(16) 富栄養酸性雨の水質・底質への影響とその計測手法に関する研究
〔区分名〕環境-地球推進 C-4
〔研究課題コード〕0101BA294
〔重点特別研究プロジェクト名,政策対応型調査・研究名〕
〔担当者〕佐竹研一(大気環境研究領域)
〔期 間〕平成13年度(2001年度)
〔目 的〕富栄養酸性雨の水質・底質への影響を解明するため,新潟県村上市三面川水系について調査を行った。また,必要な計測技術を開発・検討する。
〔内容および成果〕
日本海に面する新潟県は冬季大陸からの北西季節風の影響を受け,大陸起源の酸性汚染物質の飛来と降下・沈着に伴う森林生態系ならびに陸水生態系への影響が懸念されている地域である。しかし,その影響が最も顕著に現れるはずである山岳地域ならびにその下流域に関する調査は進んでおらず,その実態は明らかでない。本研究では富栄養酸性雨の陸水(渓流・河川水)影響の解明を目的として,新潟県村上市三面川水系を選定し,その水質に関する予察的調査を行った。
三面川の予察的な水質分析の結果には極めて興味深い結果が含まれていた。三面川水系の調査地点は日本海沿岸海水(三面川河口域),三面川河口域,三面川流入渓流A(河口近くの滝),三面川本流(河口域),三面川流入渓流B,
三面川本流(ダム下流),それにダム湖水である。
本研究ではサケ科魚類の遡上する三面川水質の連続測定も計画されており,連続測定装置ならびにその設置場所の検討も行ったが,太陽電池で稼動し,自動的にデータを発信でき,電源のない山岳地帯の渓流河川水質の連続測定に適している堀場製マルチ水質モニタリングシステム-U23(pH,導電率,溶存酸素)を用い,その測定を行うこととし,その設置場所は,サケ科魚類の遡上産卵を地下室から直接観察できるよう自然の川床断面にガラス窓を設けた三面川支流の種川を最初の観測点とすることに決定した。なお,段階別酸中和能の測定においては通常1mlの0.001N,0.01N,0.1Nの硫酸溶液を100mlの試水に加えて測定するが,今回は0.01N,0.1Nの硫酸溶液のみを用いた。三面川の予察的な水質分析の結果には極めて興味深い結果が含まれていた。というのも水に含まれる各種陽イオン量のうち,酸中和能に深い関係をもつと考えられるカルシウムイオンの量が日本の主要河川のそれと比較して極めて低い値を示していたからである。理科年表に掲載されている日本の主要10河川,ならびに湖沼のカルシウムイオンの量と比較して三面川のそれは3.5−4.5mgl−1であり,いずれも数分の1を示していることが明らかとなった。また,一般に河口部は海水の影響を受けやすいと考えられるが,三面川の中でも最も高いカルシウム濃度を示しかつサケ科魚類の回帰する河口部ですら4.5mgl−1しか示さなかったことは,本河川が酸性汚染物質の渓流河川水への影響を考える上で,今後注目しなければならない河川であることを明らかに示していると言えよう。また,段階別酸中和能の測定結果は三面川の水が極めて酸中和能に乏しいことを示しており,今後,渓流河川水ならびに底質を含め調査を進めてゆく予定である。なお,富栄養化の一つの指標であるイオンの濃度と硝酸イオン濃度は中流部でそれぞれ0.04mgl−1,3mgl−1を示していたが,上流部ではより低い値0.01mgl−1,1.4mgl−1を示していた。
〔備 考〕
研究代表者:佐竹研一
ECOフェロー:Hyung-Jae Yang(韓国)
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