(4) 地球環境汚染のタイムカプセルによる汚染監視に関する研究
〔区分名〕文科-科研費
〔研究課題コード〕9901CD106
〔重点特別研究プロジェクト名,政策対応型調査・研究名〕
〔担当者〕佐竹研一(大気圏環境研究領域)
〔期 間〕平成11〜13年度(1999〜2001年度)
〔目 的〕地球生態系汚染と,ヨーロッパ(英国)で始まった産業革命とは裏腹の関係がある。しかし,産業革命当時,日本や中国はまだ鎖国状態であり環境汚染は少なく,急激な産業化および環境の汚染は英国よりも100年以上遅れて始まっている。従って,本研究では産業革命以後大規模な汚染の進行した英国と近年酸性汚染物質による被害の著しいスカンジナビア,ドイツ,チェコ,そしてアジア(日本,中国,韓国)地域を対象として,産業化以前から現代に至る環境汚染の時系列変動態を明らかにすることを目的とした。
〔内容および成果〕
日光中宮祠で採取した樹齢250年のミズナラ(Quercus
crispola)の外樹皮,入皮,年輪,着生コケ植物のそれぞれに含まれる鉛の量と鉛安定同位体比(206Pb/207Pb)についてICP質量分析計を用いて分析した。その結果,年輪中に含まれる鉛の量は0.01〜0.1mg
kg−1を示し,その値には過去から現在に至るとき系列変化は見られなかった。一方,入皮に含まれる鉛の量は1875年以降しだいに増加し,その値は0.1〜10mg
kg−1を示した。また着生コケ植物中の鉛の量は17mg
kg−1を示した。このような結果は,明治開国以降の日本の産業化に伴う大気の鉛汚染のモニタリングに入皮は極めて有効であるが,これに反して年輪は有効ではないことを示していた。入皮中の鉛の安定同位体比については1964年以降,その値は1.18から1.16へと変化していた。また,樹木着生コケ植物中の鉛の安定同位体比は1.16を示していた。この結果は1964年以降,日本で使用されている鉛化合物のもととなる鉛鉱石の産地が変化したことを示していた。
英国シェフィールド郊外で採取したブナ(Fagus sylvatica)については,1919年から1998年に至る入皮が得られ,含まれる鉛の量は7−78mg
kg−1を示し,鉛安定同位体比は1.11から1.15を示し,外樹皮のその値は1.11であった。
以上の結果は,日本の日光と英国のシェフィールド郊外とでは鉛の汚染度が大きく異なること,また,それぞれの国で使用されている鉛化合物の起源となる鉛鉱石の産地も異なることを示していた。
〔備 考〕
研究代表者:佐竹研一
研究分担者:古田直紀(中央大学)・角田欣一(群馬大学)・高松武次郎(国立環境研究所)
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