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研究成果物



 

6. 開発途上国の環境問題
6.1 途上国の環境汚染対策に関する研究
(1) 東アジアにおける民生用燃料からの酸性雨原因物質排出対策技術の開発と様々な環境への影響評価とその手法に関する研究


〔区分名〕環境-地球推進 C-3
〔研究課題コード〕0002BA087
〔重点特別研究プロジェクト名,政策対応型調査・研究名〕

〔担当者〕畠山史郎(大気圏環境研究領域)・村野健太郎
〔期 間〕平成12〜14年度(2000〜2002年度)
〔目 的〕中国のエネルギーの約75%を占める石炭の需要は,将来的に増加する傾向があるが,地方の中小炭鉱には,適切な石炭クリーン化技術がないため,採炭される高硫黄分の低品位石炭は未処理のまま市場に流通しており,その多くは,民生用や中小規模ボイラー等の低い煙源の施設にて燃焼に供されている。その結果,中国各地,特に西南地区および東北地区の都市部では,高硫黄分の低品位石炭の燃焼に起因する大量の二酸化硫黄(SO2)及び粉塵が放出されており,大気汚染や酸性雨が顕在化し,それらによる生態系の破壊,農林業の経済的損失,建造物の腐食,健康被害等が発生している。これらの問題は,中国国内だけでなく日本を含む東アジア地域の酸性雨越境汚染の一因となっている。このように深刻な大気汚染や酸性雨被害を防止するためには,低品位石炭をクリーン化する技術が必要となる。石炭クリーン化による脱硫及び脱塵対策は,酸性雨原因物質の排出抑制,SO2排出総量規制等の環境政策支援並びに住民の健康保護の観点から最も重要な課題であり,早急な対応が迫られている。石炭クリーン化技術の中でも比較的低コストで実現可能な乾式選炭技術は開発途上国向けの環境調和型の石炭利用技術として重要視されている。現在,中国側から乾式選炭の実用化研究について強い要請があり,この技術の確立が本研究の第一の目的である。また,これまでに,中国への適正化研究の実績があるバイオブリケット化技術を広域に普及させるため,その使用によって住民の健康被害,建造物・材料の腐食による経済的損失などがいかに改善されるか,またバイオブリケット使用後の廃棄物がどのように有効利用できるかを研究し,ブリケット利用の促進を図ることが第二の目的である。
〔内容および成果〕
 本研究では乾式選炭技術の実用化・適正化と,住民の健康状態の改善や経済性の評価からバイオブリケット技術の普及促進・啓発を行って,中国における石炭利用からの酸性雨原因物質の排出削減をはかることを目的とする。このため以下の研究を行っている。
(1)乾式選炭技術の開発・実用化に関する研究
 静電気セパレータ方式の乾式選炭実用機に関する設計,試作,乾式選炭実用機による中国の粒度別高硫黄分の低品位粉炭に関する選炭実験,精炭の炭質評価及び廃石からの硫黄資源化に関する調査を行う。また,乾式選炭技術の適正化については,日中共同による乾式選炭実用機の改善設計と製作,実証プラント設置および現地の既存技術・装置との融合,炭鉱別高硫黄分の低品位粉炭に関する選炭実験,乾式選炭技術の経済性評価及び廃石からの硫黄分回収に関する基礎的研究を行う。
(2)バイオブリケット技術の民間移転と普及方策に関する研究
 中国普及対象地域における住民の各種燃料に対する使用意欲の実態調査,バイオブリケットの利用普及状況に関する追跡調査,バイオブリケット燃焼灰の農林地への散布による地域循環型総合環境保全対策の実施可能性に関する調査,材料・建造物への影響推定を行う。さらに,バイオブリケットの利用普及状況に関する追跡調査とその普及政策の提示,大気汚染対策・酸性土壌修復・水質汚染対策からなる地域循環型総合環境保全対策の実施可能性に関する調査,酸性雨・複合大気汚染による社会経済的損失の見積もりと環境改善方策の提言を行う。
 本年度の成果として,乾式選炭技術については,現地に適する乾式選炭試験装置の改良設計,部品製作,現地搬入・装置設置,据付・試運転調整を行い,処理能力の測定・確認実験を行った。選別後の石炭は5カ所の収料箱に回収され,それぞれ分析を行った後,精炭の端の回収位置を決定した。選炭後の評価は精炭,中間物,廃石の割合,脱灰率,硫黄除去率を元に行われるが,今回は硫黄除去率に重点を置いた選炭方法の基礎選炭実験を行った。南桐炭鉱産出の東林2402を分析した結果,黄鉄鉱(パイライト)由来の無機硫黄が多く存在し,乾式選炭装置の開発には適した石炭と思われる。この切り込み炭はその約50%が粒径2mm以下の粉炭であり,従来の湿式選炭では選別不可能なものである。コンベヤーのスピード,回転ドラムの回転速度,吸引電極等の実験の調整によって,改良型乾式選炭試験装置の選別能力を検討した。コンベア速度が精炭の歩留まりに及ぼす影響を示し,また石炭粒子径の違いによって電極形状を変えることにより効果的な選炭結果が得られた。これまで石炭に含まれる個々の成分の違いによる選炭特性の変化に対応した乾式選炭装置の開発を目指してきたが,今後,これらの結果を踏まえ,分割電極等の技術改善を試み,また選炭歩留まりと高脱硫率を同時に得る装置開発よりも多段式乾式選炭装置を開発する方が実用機開発への近道と考えられる。さらに,技術移転と装置処理能力を向上する実用化研究に伴い,中国国内での部品適応性の調査も進めている。
 バイオブリケットの普及については,中国西南部,東北部を主なフィールドとし,周辺自然環境の改善及び硫黄酸化物排出制御のために,民生用の低品位石炭の硫黄分や灰分などの化学的性状,選炭性,分野別利用状況,物流状況等の実態を把握した。低品位石炭からの硫黄固定化バイオブリケットについて現地のボイラーを用いた燃焼試験をおこない,特性を評価した。またバイオブリケット普及モデル地域の大気汚染改善調査を行い,中国向けの製造設備のスケールアッププロセスを提案した。中国東北地域において,現地側の賛同・協力が得られ,現地住民などからの社会的評価も高く,技術者,研究者,行政官及び企業と協力体制を築くことができた。現地にバイオブリケットを普及させるため,着実な現地実用化事業計画の支援も行っている。今後,都市域だけでなく,内陸部,農村地域へ,大陸規模の酸性雨原因物質の排出低減手法を確立することが重要である。
〔備 考〕
共同研究者:王青躍(国際善隣協会)・坂本和彦(埼玉大学)・溝口次夫(佛教大学)・前田泰昭(大阪府立大学)・辻野喜夫(大阪府立公害監視センター)・古明地哲人(東京都環境科学研究所)


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