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研究成果物



 

(23) 富栄養酸性雨の生態系影響に関する研究


〔区分名〕環境-地球推進 FS-3
〔研究課題コード〕0101BA293
〔重点特別研究プロジェクト名,政策対応型調査・研究名〕

〔担当者〕佐竹研一(大気圏環境研究領域)・高松武次郎・野原精一
〔期 間〕平成13年度(2001年度)
〔目 的〕大気中から森林生態系や陸水生態系に降下・沈着する酸性汚染物質を大別すると,その約半分はイオウ化合物であり,残りの半分は窒素化合物である。特に近年においては国内におけるイオウ化合物の排出の削減が進む一方で,大気中の窒素化合物の濃度は依然として高く,特に貧栄養山岳地域や貧栄養水域の酸性化・富栄養化とそれに伴う生物相の種類や活性の変化が問題となっている。更にこれに加えて,イオウ化合物や窒素化合物の長距離越境大気汚染と我が国におけるその生態系影響も懸念され始めている。しかし,その実態の解明は進んでいない。このような背景を受けて,本研究では植物の栄養源となる窒素化合物,硝酸やアンモニアを含む,いわゆる“酸性雨”を“富栄養酸性雨”として捉え,その森林生態系ならびに陸水生態系への影響を明らかにするための予察的研究を行うことを目的とした。
〔内容および成果〕
 本研究では,まず,野外の森林生態系において植物―土壌系の窒素循環に関するフレーム作りと,種の分布およびそこでの窒素利用機構の解明を試みた。対象とする森林生態系は,冷温帯落葉広葉樹林の京都大学芦生演習林,常緑針葉樹林である上賀茂試験地,常緑針葉樹林の屋久島である。芦生演習林では物質循環に影響する地形を考慮にいれ,尾根部と谷部にプロットを設けた。これらのプロットで季節ごとに土壌を採取し,土壌中の無機態窒素抽出と土壌の培養から,無機態窒素の現存量と無機態窒素生成能を推定した。また,これらのプロットにおいて,降水による窒素流入量,イオン交換樹脂を用いて土壌中の無機態窒素移動量を測定し,さらにポリエチレンバックに採取した土壌をつめて土壌中に埋設しなおし,これらを3ヵ月ごとに回収した。これらの埋設法や樹脂法を組み合わせ,森林土壌中の窒素の生成量・吸収量・流亡量を推定し,森林生態系の窒素循環の記述を試みた。一方で,プロット内の木本種の分布を記載し,土壌中の窒素の現存形態や無機態窒素生成能の分布との比較を行った。これまでの研究により,硝酸還元酵素活性には季節性はみられないことがわかっているため,生育最盛期に植物体とそのまわりの土壌を採取し,植物体中の硝酸還元酵素活性と土壌中の無機態窒素濃度の関係を明らかにした。その結果,芦生・上賀茂では年間の窒素の状態が記述され,植生の違いによる可給態窒素量に大きな違いがみられないこと,植物の硝酸酵素活性は地点間の違いより種による違いが大きいことなどが明らかになった。一方,屋久島では本格的な調査はこれからであるが,芦生・上賀茂に較べ,窒素のプールが小さく,これまでのデータによると植物が利用可能な無機態窒素の現存量も少ないことが示された。これらの結果から,窒素を含む富栄養酸性雨の影響は土壌の窒素プールの大きい上賀茂・芦生に較べて大きいことが推察された。
 さらに,屋久島の渓流河川中での溶存態窒素化合物の量を知るため,淀川-荒川水系,宮ノ浦川,岳ノ川,一湊川,白谷川において採水を行い,含まれる硝酸イオン量,アンモニウムイオン量を測定した。その結果,岳ノ川ではアンモニムイオンが検出されなかったが,淀川−荒川や白谷川では10μg1−1前後の量が検出された。この結果が富栄養酸性雨を反映しているのか,それ以外の人間活動の影響によるものかどうかについては,更なる検討を要すると考えられる。
〔備 考〕
研究代表者:佐竹研一
委託研究機関:京都大学(徳地直子)


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