策対応型調査・研究名〕
〔担当者〕稲森悠平(循環型社会形成推進・廃棄物研究センター)・水落元之・今井章雄・松重一夫
〔期 間〕平成12〜14年度(2000〜2002年度)
〔目 的〕水環境修復が強く要望されている富栄養化湖沼における水質悪化の原因は,微細藻類ミクロキスティス属,糸状藍藻類オシラトリア属,フォルミジウム属等の異常な増殖によるものであるといわれている。これらのいわゆるアオコの増殖要因および有機物濃度の上昇要因は発生源からの流入負荷,底泥からの溶出負荷等に由来する有機物,栄養塩類としての窒素,リン等が重要な要因としてあげられ,これらの要因が密接に関連して湖内生態系の群集構造の変化,すなわち不健全な生態系へ変遷するのか健全生態系へ修復するのか鍵となることが指摘されている。しかしながら,そのメカニズムについては現在のところ解明されておらず,富栄養化制限因子,湖沼環境基準評価因子等と湖内生態系構成生物の群集構造変遷との関係を明らかにすることが必要不可欠と考えられている。
またWHO(世界保健機関)において富栄養化湖沼で発生する有害藻類の産生する毒性物質ミクロキスチンに対し,1μg<CODE
NUM=00A5>l−1というガイドラインが設定されたことからも毒性物質に着目した藻類の増殖抑制と分解機構に関する研究を推進する必要がある。
このような研究を必要としている対象有害藻類発生湖沼としては,茨城県霞ヶ浦,福井県三方五湖,神奈川県相模湖,岡山県児島湖,石川県河北潟,東京都内池沼等があげられることから,地方公設試験研究機関との連携により上記研究課題の解決に資する研究が推進可能と考えられる。
これらの湖沼の不健全な生態系への変遷をくい止め,かつ修復していく上では,湖内における溶存有機物の分画パターンと流入汚水の溶存有機物の分画パターンとの相違性,窒素,リン濃度,生物群集構造等と発生源等からの負荷削減効果との比較解析が極めて重要と考えられる。
本研究では上記の点を鑑み,健全な湖沼生態系への修復を目的に位置付け,有害藻類発生湖沼の有機物,栄養塩類,生物群集の動態解析と修復効果の評価に関する研究を推進することとする。
〔内容および成果〕
発生源である下水処理水,埋立地浸出水等および湖水,藻類培養後の培地ろ液等に含有される有機物の疎水性−親水性,酸性−塩基性,易−難分解性に基づき樹脂吸着分画手法を適用し,各画分の物理化学的特性および季節変化を把握することにより,湖水で漸増・蓄積する有機物の実態および動態を解明し,この各画分の存在比・特性を評価し,物質収支的アプローチ解析等により湖水溶存有機物の起源を推定した。その結果,発生源に由来する試料ごとにその水質特性が著しく変化しており,生活排水には中性疎水性物質,また湖水河川水にはフミン物質が多く存在した。今後,この知見に基づき効果的な湖沼有機物負荷削減対策の在り方の解析評価を国環研および茨城県,福井県との連携により行う。
また,有毒藻類の増殖特性と捕食分解におけるミクロキスチンの生分解機構の解明について,捕食者としての微小動物を添加した場合,しない場合における光,温度条件等を変化させて解析すると同時にミクロキスチンの生分解機構について解明した。浄水場の生物膜施設から採取した生物膜構成生物群集により,有毒アオコおよび有毒物質microcystinが高効率に分解されることが示された。同様に,異臭味物質産生藍藻類フォルミジウムも捕食分解され,異臭味物質2-MIBも同時に分解されることが明らかとなった。さらに,有毒物質やカビ臭物質を産生するオシラトリア属,フォルミジウム属の水温条件,他の藻類との相互作用における競争条件下の増殖特性を解析すると同時に微小動物の捕食分解機構解明による増殖抑制機構等について国環研および茨城県,福井県,岡山県と連携して行い,さらに有害藻類の増殖抑制機構についてベンチスケール規模および数m3規模のモデル湖沼シミュレーター等により窒素,リン,ミクロキスチン,生物群動態並びに溶存有機物の分画によるプロフィール解析を行った。特に藍藻類間の競争関係をモデルシミュレーターにより解析すると,糸状性の藍藻類オシラトリア属は10℃という低温域においても十分に増殖活性を示し,ミクロキスティス属との競争関係に有利な特性を有していることがわかった。
これらの結果を踏まえ,今後は発生源由来の有機物として有機酸やフミン,非フミン系の物質を物理化学反応で低減化することが湖沼水分画溶存有機物のどの分画を低減する上で重要かについてオゾン,チタニウム法等を用いた有機性排水等の流入水の分解特性から解析を行い,発生源また湖内底泥から有機物,窒素,リンの負荷が湖内生物群集構造をどのように変化させていくかについて,有機物,窒素,リンの負荷を削減した場合,しない場合における影響を解析し,発生源での負荷削減技術を総合的に評価すると同時に水環境修復の対策法のあり方について提案を行う。
〔備 考〕
共同研究機関:独立行政法人産業技術総合研究所・茨城県公害技術センター・福井県環境科学センター・岡山県環境保健センター・石川県保健環境センター・神奈川県環境科学センター・東京都環境科学研究所
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